その女剣士は世界を救い、英雄となる。

千石

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第82話

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レベンの生まれた場所はここ・・・王都からは遥か遠い、村とも呼べぬ小さな集落であった。

天候は最悪極まりなく、作物も僅かしかとれないような場所であったらしい。

しかし、それでもそこに住む人々は手に手をとりあって生きていたのだ。

それだけなら、まだましであったのだが・・・ある夏の午後、それは起こった。

それは火山の大噴火であった。

家々は焼け落ち、人々は追ってくる火にやられ名もなきその集落は滅びてしまった・・・レベンが生まれて2年が経とうとした頃であった。

そんな中、レベンは一番高く太い、神樹と呼ばれている木の枝に居たために奇跡的に生き残ったらしい。

「・・・たぶん僕の両親がそうしてくれたんだと思う」

レベン自身はそういっていた。

そんな状態のレベンを助けてくれた人がいた・・・今現在の育ての親だそうだ。

その人は噴火の後生き残った人がいないか、見にきていたとか。

そんなこんなでレベンはこの人の家でやっかいになり始めたのだという。

そこまでなら、まだ最悪ではなかったのだが、レベンの身には異変が起きていたのであった。

「耳が・・・聞こえなくなっていたんだ」

たぶん噴火の音近くで聞いたため、おかしくなってしまったのだとレベンは自嘲気味に呟く。

それから、レベンにとっては地獄のような日々が始まった。

人の唇を読む練習、言葉を話す練習、三半器官がいかれてしまったことで失ったバランス感覚を養うための武術の修業。

つらい日々の賜物か、はたまたレベンにはそういう才能があったのか、4才になるときまでにはそれなりのものになっていた。

そしてレベンの育ての親は、最後に試練を課した。

「もし、君にやる気があるなら旅に出てきなさい。だけど、一旦旅にでると決めたときは、国王の顔を見ることができるくらいの人物になるまで帰ってきてはいけない。別に旅にでなくてもいい。ここに残るか、外に出るか。選びなさい」

そしてレベンは何日も悩んだ末に旅に出ることを選んだ。

「だから、僕は国王の素顔が見たいんだ。8年間の旅を終わらせるために」

幼い子供が8年間も一人で生きぬくなんてことは、はっきりいって辛いことだらけだったに決まっている。

だからこの子は強いのか。

あたしは今になってようやく、レベンが何故強いのかわかった気がした。

「・・・なるほど」

国王はそう言ってからしばらく黙考した後、

「良かろう。だが、特別な部屋でしかこの仮面は取れぬのだ。あとでそこまでついてきたまえ」

語られていないレベンの苦労が伝わったのか、国王は快く願いを聞き取げた。

「良かったー」

内心緊張していたのだろう。

レベンは心の底から安堵の息をもらした。

「さて、マーヘン・リバース。そなたは何を望む?」

国王が話の方向をあたしに向ける。

あたしはもう決めていたことを口にする。

「あたしは世界中を廻って人助けをしたい。だから、そういう役職につかせてくださいませんか?」

今のような世界中の戦場を駆け巡る生活は、1人で暮らしていく分には問題はないが家族を養うには収入が不安定すぎる。

「そちの申しで、心から歓迎するぞ。だが生憎そういう役職はまだないのでな、1週間ほど待ってくれるか?各都王、大臣達を集め決定するから。もちろん、その間はここに滞在するがよい」

「わかりました。国王のご好意に感謝いたします」

断る理由はない。

あたしは深々と一礼した。

「そちらの願いしかと受けとめた。もう戻って良いぞ。レベン・アインターブは余についてこい」

「りょうかい!」

国王、バガルト、レベンの三人はささっと部屋を出ていき、あたしだけが部屋に取り残された。

(良いのか?そんな願いで?)

『審査するもの』が問い掛けてくる。

(いいのよ。収入が安定になる上に世界中が廻れるのよ?最高だわ)

それに、世界中を旅すれば、またあの怪物と遭遇できるかもしれないしね。

(すまんな・・・)

(えっ、どうしたの?)

(私の為というのもあるのだろう?)

(・・・なんだ、バレてたんだ)

 お金のこと、怪物のこと、様々な理由はあるが一番大きな理由は『審査するもの』に世界を見せてあげたいということだった。

(まあ、気にしないで。この話はもうお仕舞いよ)

照れ臭さからあたしはすぐに身を起こし、部屋を出ていったのだった。
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