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130 試練突破?
無念の杖による幻覚の投影という切り札を使って、私はなんとか戦士ギルドのグラマス、トウゴウ・ショウマを倒すことができた。
だが、そこでアーシュを人質に取ったのは、
「あの顔は、たしか……」
盗賊士ギルドに所属した時にもらったメダリオン。
そこに彫られてた、抜け目のなさそうな青年の顔。
(盗賊士のグランドマスター、エルミナーシュによれば、エンドウ・ハヤオだったかな)
メダリオンよりはいくらか若く、高校生くらいにも見える。
目が落ちくぼんでいて陰険そう。
猫背で背はあまり高くない。
装備は地味に見えてレアなドロップアイテムで固めてる。遺憾なことに、私と発想が同じようだ。
その背後には、長い黒髪の美女が立っていた。
この世界では珍しい眼鏡をかけてて、やり手のキャリアウーマンという風貌だ。
ただし、その目つきは険しく冷たい。
他人のことを同じ人間と思ってないような感じがする。
服装は魔術士らしいフード付きの長いローブと飾り付きのサッシュ。
手にはタロットカードのようなものを持ってるが……まさかあれで魔法を使うんだろうか。
女魔術士のほうは、探検家シュモスの頭にそっと手を置いている。
シュモスは泣きそうな顔で動けないでいる。
なんらかの魔法をかけられているのだろう。
女は、日本人としてはかなり背が高い。背が低いシュモスの頭に自然に手が置けるくらいだ。
スレンダーで、モデルのような体型をしてる。
さっきはやり手のキャリアウーマンって言ったけど、低血圧でとびきり機嫌の悪いカリスマモデルって感じもあるね。
(魔術士のグラマス、ミナヅキ・ルナ……なんだろうね)
それにしても、グランドマスターは揃いも揃って性格が悪そうだ。
「きけけっ。残念だったなぁ。ショウマをやっちまうとは驚きだが、背後の警戒が甘すぎるぜ。まぁ、俺様にかかっちゃあ、どんだけ警戒されようが同じことだけどなぁ」
「よく状況がわからないのだけれど⋯⋯まぁいいわ。武器を捨てて投降しなさい……とでも言いたいところだけど、相手が魔族と魔術士じゃあね。
こうしましょう、いまからあなたたち二人で戦って、生き残ったほうだけ助けてあげる」
「ひゃっひゃ! そりゃ実物だな!」
ミナヅキの言葉にエンドウが笑う。
「うーん……二人のグラマス加護にはお世話になってるからあまり悪くは言いたくないけど……」
控えめに言ってクズだね。
グリュンブリンが、「どうする?」と問いたげな目でこっちを見る。
(隙を見て助ける……なんて甘いことができる相手じゃないんだよなぁ)
盗賊士としてならエンドウには勝てないし、魔術士としてはミナヅキに負ける。
切り札にしてた無念の杖の怨霊解放はさっき見られちゃったし。
「ミナトっ! 私のことは気にせず――」
「おっと、動くな。綺麗な肌に傷ができちまうぜ」
エンドウの手にした短剣の切っ先がアーシュの喉に触れ、赤い血玉を作る。
「かまいません! 私一人が死ねばいいことです!」
「どわっ!」
アーシュが短剣に向かって首を伸ばし、エンドウがあわてて短剣を引いた。
「――エーテルショット!」
「くそがっ!」
私がとっさに放ったエーテルショットをエンドウがかわす。
エンドウはとびのき、アーシュから離れる。
ミナヅキがシュモスの頭に置いた手に力を込めた。
「馬鹿ねえ。人質はあんただけじゃないのよ。お友達の頭がザクロになるのが見たかったの?」
「待っ――」
アーシュが叫ぶのと、ミナヅキが魔法を使うのは同時だった。
ミナヅキが使ったのは――エーテルショットだった。
ゼロ距離からシュモスの頭にエーテルショットを叩きこんだのだ。
(ごめん、シュモス)
アーシュが暴れた隙をついた時点で、こうなることはわかってた。
二人の人質を比べて、一人でも助かる道を私は選んだ。
ミナヅキの手から放たれた強烈なエーテルショットが、不敵な笑みを浮かべるシュモスの頭を打ち砕――かなかった。
「「……えっ」」
私とミナヅキが驚くあいだに、シュモスはミナヅキの手をするりと抜け、
「魔族積年の怨みだ! 消え失せやがれ、グランドマスター!」
シュモスの身体から無数の紫の蔦のようなものが噴き出した。
「なっ――」
蔦の奔流はミナヅキの全身を刺し貫きながら上に伸び、魔術士のグランドマスターを百舌の早贄に変えた。
「かっは……」
ミナヅキが吐血した。
しばらくのあいだミナヅキは魔法で自分の身体を治療していたが、すぐに力尽き、絶望の表情で白目を剥いた。
もちろん、私たちもそれをゆっくり見物してたわけじゃない。
「ガトリングタレット!」
「魔槍よ!」
「ちぃぃっ!」
私がエンドウの足を止め、グリュンブリンが動けないエンドウに魔槍撃を放つ。
エンドウは両手に短剣を構え、グリュンブリンの攻撃を受け流す姿勢を見せた。
(あれを受け流せるの!?)
「っしゃらあああっ!」
エンドウは気合の声とともにクロスした短剣でグリュンブリンの槍を跳ね返した。
グリュンブリンの槍が天高く舞い上げられる。
(振り下ろされたものを上側に弾き飛ばすなんて⋯⋯)
「受け流す」というには高度すぎる技術だった。
だが、
「終わりだ」
グリュンブリンは次の槍を生んで、がら空きになったエンドウの胸を貫いた。
「馬鹿……な……」
グリュンブリンが槍を消す。
胸に大穴を開けたエンドウはどしゃりと倒れ、そのまま動かなくなった。
「ええと。何から聞こうか?」
いろいろありすぎて混乱してる。
とりあえず、
「シュモスの正体からかな」
私は、蔦を引っこめ、いつも通りの探検服に戻ったシュモスに目を向ける。
シュモスは片方の唇をにぃっと吊り上げた。
私の疑問に答えたのは、シュモスではなくグリュンブリンだ。
「ボロネール。貴様だったか」
「絶妙なタイミングだったろうが、グリュンブリン」
シュモスの身体がもやに包まれ、次の瞬間、全身をボロで覆った痩身で猫背の男が現れた。
ボロネール……どっかで聞いたような。
不審な顔の私にアーシュが言った。
「謀略のボロネール。四天魔将の一人だよ」
「ああ、まえにアーシュが言ってたっけ。
って、ちょっと待って。本物のシュモスはどうしたの!?」
「心配すんな、冒険者。本物のシュモス――自分を探検家だと思いこんじまった哀れな娘は、希望の村の自宅でお昼寝してるよ。
ちょうどいい妄想だったもんでな。あんたらに同行するためにちょろっとばかし『変装』させてもらったのさ。
今頃本人が起き出してきて、おまえに同行した『シュモス』は誰だったのかと騒ぎになってるかもな」
ボロネールがいたずらっぽく笑った。
フードで口元しか見えないが、それだけでも剽軽な印象が伝わってくる。
「言われてみれば、古代魔族語がわかる時点でおかしかったけどね」
「誰も読めなくて困ってると思って助け舟を出してやったんだが、おまえが読めるんなら黙ってりゃよかったなぁ」
「いろいろ聞かなきゃいけないことはありそうだけど、とりあえずは助かったよ。ありがとう」
「どういたしまして。といっても、俺のやってきたことを知ったら、あんたの感謝の気持ちも消えてなくなるかもしれないぜ」
「……どういうこと?」
「まず、オケアノスとクラーケン。あいつらは俺の仕込みだ。逃げ出した魔王様に現実を知ってもらおうと思ってな。キエルヘンにある、エルミナーシュ・システムへのトランスゲートに流れ着くように仕込んだんだ」
「……そういうことですか」
アーシュが、さすがに怒った様子でそう言った。
「セレスタ周辺で起きた、サンドワームの一件は?」
「そいつは俺じゃねえ。いま世界中で受肉した魔族たちが好き勝手に暴れてる。そのひとつだってだけだ」
「グリュンブリンが追いかけてきたのは?」
私が聞くと、
「誰がこんな男の陰謀になど付き合うものか。正真正銘、わたしの意思で魔王を倒して力を奪うつもりだった」
グリュンブリンがそう答える。
「ボロネールはエルミナーシュの語った歴史をどこまで知ってたの?」
「どうもグランドマスターがくさいってことまでは察してたさ。これでも四天魔将には珍しい頭脳派でね。探検家シュモスよろしく、古代魔族の遺跡をあさったり、幽世の古層を調べたりもしてたのさ。
しかしまさか、グランドマスターどもがここまでクズだったとは思ってもみなかったが」
「まったくだ。これで我ら魔族は大義名分を得た。受肉した同胞たちとともに人間どもを根絶やしにする大義名分がな」
グリュンブリンが挑むように言った。
(弱ったな……)
エルミナーシュの試練には打ち勝ったものの、次は四天魔将二人組。
なんというボスラッシュ。
(それにしても、グランドマスターたちの技の冴えはすさまじかった)
トウゴウの戦技も、エンドウの受け流しも、ミナヅキのエーテルショットも、人間離れした技術だった。
グリュンブリンの魔槍撃をトウゴウは剣風で弾き、エンドウは短剣二本で反射するように受け流していた。
私独自の技術と自惚れてたエーテルショットを、ミナヅキは私を上回る精度と威力で使いこなしていた。
『顔合わせは済んだかな?』
不意に渋い声が聞こえてきた。
顔を上げる。
そこには黒い八面体が浮かんでた。
「エルミナーシュか。試練は越えたよ。文句はないよね?」
『何を言っている。文句は大有りだ。ミナト、汝らの戦いを採点するなら33点だ』
「ええと、40点満点かな?」
『100点満点に決まっているだろう。切り札や不意打ちでからくも生き残ったにすぎぬではないか。あれでは結果に再現性がない』
「まぁ、そうかもだけど……結果オーライじゃないの?」
『あいにく、エルミナーシュ・システムはプロセス重視だ。統計的に有意な形で汝らの実力が示されない限り、試練をクリアしたとは認められん』
エルミナーシュの言葉とともに、私たちの前方に、三つの人影が生まれた。
それを見て、私、グリュンブリン、ボロネールは、おもわず声を合わせてた。
「「「げっ」」」
現れたのは――さっき倒したばかりのグランドマスター三人だった。
だが、そこでアーシュを人質に取ったのは、
「あの顔は、たしか……」
盗賊士ギルドに所属した時にもらったメダリオン。
そこに彫られてた、抜け目のなさそうな青年の顔。
(盗賊士のグランドマスター、エルミナーシュによれば、エンドウ・ハヤオだったかな)
メダリオンよりはいくらか若く、高校生くらいにも見える。
目が落ちくぼんでいて陰険そう。
猫背で背はあまり高くない。
装備は地味に見えてレアなドロップアイテムで固めてる。遺憾なことに、私と発想が同じようだ。
その背後には、長い黒髪の美女が立っていた。
この世界では珍しい眼鏡をかけてて、やり手のキャリアウーマンという風貌だ。
ただし、その目つきは険しく冷たい。
他人のことを同じ人間と思ってないような感じがする。
服装は魔術士らしいフード付きの長いローブと飾り付きのサッシュ。
手にはタロットカードのようなものを持ってるが……まさかあれで魔法を使うんだろうか。
女魔術士のほうは、探検家シュモスの頭にそっと手を置いている。
シュモスは泣きそうな顔で動けないでいる。
なんらかの魔法をかけられているのだろう。
女は、日本人としてはかなり背が高い。背が低いシュモスの頭に自然に手が置けるくらいだ。
スレンダーで、モデルのような体型をしてる。
さっきはやり手のキャリアウーマンって言ったけど、低血圧でとびきり機嫌の悪いカリスマモデルって感じもあるね。
(魔術士のグラマス、ミナヅキ・ルナ……なんだろうね)
それにしても、グランドマスターは揃いも揃って性格が悪そうだ。
「きけけっ。残念だったなぁ。ショウマをやっちまうとは驚きだが、背後の警戒が甘すぎるぜ。まぁ、俺様にかかっちゃあ、どんだけ警戒されようが同じことだけどなぁ」
「よく状況がわからないのだけれど⋯⋯まぁいいわ。武器を捨てて投降しなさい……とでも言いたいところだけど、相手が魔族と魔術士じゃあね。
こうしましょう、いまからあなたたち二人で戦って、生き残ったほうだけ助けてあげる」
「ひゃっひゃ! そりゃ実物だな!」
ミナヅキの言葉にエンドウが笑う。
「うーん……二人のグラマス加護にはお世話になってるからあまり悪くは言いたくないけど……」
控えめに言ってクズだね。
グリュンブリンが、「どうする?」と問いたげな目でこっちを見る。
(隙を見て助ける……なんて甘いことができる相手じゃないんだよなぁ)
盗賊士としてならエンドウには勝てないし、魔術士としてはミナヅキに負ける。
切り札にしてた無念の杖の怨霊解放はさっき見られちゃったし。
「ミナトっ! 私のことは気にせず――」
「おっと、動くな。綺麗な肌に傷ができちまうぜ」
エンドウの手にした短剣の切っ先がアーシュの喉に触れ、赤い血玉を作る。
「かまいません! 私一人が死ねばいいことです!」
「どわっ!」
アーシュが短剣に向かって首を伸ばし、エンドウがあわてて短剣を引いた。
「――エーテルショット!」
「くそがっ!」
私がとっさに放ったエーテルショットをエンドウがかわす。
エンドウはとびのき、アーシュから離れる。
ミナヅキがシュモスの頭に置いた手に力を込めた。
「馬鹿ねえ。人質はあんただけじゃないのよ。お友達の頭がザクロになるのが見たかったの?」
「待っ――」
アーシュが叫ぶのと、ミナヅキが魔法を使うのは同時だった。
ミナヅキが使ったのは――エーテルショットだった。
ゼロ距離からシュモスの頭にエーテルショットを叩きこんだのだ。
(ごめん、シュモス)
アーシュが暴れた隙をついた時点で、こうなることはわかってた。
二人の人質を比べて、一人でも助かる道を私は選んだ。
ミナヅキの手から放たれた強烈なエーテルショットが、不敵な笑みを浮かべるシュモスの頭を打ち砕――かなかった。
「「……えっ」」
私とミナヅキが驚くあいだに、シュモスはミナヅキの手をするりと抜け、
「魔族積年の怨みだ! 消え失せやがれ、グランドマスター!」
シュモスの身体から無数の紫の蔦のようなものが噴き出した。
「なっ――」
蔦の奔流はミナヅキの全身を刺し貫きながら上に伸び、魔術士のグランドマスターを百舌の早贄に変えた。
「かっは……」
ミナヅキが吐血した。
しばらくのあいだミナヅキは魔法で自分の身体を治療していたが、すぐに力尽き、絶望の表情で白目を剥いた。
もちろん、私たちもそれをゆっくり見物してたわけじゃない。
「ガトリングタレット!」
「魔槍よ!」
「ちぃぃっ!」
私がエンドウの足を止め、グリュンブリンが動けないエンドウに魔槍撃を放つ。
エンドウは両手に短剣を構え、グリュンブリンの攻撃を受け流す姿勢を見せた。
(あれを受け流せるの!?)
「っしゃらあああっ!」
エンドウは気合の声とともにクロスした短剣でグリュンブリンの槍を跳ね返した。
グリュンブリンの槍が天高く舞い上げられる。
(振り下ろされたものを上側に弾き飛ばすなんて⋯⋯)
「受け流す」というには高度すぎる技術だった。
だが、
「終わりだ」
グリュンブリンは次の槍を生んで、がら空きになったエンドウの胸を貫いた。
「馬鹿……な……」
グリュンブリンが槍を消す。
胸に大穴を開けたエンドウはどしゃりと倒れ、そのまま動かなくなった。
「ええと。何から聞こうか?」
いろいろありすぎて混乱してる。
とりあえず、
「シュモスの正体からかな」
私は、蔦を引っこめ、いつも通りの探検服に戻ったシュモスに目を向ける。
シュモスは片方の唇をにぃっと吊り上げた。
私の疑問に答えたのは、シュモスではなくグリュンブリンだ。
「ボロネール。貴様だったか」
「絶妙なタイミングだったろうが、グリュンブリン」
シュモスの身体がもやに包まれ、次の瞬間、全身をボロで覆った痩身で猫背の男が現れた。
ボロネール……どっかで聞いたような。
不審な顔の私にアーシュが言った。
「謀略のボロネール。四天魔将の一人だよ」
「ああ、まえにアーシュが言ってたっけ。
って、ちょっと待って。本物のシュモスはどうしたの!?」
「心配すんな、冒険者。本物のシュモス――自分を探検家だと思いこんじまった哀れな娘は、希望の村の自宅でお昼寝してるよ。
ちょうどいい妄想だったもんでな。あんたらに同行するためにちょろっとばかし『変装』させてもらったのさ。
今頃本人が起き出してきて、おまえに同行した『シュモス』は誰だったのかと騒ぎになってるかもな」
ボロネールがいたずらっぽく笑った。
フードで口元しか見えないが、それだけでも剽軽な印象が伝わってくる。
「言われてみれば、古代魔族語がわかる時点でおかしかったけどね」
「誰も読めなくて困ってると思って助け舟を出してやったんだが、おまえが読めるんなら黙ってりゃよかったなぁ」
「いろいろ聞かなきゃいけないことはありそうだけど、とりあえずは助かったよ。ありがとう」
「どういたしまして。といっても、俺のやってきたことを知ったら、あんたの感謝の気持ちも消えてなくなるかもしれないぜ」
「……どういうこと?」
「まず、オケアノスとクラーケン。あいつらは俺の仕込みだ。逃げ出した魔王様に現実を知ってもらおうと思ってな。キエルヘンにある、エルミナーシュ・システムへのトランスゲートに流れ着くように仕込んだんだ」
「……そういうことですか」
アーシュが、さすがに怒った様子でそう言った。
「セレスタ周辺で起きた、サンドワームの一件は?」
「そいつは俺じゃねえ。いま世界中で受肉した魔族たちが好き勝手に暴れてる。そのひとつだってだけだ」
「グリュンブリンが追いかけてきたのは?」
私が聞くと、
「誰がこんな男の陰謀になど付き合うものか。正真正銘、わたしの意思で魔王を倒して力を奪うつもりだった」
グリュンブリンがそう答える。
「ボロネールはエルミナーシュの語った歴史をどこまで知ってたの?」
「どうもグランドマスターがくさいってことまでは察してたさ。これでも四天魔将には珍しい頭脳派でね。探検家シュモスよろしく、古代魔族の遺跡をあさったり、幽世の古層を調べたりもしてたのさ。
しかしまさか、グランドマスターどもがここまでクズだったとは思ってもみなかったが」
「まったくだ。これで我ら魔族は大義名分を得た。受肉した同胞たちとともに人間どもを根絶やしにする大義名分がな」
グリュンブリンが挑むように言った。
(弱ったな……)
エルミナーシュの試練には打ち勝ったものの、次は四天魔将二人組。
なんというボスラッシュ。
(それにしても、グランドマスターたちの技の冴えはすさまじかった)
トウゴウの戦技も、エンドウの受け流しも、ミナヅキのエーテルショットも、人間離れした技術だった。
グリュンブリンの魔槍撃をトウゴウは剣風で弾き、エンドウは短剣二本で反射するように受け流していた。
私独自の技術と自惚れてたエーテルショットを、ミナヅキは私を上回る精度と威力で使いこなしていた。
『顔合わせは済んだかな?』
不意に渋い声が聞こえてきた。
顔を上げる。
そこには黒い八面体が浮かんでた。
「エルミナーシュか。試練は越えたよ。文句はないよね?」
『何を言っている。文句は大有りだ。ミナト、汝らの戦いを採点するなら33点だ』
「ええと、40点満点かな?」
『100点満点に決まっているだろう。切り札や不意打ちでからくも生き残ったにすぎぬではないか。あれでは結果に再現性がない』
「まぁ、そうかもだけど……結果オーライじゃないの?」
『あいにく、エルミナーシュ・システムはプロセス重視だ。統計的に有意な形で汝らの実力が示されない限り、試練をクリアしたとは認められん』
エルミナーシュの言葉とともに、私たちの前方に、三つの人影が生まれた。
それを見て、私、グリュンブリン、ボロネールは、おもわず声を合わせてた。
「「「げっ」」」
現れたのは――さっき倒したばかりのグランドマスター三人だった。
感想 6
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