『愛した人は、あの日死んだ 〜お腹の子と私の逆転再婚〜』

『愛した人は、あの日死んだ』

あの日
あなたは、生きていた

笑って
触れて
名前を呼んでくれた人

でも
役所の白い光の下で
あなたは、静かに死んだ

紙一枚で
七年がほどけていく音を
私は、確かに聞いた

「じゃあな」すらない背中は
あまりにも軽くて
あまりにも遠かった

ねえ
あなたが追いかけた“初恋”は
そんなに眩しかった?

私と過ごした日々は
どこに置いてきたの

冷たい床に膝をついて
吐き気と涙に溺れながら

それでも
私の中で
小さな命が、灯った

皮肉だね

すべてを失ったその日に
すべてを守る理由を
与えられるなんて

あなたは知らない

あの日
あなたが捨てたのは
私じゃない

未来だったことを

だからもう
振り返らない

死んだ人の名前は
呼ばない

この腕にある
あたたかい重みだけが
私の世界で

私の、すべてだから

朝が来る

何もなかったみたいな顔で
光は差し込むけれど

私は知っている

あの日、確かに
一つの愛が終わり

一つの命が
始まったことを

さよなら

かつて、愛した人

あなたはもう
ここにはいない

――だから私は
生きていく

24h.ポイント 1,043pt
64
小説 1,273 位 / 219,916件 現代文学 13 位 / 9,237件

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