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27.第二王子の入れ替わり 02
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魔力を失い疲れ切った私は……。
ストンッと眠りに落ち、次に目を覚ましたのは自室だった。
爽やかな花の香りが風と共に舞い込み頬を撫でる。 風の涼しさに、わずかに熱が混ざり……髪に触れ、頬に触れ、くすぐられ、私はその甘い熱に目を覚ました。
ボンヤリと目を開ければ、嬉し気に微笑む新緑色の瞳が自分を見つめていた。
「寝てな」
「ラース?」
「んっ?」
わしゃわしゃと髪がかき混ぜられ、私はそのくすぐったさと、甘酸っぱさに笑いながら、拗ねたふりをし、髪に絡められた指を遮るようにそっと触れた。 触れた手は大きくて分厚い……指に指を絡ませながらラースは私の手をとってくる。
「起きた」
そう言いながら、絡められた手を引き寄せ、その甲に頬を摺り寄せた。
「そうか……」
ラースはゆったりと目元を崩し笑みを作り、私も笑う。
「起こされたのよ?」
「それは、悪かったな。 つい、可愛くて、我慢できなくて触れてしまった」
そう言ってニッコリ笑って見せるから……照れてしまう……じゃない。
そう言えば……。
私は地下に行ったときのまま眠っていて……。
「ドーラは?」
「酷いな、俺がいるのにドーラを呼ぶのか?」
「ラースは王子様でしょ?」
言えば、顔を少ししかめて肩をすくめて見せる。
私の王子様と言った方が良かったのかしら? と思ったのだけど……今更言い直すのも恥ずかしくて……考えているうちにもっと恥ずかしくなったから視線をそらして、ドーラを探した。
「そんなにドーラがいい?」
視線の先にラースが割り込んでくる。
「子供ですか!! 喉が渇いたし、お風呂に入りたいの」
「飲み物は持ってくるが、風呂は明日まで待て。 ドーラはドロテア捜索に加わっている。 すっげぇ、怒ってる」
「ラースは加わらないの?」
「俺の仕事は、賢者様の護衛をしながら、人としての生活に馴染む事だそうだ」
頬がにやけているような気がして、身体を起こしラースから顔を隠した。
「ふぅん……」
「嬉しくない?」
そう言いながら、寄り添うように身体が寄せられた。 その重みが夢ではなく、初恋の子が、成長し側にいるのだと伝えてくる。 が、私はその身体を押しのけようとした。
「ダメ?」
「汗臭いからダメ」
「花の匂いしかしないけど?」
獣だったころのようにスンスンと鼻を寄せ、私が逃げるから、押し倒されたかのようになった。
「ぇ、えっと……」
「安心して、我慢は、上手だから」
そう言いながらもラースは私の頬にキスをし、私の横に寝そべった。 彼を見れば、やっぱり笑っていて。
「何が嬉しいの?」
「沢山の事が……」
「沢山?」
「シアが綺麗に見える。 手を重ねる事が出来る。 オヤジがシアを抱っこする事にもう苛立たなくていい。 ジルと対等な勝負が出来る。 人型なら負けない……と、思いたい」
「戦闘種族……」
「だな」
他愛ない会話も全て、愛おしく思えるのが不思議だ。
私はラースの耳の後ろから首にかけて触れ撫でれば、ラースは目を細めて微笑んでいた。
「人の姿でも、ここを撫でられるのは気持ちいい?」
「そうだな、気持ちいいよ」
私の手を取り、私の手にキスをする。
ラースは、そんな時も私を見つめ続け、瞳は笑い……そしてソレが、困った風に笑いわずかに視線をそらし無茶を言った。
「何か……面白い話をしてくれるか?」
「ぇ、突然ね……。 そう、ねぇ……ジル?」
「はっ?」
「髪も尾も白い」
「……ありがとう、丁度良く冷めた」
「酷い人だわ」
そう言って私達は、また笑うのだ。
そして……突然に私達は黙り込む。
まだ、夜は深く、風は静かだった。
「ランディ様は、どうなったの?」
「眠っているよ。 しばらく眠っているだろう。 戻った獣性の記憶を夢に見ながらね」
そう語るラースは、ランディに怒っている様子は全く無くて……。 だから、私は聞いてみた。
「どうして、ラースは獣になって、彼は人になったの? 誰がそんな事をしたの? ドロテア?」
「まさか、あの場所をドロテアが知るはず無い。 犯人は、母方の祖父だよ……」
彼は怒りでもなく、ただ複雑な表情を浮かべていた。
ストンッと眠りに落ち、次に目を覚ましたのは自室だった。
爽やかな花の香りが風と共に舞い込み頬を撫でる。 風の涼しさに、わずかに熱が混ざり……髪に触れ、頬に触れ、くすぐられ、私はその甘い熱に目を覚ました。
ボンヤリと目を開ければ、嬉し気に微笑む新緑色の瞳が自分を見つめていた。
「寝てな」
「ラース?」
「んっ?」
わしゃわしゃと髪がかき混ぜられ、私はそのくすぐったさと、甘酸っぱさに笑いながら、拗ねたふりをし、髪に絡められた指を遮るようにそっと触れた。 触れた手は大きくて分厚い……指に指を絡ませながらラースは私の手をとってくる。
「起きた」
そう言いながら、絡められた手を引き寄せ、その甲に頬を摺り寄せた。
「そうか……」
ラースはゆったりと目元を崩し笑みを作り、私も笑う。
「起こされたのよ?」
「それは、悪かったな。 つい、可愛くて、我慢できなくて触れてしまった」
そう言ってニッコリ笑って見せるから……照れてしまう……じゃない。
そう言えば……。
私は地下に行ったときのまま眠っていて……。
「ドーラは?」
「酷いな、俺がいるのにドーラを呼ぶのか?」
「ラースは王子様でしょ?」
言えば、顔を少ししかめて肩をすくめて見せる。
私の王子様と言った方が良かったのかしら? と思ったのだけど……今更言い直すのも恥ずかしくて……考えているうちにもっと恥ずかしくなったから視線をそらして、ドーラを探した。
「そんなにドーラがいい?」
視線の先にラースが割り込んでくる。
「子供ですか!! 喉が渇いたし、お風呂に入りたいの」
「飲み物は持ってくるが、風呂は明日まで待て。 ドーラはドロテア捜索に加わっている。 すっげぇ、怒ってる」
「ラースは加わらないの?」
「俺の仕事は、賢者様の護衛をしながら、人としての生活に馴染む事だそうだ」
頬がにやけているような気がして、身体を起こしラースから顔を隠した。
「ふぅん……」
「嬉しくない?」
そう言いながら、寄り添うように身体が寄せられた。 その重みが夢ではなく、初恋の子が、成長し側にいるのだと伝えてくる。 が、私はその身体を押しのけようとした。
「ダメ?」
「汗臭いからダメ」
「花の匂いしかしないけど?」
獣だったころのようにスンスンと鼻を寄せ、私が逃げるから、押し倒されたかのようになった。
「ぇ、えっと……」
「安心して、我慢は、上手だから」
そう言いながらもラースは私の頬にキスをし、私の横に寝そべった。 彼を見れば、やっぱり笑っていて。
「何が嬉しいの?」
「沢山の事が……」
「沢山?」
「シアが綺麗に見える。 手を重ねる事が出来る。 オヤジがシアを抱っこする事にもう苛立たなくていい。 ジルと対等な勝負が出来る。 人型なら負けない……と、思いたい」
「戦闘種族……」
「だな」
他愛ない会話も全て、愛おしく思えるのが不思議だ。
私はラースの耳の後ろから首にかけて触れ撫でれば、ラースは目を細めて微笑んでいた。
「人の姿でも、ここを撫でられるのは気持ちいい?」
「そうだな、気持ちいいよ」
私の手を取り、私の手にキスをする。
ラースは、そんな時も私を見つめ続け、瞳は笑い……そしてソレが、困った風に笑いわずかに視線をそらし無茶を言った。
「何か……面白い話をしてくれるか?」
「ぇ、突然ね……。 そう、ねぇ……ジル?」
「はっ?」
「髪も尾も白い」
「……ありがとう、丁度良く冷めた」
「酷い人だわ」
そう言って私達は、また笑うのだ。
そして……突然に私達は黙り込む。
まだ、夜は深く、風は静かだった。
「ランディ様は、どうなったの?」
「眠っているよ。 しばらく眠っているだろう。 戻った獣性の記憶を夢に見ながらね」
そう語るラースは、ランディに怒っている様子は全く無くて……。 だから、私は聞いてみた。
「どうして、ラースは獣になって、彼は人になったの? 誰がそんな事をしたの? ドロテア?」
「まさか、あの場所をドロテアが知るはず無い。 犯人は、母方の祖父だよ……」
彼は怒りでもなく、ただ複雑な表情を浮かべていた。
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