『60歳からの再起動』

『60歳からの再起動』

ラスト・デバッグ

四十年のノイズを切り捨て
定年という名のシャットダウン
最後に消した ディスプレイの青い光が
震える指先を 冷たく照らした

会社という名の 巨大な回路(システム)
俺はその中の一つの 小さな抵抗器だった
規格に合わせ 熱を逃がし
摩耗していく 部品にすぎなかった

だが 今日から
俺は 俺自身の設計者(アーキテクト)になる

退職金という名の 新しい資本(エネルギー)
それは 守るための盾じゃない
人生という名の 最終実験を
爆速で走らせるための 燃料だ

ROEの粉飾を見抜き
レバレッジの嘘を デバッグする
グラフの向こうに潜む 本物の価値を
理系の眼(まなざし)で ハックする

「もう遅い」と 世界は笑うだろう
「インデックスで眠れ」と 常識は囁くだろう
だが オタクの執着と 技術者の誇りが
俺の胸で 異常値(アラート)を鳴らしている

人生の複利は これからだ
残された時間は 有限の定数だが
成長率は 俺の手で変えられる

さあ システムを立ち上げろ
60歳からの 再起動(リブート)
一億円という 解(ゴール)に向かって
俺の指が エンターキーを叩く

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小説 802 位 / 218,789件 現代文学 5 位 / 9,146件

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