39 / 83
第39話
しおりを挟む
やるわね、あの子。
あたしは何も考えることなく、ただ感心していた。
あの瞬間、少なくとも『審査するもの』には消えたように見えただろう。
だが離れたところから見ているあたしにはレベンがどんな動きをしたかがよくわかった。
あの時レベンは相手の掌によって生まれる死角にしゃがみながら入り、そのまま後ろに回り込んだのだ。
「なかなかやるようだな、人間よ。私らしくもなく油断し、お前の心を読むことを忘れていたみたいだ」
何事もなかったかのように『審査するもの』が立ち上がる。
「嘘を吐くな!心を読むだって!それにあんたの身体の硬さ、どれも百年前にはなかったはずだ」
レベンが大声で叫ぶ。
「一体どういうことよ、レベン?」
あたしは何とか声を絞りだした。
たしか、レベンは百年前に『審査するもの』と戦ったとされる人物・・・ラーグ・キリセイルから話を聞いていたはずだ。
そのレベンがないと言っているからには間違いはないだろう。
まさか、そんな大切なことをいい忘れるわけもないし・・・
「僕が聞きたいくらいだよ!マーヘン」
レベンがあたしの近くまで戻ってきた。
「ふむ。そんなに聞きたいのなら話してやろうか?」
『審査するもの』が問い掛ける。
「ねえ、レベン?」
「なに?」
あたしの小声での問い掛けに振り向きもせず小声で返してくる。
「こいつと戦うのにも制限時間ってあるの?」
「案ずるな、人間よ。私かお前たちが死ぬまで制限時間などない。先程までとは次元がちがうのだ、ここは」
答えたのはレベンではなく『審査するもの』であった。
なるほど、焦る必要はないってわけね。
あたしはレベンに目で合図する。
レベンは頷き、
「次元が違うってのはどういうことなんだ?」
尋ねる。
よし。
レベンに時間を稼いでもらっているうちにあたしは何とか戦えるように回復しようと努める。
「その言葉通りの意味だ。次元が違うために此処がどんなに破壊されようが、お前たちの世界では何の関係もない」
「えーと・・・要は平行世界ってこと?」
レベンが考えを纏める。
「なかなか察しがいいな、人間よ。少し違うが、そう考えてもらって構わない」
『審査するもの』が逐一律儀に問いに答えていく。
あたし達の狙いを知っているはずなのにもかかわらず・・・ひょっとして、話したいだけなのかしら・・・。
「なるほど・・・じゃあ話題を変えるけど、百年前にはなかった能力を何故持っている?」
少し違うと言われた事にはちっとも気にしないでレベンが先程の質問をする。
「それはな・・・何故かは知らないが、私が倒されるごとにだんだんと能力が付加されて
いくからだ」
あたしは何も考えることなく、ただ感心していた。
あの瞬間、少なくとも『審査するもの』には消えたように見えただろう。
だが離れたところから見ているあたしにはレベンがどんな動きをしたかがよくわかった。
あの時レベンは相手の掌によって生まれる死角にしゃがみながら入り、そのまま後ろに回り込んだのだ。
「なかなかやるようだな、人間よ。私らしくもなく油断し、お前の心を読むことを忘れていたみたいだ」
何事もなかったかのように『審査するもの』が立ち上がる。
「嘘を吐くな!心を読むだって!それにあんたの身体の硬さ、どれも百年前にはなかったはずだ」
レベンが大声で叫ぶ。
「一体どういうことよ、レベン?」
あたしは何とか声を絞りだした。
たしか、レベンは百年前に『審査するもの』と戦ったとされる人物・・・ラーグ・キリセイルから話を聞いていたはずだ。
そのレベンがないと言っているからには間違いはないだろう。
まさか、そんな大切なことをいい忘れるわけもないし・・・
「僕が聞きたいくらいだよ!マーヘン」
レベンがあたしの近くまで戻ってきた。
「ふむ。そんなに聞きたいのなら話してやろうか?」
『審査するもの』が問い掛ける。
「ねえ、レベン?」
「なに?」
あたしの小声での問い掛けに振り向きもせず小声で返してくる。
「こいつと戦うのにも制限時間ってあるの?」
「案ずるな、人間よ。私かお前たちが死ぬまで制限時間などない。先程までとは次元がちがうのだ、ここは」
答えたのはレベンではなく『審査するもの』であった。
なるほど、焦る必要はないってわけね。
あたしはレベンに目で合図する。
レベンは頷き、
「次元が違うってのはどういうことなんだ?」
尋ねる。
よし。
レベンに時間を稼いでもらっているうちにあたしは何とか戦えるように回復しようと努める。
「その言葉通りの意味だ。次元が違うために此処がどんなに破壊されようが、お前たちの世界では何の関係もない」
「えーと・・・要は平行世界ってこと?」
レベンが考えを纏める。
「なかなか察しがいいな、人間よ。少し違うが、そう考えてもらって構わない」
『審査するもの』が逐一律儀に問いに答えていく。
あたし達の狙いを知っているはずなのにもかかわらず・・・ひょっとして、話したいだけなのかしら・・・。
「なるほど・・・じゃあ話題を変えるけど、百年前にはなかった能力を何故持っている?」
少し違うと言われた事にはちっとも気にしないでレベンが先程の質問をする。
「それはな・・・何故かは知らないが、私が倒されるごとにだんだんと能力が付加されて
いくからだ」
0
あなたにおすすめの小説
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした
有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。
ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。
しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。
彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。
一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる