21 / 354
第21話 約束
コホン
しばらくして落ち着いた頃に、お母様が1つ咳をする。
たったそれだけで病院内の空気が変わったのを感じた。
「さて・・・」
「申し訳ございませんでした!」
あたしはこの空気に耐えられず、お母様が何かを言う前に全力で謝った。
治りきっていない体が悲鳴をあげ、痛みのせいで通常とは違う汗が出るが気にせず頭を下げる。
「・・・」
お母様がどんな表情であたしを見ているのか。
見てみたい気はするが見ないほうが良いに違いない。
「ふぅ」
お母様が息を吐く。
いよいよか。あたしは覚悟を決める。
「まずは、頭を上げなさい。ミリーナ」
有無を言わさぬお母様の言葉にあたしは恐る恐る顔を上げる。
「!?」
般若のような顔をしていると思ったがお母様は予想に反して慈愛に満ちた優しい顔をしていた。
「あなたは謝るようなことをしたのですか?」
お母様が優しく聞いてくる。
「はい。自分の命を捨てるところでした」
迷いなく、あたしは答える。
あの男の人が間に合わなかったらと思うと今でもぞっとする。
確実にあたしはあの世にいただろう。
「そう。では、あなたは自分の判断を後悔しているのですか?」
「!?」
お母様に言われてはっとする。
確かに自分の命を捨てるところだったことについては罪悪感を感じているが、あの時に村に向かうことを決めた判断についてはどうだったか?
「・・・いいえ、しておりません」
答えはすぐに出た。
あたしはあの時の判断は正しいと思ったからこそ行動したのだ。
「では、謝る必要はありません。あなたが失敗したことは一つです。私・・・私たちに心配をかけたことだけですよ」
お母様は静かに涙を流しながら、あたしに教えを説いた。
「はい。心配をおかけしなくて済むよう強くなってみせます」
いくら正しい判断をしても実力が伴わなければダメなのだ。
お母様が常日頃厳しくなるときにはどんなときでも必ず生き残って欲しいという強い想いが根底にあったのだ。
あたしはそのことに今更ながらに気づいたのだった。
「約束ですよ。ミリーナ」
「!?・・・はい。約束致します」
お母様が『約束』という言葉を使うのはとても珍しい。
何でも、幼いときのトラウマが関係しているらしいが詳しいことは知らなかった。
なので、あたしにとっては生まれて初めてお母様と『約束』をした。
誰にも心配かけないくらい、それこそあたしを助けてくれたあの男の人のように強くなって見せる。
あたしは固く心に誓ったのだった。
ぱん
「さあ、しんみりした空気はおしまいよ。さあ、ミリーナ。おしゃべりしましょ。あなたの武勇伝を聞かせて頂戴」
お母様が一度両手を併せて空気を変えるとあたしにあったことを聞いてくる。
お母様には敵わないな。
あたしはふとそんなことを思いながらも自分にあったことを事細かに話すのだった。
しばらくして落ち着いた頃に、お母様が1つ咳をする。
たったそれだけで病院内の空気が変わったのを感じた。
「さて・・・」
「申し訳ございませんでした!」
あたしはこの空気に耐えられず、お母様が何かを言う前に全力で謝った。
治りきっていない体が悲鳴をあげ、痛みのせいで通常とは違う汗が出るが気にせず頭を下げる。
「・・・」
お母様がどんな表情であたしを見ているのか。
見てみたい気はするが見ないほうが良いに違いない。
「ふぅ」
お母様が息を吐く。
いよいよか。あたしは覚悟を決める。
「まずは、頭を上げなさい。ミリーナ」
有無を言わさぬお母様の言葉にあたしは恐る恐る顔を上げる。
「!?」
般若のような顔をしていると思ったがお母様は予想に反して慈愛に満ちた優しい顔をしていた。
「あなたは謝るようなことをしたのですか?」
お母様が優しく聞いてくる。
「はい。自分の命を捨てるところでした」
迷いなく、あたしは答える。
あの男の人が間に合わなかったらと思うと今でもぞっとする。
確実にあたしはあの世にいただろう。
「そう。では、あなたは自分の判断を後悔しているのですか?」
「!?」
お母様に言われてはっとする。
確かに自分の命を捨てるところだったことについては罪悪感を感じているが、あの時に村に向かうことを決めた判断についてはどうだったか?
「・・・いいえ、しておりません」
答えはすぐに出た。
あたしはあの時の判断は正しいと思ったからこそ行動したのだ。
「では、謝る必要はありません。あなたが失敗したことは一つです。私・・・私たちに心配をかけたことだけですよ」
お母様は静かに涙を流しながら、あたしに教えを説いた。
「はい。心配をおかけしなくて済むよう強くなってみせます」
いくら正しい判断をしても実力が伴わなければダメなのだ。
お母様が常日頃厳しくなるときにはどんなときでも必ず生き残って欲しいという強い想いが根底にあったのだ。
あたしはそのことに今更ながらに気づいたのだった。
「約束ですよ。ミリーナ」
「!?・・・はい。約束致します」
お母様が『約束』という言葉を使うのはとても珍しい。
何でも、幼いときのトラウマが関係しているらしいが詳しいことは知らなかった。
なので、あたしにとっては生まれて初めてお母様と『約束』をした。
誰にも心配かけないくらい、それこそあたしを助けてくれたあの男の人のように強くなって見せる。
あたしは固く心に誓ったのだった。
ぱん
「さあ、しんみりした空気はおしまいよ。さあ、ミリーナ。おしゃべりしましょ。あなたの武勇伝を聞かせて頂戴」
お母様が一度両手を併せて空気を変えるとあたしにあったことを聞いてくる。
お母様には敵わないな。
あたしはふとそんなことを思いながらも自分にあったことを事細かに話すのだった。
あなたにおすすめの小説
勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!
石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。
応援本当に有難うございました。
イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。
書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」
から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。
書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。
WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。
この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。
本当にありがとうございました。
【以下あらすじ】
パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった...
ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから...
第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。
何と!『現在3巻まで書籍化されています』
そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。
応援、本当にありがとうございました!
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
【完】転職ばかりしていたらパーティーを追放された私〜実は88種の職業の全スキル極めて勇者以上にチートな存在になっていたけど、もうどうでもいい
冬月光輝
ファンタジー
【勇者】のパーティーの一員であったルシアは職業を極めては転職を繰り返していたが、ある日、勇者から追放(クビ)を宣告される。
何もかもに疲れたルシアは適当に隠居先でも見つけようと旅に出たが、【天界】から追放された元(もと)【守護天使】の【堕天使】ラミアを【悪魔】の手から救ったことで新たな物語が始まる。
「わたくし達、追放仲間ですね」、「一生お慕いします」とラミアからの熱烈なアプローチに折れて仕方なくルシアは共に旅をすることにした。
その後、隣国の王女エリスに力を認められ、仕えるようになり、2人は数奇な運命に巻き込まれることに……。
追放コンビは不運な運命を逆転できるのか?
(完結記念に澄石アラン様からラミアのイラストを頂きましたので、表紙に使用させてもらいました)
学校一の美人から恋人にならないと迷惑系Vtuberになると脅された。俺を切り捨てた幼馴染を確実に見返せるけど……迷惑系Vtuberて何それ?
宇多田真紀
青春
学校一の美人、姫川菜乃。
栗色でゆるふわな髪に整った目鼻立ち、声質は少し強いのに優し気な雰囲気の女子だ。
その彼女に脅された。
「恋人にならないと、迷惑系Vtuberになるわよ?」
今日は、大好きな幼馴染みから彼氏ができたと知らされて、心底落ち込んでいた。
でもこれで、確実に幼馴染みを見返すことができる!
しかしだ。迷惑系Vtuberってなんだ??
訳が分からない……。それ、俺困るの?