【R18】婚約者がとんでもない女を運命のツガイだといいました。 そして私は運命に出会う。【完結】

迷い人

文字の大きさ
48 / 59
04

48.不快な来客達

しおりを挟む
 ヒューゴの親戚として皇妃に伝わってしまった手前、離宮に戻る訳にもいかないだろうと、カイルはシバラクの間少女シーラと言う存在として、私兵団本部の雑用を行う事とした。

 カイルに与えられた通常業務に関しては、ドロドロに腐りかけていた頃の数倍の速度で処理しておいたため問題はない。

 問題があるとするなら、少女を皇帝陛下と知らず声をかけてくる団員の方だろう。

「うざい、寄るな」

 野菜の皮むきに勤しんでいる邪魔をされ、ナイフを向け、冷ややかな視線を向ければ……喜ばれた。

 このドエムどもが……。 いや、違うか?
 この姿が子供過ぎるからか?

「あ~こわいこわい。 お嬢ちゃん怖いなぁ、流石ヒューゴの親戚だ。 こりゃぁ、おじちゃんたちも直ぐに、追い抜かされてしまうなぁ~」

 なんて、ニヤニヤ嬉しそうにされる。

 正体を知らないとは言え、マジ、一度〆るか?

 最近のカイルは情緒が不安定だ。 その原因は、連日訪れる皇妃と、偽皇帝からの勧誘。

 一昨日から、とうとう本人達が来訪するようになり、偽皇帝を偽物と知らないまだ年若い騎士達を中心に大騒ぎとなっている。 まぁ、正体を知る者は知る者で、大騒ぎでヒューゴに詰め寄ってはいるが。

「毎度、毎度、懲りもせずご足労いただいておりますが、先日も言った通り尊き方にお使いする等、私にはできるはずもありません。 あと、連日来られてはノルマが達成できない言い訳にもなりませんから」

 仕事があるからと、食堂から動こうとしなければ、2人は侍女3名と騎士3名を連れ古びた食堂にやってきた。

「随分と汚く、臭い食堂ね」

 花の香りで隠してはいるが、ぷんぷんと血の匂いをさせている者に言われたくないだろう。 つくづく生物としての性質を歪めるのが好きならしい。

「帰れば?」

「不敬だぞ!! そのジャガイモの皮を剥く手を止めないか!!」

 護衛の騎士が怒鳴りつけるが、あぁ?と、睨み返す少女。 そしてまぁまぁと騎士を穏やかに宥める偽皇帝&皇妃。

「いいのよ。 それより問題にすべきは、アナタのようなカワイイ子にずいぶんと汚らしい雑務を押し付けていることよ。 私のモノになれば、アナタは可愛く微笑んでくれればいいと言うのに」

「ソレが無理だって言ってんですよ。 そういうのは、生まれも育ちもカワイイ子に行ってください。 皮がカワイイからって、可愛く笑えるもんじゃありませんから」

 お前等の顔を見ているだけで吐き気がすると言うのに……、どう笑えと言うのだ……なんて思いながらも笑ってみれば、随分と皮肉気な笑いとなっていたらしく、侍女と騎士がひくついていた。

 全く暇人が、こっちの仕事の邪魔をしてくんな!! 関わってくんな!! 荒れまくりのカイルは心の中で口汚く罵っていた。

「うちに来れば、生まれ変われるわ」

「私が天使のように笑うなんて、逆に恐ろしいですよ。 そんなのは私じゃぁありませんからね。 正直、皇都にきてから意味もなく、ヘラヘラと笑っている人達を見る事に疲れているくらいです。 もういい加減、諦めてくれませんか?」

 冷ややかに見据え言えば、ミラ皇妃は表情を変える事無く、

「あら、愛想笑いに疲れると言うのは私にも分かるわ。 えぇ、腹が立つものよね。 嘘臭くて、腹の底が見えるようで……薄汚い汚物が、幾ら笑おうと汚物なんだって。 だからこそ、私は私を癒すための楽園を作りたいの。 今、アナタは辛い環境にあるかもしれませんが、私の楽園で幸福に暮らしていれば、本当の笑顔を取り戻せる日も来ると思うのよ」

 鼻で笑いそうになるのを我慢していたつもりだが、我慢しきれただろうか?

「ふふっふふふ、随分と嫌われてますね」

 偽皇帝が笑う。

「大抵の庶民は、権力者を鬱陶しいと感じていますよ。 恐ろしいから、声にしないだけで」

「貴方は恐ろしくはないの?」

「そりゃぁ、恐ろしいですよ……こうやって手が震えるほどに。 だからって恐怖であろうと、下心であろうと、良く考えず流されれば不幸確定」

 肩を竦めて、話を続ける。

「下手をすれば数日後には川に浮いているかもしれません」

「そんな野蛮な事はありませんよ。 貴方が望むなら、常に私の側において守りましょう」

「胃が焼けます。 勘弁してください」

 本気でキリキリと胃が痛む。

 正面から見る2人を皮ではなく、そのエネルギーに照準を当ててしまえば、2人の中身は地獄の沼のようにしか見えなかった。 幾重にも怨嗟と苦痛に凝り固まった魂が、2人の中でウネリ、渦を巻き、消えては現れる。

 カイルが戦場で奪っていたのは、魂が肉体を離れる瞬間に消失する生命エネルギーであり、魂そのものではない。 エネルギーではなく魂を食らっていては、本質が歪むと言うものだ。

 ※ 生食鬼へと変質するため、膨大なエネルギーを魂がため込んでいるところを食らうため、エネルギーだけでなく魂も食らっている。

 魂と、生きるためのエネルギー、その区別もついていないと言うならば、ただ過剰なまでに力を集めているソレだけの存在だと安堵する。

 だが、生理的には無理!!

 気持ち悪い……
 吐き気がする……
 本能が2人はオゾマシイ存在なのだと拒絶する。

 中庸の民とも、大地の民とも違い、その生命エネルギーを本体とする翼ある者であるにもかかわらず、顔色が悪くなると言う事は、生命エネルギーに異常をきたしていると言う事だ。

「すみません……そろそろストレスに耐えきれません。 お帰り頂けますか?」

 マジで言えば、

「仕方がありませんね」
「また、くるわ~」
「あぁ、手土産を渡すのを忘れてました」

 そうして袋に入った甘い菓子が置いていかれた。 生命力を生み出す燃料でしかない菓子から、怪しい色合いのエネルギーがうねり、囁くような呻き声が、怨嗟を語っていた。

「見送りはいいわ。 その代わり、今度是非うちに見学に来てね」

「機会があれば……」

 見送る気も無い彼等が離れていく様子を、皮膚に感じ取り眉間を寄せて呟いた。

「そろそろ……潮時ですかねぇ……」

 はぁ……大きな溜息をつけば、入口付近で騒ぎが起こっていた。 大声で叫ぶ声と、物がぶつかり破壊される音。

「俺の婚約者を返せ!!」

 それは暴れる事で自己を主張しようとするように、喧噪が響く。 誰かが、2人は大地の民だと叫べば、魔法を使える者が対策に及ぶ。

「お願いだ!! 俺の婚約者を返してくれ……」

 大地の民は、奴隷種とされている。 その魔力耐性の無さゆえに、どれほど力が強くとも惨めに這いつくばり、情けを請わずに生きていけないから。

 慈悲を知れ……。

 マルスとその双子の妹マイルが牢へと連れていかれるのを、冷めた気持ちで眺めていれば、視線があった。

「ぁ……」

 視線が戸惑う。

 今の姿は、師匠であるエリスの母を若く……いや幼くしたうえで、決して消すことが出来ない私と言う要素が残っている状態だから。

「え、りす? 頼む、お願いだ!! 帰って来てくれ。 俺が悪かった!!」

 抱きしめようとするから、つい、蹴り飛ばした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。

古森真朝
ファンタジー
 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。  俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」  新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは―― ※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

処理中です...