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49.ワガママ
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壁に埋まった双子は、唖然としていた。
ユックリと蹴りを入れた足を降ろし、見下ろすように2人を見つめる。 周囲の者達は全とした表情で、埋まる双子とシーラと呼ばれているヒューゴの親戚を交互に見ていた。
「な、ぜ……」
どうして、容易く吹っ飛んだ? 理解もできない2人の中では偶然と言う言葉が巡り納得しようとする。
「そうだ……あぁ、偶然、上手く、弱点を突かれただけだ……そうに決まっている。 なぁ、アンタに良く似た白い髪の女を知らないか? 俺の婚約者なんだ。 ちょっとした行き違いで、連れていかれたから、連れ戻しに来た。 ただ、それだけなんだ。 暴れたのは悪かったとは思うが、アンタからも話を聞いてくれるように……」
双子の中間に、蹴りを入れれば壁が破壊され、見通しが良くなった。
じっと……じっと……。
無言のまま、見つめた。
ユックリと竜としての力を瞳に宿せば、2人は怯えだす。
双子とは面識がある。 エリスがまだ幼く小鳥にしかなれなかった頃、ご近所だった2人は師匠が作る食事につられて日参していた。 食事の奪いあいから、喧嘩になったのはエリスがまだ孵る前だっただろうか?
未熟とは言え、竜は竜だ、子供の獅子に負けるはずがない。 例えソレが2対1であったとしても。 徹底してやった。
『加減すれば勝てるかもと、何度も突っかかってくるだろう。 食事時にウルサイのはたまらんからな。 1度で徹底的に終わらせろ』
そう師匠に言われ、徹底的に叩いたら二度と顔を出さなくなった。
「仕事の邪魔。 近所迷惑。 牢に入れておきなよ」
状況次第では、エリスに魔導師を数人付けエイマーズ領に戻すつもりでいた。 その方が安全だろうと思ったから。 一気に、そんな気が無くなった。
「本当は嫌だが、嫌だ、嫌だとワガママをエリスに押し付け、自由を奪ってはダメでしょう。 って、思っていたのですけどねぇ……」
だが……彼等はここまで知性が無かったのか?
他愛無い事なのに、全てを放り出したいほどに疲れた。
「あ~~、荒ぶるなぁ……」
渦巻く感情を必死に身の内に抑え、山積みの野菜が置かれたテーブルにカイルは突っ伏した。
「今なら、国を亡ぼせる気がする」
「恐ろしい事は止めて下さい。 手伝いますから」
やってきたのは、ヒューゴだった。
「野菜の皮むきぐらいで、国を亡ぼしたりしませんよ」
「ソレは横にいったん置きましょう。 今回、シーラがこちらに留まってくれたおかげで、(皇妃に関わる)団内の交友関係や、外部関係の把握ができました。 かなり活発に動いてくれましたからね」
「それは、良かった」
カイルは、苦々しく唇を噛み、拳を握っていた。
「それで、グストリア公爵は?」
皇国内の二大貴族の一つ。
「ご安心を、メイザース公爵家の脅威を一切合切遮断しております。 とは言え、メイザース公爵家と渡り合っているんです。 鬼に任せるか、悪魔に任せるか、その差しかありませんね」
「いいですよ。 ソレで、メイザース公爵家を潰せるなら……。 後の事は後で考えましょう。 それで、あの大地の民は?」
「牢の2人は、金は返すからエリス様を返せとソレばかりです。 陛下の元愛人候補が門兵と関係があって入り込んだようですが、今回同行した大半が皇都の外に群れをなして止められているようです。 対応は魔導部隊がしているようです」
「エイマーズ領に文官を残していますよね。 彼等からの連絡は?」
馬鹿にするようにヒューゴは笑う。
「自由を謳歌した結果、ただの獣として過ごしていたようですよ」
「……」
「どう、なさいました?」
「チャンスは、与えるべきだろうか?」
「馬鹿げた事は、考えない事ですよ」
「よし、皮むき終わり。 では、今晩中にグストリア公爵との話し合いを終わらせましょう」
翌日、私兵団本部が襲われ、兵士の8割が死に、その犯人である少女も死んだと世間に広まった。 死んだとされる8割は、皇妃、偽皇帝との因果関係が無いと判断された者達であり、彼等は離宮を中心とする森に潜む事となる。
そして今まで以上に深い闇が離宮を覆った。
「陛下だ!!」
モイラと共にいるエリスが身体を細めた。
それは生理的恐怖だと言うのに、皮膚がチリチリとし次の瞬間には、全てを飲み込むかのように夜の匂いに安堵した。
陛下がいる……。
「陛下に会いに行っていい?」
モイラに言えば、余り色良い返事ではなかった。
「お伺いしてきましょう」
「なんで!! なんで、会いにいっちゃだめなの?!」
「お疲れかもしれませんから」
「我儘言わないよ!! 側にいるだけだもん。 それに、私が側に居る方がいいんだよね?」
想定外だった。
こんなに長く会えないなんて思わなかった。
ずっと側に居るものだと思っていた。
あの日、離宮での用事を終えた陛下は、私兵団本部へとシバラク身を置くからと伝言を残して去って行った。 直接告げられなかったのが不満だとナルサスに言えば、
「あら、だって仕方がないじゃない。 皇都に1人で行くのズルイ、良い子にするから連れて言って。 なんて小鳥ちゃんに言われて断られる方じゃないもの」
言われれば納得したけれど、やっぱり納得できなかった。
日が過ぎるほどに不安になった。
自分は何処にも行き場等ないから。
もし、ここにいられなくなったら? そう思えば怖かった。
今更エイマーズ領に戻る気等無かった。
ワガママを言う気はないけど、鳥の姿では何もできなくて、必死に元に戻る訓練をした。 そう、戻る訓練をしたのだ。
「分かった……大人しくしておく」
役立てば……側に居てもいいよね?
人が寝入る深夜。
そっとエリスは、カイルの部屋を訪れる。
気配を落とし、気づかれないように……。
そっと、そっと……。
近寄るベッドで眠るのは、少女姿のカイルだった。
「……」
女の子同士だと、どうすればいいのだろう??
そんな事を考えながらも、陛下の唇に、唇を寄せてみた……。
ユックリと蹴りを入れた足を降ろし、見下ろすように2人を見つめる。 周囲の者達は全とした表情で、埋まる双子とシーラと呼ばれているヒューゴの親戚を交互に見ていた。
「な、ぜ……」
どうして、容易く吹っ飛んだ? 理解もできない2人の中では偶然と言う言葉が巡り納得しようとする。
「そうだ……あぁ、偶然、上手く、弱点を突かれただけだ……そうに決まっている。 なぁ、アンタに良く似た白い髪の女を知らないか? 俺の婚約者なんだ。 ちょっとした行き違いで、連れていかれたから、連れ戻しに来た。 ただ、それだけなんだ。 暴れたのは悪かったとは思うが、アンタからも話を聞いてくれるように……」
双子の中間に、蹴りを入れれば壁が破壊され、見通しが良くなった。
じっと……じっと……。
無言のまま、見つめた。
ユックリと竜としての力を瞳に宿せば、2人は怯えだす。
双子とは面識がある。 エリスがまだ幼く小鳥にしかなれなかった頃、ご近所だった2人は師匠が作る食事につられて日参していた。 食事の奪いあいから、喧嘩になったのはエリスがまだ孵る前だっただろうか?
未熟とは言え、竜は竜だ、子供の獅子に負けるはずがない。 例えソレが2対1であったとしても。 徹底してやった。
『加減すれば勝てるかもと、何度も突っかかってくるだろう。 食事時にウルサイのはたまらんからな。 1度で徹底的に終わらせろ』
そう師匠に言われ、徹底的に叩いたら二度と顔を出さなくなった。
「仕事の邪魔。 近所迷惑。 牢に入れておきなよ」
状況次第では、エリスに魔導師を数人付けエイマーズ領に戻すつもりでいた。 その方が安全だろうと思ったから。 一気に、そんな気が無くなった。
「本当は嫌だが、嫌だ、嫌だとワガママをエリスに押し付け、自由を奪ってはダメでしょう。 って、思っていたのですけどねぇ……」
だが……彼等はここまで知性が無かったのか?
他愛無い事なのに、全てを放り出したいほどに疲れた。
「あ~~、荒ぶるなぁ……」
渦巻く感情を必死に身の内に抑え、山積みの野菜が置かれたテーブルにカイルは突っ伏した。
「今なら、国を亡ぼせる気がする」
「恐ろしい事は止めて下さい。 手伝いますから」
やってきたのは、ヒューゴだった。
「野菜の皮むきぐらいで、国を亡ぼしたりしませんよ」
「ソレは横にいったん置きましょう。 今回、シーラがこちらに留まってくれたおかげで、(皇妃に関わる)団内の交友関係や、外部関係の把握ができました。 かなり活発に動いてくれましたからね」
「それは、良かった」
カイルは、苦々しく唇を噛み、拳を握っていた。
「それで、グストリア公爵は?」
皇国内の二大貴族の一つ。
「ご安心を、メイザース公爵家の脅威を一切合切遮断しております。 とは言え、メイザース公爵家と渡り合っているんです。 鬼に任せるか、悪魔に任せるか、その差しかありませんね」
「いいですよ。 ソレで、メイザース公爵家を潰せるなら……。 後の事は後で考えましょう。 それで、あの大地の民は?」
「牢の2人は、金は返すからエリス様を返せとソレばかりです。 陛下の元愛人候補が門兵と関係があって入り込んだようですが、今回同行した大半が皇都の外に群れをなして止められているようです。 対応は魔導部隊がしているようです」
「エイマーズ領に文官を残していますよね。 彼等からの連絡は?」
馬鹿にするようにヒューゴは笑う。
「自由を謳歌した結果、ただの獣として過ごしていたようですよ」
「……」
「どう、なさいました?」
「チャンスは、与えるべきだろうか?」
「馬鹿げた事は、考えない事ですよ」
「よし、皮むき終わり。 では、今晩中にグストリア公爵との話し合いを終わらせましょう」
翌日、私兵団本部が襲われ、兵士の8割が死に、その犯人である少女も死んだと世間に広まった。 死んだとされる8割は、皇妃、偽皇帝との因果関係が無いと判断された者達であり、彼等は離宮を中心とする森に潜む事となる。
そして今まで以上に深い闇が離宮を覆った。
「陛下だ!!」
モイラと共にいるエリスが身体を細めた。
それは生理的恐怖だと言うのに、皮膚がチリチリとし次の瞬間には、全てを飲み込むかのように夜の匂いに安堵した。
陛下がいる……。
「陛下に会いに行っていい?」
モイラに言えば、余り色良い返事ではなかった。
「お伺いしてきましょう」
「なんで!! なんで、会いにいっちゃだめなの?!」
「お疲れかもしれませんから」
「我儘言わないよ!! 側にいるだけだもん。 それに、私が側に居る方がいいんだよね?」
想定外だった。
こんなに長く会えないなんて思わなかった。
ずっと側に居るものだと思っていた。
あの日、離宮での用事を終えた陛下は、私兵団本部へとシバラク身を置くからと伝言を残して去って行った。 直接告げられなかったのが不満だとナルサスに言えば、
「あら、だって仕方がないじゃない。 皇都に1人で行くのズルイ、良い子にするから連れて言って。 なんて小鳥ちゃんに言われて断られる方じゃないもの」
言われれば納得したけれど、やっぱり納得できなかった。
日が過ぎるほどに不安になった。
自分は何処にも行き場等ないから。
もし、ここにいられなくなったら? そう思えば怖かった。
今更エイマーズ領に戻る気等無かった。
ワガママを言う気はないけど、鳥の姿では何もできなくて、必死に元に戻る訓練をした。 そう、戻る訓練をしたのだ。
「分かった……大人しくしておく」
役立てば……側に居てもいいよね?
人が寝入る深夜。
そっとエリスは、カイルの部屋を訪れる。
気配を落とし、気づかれないように……。
そっと、そっと……。
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「……」
女の子同士だと、どうすればいいのだろう??
そんな事を考えながらも、陛下の唇に、唇を寄せてみた……。
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