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七章 蜃気楼都市小閑編
未踏のステージへ②
これもまた商談、なんだろうか。
ツィーゲが独立し国家になる少しばかり前、僕はレンブラントさんとモリスさんを温泉に招待した。
招待……あれは半ば強制的だったような気もしないでもないけど。
奥様の方はもっと前に巴と澪が招いたらしく、最近はそこそこのペースで通っていると聞く。
聞く、ってのはまあ毎回直接お会いしてる訳じゃないって意味で。
だってさ、奥様は奥様で人妻な訳で……いくらウチの施設に来てるからって温泉だ。
毎度僕が出向いて行って世間話やら身の回りの事を伺うってのもやって良い事なのかって葛藤がある。
レンブラントさんとこはラブラブだしな!
とはいえこちらはハルナやアキナ、場合によっては巴だとか澪がちょこちょこ顔を出してくれているようなのでいっそ任せて問題ないと思ってる。
今ここで裸の付き合い、一緒に温泉に入っているメンツに僕が相談しているのはそれじゃないんだ。
「という訳で最近何かとカプリさんがウチに来て困ってるんですよ。皆さんはあの方とどうお付き合いされてるんです?」
今のツィーゲでも変わらずトップを走っているレンブラントさんとそのお友達。
すなわちレンブラント、ブロンズマン、バトマ、ムゾー商会の代表が魔の山温泉郷で骨休めをしているところ。
僕はその接待役として同席してる感じだ。
「むしろずるいな。私は無視してもいいと言ったのに追い出されたのだが」
明らかに商談相手がビビるからです、レンブラントさん。
最初は明らかに興味なかったくせにスターリングエンジン模型。
「俺は応接室から自主的に退室したのに店からもおんだされた。あの嬢ちゃんだけ特別扱いはねえんじゃねえか?」
店のショーケースを貴方のとこの若いのに占拠させて座り込んだからです、ブロンズマンさん。
どんだけ開き直った営業妨害ですか。
「私はショーケース以前に話すらまともに聞いてもらえなかったと記憶してる」
アーシェスの結婚相手なんて僕に紹介できる訳ないでしょうが、バトマ氏。
いくら業態がなんでも屋でも結婚紹介所はやってないんですよ。
「実際、あれは魅力的ですからねえ。展示が変わったと聞かされたら一度は見に行っておかないと後悔する。私は最近ですと煙を観賞用に仕立て上げてしまう香炉が気に入りました」
質問内容すら完全に無視して物を思い出したのかうんうん頷くムゾーさん。
唯一僕への愚痴ではないけれど、この人は趣味がもともと骨董好きだったようで陶器や漆器の時に細い目を見開いて血走らせていたのを覚えてる。
香炉、アロマの香りを屋外の特定エリアにも満たせるという触れ込みの巨大流川香にも大分興味を持っていると見える。
個人的に僕もあれは好きだけど、香炉本体よりも香りを屋外でも楽しめるって機能の方に注目して欲しかった。
生き物みたくゆらゆら流れる煙も確かに見ごたえがあるんだけどさ。
「ああ、あれは良いな。新しく作る公園の幾つかに試しに設置してみるのも良い」
「そうかぁ? 俺はあのミニチュアゴーレムのがとんでもねえと思うぜ?」
「カプリさんならあのジオラマ? だったかね。あれを見れば厄介な元気を取り戻すのはわかりきっていた事だろうに。どうすれば、ではなく最早手遅れだと思うぞ。うっかり気を抜くと引きずり回されるが金は稼げる。まあ、割り切る事だな、精々儲けろ」
「絵に文字を加えて戯曲をわかりやすく表現するコミックというのも相当面白くなかったかね?」
「あれは宣伝を変えるな」
「宣伝といえばレンブラントさんが仕掛けたアイドル、といいましたか。あれも凄まじい。ツィーゲにおける宣伝や広告のあり方は確実に一変しますよ」
「確かに。土建関係の特需は目に見えてわかりやすいし魔建築は見た目も派手だが、実際中身の激変ぶりだと広告やら宣伝はそれ以上だ。特化した商会が成立しちまう可能性さえあらぁな」
「それにしても路線馬車やシャトル馬車を用いた人の移動範囲の拡大がもたらしてくれるものは計り知れません。あれは正直バトマさんのところが一番美味しいと感じておられるのでは? その基本となる駅という発想。切れる方だとはわかってましたがレンブラントさんはアイデアマンでもいらっしゃる」
「あれの切っ掛けは私ではなくライドウ君だよ。駅や交通網に関する計画や発想は元々彼の中にあったものさ」
「ほう……とはいえ彼の発想そのものでは恐らく我々には到底噛み砕けぬものだったのでしょう。いかな素晴らしい宝石の原石とはいえ磨けないのなら意味がない。いやはや、何気ない筈の一幕が実はとんでもない出会いだったという訳ですか」
「ライドウとレンブラントか? まったく、本当に会っちまって良かった二人なのかどうか議論の尽きねえとこだ」
「駅は確かに旨味が詰まってるが……おいおいあれも元々はライドウか? じゃあ、お前。結局カプリの婆さんを引き寄せたのも自業自得だろうよ。駅の件は礼を言うしウチも方針転換する切っ掛けになったから礼を言うが……石を投げたら跳ね返ってきて痛いって言ってるようなもんだぞ、ライドウ」
「おお、そうだった。そのカプル商会からかなりの相談事項が来ていたな。内容からして皆のとこにもいってるんじゃないかね?」
「山ほどオネガイゴトが来てるぜ。発注から相談まで色々とよ」
「同じく」
「値下げ交渉も、だろう。流石に抜け目がないよ」
「……諸君には言うまでもないが、彼女が今手掛けている仕事は規模も価値も一世一代のものだ。そしてそれは国家としてのツィーゲ全体を支える土台とでもいうべきものになる」
「わかってるさレンブラント。あの婆さんには全面協力一択だ。バトマじゃねえが、そいつが一番得だしな」
「同感です。今後黄金街道を介さない、国内の流通を発展させていく上でもカプル商会を助けるのは当然かと」
「言うまでもない。これから駅が各地に出来ていけばそこにどれだけの需要が生まれるか。カプリ代表が無能ならともかくとんでもなく有能とくれば好きなだけ暴れてもらうのが一番利益が出る」
「結構。無駄な説明がいらんのは助かるな」
四人はもう僕への回答を終えた気でいるのか口々にショーケースの中身をどう街への活用するかやら、オールバブルとでも言うべき空前の好景気に沸くツィーゲについて話しだしてしまった。
ぐぬぬ。
「あのですね、あんまり暴れられると僕らの負担が半端ないんですがそれは――」
「しかしライドウ君。試験的に走らせている馬車の君のとこの駅、さっそくクズノハ商会の職人が手を出し始めたとか?」
「へ、まさか! 僕は駅舎については手出ししないようちゃんと指示を出してますよ?」
「本当に?」
レンブラントさんの問いに釈明しているとムゾーさんも疑わし気に僕を見る。
「当たり前でしょう。折角魔建築のチームがツィーゲで出来てきて仕事にも出始めているというのに、そこに水を差すような真似はしませんって」
『……』
「な、なんです?」
はっきり宣言すると皆さんから更に微妙な視線を送られる。
なんで?
「言うまでもなくクズノハ商会の方が良い仕事はするが見守ってやる、って訳か。言うねえ、ライドウ」
「……はっ!!」
そうか!
ブロンズマンさんとこが魔建築の職人チームを育成、運用してる中心だ。
今の言い方だと彼に喧嘩売ってるようなもんじゃないか!
しまった、レンブラントさんと二人って訳じゃないのに調子に乗ったかも。
「なんてな。そもそも技を盗んでるのはこっちの方だ。お前さんの言い分はおかしなもんじゃねえよ」
「ブロンズマンさん」
「闘志に火はつくがな!」
「すみませんでした!」
「それにだ!」
「?」
「何故だかこのタイミングでクズノハ商会のドワーフどもがウチの近くでよく昼飯を食うようになりやがってな」
「ひるめし、ですか?」
はて。
特にそういう報告は受けてない。
というかツィーゲであれ亜空であれ、好きなとこでご飯を食べてくれていい。
時間もメニューも特に拘束する気はないし。
職人が集まる区画の方がうまい酒があるとか?
「で結構な大声でいう訳だ。これこれこんな感じで塗料を試作してみたら発色はどうだった、だの」
「……」
「黒の塗料に幾つか素材を混入させてみたら光の反射がどうなって保温がどうだのとか」
「……」
「白の塗料にこんな工夫をしてみたら逆に反射率が劇的に上がって魔術なしでも室内の冷却効果がどうの、と」
「……」
「魔建築に関してもそうだが、盗めと言わんばかりにぺらぺらと色々喋ってくれてるぜドワーフども」
「……あ、ははは」
そういう事か。
魔建築とそれに付随して使えそうな適当な技術やら発見をツィーゲにも流してるんだなエルドワ案件として。
多分、今後やたらと頼られてどうでもいい仕事が増えないよう僕らを気遣ってやってくれてる事だろう。
実際魔建築関係で依頼が殺到したらどうしようと思っていた。
いざ蓋を開けてみたらツィーゲの職人が思ったよりもずっと早く似たような工法を取り入れ始めてくれたから仕事としてはパンクする程の事もなく。
ありがたやありがたや。
「助かってるぜ先輩、ありがとうよクソ野郎!ってよろしく伝えといてくれや。ったくよ、この温泉ってのはつくづく最高だな、おい!」
ブロンズマンさんが打たせ湯を浴びに立ち上がり、豪快に仁王立ちしている。
その後ろ姿に他の皆さんは苦笑を漏らすばかり。
「なるほど、ライドウ氏もそれなりに街の為に動いてくれているようで。疑問の幾つかが氷解しました。これも温泉の効能ですかね。私もおおいに気に入りました」
「ちと湯上りの食い物が少ないのが気になるが、概ね同感だな。また一つレンブラント商会とクズノハ商会に弱みを握られたようだが……悪くはない」
「だろう!? 快適で外にも話は漏れず、そして妻も喜ぶ! ここほど優れた交流施設はないと私が保証した通りじゃないかね、諸君! はーはっはっはっは!!」
そりゃケリュネオンにあるから話は漏れない。
ローレルの人ならともかく、あまり入浴の習慣がなかったツィーゲ商人にここまで受けるとは予想外だったよ。
はー……。
カプル商会とはがっつり付き合わないと終わらないか。
時刻表の効率的な作り方とその追及なんて僕じゃ全くわからんのだけど。
ああいうのだとアルケーのミナトか識、それに環あたりなら何かアイデアがある、のかなあ?
ツィーゲが独立し国家になる少しばかり前、僕はレンブラントさんとモリスさんを温泉に招待した。
招待……あれは半ば強制的だったような気もしないでもないけど。
奥様の方はもっと前に巴と澪が招いたらしく、最近はそこそこのペースで通っていると聞く。
聞く、ってのはまあ毎回直接お会いしてる訳じゃないって意味で。
だってさ、奥様は奥様で人妻な訳で……いくらウチの施設に来てるからって温泉だ。
毎度僕が出向いて行って世間話やら身の回りの事を伺うってのもやって良い事なのかって葛藤がある。
レンブラントさんとこはラブラブだしな!
とはいえこちらはハルナやアキナ、場合によっては巴だとか澪がちょこちょこ顔を出してくれているようなのでいっそ任せて問題ないと思ってる。
今ここで裸の付き合い、一緒に温泉に入っているメンツに僕が相談しているのはそれじゃないんだ。
「という訳で最近何かとカプリさんがウチに来て困ってるんですよ。皆さんはあの方とどうお付き合いされてるんです?」
今のツィーゲでも変わらずトップを走っているレンブラントさんとそのお友達。
すなわちレンブラント、ブロンズマン、バトマ、ムゾー商会の代表が魔の山温泉郷で骨休めをしているところ。
僕はその接待役として同席してる感じだ。
「むしろずるいな。私は無視してもいいと言ったのに追い出されたのだが」
明らかに商談相手がビビるからです、レンブラントさん。
最初は明らかに興味なかったくせにスターリングエンジン模型。
「俺は応接室から自主的に退室したのに店からもおんだされた。あの嬢ちゃんだけ特別扱いはねえんじゃねえか?」
店のショーケースを貴方のとこの若いのに占拠させて座り込んだからです、ブロンズマンさん。
どんだけ開き直った営業妨害ですか。
「私はショーケース以前に話すらまともに聞いてもらえなかったと記憶してる」
アーシェスの結婚相手なんて僕に紹介できる訳ないでしょうが、バトマ氏。
いくら業態がなんでも屋でも結婚紹介所はやってないんですよ。
「実際、あれは魅力的ですからねえ。展示が変わったと聞かされたら一度は見に行っておかないと後悔する。私は最近ですと煙を観賞用に仕立て上げてしまう香炉が気に入りました」
質問内容すら完全に無視して物を思い出したのかうんうん頷くムゾーさん。
唯一僕への愚痴ではないけれど、この人は趣味がもともと骨董好きだったようで陶器や漆器の時に細い目を見開いて血走らせていたのを覚えてる。
香炉、アロマの香りを屋外の特定エリアにも満たせるという触れ込みの巨大流川香にも大分興味を持っていると見える。
個人的に僕もあれは好きだけど、香炉本体よりも香りを屋外でも楽しめるって機能の方に注目して欲しかった。
生き物みたくゆらゆら流れる煙も確かに見ごたえがあるんだけどさ。
「ああ、あれは良いな。新しく作る公園の幾つかに試しに設置してみるのも良い」
「そうかぁ? 俺はあのミニチュアゴーレムのがとんでもねえと思うぜ?」
「カプリさんならあのジオラマ? だったかね。あれを見れば厄介な元気を取り戻すのはわかりきっていた事だろうに。どうすれば、ではなく最早手遅れだと思うぞ。うっかり気を抜くと引きずり回されるが金は稼げる。まあ、割り切る事だな、精々儲けろ」
「絵に文字を加えて戯曲をわかりやすく表現するコミックというのも相当面白くなかったかね?」
「あれは宣伝を変えるな」
「宣伝といえばレンブラントさんが仕掛けたアイドル、といいましたか。あれも凄まじい。ツィーゲにおける宣伝や広告のあり方は確実に一変しますよ」
「確かに。土建関係の特需は目に見えてわかりやすいし魔建築は見た目も派手だが、実際中身の激変ぶりだと広告やら宣伝はそれ以上だ。特化した商会が成立しちまう可能性さえあらぁな」
「それにしても路線馬車やシャトル馬車を用いた人の移動範囲の拡大がもたらしてくれるものは計り知れません。あれは正直バトマさんのところが一番美味しいと感じておられるのでは? その基本となる駅という発想。切れる方だとはわかってましたがレンブラントさんはアイデアマンでもいらっしゃる」
「あれの切っ掛けは私ではなくライドウ君だよ。駅や交通網に関する計画や発想は元々彼の中にあったものさ」
「ほう……とはいえ彼の発想そのものでは恐らく我々には到底噛み砕けぬものだったのでしょう。いかな素晴らしい宝石の原石とはいえ磨けないのなら意味がない。いやはや、何気ない筈の一幕が実はとんでもない出会いだったという訳ですか」
「ライドウとレンブラントか? まったく、本当に会っちまって良かった二人なのかどうか議論の尽きねえとこだ」
「駅は確かに旨味が詰まってるが……おいおいあれも元々はライドウか? じゃあ、お前。結局カプリの婆さんを引き寄せたのも自業自得だろうよ。駅の件は礼を言うしウチも方針転換する切っ掛けになったから礼を言うが……石を投げたら跳ね返ってきて痛いって言ってるようなもんだぞ、ライドウ」
「おお、そうだった。そのカプル商会からかなりの相談事項が来ていたな。内容からして皆のとこにもいってるんじゃないかね?」
「山ほどオネガイゴトが来てるぜ。発注から相談まで色々とよ」
「同じく」
「値下げ交渉も、だろう。流石に抜け目がないよ」
「……諸君には言うまでもないが、彼女が今手掛けている仕事は規模も価値も一世一代のものだ。そしてそれは国家としてのツィーゲ全体を支える土台とでもいうべきものになる」
「わかってるさレンブラント。あの婆さんには全面協力一択だ。バトマじゃねえが、そいつが一番得だしな」
「同感です。今後黄金街道を介さない、国内の流通を発展させていく上でもカプル商会を助けるのは当然かと」
「言うまでもない。これから駅が各地に出来ていけばそこにどれだけの需要が生まれるか。カプリ代表が無能ならともかくとんでもなく有能とくれば好きなだけ暴れてもらうのが一番利益が出る」
「結構。無駄な説明がいらんのは助かるな」
四人はもう僕への回答を終えた気でいるのか口々にショーケースの中身をどう街への活用するかやら、オールバブルとでも言うべき空前の好景気に沸くツィーゲについて話しだしてしまった。
ぐぬぬ。
「あのですね、あんまり暴れられると僕らの負担が半端ないんですがそれは――」
「しかしライドウ君。試験的に走らせている馬車の君のとこの駅、さっそくクズノハ商会の職人が手を出し始めたとか?」
「へ、まさか! 僕は駅舎については手出ししないようちゃんと指示を出してますよ?」
「本当に?」
レンブラントさんの問いに釈明しているとムゾーさんも疑わし気に僕を見る。
「当たり前でしょう。折角魔建築のチームがツィーゲで出来てきて仕事にも出始めているというのに、そこに水を差すような真似はしませんって」
『……』
「な、なんです?」
はっきり宣言すると皆さんから更に微妙な視線を送られる。
なんで?
「言うまでもなくクズノハ商会の方が良い仕事はするが見守ってやる、って訳か。言うねえ、ライドウ」
「……はっ!!」
そうか!
ブロンズマンさんとこが魔建築の職人チームを育成、運用してる中心だ。
今の言い方だと彼に喧嘩売ってるようなもんじゃないか!
しまった、レンブラントさんと二人って訳じゃないのに調子に乗ったかも。
「なんてな。そもそも技を盗んでるのはこっちの方だ。お前さんの言い分はおかしなもんじゃねえよ」
「ブロンズマンさん」
「闘志に火はつくがな!」
「すみませんでした!」
「それにだ!」
「?」
「何故だかこのタイミングでクズノハ商会のドワーフどもがウチの近くでよく昼飯を食うようになりやがってな」
「ひるめし、ですか?」
はて。
特にそういう報告は受けてない。
というかツィーゲであれ亜空であれ、好きなとこでご飯を食べてくれていい。
時間もメニューも特に拘束する気はないし。
職人が集まる区画の方がうまい酒があるとか?
「で結構な大声でいう訳だ。これこれこんな感じで塗料を試作してみたら発色はどうだった、だの」
「……」
「黒の塗料に幾つか素材を混入させてみたら光の反射がどうなって保温がどうだのとか」
「……」
「白の塗料にこんな工夫をしてみたら逆に反射率が劇的に上がって魔術なしでも室内の冷却効果がどうの、と」
「……」
「魔建築に関してもそうだが、盗めと言わんばかりにぺらぺらと色々喋ってくれてるぜドワーフども」
「……あ、ははは」
そういう事か。
魔建築とそれに付随して使えそうな適当な技術やら発見をツィーゲにも流してるんだなエルドワ案件として。
多分、今後やたらと頼られてどうでもいい仕事が増えないよう僕らを気遣ってやってくれてる事だろう。
実際魔建築関係で依頼が殺到したらどうしようと思っていた。
いざ蓋を開けてみたらツィーゲの職人が思ったよりもずっと早く似たような工法を取り入れ始めてくれたから仕事としてはパンクする程の事もなく。
ありがたやありがたや。
「助かってるぜ先輩、ありがとうよクソ野郎!ってよろしく伝えといてくれや。ったくよ、この温泉ってのはつくづく最高だな、おい!」
ブロンズマンさんが打たせ湯を浴びに立ち上がり、豪快に仁王立ちしている。
その後ろ姿に他の皆さんは苦笑を漏らすばかり。
「なるほど、ライドウ氏もそれなりに街の為に動いてくれているようで。疑問の幾つかが氷解しました。これも温泉の効能ですかね。私もおおいに気に入りました」
「ちと湯上りの食い物が少ないのが気になるが、概ね同感だな。また一つレンブラント商会とクズノハ商会に弱みを握られたようだが……悪くはない」
「だろう!? 快適で外にも話は漏れず、そして妻も喜ぶ! ここほど優れた交流施設はないと私が保証した通りじゃないかね、諸君! はーはっはっはっは!!」
そりゃケリュネオンにあるから話は漏れない。
ローレルの人ならともかく、あまり入浴の習慣がなかったツィーゲ商人にここまで受けるとは予想外だったよ。
はー……。
カプル商会とはがっつり付き合わないと終わらないか。
時刻表の効率的な作り方とその追及なんて僕じゃ全くわからんのだけど。
ああいうのだとアルケーのミナトか識、それに環あたりなら何かアイデアがある、のかなあ?
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