その女剣士は世界を救い、英雄となる。

千石

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第40話

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「まさか・・・そんなことが・・・」

「人間よ、お前は私の存在を以前から知っていたのだな?」

「偶々ね・・・」
レベンがぶっきらぼうに答える。

『審査するもの』はレベンの態度を気にも止めずに、話を続ける。

「私の存在を知っていたものがこの場に来たのは初めてだ。長い年月のなかでな」

「・・・それで?」

「私は確信した」

「何のことだ?」

あの事だ・・・あたしは直感的にわかったが、レベンにはそうもいかない。

間髪入れずに尋ねる。

「お前には話していなかったな。私は今回何百年にもわたってなかったほど、心身共に完璧な状況にある。そして私の存在を知るお前の出現だ。私は確信したのだ。今こそ貴様ら人間を滅ぼすときだと!」

「へっ、そんなことは絶対にさせないよ!」

レベンが言葉に力をこめる。

・・・おかしいわね。

あたしは今の言葉に戸惑いを感じていた。

『審査するもの』の望みは安息の死だったはずだ。

それが今はレベンを必死にさせるような言動・・・あたしが違和感を感じるのも無理はないだろう。

「マーヘン、体は動くようになった?」

あたしの思考をさえぎり、レベンが尋ねてくる。

あたしは首を左右に振った。

普段ならこのくらいで動けなくなる分けないのに・・・。

「そう、じゃあ仕方がないね」

レベンはあたしに背を向けたまま言ってくる。

何故、首を振っただけにしたか・・・唇の動きを“感じ取る”よりも楽だと思ったからだ。

あたしは今までみてきたレベンの動きから、レベンがどのような“素質”を持ったルフトであるかに予想がついていた。

まず初めに、最初に会ったときのこと。

誰にも聞こえないようにつぶやいたのにレベンはわかっていたことだ

・・・ここまでならば単に耳が異常に優れていると思うだけだろう。

しかし、レベンの耳が聞こえないという。

次に、宿であたしが金縛りにあったときのことだ。

あの時はドアを隔てていたから、あたしの唇を読むなんて事は絶対に不可能だった。

その頃からあたしは、ある仮説を立てていた。

それは、レベンが“絶対的な空間把握能力”を持っているということだ。

それならば辻褄が合う。

「僕がなんとかあいつを倒すよ」

あたしの考え事はレベンの言葉によって打ち切られた。

「無理よ、いまのあいつを倒すのは・・・」

無意識のうちに、あたしは自分でも信じられない事を言った。

まさかあたしが弱音を吐くなんて・・・。

「・・・僕はどんなことがあっても真っ向からぶつかりたい。たとえ結果がどうなろうとね」

そのまま振り返ることなく、『審査するもの』の方に歩いていった。
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