136 / 173
馬車
しおりを挟む背中から聞いたことのない音がしたあと、胸が少し開放された。コルセットとドレスを重ねているせいで普段と感触が違い、でもまさかこんなことになるなんて思っていなかった。
馬車に乗ったらディオルド様に留め具をずらしてもらおうとしただけなのに、激しい口づけをされてしまった。今はなぜか項を舐められ吸われ、コルセットも落ちて胸を揉まれている。
ディオルド様の膝の上で不安定な体勢は胸にある腕が支えている。離されたら転がるかもしれないと頭を過っても、痛かゆかった頂に触れられ頭が快感に染められていく。
速度を上げているような馬車の大きな音のなかにディオルド様の荒い呼吸が聞こえて下腹がうずいてくる。この感覚のあとは秘所が濡れてしまうともう理解している。外は明るいし、ここは寝台ではないのに欲しくなってしまう。
「ディオ……駄目です…」
「…無理言うな…駄目と言うなら誘うな」
誘っていないのにそう言われても…
「ディオルド様…」
「ロシェル」
一際強く吸われ、小さな痛みが走り、なぜか気持ちよくて声が出てしまった。
「入れんぞ…俺は入れんぞ」
そう言いながらお尻の下にある硬い局部が私を何度も突き上げる。
「あ!あ!…ん…」
「入れんと言ってるだろ…くそ…」
「…っか…駄目……まん…がま…」
走行音の合間にガガ様の声が聞こえる。馬車窓はカーテンをしているのにガガ様が私たちの戯れを知っているようで恥ずかしくなる。
「ディオルド様…ん…」
「俺は…耐えられる…」
ジェイデン様の言う通り、閨は二人の喜びだった。触れ合うと心も体も満たされて、感じたことのない快感に声も抑えられない夜が続いた。ジェイデン様も私の体を触ったけれど、あれは手加減していたと今になって理解している。
「…ロシェ…ル」
いつの間にか口を合わせていた。私から顎を上げたのかわからないほど混乱している。上から注がれる唾液は飲み込みきれずに頬を流れる。
「わかるか…?ちく…頂が固くなったんだ…俺が…そうしたんだ…はは…」
口づけをしながら話すディオルド様の荒い呼吸が頬をくすぐり、それさえも快感となり刺激される。
「俺は変態だ」
下着が濡れている感触がする。女性はこうされれば皆が秘所を濡らすものなのか。ディオルド様の太い指を入れられると、出し入れされるととても気持ちがいいと知っている。入れて欲しい、そんなことを口にしそうになり、言わないためにも口を合わせたくてディオルド様の頭に腕を回して引き寄せる。
「ふ…ん…ん…」
鼻から漏れる呼吸が熱くて汗ばむ。
「ロシェル…落ち…つけ…邸まで…」
お尻の下でディオルド様の手が動いている。私を膝の上から下ろそうとしているのかもしれない。
離れなければならない。離れたくない。強烈な快感は私を狂わせてしまうけれど嫌いじゃない。
なにも纏わない胸が涼しい。生地が触れていないから痛くもない。意識を落ち着かせるよう場所を考え、ディオルド様はドレスを直せるのかと頭に浮かび、鼓動を落ち着かせるため、深呼吸を繰り返す。なのにディオルド様は私を軽く持ち上げ、ドレスをめくり秘所に局部をあてた。入れてしまうと私はおかしくなってしまう。足を閉じて止めるべきだったのに、自ら開いていた。
「…な…誘ってるだろ?」
先端に触れる下着が濡れていた。陰茎を押し付けると滑ってずれて、熱く柔らかく締め付ける窪みへあてると待っていたように飲み込んでいく。
この時の快感はいつも形容しがたい。薄い腹にどうやって嵌め込まれているのかわからないほど、ピタリと合わさる。ロシェルの言った、繋がるが言い得て妙だと、興奮する頭のなかで冷静な部分がそう呟いた。
ロシェルの喘ぐ声を聞かせないために口を合わせ続ける。首を仰け反らせた体勢は苦しいだろうか?だが、外へお前の声を聞かせるわけにはいかんだろ。だが、馬車のなかでなにをしているのか匂いでバレてる。
かすかに香水の匂いが香る。エコーとガガが対処を始めたようだ。効果があるのかわからないが。
腰を振らなくても馬車の速度を上げたせいで揺れが大きい。小石を踏む度に強く突き上げてしまうが、ロシェルの悲鳴は俺が飲み込んでいる。
気持ちいいな、ロシェル。お前は入り口より奥が好きらしい。奥を突く度、声を上げるからわかるんだ。
後ろから抱いたことはなかった。初級の体位しか試していなかったのに、馬車のなかでこんなことをしている。中級の背面座位はロシェルにはまだ辛いか?いや…喜んでいるな。後ろからだと角度が変わって感触までなにか違う気もする。
耐えるつもりだった。我慢するつもりだった。だが、ロシェルが欲しがり誘うんだぞ。それは叶えたくなるだろ。
「ロシェ…ル…声を…聞かれるぞ…ああ…唇が赤い…はは…紅のせいで…顔が…」
水色の瞳が欲を含み俺を見ている。赤い唇が抑えた喘ぎを漏らしながら、俺の顔も汚れていると唇を動かし教えてくれた。
入れただけで果て、今は二度目の射精が近い。
「この俺が…色に溺れるとはな」
数多の誘惑にあってきたが、一度も触れたいと思ったことはなかった。極力触れるなと言うステイシーとの義務は香油を使ったもので極限まで自身でしごき、痛がる声を上げる女を見れば、閨事への関心はさらに失くなった。
「…な…お前を失くせん」
この喜びを快感を愉悦を知ってしまったんだぞ。誰にも、お前さえ俺からお前を奪わせはしない。お前の乳首を吸う赤子に嫉妬する自分が簡単に想像できるんだ、ロシェル。
「お前は体力がなさすぎる。散歩だけでいいのか?訓練をするか?」
馬車は邸に着いたようで、今は停車している。何度か扉を叩かれたが待てと指示を出せば、ガガのため息が聞こえ、蹄の音が遠ざかり、人の気配が散っていく。
危険すぎて窓を開けられず、俺はロシェルの匂いを吸い込み続けているせいで勃ったままだ。埋めたままだ。繋がったままだ。
ロシェルのドレスは無惨な姿になり、留め具を壊したせいで着せることが困難になった。俺の衣装も三度も吐き出した子種のせいで濡れて色を変えているだろう。もう少し待てば、気が利くエコーあたりが着替えと湯とタオルを持ってくるだろう。
「もう少し…な」
意識を失くし垂れる頭を俺の胸に倒し抱き締める。
ロシェルのなかはすごいことになっている。収まりきらない子種が面白い音を出しながら溢れ出ている。ドレスの上から下腹に触れて軽く押せば俺を感じたような気がして頬が緩む。
「変態め」
もしかしたら変態は褒め言葉かもしれん、と阿呆なことを考える自分に笑いたくなり、腕のなかの鼓動を感じながら目蓋を閉じる。
今頃、ダートとゼノはバロン・シモンズをブリアール公爵邸内にある地下牢へ入れているか?いや、俺たちは早々に教会から退散した上に馬車は速度を上げて戻った。落ち着いて考えれば、まだ教会かもしれんとわかるだろ。俺はここ最近浮かれている。この浮かれは落ち着くのか?
「旦那様」
「エコー」
「馬車の周りにはガガとスモークと私だけです」
俺は扉の閂を外す。ゆっくりと開いた先には無表情のエコーがいた。その腕のなかには服とタオルが重なっている。
「湯が必要だと思わんか?」
「ガガが持っています」
「置いて閉めろ」
エコーが空いている座面に服とタオルを並べ消えたあと、目を細め鼻に布を突っ込んでいる無表情のガガが湯の入ったタライを足下に置いた。
「すけべ」
ガガは扉を閉めながら呟いた。
「…すけべと言われた…くく」
俺は巻き付けた腕を離し、片腕でロシェルを抱きながらドレスを剥いでいく。
「あいつのほうがすけべだろ。俺はまだ密室で抱くが、あいつは外で女を鳴かせてる。なぁ、ロシェル」
女というのは抱く度に気を失うのか?今度ガガに聞いてみるか。
1,412
あなたにおすすめの小説
初恋だったお兄様から好きだと言われ失恋した私の出会いがあるまでの日
クロユキ
恋愛
隣に住む私より一つ年上のお兄さんは、優しくて肩まで伸ばした金色の髪の毛を結ぶその姿は王子様のようで私には初恋の人でもあった。
いつも学園が休みの日には、お茶をしてお喋りをして…勉強を教えてくれるお兄さんから好きだと言われて信じられない私は泣きながら喜んだ…でもその好きは恋人の好きではなかった……
誤字脱字がありますが、読んでもらえたら嬉しいです。
更新が不定期ですが、よろしくお願いします。
あなたのためなら
天海月
恋愛
エルランド国の王であるセルヴィスは、禁忌魔術を使って偽の番を騙った女レクシアと婚約したが、嘘は露見し婚約破棄後に彼女は処刑となった。
その後、セルヴィスの真の番だという侯爵令嬢アメリアが現れ、二人は婚姻を結んだ。
アメリアは心からセルヴィスを愛し、彼からの愛を求めた。
しかし、今のセルヴィスは彼女に愛を返すことが出来なくなっていた。
理由も分からないアメリアは、セルヴィスが愛してくれないのは自分の行いが悪いからに違いないと自らを責めはじめ、次第に歯車が狂っていく。
全ては偽の番に過度のショックを受けたセルヴィスが、衝動的に行ってしまった或ることが原因だった・・・。
波の音 傷ついた二人の間にあったもの
Rj
恋愛
妻のエレノアよりも愛人を選んだ夫が亡くなり海辺の町で静養していたエレノアは、再起不能の怪我をした十歳年下のピアニストのヘンリーと出会う。二人はゆっくりお互いの傷をいやしそれぞれがあるべき場所へともどっていく。
流産や子を亡くした表現が含まれています。
本編四話に番外編一話を加え全五話になりました。(1/11変更)
婚約者を取り替えて欲しいと妹に言われました
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
ポーレット伯爵家の一人娘レティシア。レティシアの母が亡くなってすぐに父は後妻と娘ヘザーを屋敷に迎え入れた。
将来伯爵家を継ぐことになっているレティシアに、縁談が持ち上がる。相手は伯爵家の次男ジョナス。美しい青年ジョナスは顔合わせの日にヘザーを見て顔を赤くする。
レティシアとジョナスの縁談は一旦まとまったが、男爵との縁談を嫌がったヘザーのため義母が婚約者の交換を提案する……。
愛する人は、貴方だけ
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
下町で暮らすケイトは母と二人暮らし。ところが母は病に倒れ、ついに亡くなってしまう。亡くなる直前に母はケイトの父親がアークライト公爵だと告白した。
天涯孤独になったケイトの元にアークライト公爵家から使者がやって来て、ケイトは公爵家に引き取られた。
公爵家には三歳年上のブライアンがいた。跡継ぎがいないため遠縁から引き取られたというブライアン。彼はケイトに冷たい態度を取る。
平民上がりゆえに令嬢たちからは無視されているがケイトは気にしない。最初は冷たかったブライアン、第二王子アーサー、公爵令嬢ミレーヌ、幼馴染カイルとの交友を深めていく。
やがて戦争の足音が聞こえ、若者の青春を奪っていく。ケイトも無関係ではいられなかった……。
あ、すみません。私が見ていたのはあなたではなく、別の方です。
秋月一花
恋愛
「すまないね、レディ。僕には愛しい婚約者がいるんだ。そんなに見つめられても、君とデートすることすら出来ないんだ」
「え? 私、あなたのことを見つめていませんけれど……?」
「なにを言っているんだい、さっきから熱い視線をむけていたじゃないかっ」
「あ、すみません。私が見ていたのはあなたではなく、別の方です」
あなたの護衛を見つめていました。だって好きなのだもの。見つめるくらいは許して欲しい。恋人になりたいなんて身分違いのことを考えないから、それだけはどうか。
「……やっぱり今日も格好いいわ、ライナルト様」
うっとりと呟く私に、ライナルト様はぎょっとしたような表情を浮かべて――それから、
「――俺のことが怖くないのか?」
と話し掛けられちゃった! これはライナルト様とお話しするチャンスなのでは?
よーし、せめてお友達になれるようにがんばろう!
虚弱で大人しい姉のことが、婚約者のあの方はお好きなようで……
くわっと
恋愛
21.05.23完結
ーー
「ごめんなさい、姉が私の帰りを待っていますのでーー」
差し伸べられた手をするりとかわす。
これが、公爵家令嬢リトアの婚約者『でも』あるカストリアの決まり文句である。
決まり文句、というだけで、その言葉には嘘偽りはない。
彼の最愛の姉であるイデアは本当に彼の帰りを待っているし、婚約者の一人でもあるリトアとの甘い時間を終わらせたくないのも本当である。
だが、本当であるからこそ、余計にタチが悪い。
地位も名誉も権力も。
武力も知力も財力も。
全て、とは言わないにしろ、そのほとんどを所有しているこの男のことが。
月並みに好きな自分が、ただただみっともない。
けれど、それでも。
一緒にいられるならば。
婚約者という、その他大勢とは違う立場にいられるならば。
それだけで良かった。
少なくとも、その時は。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる