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六章 アイオン落日編
巴組
「賭場かよ!」
或いは鉄火場。
何やら博徒の巣窟みたいな光景がそこにあった。
畳敷き、武装片手に座って卓を囲む紳士淑女。
まさに賭場である。
花札とか賽子は無いけど雰囲気はまんま。
ファンクラブどこいった。
「ライム、これファンクラブの皮被ったカジノ的な何かだよね。外見は巴好みにしてあるようだけど……」
「あー……いえ。賭場じゃありやせん。そうか、今日はコレもあったか。道理でハコがデカい訳だ」
「?」
「旦那、ここはイカサマ御法度の運のみ一発勝負の……遊戯場、っすね」
「……いやいや」
そいつは言葉遊び、ってもんでしょ。
「まあ、見てください。あそこ、まあ姐さんに言わせれば丁半博打なんすけど」
「僕が見てもそうだよ。明らかに賽子をお椀にチンチロリン……って何言わすかな」
「でも賭けてるのが金じゃねえんす」
「??」
んん?
いや、かなり本格的なコインが見えるぞ。
いわゆるチップだろ。
「あのコインはファンクラブが独自に発行してる巴文って代物でして。基本的には毎月頭に会員たちに配って、ファンクラブ内で直接金が物を言わないよう色々やってるって寸法で」
「と、トモエモン……」
なんて名前のコインだよ。
そしてなんというブラックな。
もはやカ〇ジ、ペ〇カの世界じゃないか。
「札束で金持ちが何もかも持っていくようなファンクラブの在り様は絶対にあってはならないって暗黙の了解の下、連中も中々上手い事考えてやってますよ」
「札束で何もかも、ねえ」
まあでもお金持ちがより多くを手に入れるのはこの世の常。
抽選を取り入れたところで原則的には変わるもんじゃない。
それに必ずしも金持ちでなくとも、入れ込み度合いで収入の何割を注ぎ込むかは変わってくる。
熱心なファンがお金をより多く投じるのと金持ちの暴力とは微妙に違うような……金に綺麗も汚いもあるかって商人的センスで考えるべきか。
「この街ほど格差があるとこもそうはありやせんからねえ」
「それは確かに」
「ここじゃ姐さん絡みの情報や品物なんかを運営に渡す事でレア度や距離に応じた巴文が配布されやす。それを使って別のグッズをゲットしたり、次に備えて貯蓄したり、まあファンの間の小遣いみたいな感じすね」
「じゃあ、あの博打風景は何さ?」
「ありゃ一種のオークションす」
「オークション!?」
「大体すけど5文か10文が参加費でして、その日最も運に愛された奴が該当の一点ものの姐さんグッズを手に入れられる仕組みすね。建前上、ダブルアップを繰り返してトーナメントの頂点に立つと即決価格の巴文と同額になる寸法です」
巴グッズ……。
「これまでの話から察するに、参加費しか金を賭けられない訳ね」
「ご明察っす」
「……ちょっとさらっと流したんだけどさ。レア度ってのはわかるけど距離ってなに?」
「姐さんの髪留めとかは距離ゼロっすよね。あれの欠損品が場に出た時はオークションの熱気は今日の日じゃなかった」
距離、ってそういう……。
え、この人たちほどよくマニアに熟成されてない?
ほどよくも……無いか?
いき過ぎてるかな。
ライムはさも当然の様にうんうん頷いてるし。
「身につけてる物が距離的には一番価値があると」
「巴文的には、そうすね」
「ならあれか? フードコートとかで巴が巴がグラスで酒を飲んだりするとするよね」
多少言葉が怪しくなりつつあるけど、僕はまだ正気だ。
「……へい」
「使い捨てのグラスならまあ当然捨てるだろうけど」
「……」
「それがここにレア物扱いで持ち込まれたりする、とか?」
組織ごと潰した方が良い案件かどうか、今天秤が揺れている。
「旦那、そいつはかなりのアウト案件っす。そういうコアな連中もいるでしょうが、ここは正当といいますか真っ当なとこすから。ただ地下に潜ってる少数派にはもしかしたら、はありますかねぇ」
ライムが真顔で即答した。
最後のとこはかなり小さな声で残念そうに呟いてた。
「線引きは一応ある、のか」
「ええ。巴組だと髪留めとか刀の鍔、帯留めの損傷品なんかは姐さんが誰かにくれてやったものだとか、捨てようとしたところをお願いしてもらったもんだとか。人から人へのルールっつうんすかね。まあ多少グレーゾーンはあるにしても旦那がさっき仰ったようなゴミ漁りみたいな真似はしねえす」
「……なるほど。ちなみにこれ」
「!?」
「巴手製の根付、大分初期の手習いで作った物だけど。こういうのがレア物になると」
「……恐らく2000文は下らねえかと」
「……流石は相談役。詳しいな」
だがその価値がわからん。
「何ならそいつを手土産に旦那が会員ナンバーゼロになっちまいますか?」
「冗談きついよ、ライム。今後ここに来る事も多分無いだろうしね、これはお前から後で巴組の運営さんに贈っておいて。一見学者からの挨拶代わりって事でさ」
そうすりゃライムの株も多少はあがるだろう。
ここの監視は彼に任せる。
定期的に来てたら、今感じてる背筋のムズムズ感が持病になりそう。
「……謹んで頂戴致します」
「うん。で、あと実際に出回ってるグッズてのを一通り見て、澪の方に行きたいんだけど」
「わかりやした。こちらへどうぞ」
異様な熱気渦巻く中、ライムに続いて会場を歩く。
ふむ……アイオンのネズミが叩きだされてたけどなるほど。
とにかく巴様と姐さん、姐御ってワードが飛び交ってる。
そして話題についてもあいつの事や澪の事が中心だ。
別に澪を敵視してる訳じゃなく、あくまで巴の方が好きな人達の集まりなんだな。
特に澪をディスってるような様子もない。
巴アゲ、澪サゲナイ。
うん、ファンクラブとしては素晴らしいんじゃないでしょうか。
そしてこれだけ染まってる方々だけに、僕みたく何とか一時的に馴染もうとしてる輩ってのは目立つ。
ファンだけど場の空気にまだ慣れていない、ってのともまた違うからな。
これはネズミさんたちも苦労するわ。
殆どがどっかのフィルターで弾かれるわな。
そして残ったのもライムを置いておけば洗い出せると。
後はグッズだ。
不要な私物とかならまだしもグッズとなると暴走しやすそうだもんな。
おっ〇いマウスパッドとか。
……あれレベルはギリギリセーフにすべきか?
アウトのが無難か?
難しいな。
「絵か」
案内された先の物販コーナーにはポストカードサイズの巴を描いた絵が並んでいた。
実に健康的というか、あいつが街を闊歩する時の姿や荒野に出る時のやや戦闘向きの姿そのものだ。
別に水着になったりもしてない。
「一番人気っすね。普段も忍ばせやすいサイズも多いすから。基本的には先ほどお伝えしたように巴文を使ってやりとりするんすけど、少数は現金でも売買されてやす。運営費は寄付がかなり集まるんで困窮してる訳ではないんすけど……どちらかといえば運は無くとも配布の巴文以上にグッズが欲しい小金持ちの熱烈な要望に負けた形すね」
「……なるほどねえ。確かに、コーナーのサイズを見るに金の方はかなり少なめの販売量にしてるんだな」
「今後バランスは変わっていきそうですが、今んとこはこんな塩梅になってやす」
「半々くらいまでは仕方ないと思うよ。これだけの規模の集まりを管理してイベントを運営するのも大変な事だろうからね」
「旦那がそうおっしゃって下さると連中も胸を撫で下ろしやすよ、きっと」
並べてあるのも巴文とは違う巴をあしらった大きめのメダル。
ポストカードサイズの絵各種。
大小様々なサイズの人形。
刀を模した木刀。
ピンズ? いやボタンの留め具か? まあそんな感じの小さな金属製のもの。
特にやばいものは無かった。
一つ、等身大に近い巴像があったけど……見なかった事にした。
そこそこ値段もするだろうにミスリル製だったし、売り物かそうでないかの確認をするのも少し怖かったから。
「特に問題なさそうだね」
「万が一に備えて俺と何人かで目は光らせてますんで、どうかご安心を」
「ああ。じゃ澪の方いこっか。相談役」
「お任せください!」
倉庫街を出て一路街中へ。
巴組は何かイベントもあって郊外の倉庫街だったけど、そうか。
普通は街中の集まりやすいとこで皆集まるよね。
うんうんと頷きながら、ふと思いついたままにライムに聞いてみた。
「あのさ、ライム。巴組ってさ」
「?」
「巴のファンなのに何で陶芸はやってないの? あいつも陶芸話ならノリノリでファンの集いにも出かけていきそうなのに。ライムなら一応教えてやれるだろう?」
「……」
「ライム?」
「旦那」
「うん」
「旦那も、やっぱ天才なんすね」
「……どこが?」
「そうすよね! 姐さん、陶芸すげえハマってますもんね!」
「ああ、巴もベレンも。亜空じゃ定番の趣味におさまってるじゃないか。ライムだってその一人だろ」
「……そうか、別に秘匿してるもんでもないって。じゃあ一回連中と姐さんで陶芸の集いって括りでいきゃあ……」
「うん、意外とツィーゲの人からもハマる人出るかもしれないでしょ。まあとりあえず巴組の人らで始めてみて……いい加減ウチだけの独占にするもんでもないでしょ。それより大勢が参加する事で凄い傑作が生まれる下地を整え始めてみる方が亜空の刺激にもなるし」
「……で、姐さんに認めてもらった出来のに何か銘を……そうだ、いっそトモエなんて名前そのものにしちまうなんてのも」
「? ライム?」
聞いてないフインキですね、ライム君。
「巴組は他の追随を一切寄せ付けない筆頭ファンクラブの座に!」
「……ライム? 一応、君は目を光らせる目的で相談役になったんだよね?」
「……」
「もしもし?」
「……と、当然じゃないすか!?」
「……わかった。そういう事にしとく」
「旦那!?」
澪の方は一体どんな温度感なんだろうな。
あいつのファンクラブだから、料理人の方々中心とか?
ライムの存在感を強める何かを澪の方のファンクラブにも提供しときたいとこだけどな。
さて、まずは行って見てみない事にはわからんか。
そしてライムの奴。
澪の方もガチの相談役をやってんのかな。
或いは鉄火場。
何やら博徒の巣窟みたいな光景がそこにあった。
畳敷き、武装片手に座って卓を囲む紳士淑女。
まさに賭場である。
花札とか賽子は無いけど雰囲気はまんま。
ファンクラブどこいった。
「ライム、これファンクラブの皮被ったカジノ的な何かだよね。外見は巴好みにしてあるようだけど……」
「あー……いえ。賭場じゃありやせん。そうか、今日はコレもあったか。道理でハコがデカい訳だ」
「?」
「旦那、ここはイカサマ御法度の運のみ一発勝負の……遊戯場、っすね」
「……いやいや」
そいつは言葉遊び、ってもんでしょ。
「まあ、見てください。あそこ、まあ姐さんに言わせれば丁半博打なんすけど」
「僕が見てもそうだよ。明らかに賽子をお椀にチンチロリン……って何言わすかな」
「でも賭けてるのが金じゃねえんす」
「??」
んん?
いや、かなり本格的なコインが見えるぞ。
いわゆるチップだろ。
「あのコインはファンクラブが独自に発行してる巴文って代物でして。基本的には毎月頭に会員たちに配って、ファンクラブ内で直接金が物を言わないよう色々やってるって寸法で」
「と、トモエモン……」
なんて名前のコインだよ。
そしてなんというブラックな。
もはやカ〇ジ、ペ〇カの世界じゃないか。
「札束で金持ちが何もかも持っていくようなファンクラブの在り様は絶対にあってはならないって暗黙の了解の下、連中も中々上手い事考えてやってますよ」
「札束で何もかも、ねえ」
まあでもお金持ちがより多くを手に入れるのはこの世の常。
抽選を取り入れたところで原則的には変わるもんじゃない。
それに必ずしも金持ちでなくとも、入れ込み度合いで収入の何割を注ぎ込むかは変わってくる。
熱心なファンがお金をより多く投じるのと金持ちの暴力とは微妙に違うような……金に綺麗も汚いもあるかって商人的センスで考えるべきか。
「この街ほど格差があるとこもそうはありやせんからねえ」
「それは確かに」
「ここじゃ姐さん絡みの情報や品物なんかを運営に渡す事でレア度や距離に応じた巴文が配布されやす。それを使って別のグッズをゲットしたり、次に備えて貯蓄したり、まあファンの間の小遣いみたいな感じすね」
「じゃあ、あの博打風景は何さ?」
「ありゃ一種のオークションす」
「オークション!?」
「大体すけど5文か10文が参加費でして、その日最も運に愛された奴が該当の一点ものの姐さんグッズを手に入れられる仕組みすね。建前上、ダブルアップを繰り返してトーナメントの頂点に立つと即決価格の巴文と同額になる寸法です」
巴グッズ……。
「これまでの話から察するに、参加費しか金を賭けられない訳ね」
「ご明察っす」
「……ちょっとさらっと流したんだけどさ。レア度ってのはわかるけど距離ってなに?」
「姐さんの髪留めとかは距離ゼロっすよね。あれの欠損品が場に出た時はオークションの熱気は今日の日じゃなかった」
距離、ってそういう……。
え、この人たちほどよくマニアに熟成されてない?
ほどよくも……無いか?
いき過ぎてるかな。
ライムはさも当然の様にうんうん頷いてるし。
「身につけてる物が距離的には一番価値があると」
「巴文的には、そうすね」
「ならあれか? フードコートとかで巴が巴がグラスで酒を飲んだりするとするよね」
多少言葉が怪しくなりつつあるけど、僕はまだ正気だ。
「……へい」
「使い捨てのグラスならまあ当然捨てるだろうけど」
「……」
「それがここにレア物扱いで持ち込まれたりする、とか?」
組織ごと潰した方が良い案件かどうか、今天秤が揺れている。
「旦那、そいつはかなりのアウト案件っす。そういうコアな連中もいるでしょうが、ここは正当といいますか真っ当なとこすから。ただ地下に潜ってる少数派にはもしかしたら、はありますかねぇ」
ライムが真顔で即答した。
最後のとこはかなり小さな声で残念そうに呟いてた。
「線引きは一応ある、のか」
「ええ。巴組だと髪留めとか刀の鍔、帯留めの損傷品なんかは姐さんが誰かにくれてやったものだとか、捨てようとしたところをお願いしてもらったもんだとか。人から人へのルールっつうんすかね。まあ多少グレーゾーンはあるにしても旦那がさっき仰ったようなゴミ漁りみたいな真似はしねえす」
「……なるほど。ちなみにこれ」
「!?」
「巴手製の根付、大分初期の手習いで作った物だけど。こういうのがレア物になると」
「……恐らく2000文は下らねえかと」
「……流石は相談役。詳しいな」
だがその価値がわからん。
「何ならそいつを手土産に旦那が会員ナンバーゼロになっちまいますか?」
「冗談きついよ、ライム。今後ここに来る事も多分無いだろうしね、これはお前から後で巴組の運営さんに贈っておいて。一見学者からの挨拶代わりって事でさ」
そうすりゃライムの株も多少はあがるだろう。
ここの監視は彼に任せる。
定期的に来てたら、今感じてる背筋のムズムズ感が持病になりそう。
「……謹んで頂戴致します」
「うん。で、あと実際に出回ってるグッズてのを一通り見て、澪の方に行きたいんだけど」
「わかりやした。こちらへどうぞ」
異様な熱気渦巻く中、ライムに続いて会場を歩く。
ふむ……アイオンのネズミが叩きだされてたけどなるほど。
とにかく巴様と姐さん、姐御ってワードが飛び交ってる。
そして話題についてもあいつの事や澪の事が中心だ。
別に澪を敵視してる訳じゃなく、あくまで巴の方が好きな人達の集まりなんだな。
特に澪をディスってるような様子もない。
巴アゲ、澪サゲナイ。
うん、ファンクラブとしては素晴らしいんじゃないでしょうか。
そしてこれだけ染まってる方々だけに、僕みたく何とか一時的に馴染もうとしてる輩ってのは目立つ。
ファンだけど場の空気にまだ慣れていない、ってのともまた違うからな。
これはネズミさんたちも苦労するわ。
殆どがどっかのフィルターで弾かれるわな。
そして残ったのもライムを置いておけば洗い出せると。
後はグッズだ。
不要な私物とかならまだしもグッズとなると暴走しやすそうだもんな。
おっ〇いマウスパッドとか。
……あれレベルはギリギリセーフにすべきか?
アウトのが無難か?
難しいな。
「絵か」
案内された先の物販コーナーにはポストカードサイズの巴を描いた絵が並んでいた。
実に健康的というか、あいつが街を闊歩する時の姿や荒野に出る時のやや戦闘向きの姿そのものだ。
別に水着になったりもしてない。
「一番人気っすね。普段も忍ばせやすいサイズも多いすから。基本的には先ほどお伝えしたように巴文を使ってやりとりするんすけど、少数は現金でも売買されてやす。運営費は寄付がかなり集まるんで困窮してる訳ではないんすけど……どちらかといえば運は無くとも配布の巴文以上にグッズが欲しい小金持ちの熱烈な要望に負けた形すね」
「……なるほどねえ。確かに、コーナーのサイズを見るに金の方はかなり少なめの販売量にしてるんだな」
「今後バランスは変わっていきそうですが、今んとこはこんな塩梅になってやす」
「半々くらいまでは仕方ないと思うよ。これだけの規模の集まりを管理してイベントを運営するのも大変な事だろうからね」
「旦那がそうおっしゃって下さると連中も胸を撫で下ろしやすよ、きっと」
並べてあるのも巴文とは違う巴をあしらった大きめのメダル。
ポストカードサイズの絵各種。
大小様々なサイズの人形。
刀を模した木刀。
ピンズ? いやボタンの留め具か? まあそんな感じの小さな金属製のもの。
特にやばいものは無かった。
一つ、等身大に近い巴像があったけど……見なかった事にした。
そこそこ値段もするだろうにミスリル製だったし、売り物かそうでないかの確認をするのも少し怖かったから。
「特に問題なさそうだね」
「万が一に備えて俺と何人かで目は光らせてますんで、どうかご安心を」
「ああ。じゃ澪の方いこっか。相談役」
「お任せください!」
倉庫街を出て一路街中へ。
巴組は何かイベントもあって郊外の倉庫街だったけど、そうか。
普通は街中の集まりやすいとこで皆集まるよね。
うんうんと頷きながら、ふと思いついたままにライムに聞いてみた。
「あのさ、ライム。巴組ってさ」
「?」
「巴のファンなのに何で陶芸はやってないの? あいつも陶芸話ならノリノリでファンの集いにも出かけていきそうなのに。ライムなら一応教えてやれるだろう?」
「……」
「ライム?」
「旦那」
「うん」
「旦那も、やっぱ天才なんすね」
「……どこが?」
「そうすよね! 姐さん、陶芸すげえハマってますもんね!」
「ああ、巴もベレンも。亜空じゃ定番の趣味におさまってるじゃないか。ライムだってその一人だろ」
「……そうか、別に秘匿してるもんでもないって。じゃあ一回連中と姐さんで陶芸の集いって括りでいきゃあ……」
「うん、意外とツィーゲの人からもハマる人出るかもしれないでしょ。まあとりあえず巴組の人らで始めてみて……いい加減ウチだけの独占にするもんでもないでしょ。それより大勢が参加する事で凄い傑作が生まれる下地を整え始めてみる方が亜空の刺激にもなるし」
「……で、姐さんに認めてもらった出来のに何か銘を……そうだ、いっそトモエなんて名前そのものにしちまうなんてのも」
「? ライム?」
聞いてないフインキですね、ライム君。
「巴組は他の追随を一切寄せ付けない筆頭ファンクラブの座に!」
「……ライム? 一応、君は目を光らせる目的で相談役になったんだよね?」
「……」
「もしもし?」
「……と、当然じゃないすか!?」
「……わかった。そういう事にしとく」
「旦那!?」
澪の方は一体どんな温度感なんだろうな。
あいつのファンクラブだから、料理人の方々中心とか?
ライムの存在感を強める何かを澪の方のファンクラブにも提供しときたいとこだけどな。
さて、まずは行って見てみない事にはわからんか。
そしてライムの奴。
澪の方もガチの相談役をやってんのかな。
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※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です