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40.代わり 01
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「さぁ、手を出して下さい」
「手って……どっちだと思う?」
羽根をバサッと広げ、片足を一歩前に出す。
「どっち……なんでしょう? 私の場合、羽根も前足もありますからねぇ……とりあえず、羽根にしておきましょうか?」
両羽を広げたまま伏せたような、滑空ポーズを取る羽根にチョンッと触れ、微弱な生命エネルギーを流し込む。 ソレは手足の生命エネルギーの延長として、操作可能のもので、不愉快そうな声が響く。
「ピッ」
「我慢して、おチビちゃんのエネルギー量に比べれば、微々たるものでしょう?」
欲……。
私の生命エネルギーを巡らせ、同じようにエリスの生命エネルギーを私に流す。 あたたかな紅茶に溶ける砂糖のように、ジワリと私の中にエリスの生命エネルギーが溶け、私の生命エネルギーがエリスに溶ける。
これは、美しい星空のような静寂。
「そうだけど、ムズムズする」
不貞腐れた声に、声を出さずにカイルは笑う。 本来であれば親や一族の者から子に教える教育の一つであったが、個体数が減って来てからは、生態としての教育、情報の共有は先人の務めのようになってきている。
何かと狙われやすい翼ある者は、居ないようで存在しており、エリス自身の持つ可能性に気づき旅立てば、そういう者と出会う事もあるだろう。 それでも絶対数は少なく、将来を共に生きたいと願う者とも会えるだろう。
ソレは、嫌ですね。
右翼から左翼へエネルギーを移動させる。 小さい身体に大きなエネルギーを潤滑に保っている事をカイルは感じとっていた。
羽根を渡す事で、エネルギーが減り不都合が生じた訳ではなく。 急激に大きな量のエネルギーを抜いたショックによって意識を失っていたのが分かる。
もぞもぞと逃げるように、身体の下で足を動かし前進してきていた。
「コラ、おチビちゃん。 お師匠との特訓もそうやって逃げていたのですか?」
黒く丸い目が、猫のようにアーモンド型を作り背けてくる。
「まぁ、母様のはもっと乱暴だったし、そこまでイヤじゃない。 けど、こう……やっぱり少しヤダ……本当にコレって必要なの?」
大切に大切にツガイが残した宝を育てていた師匠が、孵化を決意したのは師匠の寿命がつきそうになっていたからだと聞いた。 彼女が私を育てたのは、この子を無事に育てるための予備だったのかもしれない。
そんなおすそ分けのような関係であっても、未だ思い出に縋るほどにカイルは依存していた。
カワイイ子……愛しい大切な子。 大地の民と一緒にいるのが、私と共にいるより良いと思っていた。 手元に連れてこられたのは、偶然で、ナルサスによる独断。
「必要ですよ。 上手くできるようになれば、変化する姿も色々と増えますし」
「別に、増えなくてもいいもん」
「そうですね……。 これを覚え、姿を変える事を覚えたなら。 貴族のパーティに遊びに行ってみませんか? 変わったご飯が色々と準備されていますよ?」
本当は外に出したくはない。 外に出る事を覚えさせたくはない。 ずっと腕の中に閉じ込めていたい……。 生命エネルギーを巡らせるごとに狂おしいほどに愛情は増していき、漏れ出る強い生命エネルギーを受ける事で、理性ばかりは強く働く。
「貴族の付き合いなんて、堅苦しいのはイヤ」
「だからね。 子供の姿で出かけましょう。 力を上手く使えるようになれば、外見的な年齢も性別も関係ありませんから」
「なんか、ズルイね」
「そういう生物なのですよ私達は。 はい、はい、お話は終わり。 体内を巡らせる生命エネルギーに注意を払って」
「は~い」
そう言いながら、エリスはポテッと前傾姿勢に身体をベッドに預けだし、すやすやと眠りだした。
「少し、優しくエネルギーを巡らせ過ぎたでしょうか?」
実際の所、技術はないが、エリスはカイルよりも余程丈夫で強い存在で、だからこそ……悩ましい。
眠ってしまったなら仕方がないと、エネルギーを巡らせるのを止めれば、寝ぼけながらもその手にすり寄ってくる。
「もっと、撫でて」
そのエリスの言葉に、カイルは小さく笑い、その身体を撫で、エネルギーを巡らせ、軽く触れるだけの口づけのような行為を繰り返し、甘い子守歌のような行為を続ける。
本来なら、親から子に与える行為。
師匠は膨大な量の知識を落とし込む事を優先したのだと思えば、後を託され、頼られたかのような満足感に、いつのまにかカイルも眠りにつく。
「手って……どっちだと思う?」
羽根をバサッと広げ、片足を一歩前に出す。
「どっち……なんでしょう? 私の場合、羽根も前足もありますからねぇ……とりあえず、羽根にしておきましょうか?」
両羽を広げたまま伏せたような、滑空ポーズを取る羽根にチョンッと触れ、微弱な生命エネルギーを流し込む。 ソレは手足の生命エネルギーの延長として、操作可能のもので、不愉快そうな声が響く。
「ピッ」
「我慢して、おチビちゃんのエネルギー量に比べれば、微々たるものでしょう?」
欲……。
私の生命エネルギーを巡らせ、同じようにエリスの生命エネルギーを私に流す。 あたたかな紅茶に溶ける砂糖のように、ジワリと私の中にエリスの生命エネルギーが溶け、私の生命エネルギーがエリスに溶ける。
これは、美しい星空のような静寂。
「そうだけど、ムズムズする」
不貞腐れた声に、声を出さずにカイルは笑う。 本来であれば親や一族の者から子に教える教育の一つであったが、個体数が減って来てからは、生態としての教育、情報の共有は先人の務めのようになってきている。
何かと狙われやすい翼ある者は、居ないようで存在しており、エリス自身の持つ可能性に気づき旅立てば、そういう者と出会う事もあるだろう。 それでも絶対数は少なく、将来を共に生きたいと願う者とも会えるだろう。
ソレは、嫌ですね。
右翼から左翼へエネルギーを移動させる。 小さい身体に大きなエネルギーを潤滑に保っている事をカイルは感じとっていた。
羽根を渡す事で、エネルギーが減り不都合が生じた訳ではなく。 急激に大きな量のエネルギーを抜いたショックによって意識を失っていたのが分かる。
もぞもぞと逃げるように、身体の下で足を動かし前進してきていた。
「コラ、おチビちゃん。 お師匠との特訓もそうやって逃げていたのですか?」
黒く丸い目が、猫のようにアーモンド型を作り背けてくる。
「まぁ、母様のはもっと乱暴だったし、そこまでイヤじゃない。 けど、こう……やっぱり少しヤダ……本当にコレって必要なの?」
大切に大切にツガイが残した宝を育てていた師匠が、孵化を決意したのは師匠の寿命がつきそうになっていたからだと聞いた。 彼女が私を育てたのは、この子を無事に育てるための予備だったのかもしれない。
そんなおすそ分けのような関係であっても、未だ思い出に縋るほどにカイルは依存していた。
カワイイ子……愛しい大切な子。 大地の民と一緒にいるのが、私と共にいるより良いと思っていた。 手元に連れてこられたのは、偶然で、ナルサスによる独断。
「必要ですよ。 上手くできるようになれば、変化する姿も色々と増えますし」
「別に、増えなくてもいいもん」
「そうですね……。 これを覚え、姿を変える事を覚えたなら。 貴族のパーティに遊びに行ってみませんか? 変わったご飯が色々と準備されていますよ?」
本当は外に出したくはない。 外に出る事を覚えさせたくはない。 ずっと腕の中に閉じ込めていたい……。 生命エネルギーを巡らせるごとに狂おしいほどに愛情は増していき、漏れ出る強い生命エネルギーを受ける事で、理性ばかりは強く働く。
「貴族の付き合いなんて、堅苦しいのはイヤ」
「だからね。 子供の姿で出かけましょう。 力を上手く使えるようになれば、外見的な年齢も性別も関係ありませんから」
「なんか、ズルイね」
「そういう生物なのですよ私達は。 はい、はい、お話は終わり。 体内を巡らせる生命エネルギーに注意を払って」
「は~い」
そう言いながら、エリスはポテッと前傾姿勢に身体をベッドに預けだし、すやすやと眠りだした。
「少し、優しくエネルギーを巡らせ過ぎたでしょうか?」
実際の所、技術はないが、エリスはカイルよりも余程丈夫で強い存在で、だからこそ……悩ましい。
眠ってしまったなら仕方がないと、エネルギーを巡らせるのを止めれば、寝ぼけながらもその手にすり寄ってくる。
「もっと、撫でて」
そのエリスの言葉に、カイルは小さく笑い、その身体を撫で、エネルギーを巡らせ、軽く触れるだけの口づけのような行為を繰り返し、甘い子守歌のような行為を続ける。
本来なら、親から子に与える行為。
師匠は膨大な量の知識を落とし込む事を優先したのだと思えば、後を託され、頼られたかのような満足感に、いつのまにかカイルも眠りにつく。
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