【R18】私との婚約は破棄ですか? では、この書面に一筆お願いします。

迷い人

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17.鉄は熱いうちに打て、敵意は早い段階で叩き潰せ

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 2人が未だ移動の途中。

 エーリクの屋敷が大勢の人に囲まれだす。

 人・人・人。

 門の外に集まる人々の数は多い。

 王都の民は、職を持っている者達はそれなりに裕福と言える生活を送っている。 不満は少ないはずである。 だが、門の外に集まる人々の数は異常だった。

 なんてことは無い。

「今こそ革命のときがきたり!!」

 王都の酒場を中心に革命組織『明けの明星』が叫べば、何時もであれば人々は白い目で彼等を見て、目をつけられては御免だとそっと離れていくが、今日は違った。

「ぉう!! 流石王都の未来を考える若者だ! いっぱい奢らせてくれ」
「王族、貴族に流されるのではなく、自ら強い意思を持っている姿が素敵です」

 なんて、乗せられ、乗せた人間が共にエーリクの屋敷を目指してきたのだ。

 ちなみに、乗せた側は騎士や役人、調査官たちの集まりで一般人は1人もいない。 大儀を掲げていても、世の中と言えばそういうものだろう。

 使用人を偽った騎士は、四方の門全ての鍵を外れやすく細工しており、打ち合わせ通り彼等は屋敷へと突入すれば、その瞬間に捕獲され、役人たちが革命組織のふりをしてかなり乱暴な状態で屋敷内の調査を始める。 主であるエーリクとその腹心である者達は、やってきた騎士達に『救助』と偽り確保された。

 ブラーム家の方は、公爵印をもって許可された王都警備隊の者達が一斉捜査に入った。

 こうしてベンニング家の長き夜は終える事となるのだが……。

 ケインは、エーリクとブラームの捕縛、資料の回収を終えたところで、残りは騎士団と警備隊、そして自身の部下に残りの処理を任せて、その場を後にした。





 王都片隅にある小さな村。

 その村の者達は、王都に住まいながらも嫉妬心から閉鎖的な生活をしていた。 例えるなら、外部の者はイジメ、支配的になる的な。 逆にその人を寄せ付けない様子が、滅多にソコに訪れないファースには都合がよく。 折り合いは金銭で頬を殴りつけると言う方法で強引につけられた。



 正直言って、ご飯は美味しく無い。

 スープを飲む手が、否応なくとまる。
 炭化した肉を見て、途方に暮れる。

 スープには油がぷかぷかと浮いているし、張り切って入れただろう大きな鶏肉はパサパサしている。 野菜の半分が煮崩れたスープの見た目は、食欲を減退させる。 まぁ……いつ来るか分からない相手のためにする料理仕方がない。

 肉の質に贅沢を言うつもりはないけれど、高温で一気に焼くのは良いが、加減が分かっていない。 まぁ、火加減が分からないのは経験が全てですし、仕方がない……のでしょうか?

 飢えに死にそうだった幼い頃と比べ、私も贅沢になったものです。

 頑張って食べようとしていたところに、嫌味な声がかけられた。

「はっ!! どこのお嬢さんか知らないが、下々のものは肉も滅多に食べられないと言うのに」

 私は沈黙したまま、にっこりと愛らしい微笑作り出し、文句を言う男性を手招きして呼び寄せた。

「あ~~~ん」

 男の目の前に炭となった肉を差し出せば、赤面しながらヘラヘラしていた男性の表情が歪む。

 ついでにファース様がしかめっ面になっていた。 まぁ、それはともかく、ちょっとあんたとかどうとか言われながらも、男性は口をあけたので、炭を男の口の中に突っ込んでやった。

「金を払って、非食べ物を出すと言うのは如何なものでしょうか?」

 私は可愛く作った様子で尋ねれば、男性はしかめ面で、じょりじょりと音をたてながら、我慢して食べている。

「いやぁ、流石いい肉だぁ、上手いなぁ~~~」

 そうかいそうかい、誤魔化すかい。

「ティア、こっちはまだ食える。 俺のを食べるといい」

 確かに炭ではないけれど。

 私は懐から1枚の金貨を出す。 城下であれば、住まいを持っている3人家族が半月ほど生活できる金額でしょうか?

「同じ肉。 あとそうね……アナタの家にある食材、調味料を一通り持ってきていただけるかしら?」

「ティア? 彼等は日頃肉を食べないと言っていたぞ?」

「ですが、こんな薄い肉を2枚だけ、わざわざ手に入れると言うのは逆に難しいことですわ。 大抵はこう塊で購入するものですもの。 旦那様が金銭をケチっていらっしゃるのなら、まぁ話は別ですけど」

「そんな懐の狭いことはしない」

「ですよねぇ~」



 男女が持ってきた肉を見れば、想像していたより良いもので、所有している調味料も珍しいものがある。

「旦那様、お部屋のお酒少し頂いていいかしら?」

「何が欲しい、もってこよう」

 そんな感じで、肉の下処理をして、ソースの段取りをすれば、私の手元に巨大な影をつくる大きな人は、何故かソワソワしている。

「刃物などをもって大丈夫なのか?」

「私をなんだと思っているんですか、仕える相手が存在する以上はと、一通りのことは教えられておりますのよ」

 にんまりと得意げに笑って見せれば、

「なら、何か手伝うことはあるか? これでも、俺もなかなか器用な方でね」

 そんなこんなで、付け合わせようの野菜の処理をしてもらった。 とは言っても玉ねぎをザクザク切るぐらいなんですけどね。 何しろキノコと玉ねぎを付け合わせに、そしてそれらから出てきた汁で、アッサリ醤油ベースのソースを作る予定ですから。

 そして私は家を預かる夫婦にも、程よく油を拭い、程よい焼き加減で、上品な味わいのソースがかかったステーキをご馳走した。

「別にここまでは求めることはしませんが、食事は美味しくいただくと幸福だと言うことぐらいは、知っておいた方が人生豊かになりますわよ」



 そんなこんなで、態度の悪かった夫婦は、出された肉を食べ終わる頃にはしおしおと大人しくなり、後片付けをお任せして私はファース様とお部屋に戻る。 ヤレヤレです。

「ティアはすごいな」

「なんですか急に? ほめても何も出ませんよ」

「あの、煩い夫婦を黙らせるなんて」

 そんなことをいいながら、ファース様はグラスに酒を注ぎ差し出してくる。 一応、成人ではあるのですが……酒の苦味は美味しいと認識できないんですよね。 とはいえ、目上の者から与えられたものを拒否しないよう教え込まれている訳で、私はそのグラスを手にして口をつける。

「苦っ……」

「口にあわなかったか?」

 ファース様が笑いそして口づけてきた。 今日何度も繰り返された行為に私は大人しく瞳を閉ざすが、唇をこじ開けたファース様の舌先が歯を撫で、歯茎を撫でてくるから驚いて、身を引き逃げてしまう。

「ぁ……」

 広いとは言えない部屋で、ソファの角にぶつかり転びそうになれば、ファース様が私の腰を大きな掌で支えソファに座らせてくれる。

 穏やかに笑みを見れば、恥ずかしく、それでも微笑み返さなければと思っていた。 だけど、

 ありがとうございます。

 音にする間もなく、もう一度唇が塞がれ、今度は逃げ場のない、ソファの上で追い詰められていた。 
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