40 / 59
04
40.代わり 01
しおりを挟む
「さぁ、手を出して下さい」
「手って……どっちだと思う?」
羽根をバサッと広げ、片足を一歩前に出す。
「どっち……なんでしょう? 私の場合、羽根も前足もありますからねぇ……とりあえず、羽根にしておきましょうか?」
両羽を広げたまま伏せたような、滑空ポーズを取る羽根にチョンッと触れ、微弱な生命エネルギーを流し込む。 ソレは手足の生命エネルギーの延長として、操作可能のもので、不愉快そうな声が響く。
「ピッ」
「我慢して、おチビちゃんのエネルギー量に比べれば、微々たるものでしょう?」
欲……。
私の生命エネルギーを巡らせ、同じようにエリスの生命エネルギーを私に流す。 あたたかな紅茶に溶ける砂糖のように、ジワリと私の中にエリスの生命エネルギーが溶け、私の生命エネルギーがエリスに溶ける。
これは、美しい星空のような静寂。
「そうだけど、ムズムズする」
不貞腐れた声に、声を出さずにカイルは笑う。 本来であれば親や一族の者から子に教える教育の一つであったが、個体数が減って来てからは、生態としての教育、情報の共有は先人の務めのようになってきている。
何かと狙われやすい翼ある者は、居ないようで存在しており、エリス自身の持つ可能性に気づき旅立てば、そういう者と出会う事もあるだろう。 それでも絶対数は少なく、将来を共に生きたいと願う者とも会えるだろう。
ソレは、嫌ですね。
右翼から左翼へエネルギーを移動させる。 小さい身体に大きなエネルギーを潤滑に保っている事をカイルは感じとっていた。
羽根を渡す事で、エネルギーが減り不都合が生じた訳ではなく。 急激に大きな量のエネルギーを抜いたショックによって意識を失っていたのが分かる。
もぞもぞと逃げるように、身体の下で足を動かし前進してきていた。
「コラ、おチビちゃん。 お師匠との特訓もそうやって逃げていたのですか?」
黒く丸い目が、猫のようにアーモンド型を作り背けてくる。
「まぁ、母様のはもっと乱暴だったし、そこまでイヤじゃない。 けど、こう……やっぱり少しヤダ……本当にコレって必要なの?」
大切に大切にツガイが残した宝を育てていた師匠が、孵化を決意したのは師匠の寿命がつきそうになっていたからだと聞いた。 彼女が私を育てたのは、この子を無事に育てるための予備だったのかもしれない。
そんなおすそ分けのような関係であっても、未だ思い出に縋るほどにカイルは依存していた。
カワイイ子……愛しい大切な子。 大地の民と一緒にいるのが、私と共にいるより良いと思っていた。 手元に連れてこられたのは、偶然で、ナルサスによる独断。
「必要ですよ。 上手くできるようになれば、変化する姿も色々と増えますし」
「別に、増えなくてもいいもん」
「そうですね……。 これを覚え、姿を変える事を覚えたなら。 貴族のパーティに遊びに行ってみませんか? 変わったご飯が色々と準備されていますよ?」
本当は外に出したくはない。 外に出る事を覚えさせたくはない。 ずっと腕の中に閉じ込めていたい……。 生命エネルギーを巡らせるごとに狂おしいほどに愛情は増していき、漏れ出る強い生命エネルギーを受ける事で、理性ばかりは強く働く。
「貴族の付き合いなんて、堅苦しいのはイヤ」
「だからね。 子供の姿で出かけましょう。 力を上手く使えるようになれば、外見的な年齢も性別も関係ありませんから」
「なんか、ズルイね」
「そういう生物なのですよ私達は。 はい、はい、お話は終わり。 体内を巡らせる生命エネルギーに注意を払って」
「は~い」
そう言いながら、エリスはポテッと前傾姿勢に身体をベッドに預けだし、すやすやと眠りだした。
「少し、優しくエネルギーを巡らせ過ぎたでしょうか?」
実際の所、技術はないが、エリスはカイルよりも余程丈夫で強い存在で、だからこそ……悩ましい。
眠ってしまったなら仕方がないと、エネルギーを巡らせるのを止めれば、寝ぼけながらもその手にすり寄ってくる。
「もっと、撫でて」
そのエリスの言葉に、カイルは小さく笑い、その身体を撫で、エネルギーを巡らせ、軽く触れるだけの口づけのような行為を繰り返し、甘い子守歌のような行為を続ける。
本来なら、親から子に与える行為。
師匠は膨大な量の知識を落とし込む事を優先したのだと思えば、後を託され、頼られたかのような満足感に、いつのまにかカイルも眠りにつく。
「手って……どっちだと思う?」
羽根をバサッと広げ、片足を一歩前に出す。
「どっち……なんでしょう? 私の場合、羽根も前足もありますからねぇ……とりあえず、羽根にしておきましょうか?」
両羽を広げたまま伏せたような、滑空ポーズを取る羽根にチョンッと触れ、微弱な生命エネルギーを流し込む。 ソレは手足の生命エネルギーの延長として、操作可能のもので、不愉快そうな声が響く。
「ピッ」
「我慢して、おチビちゃんのエネルギー量に比べれば、微々たるものでしょう?」
欲……。
私の生命エネルギーを巡らせ、同じようにエリスの生命エネルギーを私に流す。 あたたかな紅茶に溶ける砂糖のように、ジワリと私の中にエリスの生命エネルギーが溶け、私の生命エネルギーがエリスに溶ける。
これは、美しい星空のような静寂。
「そうだけど、ムズムズする」
不貞腐れた声に、声を出さずにカイルは笑う。 本来であれば親や一族の者から子に教える教育の一つであったが、個体数が減って来てからは、生態としての教育、情報の共有は先人の務めのようになってきている。
何かと狙われやすい翼ある者は、居ないようで存在しており、エリス自身の持つ可能性に気づき旅立てば、そういう者と出会う事もあるだろう。 それでも絶対数は少なく、将来を共に生きたいと願う者とも会えるだろう。
ソレは、嫌ですね。
右翼から左翼へエネルギーを移動させる。 小さい身体に大きなエネルギーを潤滑に保っている事をカイルは感じとっていた。
羽根を渡す事で、エネルギーが減り不都合が生じた訳ではなく。 急激に大きな量のエネルギーを抜いたショックによって意識を失っていたのが分かる。
もぞもぞと逃げるように、身体の下で足を動かし前進してきていた。
「コラ、おチビちゃん。 お師匠との特訓もそうやって逃げていたのですか?」
黒く丸い目が、猫のようにアーモンド型を作り背けてくる。
「まぁ、母様のはもっと乱暴だったし、そこまでイヤじゃない。 けど、こう……やっぱり少しヤダ……本当にコレって必要なの?」
大切に大切にツガイが残した宝を育てていた師匠が、孵化を決意したのは師匠の寿命がつきそうになっていたからだと聞いた。 彼女が私を育てたのは、この子を無事に育てるための予備だったのかもしれない。
そんなおすそ分けのような関係であっても、未だ思い出に縋るほどにカイルは依存していた。
カワイイ子……愛しい大切な子。 大地の民と一緒にいるのが、私と共にいるより良いと思っていた。 手元に連れてこられたのは、偶然で、ナルサスによる独断。
「必要ですよ。 上手くできるようになれば、変化する姿も色々と増えますし」
「別に、増えなくてもいいもん」
「そうですね……。 これを覚え、姿を変える事を覚えたなら。 貴族のパーティに遊びに行ってみませんか? 変わったご飯が色々と準備されていますよ?」
本当は外に出したくはない。 外に出る事を覚えさせたくはない。 ずっと腕の中に閉じ込めていたい……。 生命エネルギーを巡らせるごとに狂おしいほどに愛情は増していき、漏れ出る強い生命エネルギーを受ける事で、理性ばかりは強く働く。
「貴族の付き合いなんて、堅苦しいのはイヤ」
「だからね。 子供の姿で出かけましょう。 力を上手く使えるようになれば、外見的な年齢も性別も関係ありませんから」
「なんか、ズルイね」
「そういう生物なのですよ私達は。 はい、はい、お話は終わり。 体内を巡らせる生命エネルギーに注意を払って」
「は~い」
そう言いながら、エリスはポテッと前傾姿勢に身体をベッドに預けだし、すやすやと眠りだした。
「少し、優しくエネルギーを巡らせ過ぎたでしょうか?」
実際の所、技術はないが、エリスはカイルよりも余程丈夫で強い存在で、だからこそ……悩ましい。
眠ってしまったなら仕方がないと、エネルギーを巡らせるのを止めれば、寝ぼけながらもその手にすり寄ってくる。
「もっと、撫でて」
そのエリスの言葉に、カイルは小さく笑い、その身体を撫で、エネルギーを巡らせ、軽く触れるだけの口づけのような行為を繰り返し、甘い子守歌のような行為を続ける。
本来なら、親から子に与える行為。
師匠は膨大な量の知識を落とし込む事を優先したのだと思えば、後を託され、頼られたかのような満足感に、いつのまにかカイルも眠りにつく。
0
あなたにおすすめの小説
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
「お前を愛する事はない」を信じたので
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」
お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。
Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。
そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。
そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。
これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)
夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。
古森真朝
ファンタジー
「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。
俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」
新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは――
※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる