その女剣士は世界を救い、英雄となる。

千石

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第38話

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「！？」

その時だった、突然何かがあたしにぶつかってきた。

通り過ぎる力の固まり、身体を焦がす熱気。

ドン！

すこく大きな音が響き渡り、衝撃があたしを吹き飛ばした。

「くっ・・・いったい何が」

あたしは事態を把握するために目をあける。

あたしの目の前に背を向けて立っているものがいた。

「あんた・・・」

思わず声をだす。

「大丈夫？マーヘン」

心配そうにあたしに顔を向けたその人物はよく知った人物であった。

「レベン！とりあえず礼を言っとくわ。ありがとう」

そう、あたしを助けてくれたのはレベン・アインターブその人であった。

「気にしないでいいよ。それよりもあいつが？」

レベンが厳しい視線を『審査するもの』に向けてあたしに尋ねる。

「そう、『審査するもの』よ」

あたしは神妙な顔で頷く。

「あのね、レベン・・・」

「いや、何も言わないでいいよ。そこで休んでいて」

レベンがあたしの言葉を遮る。

どうやら、あたしがあきらめて死を受け入れようとしたことについて言及するつもりはまったくないようだ。

「リミットギリギリだな人間よ」

あたしを殺し損ねたことなど気にせず語り掛ける。

余裕の笑みさえ浮かべている。

「ちょっと野暮用があってね。それにしても、遅れないでよかった。まさか、二人だけだとは・・・」

野暮用とは、岩人形と戦っている誰かを止めに言ったことだろう。

よほどの激戦だったのだろう、レベン着ている服がそこら中、焦げ落ちていた。

「だが人間よ、お前一人が増えても何も変わらないぞ」

『審査するもの』が数十にも及ぶ力の固まりを放つ。

と同時に、レベンが『審査するもの』に向かって飛び出す。

だめだ、やっぱりレベルが違いすぎる。

それに一度あきらめてしまったあたしには何の力も湧いてこない。

初めてだった、こんなことは。

どんなに辛く、どんなに厳しいときであろうとこんなことはなったのに・・・。

情に流された戦士なんて何の役にも立たない。

「うおおおお」

突然発せられた咆喉にあたしの思考は中断された、レベンだ。

おたけびをあげながら攻撃を避けていく。

右に左に、ときには身体をひねり、しゃがみ、走る速度をかえ、ついに最後の一つまで擦りもさせずに避けきった。

そのまま『審査するもの』に接近する。

『審査するもの』が右腕を上げ、レベンに手のひらを向ける。同時だった。

『審査するもの』が力を放つのとレベンが掻き消えたのは

「！？」

『審査するもの』の動揺が感じられる。

「わるいね。あんたには直接の恨みはないけど」

一瞬のうちに『審査するもの』の背後に回り込んだレベンが、正拳突きの要領で拳をたたき込んだ。

『審査するもの』はなすすべもなく数メートルほど吹き飛んだ。

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