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束の間の休息
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警察署の舞田との会見・・・・・・
「遅かったな、日向櫂」
「ああ、遅れた。途中、唯の奴と少しやりあってね」
「ふん。まあいい。今回はお前に少し話があって来たんだ。お前さえよければの話だが・・・・どうだ、警察署の刑事にならないか?」
「?なんだって」
それを聞いた櫂は一瞬何を言われたのか理解できなかった。やがて訪れる不理解。
「何だといった?俺が何になるって?」
「だから異能対策本部で私の部下にならないか、と言ったのさ」
そう言うと、舞田の持ち前の美貌に不機嫌さのオーラが見えた。
「いや、俺はこのまま雪ヶ谷探偵事務所で・・・・・・」
「それは惜しい!お前ほどの逸材なら、警察の、公共の為の兵隊になるのがいい!それも大佐クラスの!」
「いや、このまま雪ヶ谷探偵事務所に骨を埋めて・・・・・・」
「お前、私の誘いを蹴る気が?」
「確かに今のまま警察と連携ができないのは、苦痛だが、俺は・・・・・・」
「本当にか?二度と誘ってはやらないぞ」
「すまない、舞田さん。でも警察との連携は必要と分かってほしい。ガロアみたいな化け物に警察は後手を踏んでしまっている。幸いあなたの命は取り留めたが、この先、どうなるか、俺にも分からない。ガロアは今、力を溜めている。そんな気が・・・・・俺にはする」
「・・・・・・・・・・・・・・・・私の側に居てほしかったのに(小声)」
「警察はガロアと今回の誘拐のことどう見ている?」
「ああ・・・・・・・ガロアの居場所は今、洗っているところだ。場所はわかるだろう。いいか。捜査は鉄壁だ。警察の捜査は必ず成功する。ほぼ100パーセント。なぜだか、分かるか?」
「いいや」
「それはな苦労するからだよ。どんな些細なことにも因果があるからだ。警察が必死に捜査した。それに結果が因果として付いてくるからだ」
「なるほど、確かに・・・・・・ウチと警察では規模が違う。後、捜査権もな。それは探偵に無いものだ。それも欲しいよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・ガロアの居場所を突き止めたら一応お前にも連絡しよう。今回の事件は現場の刑事が怒っていてな・・・・・・使えるものは使えとのことだ。だから万一のことが無いようにお前たち雪ヶ谷探偵事務所にも連絡する」
「ありがたい」
「しかし、それは今回限りの方法だ。後、勘違いするなよ、あくまでも主導権は警察にある。日向櫂、お前の戦闘力、勇気、機転には皆、一目置いている。ただ・・・・・・これからも、事件を追いたいなら、警察に所属するしかないぞ・・・・・・」
「分かった。後は唯に報告してから判断するよ。ただ俺は・・・・・警察には居られないんだ」
「過去の殺人のことか?あれは不問にしてもいいぞ」
「いや、違う。そんなことじゃないんだ。俺は自由にやりたいんだよ。後、警察って組織には懲りている」
「そうか。まあもう終わったことだ。私は本当に、お前が欲しかったからな。私の権力で強引に行けば、出世もする。女にも会えるぞ」
「すまない舞田さん。今回のことは感謝する。だが俺にも道と言うものが見えるんだ。そこを歩むだけ・・・・・・後、アメジストのことは忘れていないよな?」
「ああ、当然、それを持っているのはガロア、奴だ。今度は警察の権力を存分に使う。お前の話も聞いていたからな。機動隊も出るだろう」
「!そうか、まあいずれあんたも学ぶよ」
そう言うと、日向櫂は部屋から出て行った。
『いずれあんたも学ぶよ』
櫂はそんな謎の言葉を残した。
舞田はそんな櫂の真意を知らない。
やがて午後は流れて、夕方になり、夜がやってきた。
・・・・・・・雪ヶ谷探偵事務所ではささやかなパーティーが開かれていた。
それはガロアから舞田刑事を取り返したり。
新しく真理花が加わったり
後は櫂と唯の仲直り(?)を祝してのささやかな鍋パーティーだった。
参加しているのは、日向櫂、雪ヶ谷唯、池上はるか、桜井真理花(ロキ)、神埼時頼、後は日向櫂の親友の赤井次郎だった。
「それでは皆様の活躍を祝して、カンパーイ!」
そう音頭を取るのは、赤井次郎である。
「それにつづいて」
「乾杯」
「乾杯!」
「はいはいかんぱい」
「乾杯です」
「か、かんぱい」
皆それぞれにつづく。
櫂は苦笑した。
『皆、なかなか個性があるじゃないか』
櫂はそう思った。
ちなみに「乾杯」と言ったのが日向櫂である。
所長室のテーブルの上には一つの鍋がある。
其の中に、キムチの匂いのする豆腐だったりねぎだったり豚肉だったり、さまざまな物が入っている。
そうして櫂や唯、池上はるか、赤井次郎はビールを飲んでいた。
さきほど乾杯したものである。
時頼さんはウーロン茶で、真理花はオレンジジュースで乾杯した。
「いやあ、それで今回はどうだったんだ皆、櫂のほかに活躍した奴は?唯ちゃんとか、舌での活躍は無かったの?舌戦とか」
「いえ、無いですよ」
「君可愛いね、新しく入ってきたの?名前は?」
そう次郎ばかりしゃべる。
「い、いえ僕は」
「僕は?」
「いえ、私は櫂さんほどには活躍できなくて・・・・・・・私のかつての上司にドカーンと向かってバターンと倒れて・・・・・」
「ふんふん」
「後は気づいたら櫂さんがガロアを倒していました」
「ふーん。じゃあ君は女の子なのに敵に立ち向かったのかあ。いい新人が入ってきたなあ、櫂」
そう言い櫂の背中をばんばん叩く次郎。
「次郎、あんまり真理花を困らせないでくれないか。この子はまだ入ったばかりで右も左も分からないんだよ」
「そうかあ、でも俺からみたら落ち着いているって言うか、度胸がありそうって言うか・・・・・・」
「あの、私、櫂さんみたいになりたくて・・・・・櫂さんっていつからこんな風なんですか?なんというか何が起きても動じないみたいな雰囲気あるじゃないですか?」
「ああ、こいつは俺と知り合う前からこう。俺にも心を許さないしな」
「そうですか・・・・・・」
「おいおい、次郎、それはないだろう。ちゃんと仲良くしているじゃないか」
「だけどな、お前の本音って分からないんだよ。時々俺は本当にお前のことが分からなくなる」
そうビール片手に次郎は言う。
「そうですよね、次郎さん。私も櫂の本音って分からなくなるときありますよ」
「唯ちゃんもそうか」
「あの私もです」
そうあのはるかでさえ言った。
日向櫂は・・・・・・・・困った・・・・・・・・
困ったもんだから、多少すねて物を言う。
「俺は普通に接しているつもりだ。それが批評されるのなら、俺はずっと黙っていた方がいいってことに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ならないか?」
「ならない」
「なりません」
「ならないわね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
櫂は黙る。
さしもの櫂も三対一だ。
多勢に無勢。
退却するほかはないだろう。
「先輩ってそんなに本音が見えないですかね。私は先輩と死会った時にびんびん、先輩の言葉の発するオーラというか、本音が見えたんですが。『こいつと戦うのは楽しい』ってな風に」
「へえーそう」
そう唯が言う。
「櫂、あんた殺人鬼は治ったけれど、相変わらずバトルマニアなのね・・・・・」
「櫂さんそうなんですか?」
そう唯とはるかに言われ、苦笑する櫂。
「ああ、そう言われれば俺は強い奴との戦いは楽しいな・・・・・・・」
「あっちゃあ・・・・・・そんな本音は聞きたくなかったわあ。それ三十になるまでに矯正しなくちゃね。なんか格闘ゲームとか、ガンダムマキシブーストとかゲームの闘いに刷り返らなくちゃね。櫂、あんた、ゲームとか興味ある?」
「所長、ちょっとうざいぞ」
「まあまあ唯ちゃんはお前を思ってアドバイスしてくれているわけだから・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「私はもうお腹いっぱい。後最後の肉。はるか、食べなさい。まだ私より若いんだから」
「所長・・・・・私一応、大卒ですよ?」
「・・・・・・・・ってことは私の方が年下か。だ、だからって態度は変えないからね」
「もうお開きってところか。櫂、俺は帰るよ。お供を頼む」
「ああ」
「あっと間に終わっちゃったなあ」
「ええ、本当に」
そう時頼さんがしめる。
かくしてつかの間のオアシスはお開きとなった。
日向櫂と赤井次郎は冬の寒さの中、外に出る。
「ううー冷えるなあ」
「ああ、寒いな」
「本当に寒いのか?そういうところなんだよ。本当に寒そうに見えないな、俺には」
「いや、寒いよ。少しだけどな」
「そうかあ」
「ああ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
そうして二人とも無言になる。
二人は雪ヶ谷探偵事務所からの帰り道、この街の大きな通りを並んで歩く。
「大事にしろよな、唯ちゃんも真理花ちゃんも、それからはるかちゃんも時頼さんも・・・・・・もうお前は一人じゃないんだから・・・・・・今はあの頃と違い仲間が居る。居心地がいいだろう、この街は?」
「ああ、そうだな」
「それがまっとうな・・・・・・・平凡だが変えがたい、得られがたい庶民の暮らしだ。上を見ろ。ずいぶんと今日は星が見えるだろう?」
「ああ・・・・・・・・・・・・・そうだな」
そう言いながら櫂は次郎に次郎らしくないところを感じていた。別に偽者と言うわけではないが・・・・・・・・
「このたくさんの星の中、人々は皆生きている。大半は何の罪もない平凡な人たちだ。それらの暮らしはきっと本当にかけがえのない、いい暮らしなんだと俺は思う。しかし中には昔のお前のように、闇に巣食う者たちが居る。それぞれ事情はあるが、皆何かのきっかけで悪に染まってしまった、そんな哀れな連中だ。俺はな、お前には、そんな人々を救う存在であってほしいと思うんだ」
「奴らの救済役か・・・・・・・・俺には荷が重いな」
「まあそういうな。全て完璧に救えとは俺も言わないから。できるだけのことでいいんだ。出来る限りで。それとお前はいずれ家庭を持て!そうして畳の上で死ね!そうして死ぬ瞬間は、いい人生だったと後悔しないような、そんな人生を送るんだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・努力するよ」
「ああ、いくらお前が聞きたくなくても、また言ってやる。じゃあな、俺はこっちだ」
そう言い櫂と分かれる次郎。
こうして其の夜は終わった。
物語は再び、戦いへと向かっていく。
櫂はふと、夜空を見上げてみた。
『本当に畳の上で死ねるのか。それとも戦いで派手に散るか』
後者の考えを次郎に言ったらきっと怒るだろう。
もう酔いは醒めてきた。
日向櫂は一人、この先の展開を読もうとする。
ガロア・・・・・・・・・・・・・あの男がこのまま黙っているはずが無い。
今度は警察も本気で来るだろう。
そうなったとき自分に何ができるか・・・・・・・・・・・
『帰ったらまた、瞑想と肉体の訓練だな。今日は腕立て伏せもやるか。久々に・・・・・・・・・・・・・』
そう思い、探偵は帰路につく・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「遅かったな、日向櫂」
「ああ、遅れた。途中、唯の奴と少しやりあってね」
「ふん。まあいい。今回はお前に少し話があって来たんだ。お前さえよければの話だが・・・・どうだ、警察署の刑事にならないか?」
「?なんだって」
それを聞いた櫂は一瞬何を言われたのか理解できなかった。やがて訪れる不理解。
「何だといった?俺が何になるって?」
「だから異能対策本部で私の部下にならないか、と言ったのさ」
そう言うと、舞田の持ち前の美貌に不機嫌さのオーラが見えた。
「いや、俺はこのまま雪ヶ谷探偵事務所で・・・・・・」
「それは惜しい!お前ほどの逸材なら、警察の、公共の為の兵隊になるのがいい!それも大佐クラスの!」
「いや、このまま雪ヶ谷探偵事務所に骨を埋めて・・・・・・」
「お前、私の誘いを蹴る気が?」
「確かに今のまま警察と連携ができないのは、苦痛だが、俺は・・・・・・」
「本当にか?二度と誘ってはやらないぞ」
「すまない、舞田さん。でも警察との連携は必要と分かってほしい。ガロアみたいな化け物に警察は後手を踏んでしまっている。幸いあなたの命は取り留めたが、この先、どうなるか、俺にも分からない。ガロアは今、力を溜めている。そんな気が・・・・・俺にはする」
「・・・・・・・・・・・・・・・・私の側に居てほしかったのに(小声)」
「警察はガロアと今回の誘拐のことどう見ている?」
「ああ・・・・・・・ガロアの居場所は今、洗っているところだ。場所はわかるだろう。いいか。捜査は鉄壁だ。警察の捜査は必ず成功する。ほぼ100パーセント。なぜだか、分かるか?」
「いいや」
「それはな苦労するからだよ。どんな些細なことにも因果があるからだ。警察が必死に捜査した。それに結果が因果として付いてくるからだ」
「なるほど、確かに・・・・・・ウチと警察では規模が違う。後、捜査権もな。それは探偵に無いものだ。それも欲しいよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・ガロアの居場所を突き止めたら一応お前にも連絡しよう。今回の事件は現場の刑事が怒っていてな・・・・・・使えるものは使えとのことだ。だから万一のことが無いようにお前たち雪ヶ谷探偵事務所にも連絡する」
「ありがたい」
「しかし、それは今回限りの方法だ。後、勘違いするなよ、あくまでも主導権は警察にある。日向櫂、お前の戦闘力、勇気、機転には皆、一目置いている。ただ・・・・・・これからも、事件を追いたいなら、警察に所属するしかないぞ・・・・・・」
「分かった。後は唯に報告してから判断するよ。ただ俺は・・・・・警察には居られないんだ」
「過去の殺人のことか?あれは不問にしてもいいぞ」
「いや、違う。そんなことじゃないんだ。俺は自由にやりたいんだよ。後、警察って組織には懲りている」
「そうか。まあもう終わったことだ。私は本当に、お前が欲しかったからな。私の権力で強引に行けば、出世もする。女にも会えるぞ」
「すまない舞田さん。今回のことは感謝する。だが俺にも道と言うものが見えるんだ。そこを歩むだけ・・・・・・後、アメジストのことは忘れていないよな?」
「ああ、当然、それを持っているのはガロア、奴だ。今度は警察の権力を存分に使う。お前の話も聞いていたからな。機動隊も出るだろう」
「!そうか、まあいずれあんたも学ぶよ」
そう言うと、日向櫂は部屋から出て行った。
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櫂はそんな謎の言葉を残した。
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やがて午後は流れて、夕方になり、夜がやってきた。
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それはガロアから舞田刑事を取り返したり。
新しく真理花が加わったり
後は櫂と唯の仲直り(?)を祝してのささやかな鍋パーティーだった。
参加しているのは、日向櫂、雪ヶ谷唯、池上はるか、桜井真理花(ロキ)、神埼時頼、後は日向櫂の親友の赤井次郎だった。
「それでは皆様の活躍を祝して、カンパーイ!」
そう音頭を取るのは、赤井次郎である。
「それにつづいて」
「乾杯」
「乾杯!」
「はいはいかんぱい」
「乾杯です」
「か、かんぱい」
皆それぞれにつづく。
櫂は苦笑した。
『皆、なかなか個性があるじゃないか』
櫂はそう思った。
ちなみに「乾杯」と言ったのが日向櫂である。
所長室のテーブルの上には一つの鍋がある。
其の中に、キムチの匂いのする豆腐だったりねぎだったり豚肉だったり、さまざまな物が入っている。
そうして櫂や唯、池上はるか、赤井次郎はビールを飲んでいた。
さきほど乾杯したものである。
時頼さんはウーロン茶で、真理花はオレンジジュースで乾杯した。
「いやあ、それで今回はどうだったんだ皆、櫂のほかに活躍した奴は?唯ちゃんとか、舌での活躍は無かったの?舌戦とか」
「いえ、無いですよ」
「君可愛いね、新しく入ってきたの?名前は?」
そう次郎ばかりしゃべる。
「い、いえ僕は」
「僕は?」
「いえ、私は櫂さんほどには活躍できなくて・・・・・・・私のかつての上司にドカーンと向かってバターンと倒れて・・・・・」
「ふんふん」
「後は気づいたら櫂さんがガロアを倒していました」
「ふーん。じゃあ君は女の子なのに敵に立ち向かったのかあ。いい新人が入ってきたなあ、櫂」
そう言い櫂の背中をばんばん叩く次郎。
「次郎、あんまり真理花を困らせないでくれないか。この子はまだ入ったばかりで右も左も分からないんだよ」
「そうかあ、でも俺からみたら落ち着いているって言うか、度胸がありそうって言うか・・・・・・」
「あの、私、櫂さんみたいになりたくて・・・・・櫂さんっていつからこんな風なんですか?なんというか何が起きても動じないみたいな雰囲気あるじゃないですか?」
「ああ、こいつは俺と知り合う前からこう。俺にも心を許さないしな」
「そうですか・・・・・・」
「おいおい、次郎、それはないだろう。ちゃんと仲良くしているじゃないか」
「だけどな、お前の本音って分からないんだよ。時々俺は本当にお前のことが分からなくなる」
そうビール片手に次郎は言う。
「そうですよね、次郎さん。私も櫂の本音って分からなくなるときありますよ」
「唯ちゃんもそうか」
「あの私もです」
そうあのはるかでさえ言った。
日向櫂は・・・・・・・・困った・・・・・・・・
困ったもんだから、多少すねて物を言う。
「俺は普通に接しているつもりだ。それが批評されるのなら、俺はずっと黙っていた方がいいってことに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ならないか?」
「ならない」
「なりません」
「ならないわね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
櫂は黙る。
さしもの櫂も三対一だ。
多勢に無勢。
退却するほかはないだろう。
「先輩ってそんなに本音が見えないですかね。私は先輩と死会った時にびんびん、先輩の言葉の発するオーラというか、本音が見えたんですが。『こいつと戦うのは楽しい』ってな風に」
「へえーそう」
そう唯が言う。
「櫂、あんた殺人鬼は治ったけれど、相変わらずバトルマニアなのね・・・・・」
「櫂さんそうなんですか?」
そう唯とはるかに言われ、苦笑する櫂。
「ああ、そう言われれば俺は強い奴との戦いは楽しいな・・・・・・・」
「あっちゃあ・・・・・・そんな本音は聞きたくなかったわあ。それ三十になるまでに矯正しなくちゃね。なんか格闘ゲームとか、ガンダムマキシブーストとかゲームの闘いに刷り返らなくちゃね。櫂、あんた、ゲームとか興味ある?」
「所長、ちょっとうざいぞ」
「まあまあ唯ちゃんはお前を思ってアドバイスしてくれているわけだから・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「私はもうお腹いっぱい。後最後の肉。はるか、食べなさい。まだ私より若いんだから」
「所長・・・・・私一応、大卒ですよ?」
「・・・・・・・・ってことは私の方が年下か。だ、だからって態度は変えないからね」
「もうお開きってところか。櫂、俺は帰るよ。お供を頼む」
「ああ」
「あっと間に終わっちゃったなあ」
「ええ、本当に」
そう時頼さんがしめる。
かくしてつかの間のオアシスはお開きとなった。
日向櫂と赤井次郎は冬の寒さの中、外に出る。
「ううー冷えるなあ」
「ああ、寒いな」
「本当に寒いのか?そういうところなんだよ。本当に寒そうに見えないな、俺には」
「いや、寒いよ。少しだけどな」
「そうかあ」
「ああ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
そうして二人とも無言になる。
二人は雪ヶ谷探偵事務所からの帰り道、この街の大きな通りを並んで歩く。
「大事にしろよな、唯ちゃんも真理花ちゃんも、それからはるかちゃんも時頼さんも・・・・・・もうお前は一人じゃないんだから・・・・・・今はあの頃と違い仲間が居る。居心地がいいだろう、この街は?」
「ああ、そうだな」
「それがまっとうな・・・・・・・平凡だが変えがたい、得られがたい庶民の暮らしだ。上を見ろ。ずいぶんと今日は星が見えるだろう?」
「ああ・・・・・・・・・・・・・そうだな」
そう言いながら櫂は次郎に次郎らしくないところを感じていた。別に偽者と言うわけではないが・・・・・・・・
「このたくさんの星の中、人々は皆生きている。大半は何の罪もない平凡な人たちだ。それらの暮らしはきっと本当にかけがえのない、いい暮らしなんだと俺は思う。しかし中には昔のお前のように、闇に巣食う者たちが居る。それぞれ事情はあるが、皆何かのきっかけで悪に染まってしまった、そんな哀れな連中だ。俺はな、お前には、そんな人々を救う存在であってほしいと思うんだ」
「奴らの救済役か・・・・・・・・俺には荷が重いな」
「まあそういうな。全て完璧に救えとは俺も言わないから。できるだけのことでいいんだ。出来る限りで。それとお前はいずれ家庭を持て!そうして畳の上で死ね!そうして死ぬ瞬間は、いい人生だったと後悔しないような、そんな人生を送るんだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・努力するよ」
「ああ、いくらお前が聞きたくなくても、また言ってやる。じゃあな、俺はこっちだ」
そう言い櫂と分かれる次郎。
こうして其の夜は終わった。
物語は再び、戦いへと向かっていく。
櫂はふと、夜空を見上げてみた。
『本当に畳の上で死ねるのか。それとも戦いで派手に散るか』
後者の考えを次郎に言ったらきっと怒るだろう。
もう酔いは醒めてきた。
日向櫂は一人、この先の展開を読もうとする。
ガロア・・・・・・・・・・・・・あの男がこのまま黙っているはずが無い。
今度は警察も本気で来るだろう。
そうなったとき自分に何ができるか・・・・・・・・・・・
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