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46.望まぬ遭遇 02
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じっと見つめる先には、温かな声をかけられる皇妃と偽皇帝。
アレのせいで……。
使い魔として自分を支配しようとした幼い頃の皇妃は、カイルを専用のバッグに入れ持ち歩いていた。 中庸の者の生命エネルギーなど同族の生命エネルギーに比べれば、髪の一筋みたいなもの。 それも子供ならばカイルに与える影響は殆どない。
それでも身勝手で、我儘で残忍な彼女の思いはカイルに流れ蝕んだ。 支配には遠かったが、それでも、影響は受けた。 もし、ミラと言う女性が翼ある者の卵を持ち歩く期間などなかったなら、カイルは傭兵になろうとはせず、火山、滝、大きな自然エネルギーを探ししまうとしただろう。
強い憎しみが、本能が殺意へと変わる。
「偽物?」
首を傾げるエリスの瞳は何処かワクワクとして見えるが、カイルにしてみればそんな余裕等欠片も無い。 それでも愛想笑いを浮かべて答えた。
正気に戻された。
エリスを守る者が無い時に何をしようと言うのだと。
「代理のようなものでしょうか?」
自分が?
相手が?
頭がぐらぐらした。
表に出る事が出来なくなって5年。 世間では既に自分の方が偽物になっているだろう。
そもそも、彼等の先祖に竜が居たからと言う理由だけで、血族と言うならば全く関係のないカイルよりも、周期的に王族の血筋を入れて来たメイザース公爵家、グストリア公爵家の方がふさわしいだろう。
どちらが偽物?
テーブルの上で、強く握りこぶしを握っていた。
「お代の方は結構ですので、コチラのお席をお譲りいただいてよろしいでしょうか?」
店の者が少しばかり面倒そうに顔を顰めつつも愛想笑いを浮かべやってきた。 複雑な表情だ。
「構いません……」
拳を握りしめ、カイルは席を立つ。 行こうと……と、エリスへと視線を巡らせようとすれば、視界にはなく、髪が2.3度軽く引っ張られ、帽子の中に避難したことを知った。
必死に耐え、気持ちをやり過ごしていると言うのに、無慈悲にも高い靴音が響く。
「貴方、一人?」
声をかけて来たのは皇妃。
「は、はい」
視線を合わせず、俯いた。
この距離なら殺せる。
そんな思いを抱きつつ……。
「カワイイわね。 何処の家の子? ご一緒にどう?」
「私は、その、親戚に預けられ、皇都に来たばかりで……。 尊い方と席を共にするような、作法は教えられていませんので、今日も、他の方々を不快にしないよう、席を離れさせていただいただけですし」
「そのようですね」
クスッと笑うカイルの偽物の視線の先にある、ぐちゃぐちゃに食べ散らかされたケーキスタンド。 ケーキスタンドにある何かをたどるように、偽物の指がスタンドに触れ、カイルに触れようとした。
慌てて背後に下がる。
「な、なんでしょう?」
「そう、緊張しなくてもいいんですよ。 私は竜です。 竜とは人と同じ価値を持ち合わせて等いません」
「な、ならば余計に……無理です!!」
そう言って走って逃げた。
殺意が溢れ出す前に。
偽物は、皇妃以上にカイルの殺意を引き出そうとする。 面識がない訳ではないが、これほど不快な匂いだったろうか? と、眉間を寄せカイルは闇雲に走る。 走ると言っても少女の足で不自然でない速度で20m程。
「まって、まってまって!! ちゃんと道を確認しないと!!」
「わかってます……。 一応、私にも警戒心はありますから」
自分ひとりならどうでいいが、エリスが一緒だと思えば、冷静になれた。
じっと見つめた先、2人はもう既にカイルを見ていなかった。
翼ある者は、食用として狙われると言う歴史がある。 だからこそ、最初に教えられるのはその生命力を隠すための擬態である。
気にし過ぎたでしょうか? そう思いながらもジッと見つめた。 その生命力を探ろうと無遠慮に……。 その瞬間、カイルの脳が拒絶でグラリと揺れた。
「うっ……」
気持ち悪い……本能がそう告げ、蹲りそうになるところを壁に身を任せた。
「おや、大丈夫かい、お嬢ちゃん?」
通りすがりの女性が声をかけるくらいに顔色悪く震えていた。 ソレは演技ではないからこそたちが悪い。 声をかけてくる人がいるから、エリスも声をかけられない。
心配するが、エリスにできる事と言えば温め、生命エネルギーを分け与える事で、でも、それはとても不器用で、不安定なカイルを揺さぶってきた。
「すみません……。 ナルサス様の騎士団まで案内してくれる人を、紹介いただけませんか?」
顔を伏せ、身体を抱きしめながら言えば、
「幾ら出せる?」
少しイラっとした。
「アンタいい服を着ているし、お金があるなら馬車に乗った方がいいだろう?」
それは明らかな善意で、疑った自分を反省した。
「お金は、あります……。 お名前をうかがってもいいでしょうか? お礼は後日伺わせていただきますから」
縋るような視線を向けるカイルに、
「いやいや気にする事はないよ」
「あの……其方、私の主の知り合いです。 コチラで保護させて頂きますので、お任せ下さい」
そう告げてきた見知らぬ少女は、皇妃の侍女が身に着けていた侍女服よりも華々しく、過剰に盛られたレースがドレスのように愛らしい衣装を着ていた。
「そちらも、お気遣いなく。 彼女は、僕の遠縁の子なので」
声をかけ手を差し出したのは、額に汗をかいていたヒューゴだった。
「まったく、甘い物を食べすぎるからですよ。 加減って言うモノを知らないんですから」
そうカイルに説教をし、声をかけてくれた女性にはお礼として銀貨を握らせ、侍女と女性に頭を下げその場を物凄い速さで、ヒューゴの出せる全力で立ち去った。
アレのせいで……。
使い魔として自分を支配しようとした幼い頃の皇妃は、カイルを専用のバッグに入れ持ち歩いていた。 中庸の者の生命エネルギーなど同族の生命エネルギーに比べれば、髪の一筋みたいなもの。 それも子供ならばカイルに与える影響は殆どない。
それでも身勝手で、我儘で残忍な彼女の思いはカイルに流れ蝕んだ。 支配には遠かったが、それでも、影響は受けた。 もし、ミラと言う女性が翼ある者の卵を持ち歩く期間などなかったなら、カイルは傭兵になろうとはせず、火山、滝、大きな自然エネルギーを探ししまうとしただろう。
強い憎しみが、本能が殺意へと変わる。
「偽物?」
首を傾げるエリスの瞳は何処かワクワクとして見えるが、カイルにしてみればそんな余裕等欠片も無い。 それでも愛想笑いを浮かべて答えた。
正気に戻された。
エリスを守る者が無い時に何をしようと言うのだと。
「代理のようなものでしょうか?」
自分が?
相手が?
頭がぐらぐらした。
表に出る事が出来なくなって5年。 世間では既に自分の方が偽物になっているだろう。
そもそも、彼等の先祖に竜が居たからと言う理由だけで、血族と言うならば全く関係のないカイルよりも、周期的に王族の血筋を入れて来たメイザース公爵家、グストリア公爵家の方がふさわしいだろう。
どちらが偽物?
テーブルの上で、強く握りこぶしを握っていた。
「お代の方は結構ですので、コチラのお席をお譲りいただいてよろしいでしょうか?」
店の者が少しばかり面倒そうに顔を顰めつつも愛想笑いを浮かべやってきた。 複雑な表情だ。
「構いません……」
拳を握りしめ、カイルは席を立つ。 行こうと……と、エリスへと視線を巡らせようとすれば、視界にはなく、髪が2.3度軽く引っ張られ、帽子の中に避難したことを知った。
必死に耐え、気持ちをやり過ごしていると言うのに、無慈悲にも高い靴音が響く。
「貴方、一人?」
声をかけて来たのは皇妃。
「は、はい」
視線を合わせず、俯いた。
この距離なら殺せる。
そんな思いを抱きつつ……。
「カワイイわね。 何処の家の子? ご一緒にどう?」
「私は、その、親戚に預けられ、皇都に来たばかりで……。 尊い方と席を共にするような、作法は教えられていませんので、今日も、他の方々を不快にしないよう、席を離れさせていただいただけですし」
「そのようですね」
クスッと笑うカイルの偽物の視線の先にある、ぐちゃぐちゃに食べ散らかされたケーキスタンド。 ケーキスタンドにある何かをたどるように、偽物の指がスタンドに触れ、カイルに触れようとした。
慌てて背後に下がる。
「な、なんでしょう?」
「そう、緊張しなくてもいいんですよ。 私は竜です。 竜とは人と同じ価値を持ち合わせて等いません」
「な、ならば余計に……無理です!!」
そう言って走って逃げた。
殺意が溢れ出す前に。
偽物は、皇妃以上にカイルの殺意を引き出そうとする。 面識がない訳ではないが、これほど不快な匂いだったろうか? と、眉間を寄せカイルは闇雲に走る。 走ると言っても少女の足で不自然でない速度で20m程。
「まって、まってまって!! ちゃんと道を確認しないと!!」
「わかってます……。 一応、私にも警戒心はありますから」
自分ひとりならどうでいいが、エリスが一緒だと思えば、冷静になれた。
じっと見つめた先、2人はもう既にカイルを見ていなかった。
翼ある者は、食用として狙われると言う歴史がある。 だからこそ、最初に教えられるのはその生命力を隠すための擬態である。
気にし過ぎたでしょうか? そう思いながらもジッと見つめた。 その生命力を探ろうと無遠慮に……。 その瞬間、カイルの脳が拒絶でグラリと揺れた。
「うっ……」
気持ち悪い……本能がそう告げ、蹲りそうになるところを壁に身を任せた。
「おや、大丈夫かい、お嬢ちゃん?」
通りすがりの女性が声をかけるくらいに顔色悪く震えていた。 ソレは演技ではないからこそたちが悪い。 声をかけてくる人がいるから、エリスも声をかけられない。
心配するが、エリスにできる事と言えば温め、生命エネルギーを分け与える事で、でも、それはとても不器用で、不安定なカイルを揺さぶってきた。
「すみません……。 ナルサス様の騎士団まで案内してくれる人を、紹介いただけませんか?」
顔を伏せ、身体を抱きしめながら言えば、
「幾ら出せる?」
少しイラっとした。
「アンタいい服を着ているし、お金があるなら馬車に乗った方がいいだろう?」
それは明らかな善意で、疑った自分を反省した。
「お金は、あります……。 お名前をうかがってもいいでしょうか? お礼は後日伺わせていただきますから」
縋るような視線を向けるカイルに、
「いやいや気にする事はないよ」
「あの……其方、私の主の知り合いです。 コチラで保護させて頂きますので、お任せ下さい」
そう告げてきた見知らぬ少女は、皇妃の侍女が身に着けていた侍女服よりも華々しく、過剰に盛られたレースがドレスのように愛らしい衣装を着ていた。
「そちらも、お気遣いなく。 彼女は、僕の遠縁の子なので」
声をかけ手を差し出したのは、額に汗をかいていたヒューゴだった。
「まったく、甘い物を食べすぎるからですよ。 加減って言うモノを知らないんですから」
そうカイルに説教をし、声をかけてくれた女性にはお礼として銀貨を握らせ、侍女と女性に頭を下げその場を物凄い速さで、ヒューゴの出せる全力で立ち去った。
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