銀河をカケル逃避行 ~5億の借金持ち宇宙海賊、うっかり禁忌を破り愛で詰む~

山本条太郎

文字の大きさ
46 / 67

第43話 白きシスターの導き、のち、浮気現場(修羅場)へ

しおりを挟む
【視点:ミュー】

「あ、あ、ありがとうございます! 助けていただいて……!」

私はガクガクと震える膝を押さえながら、シスターさんに深々と頭を下げた。 

本当に怖かった。

あの脂ぎった手と、気持ち悪い思念……。 

でも、このシスターが現れた瞬間、まるで悪い霧が晴れるみたいに空気が変わった。

白いウィンプルの下から覗く水色の瞳は、とっても穏やかで優しい。

「どういたしまして」

シスターはウィンプルの下で、聖母様みたいに優しく微笑んだ。

「困っている方を助けるのは、フォワードの教えに従う者の当然の務めですから」

その声はまるで聖歌のように響いて、私のささくれ立った心を撫でてくれるみたい。 

すごい……なんだか、見ているだけで心が浄化されそう。

「ところで、あなたたち、どうしてこのような場所に? 何かお探し物でも?」 

「あ、あの、人を探していて……知り合いがこのホテルの中にいるはずなんですけど、会員制とかで入れなくて」

私がモジモジしながら説明すると、シスターさんはふわりと微笑んだ。

「そうですか。それはお困りでしたね。……もしよろしければですが、私と少しお茶でもいかがですか?」 

「えっ、お茶?」

「ええ。そこのラウンジで少し休憩なさるとよろしいでしょう。実を言うと、私も少し歩き疲れてしまいましてね」

シスターさんはそう言うと、ごく自然な仕草で私たちをホテルの中へと招き入れた。 

さっきまで仁王立ちしていたコワモテのガードマンたちが、シスターさんの姿を見るなりサッと道を開ける。 

まるで魔法にかかったみたい! 

この人、一体何者なの!?

          ◇

通されたのは、窓から柔らかい陽射しが差し込む特等席。 

フカフカのソファに座ると、すぐに銀色のトレイに乗ったハーブティーと、宝石みたいにキラキラしたお菓子が運ばれてきた。

「わぁ……綺麗……」 

「さあ、召し上がれ」

温かいハーブティーの香りに包まれて、私の緊張の糸がプツンと切れた。 

気がつくと、私はシスターさんに色んなことを話していた。 

ベレットのこと、未来への不安、そして私の中にあるフォワードの力のこと。

「私、怖いんです。自分の中に眠るフォワードがいつか暴走するんじゃないかって……。それが怖くて……ベレットやみんなを傷つけちゃうんじゃないかって」

誰にも言えなかった不安。 

でもシスターさんは一言も遮らず、私の言葉を全部受け止めてくれた。 

その瞳に見つめられると、なんだか心の奥底まで見透かされているような。

でもとっても安心するような不思議な気持ちになる。

「貴女の感じる不安は、全て貴女が持つフォワードの大きさと、優しさの証です」

「優しさの、証……?」

シスターさんの言葉が、胸にじんわりと染み渡る。

「ええ。貴女には星々も祝福するような、特別なフォワードが宿っている。それはとても尊いもの。ですが、その力は使い方を誤れば愛する人をも傷つける諸刃の剣ともなり得るのです」 

「……はい」 

「どうか、フォワードを恐れるだけでなく受け入れ、そして正しいことのためにお使いなさい。貴女のかけがえのない仲間たち、そして……愛する人を守るために」

「愛する人を、守る……」

愛する人。 

ベレットの顔が浮かぶ。 

そうだ、私はベレットを守りたい。

守られるだけじゃなくて、隣に立って支えたい!

その言葉が、私の中でキラリと光った気がした。

「ありがとうございます、シスター! なんだか勇気が湧いてきました!」

 「それはようございました」

シスターは満足げに頷くと、静かに席を立った。

「では、私はこれで。またいつか、どこかでお会いできることでしょう。星々の導き、フォワードが、再び私たちを巡り合わせてくれるはずですから」

神秘的な後ろ姿を見送りながら、私は小さく手を振った。 

すごく勇気をもらえた気がする。

不思議な人。

懐かしいような、安心するような感じ。

それに、私の力のことも、まるで、全部知っているみたい。

もしかして?

ううん、そんなはず……、ないわよね。
       
「よし、ナビィ! ここで張り込みよ! ベレットたちが出てくるのを待つの!」 

「了解しました。エネルギー補給も完了。戦闘準備よし。今度は遅れは取りません。汚物は殲滅します!」 

「もう、大丈夫よ!?ありがたいけど!やりすぎないでね!潜入捜査なんだから!」

私たちはラウンジの片隅で、ベレットたちが出てくるのを待つことにした。 

シスターのおかげで、さっきまでのイライラも少し収まった気がする。 

きっとベレットにも事情があるのよ。

うん、きっとそう!

そう……よね……?

                ◇

シスターと別れた後、私とナビィはラウンジの片隅で張り込みを続けた。 

心は少し落ち着いたけど、やっぱりベレットのことは心配だもん。

私たちはラウンジの片隅に陣取って、じっとエレベーターを見張った。 

そして――。

チーン。

扉が開いて、二つの人影が出てきた。 

ベレットと、ローズマリーだ。 

楽しそうに笑い合って、ローズマリーがベレットの腕にべったりとくっついている。 

二人の間には、昨日よりもずっと親密で、甘ったるい空気が流れていた。

しかも! 

ローズマリーったら、ベレットの腕に自分の胸を押し付けるみたいにベッタリくっついてるじゃない!

ブチッ。

私の中で何かが切れた音がした。 

シスターさんにもらった穏やかな心? 

優しさの証?

そんなのどこかへ吹っ飛んじゃったわ!

「……! ベレット! ローズマリー!」

私はヒョウ柄マントを翻して、弾丸のように飛び出した。

「やっぱり! 二人でこんな高級なところで、いちゃいちゃベタベタしてたのね! 許さない! 絶対に許さないんだから! ベレットの浮気者ーーーっ! この泥棒猫も同罪よ!!」

ベレットの胸倉を掴んで揺さぶる。

涙がポロポロ溢れてくる。

「うおっ!? ミュー!? なんでお前がここに!? それにその格好はなんだ!?」

ベレットが目を白黒させている。 

「あらあら、ミューったら」

ローズマリーが余裕たっぷりにクスクス笑う。

「わざわざ尾行なさっていたのですか? ご苦労なことですわね」 

「なっ……!」

「でも残念でしたわね。ベレット様は、わたくしに夢中でしたから」

勝ち誇ったようなその笑顔に、私の怒りは頂点に達した。

「ベレット! 今日という今日は、絶対に許さないんだからぁぁぁっ!」

もう、ベレットなんて知らない! 

バカ!!

大っ嫌い!! 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。 ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。 そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。 問題は一つ。 兄様との関係が、どうしようもなく悪い。 僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。 このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない! 追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。 それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!! それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります! 5/9から小説になろうでも掲載中

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

処理中です...