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第161話 闇の獣人、貧民街の住人に寒暖効果のある水晶玉を配布する

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 貧民街の東のボスのいる建物に転移した俺は、何やら書類を書いている東のボスを透視のアビリティで確認した後で、ドアをノックしてみた。

 一応、レヴィン達の所に転移する前に念話でこれからそっちへ向かうと連絡しておいた。事前の報告は大切だからな。俺、聖人として一般に認知されているから、よほどの非常事態でない限りはこういう事は守らないと、またどんな噂をたてられるかわかったもんじゃないからな。

 だからいくら俺が国の最重要人物の一人になっても、こういう手間とか礼儀作法とかは大切なんだよな。特に神々から常に見守られている(悪くいえば監視されている)俺なら尚更だ。

 それはともかく、軽くドアを2回ほど叩くと、渋い男の声が短く「どうぞ」と聞こえてきた。

 相手の了承を得たので俺は早速室内に入った。もちろんドアを音が立たないように閉める。

 ちなみに俺の恰好は2級創造神のフェランさんが創造した、お馴染みの黒の上下の服にこれまた黒のフード付きローブを着ている。

 こっちの方が性に合うし、俺=黒い服というイメージが一般大衆に定着しているからだ。

 一応、レヴィンとヴェルゼラートに会った時に念話で東と西のボスにこれから行くから、待機していろと伝えておいたんだが…。やっぱりもうちょっと時間置いておいた方がよかっただろうか?

 意外なことに室内には西のボスもいた。軽く驚いた俺に、二人揃って床の上に跪いた。

 「お前達…仲が悪かったんじゃなかったのか? 確か一緒に暮らすことができないから二つのブロックに分かれたとリュンナから聞いたんだが?」

 と、俺は深々と頭を下げる二人を訝し気に見てしまった。

 「仰る通りです。ですがヴァイソン村やノランディアの街に移住した者が多く出た為、東と西の衝突はかなり軽減されました。漆黒の獣聖人様を失望させたくない為、3日に1度はこうしてどちらかの執務室に集まって、東西揃ってどうやって協力するべきなのかを話し合うことにしていたのです」

 と、東のボスがうっすらと髪の毛の生えた頭を少し持ち上げて俺を見ながら言った。

 隣で跪いていた西のボスは白髪の老人だったが、今では血色も良くてあと数十年は長生きできそうな感じに見える。

 「そうか。実はこれから本格的な冬に入る。それで寒さに耐えられるように、この水晶玉を配ろうと思ってな。これには暖かさと涼しさを両方とも発揮する機能がある。もちろん転売不可で最初に持った者にしか効果が出ない。これさえ身に付けていれば完全とはいえないものの、病気になりにくくなるはずだ」

 と、言いながら俺は水晶玉の入った革袋を闇の中の空間から20個ほど取り出した。

 貧民街では人が野垂れ死ぬことは珍しくない。では何故疫病が発生しないのかというと、死体はダンジョンへと放り込まれるからだ。

 これは貧民街の住人も疫病が流行しない為の対策として、大抵は彼等が遺体を見つけ次第、積極的にやる。大通りや目立つ所で死んでいる者は、一応衛視に回収されて本当に身よりのない者なのかを確認されるために数日間、死体専用の倉庫(死体安置所。そのまま言うと祟られそうなので通常・モルグ)に入れられる。
 
 そこで本当に身寄りがないのであれば、ダンジョンの中に入れられる。遺体は数分でダンジョン内に吸収されるので墓を作る必要がない。結果、墓地を拡張する手間が省けるというわけだ。

 だがこの水晶玉を持っていれば、病気になる可能性はかなり低くなる。よほど恨みを買っていない限り、野垂れ死ぬことはないだろう。

 それに俺がさんざん竜王の息吹や覇王竜の息吹、そして地下に住んでいた連中にもアルティメット・ヒールをかけてやったから、よほど運の悪い者でない限り、新たに四肢の欠損が出る者はいないだろう。新たに出たのならまた治療するまでだ。

 おそるおそる水晶玉を手にした二人には、事前に蛇の神アナントスの術が水晶玉にかけられていることを伝えたら、俺の左腕に絡まっている蛇を見て、今度は額を地面にこすりつけるほどの勢いでひれ伏してしまった。

 「あー…。わしは確かに神じゃがの。そんなにヤモリみたいに這いつくばらんでもいいぞ? ほれ、このままじゃ話が進まんから、面を上げんかい」

 白い蛇が口をきいたことに二人とも驚天動地の顔をしていたが、俺が闇の中の空間から大型の袋を次々と取り出すと、そちらに興味が向いたのか、どうにか呆けていた顔が普段の顔に戻ってくれた。

 「これは飴玉だ。子供達に配ってやれ。だがあまり多く摂取すると元気になり過ぎて不眠症になるから、一日に一粒か二粒にしておけ。大人がこれを何粒も摂取したら、男なら連続強姦魔、女なら痴女になりかねないから、大人でも摂取量は同じだ」

 袋の中から取り出したうっすらと白く光る飴玉を二人は大きく目を開いて見つめている。

 「それからこれは冬を乗り越える為の資金だ。東西のブロックの住人を含めて金貨1万枚はいっている。…わかっていると思うが、無駄遣いはするなよ? そして小出しにして使え。建物が傷んでいるのであれば修復する為の業者を雇うために使え。毛布や衣服がボロボロならそれらの生活必需品を買うために使え。くれぐれも金を巡って奪い合ったりするなよ? 俺が渡した金が原因で抗争が起きたら、左右のブロックまとめて焼き払うからそのつもりで使うがいい」

 二人の前に金貨の沢山入った袋を10個ほど置くと、東西のボスは二人とも涙ぐんでいた。

 「ありがとうございます! これで子供達を学校に行かせることができます。北西部にある村と無人島に移住したとはいえ…やはり農作業や漁業に向かない子供や老人が多く残っているのが現状です。あまりにも幼くて、冒険者にもなれない者や年のせいで街で働けない老人。貴族に手ひどく痛めつけられて精神に病を起こしてしまい、人前に出る事ができない者など多く存在しています」

 と、東のボスが言うと、彼の言葉を引き継いだ西のボスが涙を手の甲で拭いながら続けていく。

 「もちろん国からの援助は出ていますが…実際には貴族や役人が手数料と称して、資金の大半を摂取していくのが現状です。そのせいで地下では闇商人が集まるという事態に発展してしまいました。

 もし、あの時…ラフィアス様が来てくださらなかったら、この王都の地下はいずれ犯罪者の一大組織が結成されて貧民街にもタチの悪い犯罪者が溢れていたでしょう。そうなる前に闇商人やこの貧民街の住人の荒んだ心を癒し、身体の怪我や病気すらも無償で治療してくれた貴方様がいてくれたからこそ、我々は平穏な生活を送ることができるのです」

 感涙にむせぶ、という言葉通りに東西のボスは金貨の入った袋と俺の精液が変化した飴玉の入った袋を見ながら、俺を賛美し続けた。

 どうも親衛隊や衛視たちが見回りにくるついでに食べ物とか、使い古しではあるが古着や毛布などをもってきてくれるらしい。

 女王も貴族や役人については注意しているものの、国にとって必要な労働力であり、資金の着服とはいっても全額ではないのと、そういう貴族や役人を解雇したら国が回らなくなるのでほとんど放置しているようだった。

 さらに話を聞いてみると、この役人や貴族も親衛隊や衛視達にスズメの涙ほどではあるがお小遣いをあげており、それで共犯関係にしているようだった。

 もっとも衛視や親衛隊は貧民街で生きる人達に同情しており、そういったお小遣いを全額、食料や薬などに変えてもってきてくれるようだったが、それでもぜんぜん足りていなくて生きるだけで精一杯だったということだった。

 だから俺が金貨5000枚も出したので、彼等は本当に嬉しくなって涙ぐんでしまったらしい。

 実際には食べ物とかもいくらでもこいつらに渡すことができるんだが、それをすると王都での屋台や商店で食べ物を買う客が減ることになる。

 そうなると商店や屋台の営業がうまくいかなくなり、破産して貧民街で生きるしかない人間が増えることになってしまう。

 また調べてみたが、屋台や商店の営業者も相手が自分の屋台で扱っている商品(主に食べ物)を買ってくれるのなら、雇うということまではしなくても、貧民街の住人であっても追い払うということはしない。

 金さえ払ってくれるのであれば、身元が不明な者でも売るようにしている。そうでないと商売が成り立たないからな。

 ましてや王都はこういう飲食店やさまざまな飲み物や食べ物を扱う露店が高級店や一般の店などランク問わずに数えれば、併せて100近くある。

 当然ライバルも多く存在するので、相手を選んでいられないというわけだ。

 こうして俺は東西のボス二人に金、冷暖の効果のある水晶玉、そして俺の精液を変化した飴玉の入った袋を渡してから、二人にこれら譲渡したものを決して悪用しない、転売しない、無駄遣いしないといった内容の誓約を、腕に絡みついているアナントスの前でしてもらった。

 こうして貧民街の連中に冬を乗り越えるための資金や道具を渡したわけだが、俺の股間に視線が集中していたので遠慮しながらも二人が口ごもりなら、俺の精液を飲みたがっていることを伝えてきた。やっぱり王城の住人のほぼ全員に俺の精液を飲ませているのが伝わってきたんだろうな。彼等からせがんでくるので、俺としてはここで飲ませてやらないと不公平だと思い、飲ませてやることにした。室内をはじめとして、俺や二人に浄化魔法・ピュリファイをかけて綺麗にしてから二人の口内に俺の肉棒を入れて射精しまくってやった。

 やっぱり覇王竜のマントの効果が100倍になっているせいか、少し気を緩めるとその瞬間に大量の精液が肉棒の先端にある鈴口から噴出していった。

 事前にただ口に咥えているだけでいい、飲むことだけに集中しろと言っておいたが、二人ともあまりの大量の精液の量に目を白黒させていた。

 もちろん時間がもったいないので、時間停止させてから一人ずつ、俺の精液をたっぷり飲ませてやって、胃袋が一杯になるまで射精しまくってやった。

 おかげで満腹になった二人はとても満足そうな顔をしていた。

 そこへアナントスが「こいつら婚約者殿に惚れているが、暴走しかねんからあやつの作った首輪を付けておいた方がいいかもしれんのう」

 という念話が俺の脳内に響き渡ったので、魔皇神が作った黒い首輪を二人の首にはめこんで俺に永遠に恋してもらうことになった。

 もちろん事前に説明はしておいたが、二人とも即座に了承してくれた。

 とはいえ、貧民街のボス二人が首輪を付けたままというのでは体裁が悪いから、すぐに外したけどな。

 首輪は一度装着すると、外しても効果が永続するので特に心配はない。

 こうして俺は貧民街について当座の問題を解決したが、二人のボスから持ち込まれた悩みについて、どうすればいいのかを考えることになった。

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