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第22話
しおりを挟む「何するんだ!?」
今だ起き上がれずにいる女の人とごつい男の間に二十才くらいの青年が立ちはだかった。
へぇ、他人の危機に身を挺して守ろうとするなんてなかなか見上げた根性してるじゃない。
「なんだぁ、てめぇは?俺様に逆らおうってのか?」
ごつい男が問い掛けるが、青年は無視して後ろにいる女の人が立つことを手助けする。
「あ、ありがとうございます。ですが、お逃げください。あの男はこの辺を縄張りにしているヤーク・タイザーの手下です」
「構いませんよ、あなたは早いとこ、ここから立ち去ってください」
青年が穏やかに言う。
二人の声は、恐る恐る野次馬をやっている人たちには聞こえていないだろう。
しかし、耳がなぜか異様にいいあたしには二人の会話が手に取るようにわかった。
ヤーク・タイザーの名前はあたしも聞いたことがある、過去何度も世界大会に出場し、そのすべてにおいて決勝に進み、何度も・・・煮え湯を飲まされている世界2位の実力者だ。
ここらを縄張りにしている用心棒で、部下の教育には無頓着らしい
・・・なるほど、その通りみたいね。
「貴様、余程痛い目にあいたいらしいな」
ごつい男が感情を押し殺し女の人を離れさせ、やっと自分に体を向けた青年に気迫を伝える。
さすがにヤーク・タイザーの部下だけあって少しはやるみたいね。さてさて、あの青年はどうすることやら。
「ああ、別に痛い目にあわせてもらっていっこうにかまわない・・・だがあの人には然るべき謝罪と誠意を見せるのが条件だ!」
あたしは青年の言葉を聞いて笑いがこみあげてきた。声には出さなかったけど。
「そうか・・・わかった。だが先におまえを殴らせろ」
ごつい男があっさりという。
こいつ、プロだ。あたしは直観的にそう思った。自らがどう動けば、最小の働きで最大結果が得られるか知っている。
「保証は?」
謝罪と誠意を見せる保証はあるのかと言いたいのだろう、青年がごつい男に尋ねる。
「保証?んなもんねぇよ」
ごつい男がはっきりと言ってくる。
物言いは淡泊だが、明らかに青年の動向を探っている。
「・・・そうか、無益な戦いはしたくなかったが、しかたないね」
青年が足をひきやや半身になる。
なるほど、なかなかに様になっている。
それにつられてか、ごつい男もこぶしを握り締め構えを取る。
出方をうかがっているのだろう、二人が黙ったまま対峙する。
ドドン!
二人が事前に打ち合せでもしていたかのように同時に地面を蹴る。
そして、二人が一瞬で肉薄した。
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