その女剣士は世界を救い、英雄となる。

第41話

「真っ向から・・・ぶつかる・・・」

あたしはレベンのいった言葉を反芻してみる。

今のあたしは何？

『審査するもの』の身の上話を聞いて同情したから動けないの？

『審査するもの』を救いたいから？

・・・いいえ、違うはあたしは逃げていたのよ。

こいつと戦うことによる避けられない“死”から・・・。

あたしはようやく『審査するもの』に対する同情とそれよりも遥かに勝る“死”への恐怖に気がついた。

「ほぅ、人間よ。貴様一人で今の私と戦うというのか？」

目の前にいるレベンに冷淡に話す。

「ああ、この戦いだけは誰かがやりとげないといけないからね」

レベンは淡々と、だが強い意志をこめて呟く。

「面白い。過去最強の私を倒せるものか、見せてもらおうかぁ！」

・・・圧倒的。

その言葉がこれ以上ないくらいふさわしかった。

『審査するもの』が力を解放したのだ。

かなり離れているあたしのところまでぴりぴりとしたものが伝わってくる。

先程までの力が冗談であったかのような力の本流。まるで全生物の根底にある恐怖を具現化したかのような。

「何でなの・・・」

あたしは今だ身体が動いてくれない理由がわからなかった。

自覚すること。

それが鍵のはずなのに・・・。

あたしは何を躊躇しているの？

「うおおおおっ！」

レベンが咆喉を上げ、そして駆け出す。

「そうだ。来い！私が引導を渡してくれる」

初めて、『審査するもの』が構えをとった。

右手を肩くらいまであげ、左手は点対象の位置を維持する。

腰を少し落とし、重心を下に下げる。

まるで古の生物、ドラゴンがあぎとを開けているみたいだ。

レベンが加速する。

待ち構える『審査するもの』。

両者ともに小細工はなしで全力でぶつかっていく腹積りだろう。

『審査するもの』が両の手でレベンを掴むかのように腕を動かす！

タイミングはこれ以上ないくらい完璧だ。

ダンッ！

しかし、レベンが『審査するもの』の手が襲い掛かる瞬間、ありえない加速をした！

あんな負荷をかけたら、骨が耐えられないわ！？

そのまま、『審査するもの』の懐に入り込み、渾身の左拳をたたき込む。

その瞬間。

ボキッ！

鈍い音が辺りに響き渡った。

まさか！？

『審査するもの』がレベンの攻撃にまったく動じず、逆にレベンを抱え込もうとする。

レベンは『審査するもの』の攻撃をしゃがむことでやり過ごし、足払いをかける。

あっさりと『審査するもの』が転ぶ。

追い打ちをかけようとレベンが動く。

そのとき

「！？」

何に驚いたのかレベンが動きを止める。

あたしが起こったことを察する前に

「よくわかったな、人間よ」

『審査するもの』が感嘆の声を上げた。