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第255話 思わず

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「えへへ」

俺の言葉にミリーナが笑顔になる。

何故だろう。ミリーナの笑顔を見ていると心が和む。

「まぁ、そういったことがあってアメリアは一命を取り留めたということだ。・・・俺はタバサ姉さんに色々聞いた後にその場を離れたが恥ずかしながらショックからふらふらになってな」

俺がバツが悪そうに言うと、ミリーナが全力で首を振る。

今日は後ろで1本でまとめた髪が首の動きに合わせて大きく動いている。

「ううん。当然だよ。ルークのショックは少しは理解できるし・・・もちろんお母様のショックも理解できる」

必死で俺を慰めようとしているのが伝わって来て、俺は立ち止まり思わずミリーナの頭を撫でた。

「ル、ルーク?」

恥ずかしかったのかミリーナが顔を赤くして俺の名を呼ぶ。

・・・いかん。思わず撫でてしまった。

「すまん。つい」

咄嗟に手をミリーナの頭から離し、謝るとミリーナは、

「う、ううん。いきなりで驚いただけだから」

そう言ってくれたので話を再開する。

「・・・それで、気づいたら墓地にいたんだ。ミリーナも行ったことがあるから分かるだろうが中々の墓の数だから普通なら両親の墓を見つけるのは無理かと思うのだろうがその時の俺は途方に暮れていたからな墓標の文字を何とはなしに眺めていたら両親の墓が見つかったんだ」

「あの数のお墓の中から・・・」

ミリーナが墓地を想像しながらそのように言う。

「両親の名前の他に

『勇敢なる夫婦、息子と共にここに眠る』

という言葉が刻まれていてな。しかも隣の墓には・・・自分の墓があった。死亡した日付が17年前になっていてな。ああ、タバサ姉さんの言ったことは真実だったんだと理解した。まだ話しか聞いてなかったから正直認めたくない自分がいたのだが、もはや認めざるを得なかった」

俺は自嘲して呟く。

「我ながら感情的に思わず叫んでしまった。
『ちくしょー!何で俺がこんな目に会わなきゃならねぇんだーーー!!!』とな」

俺はその時のことを思い出しながら軽めに叫ぶ真似をした。
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