その女剣士は世界を救い、英雄となる。

千石

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第39話

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やるわね、あの子。

あたしは何も考えることなく、ただ感心していた。

あの瞬間、少なくとも『審査するもの』には消えたように見えただろう。

だが離れたところから見ているあたしにはレベンがどんな動きをしたかがよくわかった。

あの時レベンは相手の掌によって生まれる死角にしゃがみながら入り、そのまま後ろに回り込んだのだ。

「なかなかやるようだな、人間よ。私らしくもなく油断し、お前の心を読むことを忘れていたみたいだ」

何事もなかったかのように『審査するもの』が立ち上がる。

「嘘を吐くな!心を読むだって!それにあんたの身体の硬さ、どれも百年前にはなかったはずだ」

レベンが大声で叫ぶ。

「一体どういうことよ、レベン?」

あたしは何とか声を絞りだした。

たしか、レベンは百年前に『審査するもの』と戦ったとされる人物・・・ラーグ・キリセイルから話を聞いていたはずだ。

そのレベンがないと言っているからには間違いはないだろう。

まさか、そんな大切なことをいい忘れるわけもないし・・・

「僕が聞きたいくらいだよ!マーヘン」

レベンがあたしの近くまで戻ってきた。

「ふむ。そんなに聞きたいのなら話してやろうか?」

『審査するもの』が問い掛ける。

「ねえ、レベン?」

「なに?」

あたしの小声での問い掛けに振り向きもせず小声で返してくる。

「こいつと戦うのにも制限時間ってあるの?」

「案ずるな、人間よ。私かお前たちが死ぬまで制限時間などない。先程までとは次元がちがうのだ、ここは」

答えたのはレベンではなく『審査するもの』であった。

なるほど、焦る必要はないってわけね。

あたしはレベンに目で合図する。

レベンは頷き、

「次元が違うってのはどういうことなんだ?」

尋ねる。

よし。

レベンに時間を稼いでもらっているうちにあたしは何とか戦えるように回復しようと努める。

「その言葉通りの意味だ。次元が違うために此処がどんなに破壊されようが、お前たちの世界では何の関係もない」

「えーと・・・要は平行世界ってこと?」

レベンが考えを纏める。

「なかなか察しがいいな、人間よ。少し違うが、そう考えてもらって構わない」

『審査するもの』が逐一律儀に問いに答えていく。

あたし達の狙いを知っているはずなのにもかかわらず・・・ひょっとして、話したいだけなのかしら・・・。

「なるほど・・・じゃあ話題を変えるけど、百年前にはなかった能力を何故持っている?」

少し違うと言われた事にはちっとも気にしないでレベンが先程の質問をする。

「それはな・・・何故かは知らないが、私が倒されるごとにだんだんと能力が付加されて
いくからだ」
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