文字の大きさ
大
中
小
18 / 551
2巻
2-2
1
「なんと!?『絶野』が崩壊!?」
大きな声が建物内に響き渡る。
ここはツィーゲの冒険者ギルド。トアさんたちが仔細を報告している。僕は同席していない。これはトアさんたちのクエストなのだ。ちなみに、澪とリノンは二人でギルド内をうろついている。面白いものでも見つけたのか、楽しそうだ。
報告といっても、トアさんたちは事実をありのまま伝えているわけではない。
トアさんとリノンは果てのベースで起こった出来事を正確に記憶しているが、残りの冒険者三人については、僕が魔法を使って記憶を改竄した。全員まとめて改竄すれば楽な話だけど、トアさんとリノンに魔法をかけるのは少し気が引けたのだ。僕の勝手な我侭。
魔物の大群が絶野に押し寄せてきて、なす術なく蹂躙されました。私たちは、命からがら逃げてきたのです……。みたいな感じに記憶をいじっている。
事実をそのまま報告されると面倒なので、トアさんたちには前もって話を合わせるように伝えてある。
ちなみに絶野とは、今はもう消滅した(正確には巴と澪が崩壊させた)ベースの名前だ。
道中に立ち寄ってきた他のベースにも、リンガとかアンドといった短い名前が付けられていた。
絶野は平均レベルが余裕で100オーバー、ベースとしては最高峰の場所らしい。すぐいなくなる人も平均の内に入っていると考えると実際はもっと凄かったんだろう。まともに活動しているメンバーはレベル200オーバーが普通だったようだし。
まぁ、やり口の汚い奴もいたけどね。
トアさんたちも、一部の悪人(結局、色々あって僕は黒幕の名前を知らないんだよな)の犠牲になりかけていたし。
だからかもしれないけど、一緒に来ている三人の冒険者たちも、あの場所にはそれほどの未練も愛着もなかった様子。
……ただ、トアさんだけはちょっと違うようだ。離れることに異存はなかった感じだけど、心残りがあるみたい。
もし……もしも。
トアさんがいつか再び果ての荒野の奥地に向かうとしても。
僕は何も言えない。
リノンのことだけはちゃんとしていって欲しいなと思うくらいだ。
そういえば、巴と澪のギルドへの登録情報が消えていた。
絶野には他のギルドと情報を共有するための設備がなかったため、冒険者ギルドもろとも登録情報も失われちゃったみたい。
というわけで、二人の再登録は設備の整ったツィーゲまでお預けになっていたのだ。
ツィーゲに到着するまでの間、三つほどのベースに立ち寄ってきたけど、どこも野営地に毛が生えた程度って印象だった。ギルドも絶野と変わらない感じだったので、再登録を見送っていたのだ。
……何かの間違いで、またベースが崩壊する可能性もあったしね。
再登録については巴が戻ってきてからにしよう。今夜にでも呼び出して、明日、改めてギルドに来ればいいか。
そうと決まれば、今日はこれから宿を決めてお店見て回って……あ、商人ギルドの登録もしなくては――。
うううう、やっと、やっと街に着いたんだ! やりたいこといっぱいだよね!!
四人の話が終わったらしい。係の人が奥へと入っていった。
多分偉い人を呼びに行ったんだろう。ベースがなくなったなんて結構な出来事だろうからな。
そーいや、ここの最高レベルとランクってどれくらいなのだろうか。
館内を見回していると、依頼その他の掲示板の横にあるスペースに、ランキングが張り出されているのを見つけた。
……おお、あそこにあるのか。報告に僕がいる必要はないし、ちょっと見にいこう。
ええっと、一番上の人で……。
レベル201、ランクS。
ふむ、やっぱ低く感じる。絶野という特殊な場所の冒険者たちを見ていたうえに、連れが連れだからなあ……。僕の中で「強い」の基準がおかしくなっているみたいだ。
クエストも結構ランクが低いぞ。この感じだと、上位の依頼は個人やパーティを直接指名する、いわゆる特殊ランクが多いのかも。
掲示板に張り出されているのはAとかBプラスの依頼ばかりだ。このランクの依頼が売れ残りだとすると、おそらく中堅レベルのパーティが多くて、かつクエストはD~Bランクが人気、なのか?
にしても、採集系のAランクが余りまくりだな、すげえわ。とてつもなく面倒くさいか、はぐれメ○ルみたいな超レアなやつの部位採集なのか?
……どっちもやだな。僕もやりたくない。
でも、採集系で達成しやすいのはどんな依頼で、どの辺りに行くのかはアタリをつけておこう。
後々、利用できそうだ。
ん……一つだけSランクの依頼が残っているぞ。気になるな。
高いところに張り出されているので、軽くジャンプして用紙を取る。
僕の行動を見て周囲がざわつく。ここでSランクの依頼を受けるのは珍しいことなのかな?
まあ、僕には関係ないや。用紙に書かれた依頼内容に目を通す。
ルビーアイ! タイムリー!
それに商会からの依頼。これは良い。早速人脈とかできちゃったりするのかな? 運が向いてきたかも。
Sランクの依頼だし、報酬も相当高いだろう。
絶野ではデタラメにクズノハ商会なんて名乗っちゃったけど、本来独立して店を持つ――つまり商会を作ることは、商人にとって結構大きな一歩らしい。だから安易に名乗ったのを少し後悔していたりもした。商人ギルドには未登録だし、絶野は崩壊したけど、この架空の商会の名がどこかに伝わっている可能性があるからね。
商人を目指す人は店を持つ前はどうしているんだろうか。やっぱり、どこかに弟子入りして勉強、とか? でも、それだといつ自分の店を持てるか、少し不安だよなあ。どんなシステムになってるんだろ。
って、今はそんなことはどうでもいいか。
ひとまず、ルビーアイとレンブラント商会だ。
うむ、これは他の連中に事情を話して、ルビーアイの瞳は全部もらっちゃおう。狩ったのは僕だし問題ないよね。くくく(悪笑)。
「お兄ちゃん、ちょっとコワイ」
「若様。悪企みですか?」
引き気味のリノンにノリ気味の澪。っと、二人とも掲示板までついてきてたのか。
[違うよリノン。少し面白い依頼を見つけただけだよ]
「ふーん……あ、お姉ちゃんたちだ!」
四人組がこちらに向かって来る。
彼らのレベルを考えると、トアもドワ娘もここでは上位十位以内に入るな。この街だと、あれで結構強いほうに入るのか。うむー。
ギルドの人がついてきていないということは、面倒な状況にはならなかったようだな。
絶野での惨劇を、ツィーゲのギルドに説明するのは、実は一つ前のベースで受けた依頼だった。いわゆる特殊クエストだ。その証となる書面も最初に見せていたから、彼らはこれでギルドからの依頼を果たしたことになる。
「ただいま、リノン。お二人に迷惑かけてない?」
「ちゃんと静かにしてたもん!」
リノンはとても良い子にしてました。
[おかえりなさい、依頼は無事終了ですか]
「ええ、おかげさまで。でも良かったんですか? 確かに私たちが受けたクエストですが、お二人にも依頼達成の報酬を受け取る権利はあると思いますよ?」
トアさんの気遣いはありがたいけど、巴さんが不在中に依頼を受けて報酬をもらっちゃいました、ついでにランク上がりました、なんて言ったら、また煩いだろうな~と思い、今回は報酬を受け取らないことにしたのだ。
[いえいえ、冒険者としての名声は僕らにとって二の次ですので。今回はみなさんに譲ります]
よし! これを交換条件にルビーアイの瞳はもらおう!
「何から何までお世話になりました」
錬金青年が頭を下げる。
「経験にお金にランクに素材、本当に助かりました。ライドウ殿に大地の精霊の加護がありますように」
ドワ娘も青年に倣って丁寧にお辞儀をする。
「あとで、弓をどこで習ったか教えて」
エルフ娘……それは無理です。
「おかげさまでレベルもランクも上がりました。夢みたいです~」
しまりのない顔でそう告げるトアさん。
みんな嬉しそうにギルドカードを見せてくる。どれどれ……。
トアさんは、レベル125、ランクA、闇盗賊。何だ闇盗賊って。あまりお近づきになりたくない職業だな。
ドワ娘は、レベル122、ランクBプラス、神官戦士(地)。地の精霊に仕える戦士さんってとこかな。
錬金青年は、レベル114、ランクBプラス、アルケミーマイスター。……錬金術師じゃいかんのか? ガン○ムに乗れそうだな、おい。
エルフ娘は、レベル108、ランクAマイナス、ブレスガンナー。ガンナーって……銃士!? だってお前弓持ってたじゃん!? この世界、銃あったの!?
確かにみんなレベルアップしてる。
エルフ娘なんてレベル90くらいだったのに。この娘だけ他の奴らに比べて妙にレベル低かったんだよな、無理して絶野に赴いて前にも後ろにもいけなくなったクチだろうか。
だとすると、頑張った僕もレベル30くらいにはなってる……かも?
自分のレベルアップに過度な期待は禁物だけど、こんなの見せられちゃったら、ね?
それは巴と合流してからの楽しみにとっておこう。
[用事は済んだようですし出ましょうか。それとも、まだここでやることがありますか?]
「私たちはありませんけど、澪様とライドウさんは登録をしていかないと」
一斉に四人が頷く。すげえシンクロ。なぜそれを君たちが楽しみにする?
[僕らは巴と一緒にまた来るつもりですから、今日はいいんです。先に登録などしたら彼女が拗ねてしまいますので]
「巴さんなら拗ねますね。確かに」
澪もそこのところはよくわかっている。
別行動とはいえ、節目は一緒にしないと気にするタイプだろうからな。
「……じゃあ、ここでお別れですね」
[ええ。ですから昼食を取って、そのあと荷台の荷物を分配しましょう。それで一旦お別れということで]
「一旦?」
トアさんが期待に満ちた声で聞き返してくる。
[急ぎでなければ夕食をご一緒してお別れ会といきませんか? ギルド依頼成功の打ち上げも兼ねて]
『賛成!』
四人が元気よく答える。快諾してくれて何よりだ。
会場は居酒屋風のところをチョイスしてガツガツいきたい!
ツィーゲまでの道のりは、保存食ばかりで味気ないものが多かったし、美味しいものをたらふく食べたい気分。
[そういえば、みなさんは以前ここに来たことがあるんですよね?]
頷く面々。
[それじゃあ場所はお任せしますので、気軽にたくさん食べて飲めそうなところを選んでおいて下さい。楽しみにしてます]
最後に一言付け加える。
[もちろん、リノンがいても大丈夫なところで、ね]
よし、夜は決まりとしてとりあえず昼食だな。軽くつまみながら素材の分配とかの話もできそうなところか……うむ、これも彼らに丸投げしよう。
[では、出ましょうか]
◇◆◇◆◇
夜、感覚的には十九時くらい。良い具合にお腹が空いてきた。
昼食後、素材の分配を滞りなく終えると(瞳の争奪はなく、すんなり譲ってくれた)、僕と澪は宿を決めてから街をぶらぶらして二人で色々とお店を見て回った。宿に帰ったところで、連絡用として借りていたトアさんのギルドカードに連絡が入った。
明滅するカードの一部に意思を込めて触れると、メッセージが宙に書かれていく。
フキダシで話す僕の作戦も、意外とこの世界ではアリだったんだな。偶然とは恐ろしいね。
つくづくファンタジーってのは局地的にハイテク仕様だ。見た目はただのカードなのに、こんなメール機能までついてるんだから。
ちなみに巴はまだ戻ってきていない。今夜の打ち上げに彼女がいると厄介なので、これは好都合だ。
早速店の位置をこれまたカードで確認して、二人で宿を出る。
しかし、ギルドカード、侮れない子。
例えば、加盟店であればギルドに預けたお金を下ろさなくても買い物ができる。これなんてデビットカード。
また、ある程度近い場所にいる相手に伝言を送れる。通信端末ですよ、剣と魔法の世界で!
通信距離はそりゃ現代に大きく劣るけど、それでもメールが送れるのは凄い。
あとびっくりしたのが図鑑機能。
魔物や素材各種、それこそ鉱石から薬草まで結構な数が登録されており、検索して情報を閲覧できる。
ただ、内容はランクに応じて段階的に公開されていくらしい。僕が見たのはトアさんのだから、結構上位のケースだろう。
これが微々たる冒険者登録料金で受けられる恩恵なのですよ! みなさん!
見習え携帯会社ども!
年会費みたいなものはあるが、安いので気にならない。素敵過ぎる。
今度ギルドに行ったら、詳しく機能を調べなければ。
トアさんから軽く聞いただけだが、何でも有料のプレミアムなサービスもあるらしく、さらにはコンテンツがランクによって色々追加されるっぽい!
これは断然ランクを上げたく……!!
――いかんいかん、つい興奮してしまった。
トアさんが自分のギルドカードを貸してくれたおかげで、僕らは迷うことなく待ち合わせ場所に行けそうだ。こんなハイスペックな代物、普通は他人に貸したりはしないと思うけど……どれだけ僕(というより澪)を信頼しているのだろうか。
澪と連れ立って歩いていると、道の両側から良い匂いがしてくる。
彼女は好奇心丸出しで、通りに並ぶ食べ物を熱心に眺めながらついて来ていた。
そこかしこから香りが漂う中、獣の骨を模った文字で「肉屋」と書かれた看板を見つけた。ここが待ち合わせのお店。
ド直球な名前、好印象だ。
店に入り、早速連中の顔を見つける。
風呂にでも入って身だしなみを整えたのだろうか。みな一様にさっぱりとしていて、服装もさっきまでとは違う。
僕も着替えりゃ良かったな……とか思ったけど、召喚されたときに着ていたものしか持ってないや。
この街で色々揃えてみようかな。これから先、もしかすると夜会とかパーティーみたいなものに誘われるかもしれないし。今は想像できないけど。
既に並べられた飲み物と食べ物を見た僕は、ふらふらとある一点へ吸い寄せられる。
――そこには、夢にまで見たアレがあったのだ。店の名前を見たときからちょっと期待はしていたのだけれど……まさか本物があるとは!!
それは――。
漫画肉!!
男の憧れ、いや全人類の憧れ!!
「おおおおおお、グローーーリアーーー!」
叫ばずにはいられなかった。何という奇跡。この世界にきて良かった!
「……ライドウさん、これがそんなにお好きなのですか?」
言葉の意味はわからずとも、僕が喜んでいることを察したらしいトアさんが、あまりの喜びように引いている。だがこの感動は抑えられない!
[これは……僕の国では、それはもう憧れの食べ物なのです……]
搾り出すように書き出す。
[……あ、そうだ。ギルドカードありがとうございました]
「あ、どうも……へぇ、これがですか。こちらでは地方を問わずに結構普通にありますけど」
不思議そうにしている。他の連中も同様だ。
……普通にあるだと? すなわちここでは漫画肉を日常的に食えるのか!
すばらしい。いや、まだ食べてないけど。これで青汁味とかだったら暴れるけども。
[いや、これは嬉しい。今夜は楽しくなりそうですよ]
思わず手に取っていた肉を皿へ戻し、二つ並んだ空席を見つけてそこへ向かう。
両脇はリノンとエルフ娘か……。悪くない。
「では、お二人が見えたところで始めましょうか!」
「おお!」
「そうですね」
「……賛成、お腹すいた」
「リノン、もうお腹ぺっこぺこだよ」
リノン、その台詞はどっかのちっこいエルフを思い出すよ。
「じゃ、ツィーゲへの帰還と、ライドウさん、澪様との出会いに、乾杯!」
『乾杯!』
そして宴が始まった。
乾杯の飲み物はビールみたいな感じのお酒。エール、っていうやつなのか?
ところで、この世界の飲酒は何歳からなのだろう? まぁ、異世界人の僕はご自由にどうぞってことでいいかな。うん、そう解釈した。
早速、感動の漫画肉を口へ運ぶ。
バクリ。
これは……うまい! うまい! うまいぞーーー!!
何と、見た目も味もレジェンドクラスとは……。
いかん、感動で涙が……。
「ライドウさん、泣いてるんですか!?」
錬金青年よ。この感動は、きっとこの世界の者には一生理解できないのだよ。
そう、この涙のわけは、僕にしかわからないものなんだ。
[さっきも言ったが、この料理は僕の国では夢そのもの。ちなみに僕は生まれて初めて食べたんです。感動で……つい。すみません]
エールを喉に流し込む。おおう、染み渡る!
そしてさらに両手に漫画肉を装備。食らう!
[澪、これ追加で注文して]
そう書いて隣に座っている澪に指示を出し、さらに食べる。食べる。
「凄い食べっぷり」
「泣く程好きとは」
トアさんと錬金青年が呆れている。
気にしない。
「……安上がり」
エルフはもっと直接的に言ってくれる。
良いんだ、美味しくて安いなら正義じゃないか!
「追加はわかりましたけど、私も食べますからちゃんと残してくださいまし!」
澪よ、まだまだくるんだから問題あるまい。漫画肉にしか目が行っていなかったけど、野菜や魚介類だってたくさんあるじゃん!
ああ、僕は今幸せだ。
……むむ、視線を感じるぞ?
澪? いや、違うな。澪は僕が食べたのと同じ肉を頬張って幸せな顔をしている。酒も既に三杯目。他にも色々皿に取り分けている辺り、この店の料理が気に入ったのだろう。良いことだ。
となるとこの視線は……澪の隣にいるエルフ娘だな。
がっついて食べる様子が彼女には不快に映ったのだろうか?
[何か?]
食べるスピードを緩めることなく、僕はエルフ娘に問いかける。
この薄切り肉の乗ったサラダもうめー! 添えられた粗挽きハンバーグみたいなのもうまい。アウトドアでありそうな川魚の塩焼き串もいける。淡白な白身にシンプルな塩味。酒のツマミにもおかずにもなる。かぶりつき最高です。口直しの野菜スティックもなかなかいける。揚げ物が見当たらないけど、そんなの関係ねえ! どれもうまいよ! 幸せだよ!
「……あなたは不思議な人」
エルフ娘が呟く。
[はあ]
「商人だというのに冒険者みたい……なのにお金に対して汚くない。そして、レベル1なのに私たちよりも強い」
「変わったところで育ったもので」
「力もお金もあるのに、欲や執着を感じない。凄くふわふわしてる。雲みたいな……モノ?」
[モノはひどいと思うのですが]
褒められて……るのか? でも人扱いされてなかった! しかも最後、『モノ』とか言われた!
「ごめんなさい。モノじゃなくって、ヒューマンらしくない感じ。ついでに生き物っぽくもない」
謝って言い直してくれたはずなのに、表現がさらに酷くなりました……。
宴席を見回す。ドワ娘は錬金青年に絡んで酒を飲ませている。トアはとりあえずリノンに食べ物を取り分けながら、食事に集中している。リノンも姉に倣い、ひたすら食べている。彼女は酒でなくジュースだった。見たところ十歳くらいだし、さすがに酒はまずいだろう――。
「何より、あの弓。あれは、どこ?」
エルフ娘の質問は続く。
[どこ、とは?]
「流派。特に最初に構えるときの動作と、そのあとの静止状態が不自然すぎる」
あー、確かに。実戦重視のこの世界の武術では珍しい動きかも。
[あれは流派とかではなく、僕なりの集中を高める作業なのです]
「集中? あんなことしていたらその前に攻撃を受ける」
どう伝えればいいのか。武道の考え方がこの人に理解できるのかな。森の民だろ、エルフって。
まあ、料理と酒で気分もいいし、説明してあげよう。
「なんと!?『絶野』が崩壊!?」
大きな声が建物内に響き渡る。
ここはツィーゲの冒険者ギルド。トアさんたちが仔細を報告している。僕は同席していない。これはトアさんたちのクエストなのだ。ちなみに、澪とリノンは二人でギルド内をうろついている。面白いものでも見つけたのか、楽しそうだ。
報告といっても、トアさんたちは事実をありのまま伝えているわけではない。
トアさんとリノンは果てのベースで起こった出来事を正確に記憶しているが、残りの冒険者三人については、僕が魔法を使って記憶を改竄した。全員まとめて改竄すれば楽な話だけど、トアさんとリノンに魔法をかけるのは少し気が引けたのだ。僕の勝手な我侭。
魔物の大群が絶野に押し寄せてきて、なす術なく蹂躙されました。私たちは、命からがら逃げてきたのです……。みたいな感じに記憶をいじっている。
事実をそのまま報告されると面倒なので、トアさんたちには前もって話を合わせるように伝えてある。
ちなみに絶野とは、今はもう消滅した(正確には巴と澪が崩壊させた)ベースの名前だ。
道中に立ち寄ってきた他のベースにも、リンガとかアンドといった短い名前が付けられていた。
絶野は平均レベルが余裕で100オーバー、ベースとしては最高峰の場所らしい。すぐいなくなる人も平均の内に入っていると考えると実際はもっと凄かったんだろう。まともに活動しているメンバーはレベル200オーバーが普通だったようだし。
まぁ、やり口の汚い奴もいたけどね。
トアさんたちも、一部の悪人(結局、色々あって僕は黒幕の名前を知らないんだよな)の犠牲になりかけていたし。
だからかもしれないけど、一緒に来ている三人の冒険者たちも、あの場所にはそれほどの未練も愛着もなかった様子。
……ただ、トアさんだけはちょっと違うようだ。離れることに異存はなかった感じだけど、心残りがあるみたい。
もし……もしも。
トアさんがいつか再び果ての荒野の奥地に向かうとしても。
僕は何も言えない。
リノンのことだけはちゃんとしていって欲しいなと思うくらいだ。
そういえば、巴と澪のギルドへの登録情報が消えていた。
絶野には他のギルドと情報を共有するための設備がなかったため、冒険者ギルドもろとも登録情報も失われちゃったみたい。
というわけで、二人の再登録は設備の整ったツィーゲまでお預けになっていたのだ。
ツィーゲに到着するまでの間、三つほどのベースに立ち寄ってきたけど、どこも野営地に毛が生えた程度って印象だった。ギルドも絶野と変わらない感じだったので、再登録を見送っていたのだ。
……何かの間違いで、またベースが崩壊する可能性もあったしね。
再登録については巴が戻ってきてからにしよう。今夜にでも呼び出して、明日、改めてギルドに来ればいいか。
そうと決まれば、今日はこれから宿を決めてお店見て回って……あ、商人ギルドの登録もしなくては――。
うううう、やっと、やっと街に着いたんだ! やりたいこといっぱいだよね!!
四人の話が終わったらしい。係の人が奥へと入っていった。
多分偉い人を呼びに行ったんだろう。ベースがなくなったなんて結構な出来事だろうからな。
そーいや、ここの最高レベルとランクってどれくらいなのだろうか。
館内を見回していると、依頼その他の掲示板の横にあるスペースに、ランキングが張り出されているのを見つけた。
……おお、あそこにあるのか。報告に僕がいる必要はないし、ちょっと見にいこう。
ええっと、一番上の人で……。
レベル201、ランクS。
ふむ、やっぱ低く感じる。絶野という特殊な場所の冒険者たちを見ていたうえに、連れが連れだからなあ……。僕の中で「強い」の基準がおかしくなっているみたいだ。
クエストも結構ランクが低いぞ。この感じだと、上位の依頼は個人やパーティを直接指名する、いわゆる特殊ランクが多いのかも。
掲示板に張り出されているのはAとかBプラスの依頼ばかりだ。このランクの依頼が売れ残りだとすると、おそらく中堅レベルのパーティが多くて、かつクエストはD~Bランクが人気、なのか?
にしても、採集系のAランクが余りまくりだな、すげえわ。とてつもなく面倒くさいか、はぐれメ○ルみたいな超レアなやつの部位採集なのか?
……どっちもやだな。僕もやりたくない。
でも、採集系で達成しやすいのはどんな依頼で、どの辺りに行くのかはアタリをつけておこう。
後々、利用できそうだ。
ん……一つだけSランクの依頼が残っているぞ。気になるな。
高いところに張り出されているので、軽くジャンプして用紙を取る。
僕の行動を見て周囲がざわつく。ここでSランクの依頼を受けるのは珍しいことなのかな?
まあ、僕には関係ないや。用紙に書かれた依頼内容に目を通す。
ルビーアイ! タイムリー!
それに商会からの依頼。これは良い。早速人脈とかできちゃったりするのかな? 運が向いてきたかも。
Sランクの依頼だし、報酬も相当高いだろう。
絶野ではデタラメにクズノハ商会なんて名乗っちゃったけど、本来独立して店を持つ――つまり商会を作ることは、商人にとって結構大きな一歩らしい。だから安易に名乗ったのを少し後悔していたりもした。商人ギルドには未登録だし、絶野は崩壊したけど、この架空の商会の名がどこかに伝わっている可能性があるからね。
商人を目指す人は店を持つ前はどうしているんだろうか。やっぱり、どこかに弟子入りして勉強、とか? でも、それだといつ自分の店を持てるか、少し不安だよなあ。どんなシステムになってるんだろ。
って、今はそんなことはどうでもいいか。
ひとまず、ルビーアイとレンブラント商会だ。
うむ、これは他の連中に事情を話して、ルビーアイの瞳は全部もらっちゃおう。狩ったのは僕だし問題ないよね。くくく(悪笑)。
「お兄ちゃん、ちょっとコワイ」
「若様。悪企みですか?」
引き気味のリノンにノリ気味の澪。っと、二人とも掲示板までついてきてたのか。
[違うよリノン。少し面白い依頼を見つけただけだよ]
「ふーん……あ、お姉ちゃんたちだ!」
四人組がこちらに向かって来る。
彼らのレベルを考えると、トアもドワ娘もここでは上位十位以内に入るな。この街だと、あれで結構強いほうに入るのか。うむー。
ギルドの人がついてきていないということは、面倒な状況にはならなかったようだな。
絶野での惨劇を、ツィーゲのギルドに説明するのは、実は一つ前のベースで受けた依頼だった。いわゆる特殊クエストだ。その証となる書面も最初に見せていたから、彼らはこれでギルドからの依頼を果たしたことになる。
「ただいま、リノン。お二人に迷惑かけてない?」
「ちゃんと静かにしてたもん!」
リノンはとても良い子にしてました。
[おかえりなさい、依頼は無事終了ですか]
「ええ、おかげさまで。でも良かったんですか? 確かに私たちが受けたクエストですが、お二人にも依頼達成の報酬を受け取る権利はあると思いますよ?」
トアさんの気遣いはありがたいけど、巴さんが不在中に依頼を受けて報酬をもらっちゃいました、ついでにランク上がりました、なんて言ったら、また煩いだろうな~と思い、今回は報酬を受け取らないことにしたのだ。
[いえいえ、冒険者としての名声は僕らにとって二の次ですので。今回はみなさんに譲ります]
よし! これを交換条件にルビーアイの瞳はもらおう!
「何から何までお世話になりました」
錬金青年が頭を下げる。
「経験にお金にランクに素材、本当に助かりました。ライドウ殿に大地の精霊の加護がありますように」
ドワ娘も青年に倣って丁寧にお辞儀をする。
「あとで、弓をどこで習ったか教えて」
エルフ娘……それは無理です。
「おかげさまでレベルもランクも上がりました。夢みたいです~」
しまりのない顔でそう告げるトアさん。
みんな嬉しそうにギルドカードを見せてくる。どれどれ……。
トアさんは、レベル125、ランクA、闇盗賊。何だ闇盗賊って。あまりお近づきになりたくない職業だな。
ドワ娘は、レベル122、ランクBプラス、神官戦士(地)。地の精霊に仕える戦士さんってとこかな。
錬金青年は、レベル114、ランクBプラス、アルケミーマイスター。……錬金術師じゃいかんのか? ガン○ムに乗れそうだな、おい。
エルフ娘は、レベル108、ランクAマイナス、ブレスガンナー。ガンナーって……銃士!? だってお前弓持ってたじゃん!? この世界、銃あったの!?
確かにみんなレベルアップしてる。
エルフ娘なんてレベル90くらいだったのに。この娘だけ他の奴らに比べて妙にレベル低かったんだよな、無理して絶野に赴いて前にも後ろにもいけなくなったクチだろうか。
だとすると、頑張った僕もレベル30くらいにはなってる……かも?
自分のレベルアップに過度な期待は禁物だけど、こんなの見せられちゃったら、ね?
それは巴と合流してからの楽しみにとっておこう。
[用事は済んだようですし出ましょうか。それとも、まだここでやることがありますか?]
「私たちはありませんけど、澪様とライドウさんは登録をしていかないと」
一斉に四人が頷く。すげえシンクロ。なぜそれを君たちが楽しみにする?
[僕らは巴と一緒にまた来るつもりですから、今日はいいんです。先に登録などしたら彼女が拗ねてしまいますので]
「巴さんなら拗ねますね。確かに」
澪もそこのところはよくわかっている。
別行動とはいえ、節目は一緒にしないと気にするタイプだろうからな。
「……じゃあ、ここでお別れですね」
[ええ。ですから昼食を取って、そのあと荷台の荷物を分配しましょう。それで一旦お別れということで]
「一旦?」
トアさんが期待に満ちた声で聞き返してくる。
[急ぎでなければ夕食をご一緒してお別れ会といきませんか? ギルド依頼成功の打ち上げも兼ねて]
『賛成!』
四人が元気よく答える。快諾してくれて何よりだ。
会場は居酒屋風のところをチョイスしてガツガツいきたい!
ツィーゲまでの道のりは、保存食ばかりで味気ないものが多かったし、美味しいものをたらふく食べたい気分。
[そういえば、みなさんは以前ここに来たことがあるんですよね?]
頷く面々。
[それじゃあ場所はお任せしますので、気軽にたくさん食べて飲めそうなところを選んでおいて下さい。楽しみにしてます]
最後に一言付け加える。
[もちろん、リノンがいても大丈夫なところで、ね]
よし、夜は決まりとしてとりあえず昼食だな。軽くつまみながら素材の分配とかの話もできそうなところか……うむ、これも彼らに丸投げしよう。
[では、出ましょうか]
◇◆◇◆◇
夜、感覚的には十九時くらい。良い具合にお腹が空いてきた。
昼食後、素材の分配を滞りなく終えると(瞳の争奪はなく、すんなり譲ってくれた)、僕と澪は宿を決めてから街をぶらぶらして二人で色々とお店を見て回った。宿に帰ったところで、連絡用として借りていたトアさんのギルドカードに連絡が入った。
明滅するカードの一部に意思を込めて触れると、メッセージが宙に書かれていく。
フキダシで話す僕の作戦も、意外とこの世界ではアリだったんだな。偶然とは恐ろしいね。
つくづくファンタジーってのは局地的にハイテク仕様だ。見た目はただのカードなのに、こんなメール機能までついてるんだから。
ちなみに巴はまだ戻ってきていない。今夜の打ち上げに彼女がいると厄介なので、これは好都合だ。
早速店の位置をこれまたカードで確認して、二人で宿を出る。
しかし、ギルドカード、侮れない子。
例えば、加盟店であればギルドに預けたお金を下ろさなくても買い物ができる。これなんてデビットカード。
また、ある程度近い場所にいる相手に伝言を送れる。通信端末ですよ、剣と魔法の世界で!
通信距離はそりゃ現代に大きく劣るけど、それでもメールが送れるのは凄い。
あとびっくりしたのが図鑑機能。
魔物や素材各種、それこそ鉱石から薬草まで結構な数が登録されており、検索して情報を閲覧できる。
ただ、内容はランクに応じて段階的に公開されていくらしい。僕が見たのはトアさんのだから、結構上位のケースだろう。
これが微々たる冒険者登録料金で受けられる恩恵なのですよ! みなさん!
見習え携帯会社ども!
年会費みたいなものはあるが、安いので気にならない。素敵過ぎる。
今度ギルドに行ったら、詳しく機能を調べなければ。
トアさんから軽く聞いただけだが、何でも有料のプレミアムなサービスもあるらしく、さらにはコンテンツがランクによって色々追加されるっぽい!
これは断然ランクを上げたく……!!
――いかんいかん、つい興奮してしまった。
トアさんが自分のギルドカードを貸してくれたおかげで、僕らは迷うことなく待ち合わせ場所に行けそうだ。こんなハイスペックな代物、普通は他人に貸したりはしないと思うけど……どれだけ僕(というより澪)を信頼しているのだろうか。
澪と連れ立って歩いていると、道の両側から良い匂いがしてくる。
彼女は好奇心丸出しで、通りに並ぶ食べ物を熱心に眺めながらついて来ていた。
そこかしこから香りが漂う中、獣の骨を模った文字で「肉屋」と書かれた看板を見つけた。ここが待ち合わせのお店。
ド直球な名前、好印象だ。
店に入り、早速連中の顔を見つける。
風呂にでも入って身だしなみを整えたのだろうか。みな一様にさっぱりとしていて、服装もさっきまでとは違う。
僕も着替えりゃ良かったな……とか思ったけど、召喚されたときに着ていたものしか持ってないや。
この街で色々揃えてみようかな。これから先、もしかすると夜会とかパーティーみたいなものに誘われるかもしれないし。今は想像できないけど。
既に並べられた飲み物と食べ物を見た僕は、ふらふらとある一点へ吸い寄せられる。
――そこには、夢にまで見たアレがあったのだ。店の名前を見たときからちょっと期待はしていたのだけれど……まさか本物があるとは!!
それは――。
漫画肉!!
男の憧れ、いや全人類の憧れ!!
「おおおおおお、グローーーリアーーー!」
叫ばずにはいられなかった。何という奇跡。この世界にきて良かった!
「……ライドウさん、これがそんなにお好きなのですか?」
言葉の意味はわからずとも、僕が喜んでいることを察したらしいトアさんが、あまりの喜びように引いている。だがこの感動は抑えられない!
[これは……僕の国では、それはもう憧れの食べ物なのです……]
搾り出すように書き出す。
[……あ、そうだ。ギルドカードありがとうございました]
「あ、どうも……へぇ、これがですか。こちらでは地方を問わずに結構普通にありますけど」
不思議そうにしている。他の連中も同様だ。
……普通にあるだと? すなわちここでは漫画肉を日常的に食えるのか!
すばらしい。いや、まだ食べてないけど。これで青汁味とかだったら暴れるけども。
[いや、これは嬉しい。今夜は楽しくなりそうですよ]
思わず手に取っていた肉を皿へ戻し、二つ並んだ空席を見つけてそこへ向かう。
両脇はリノンとエルフ娘か……。悪くない。
「では、お二人が見えたところで始めましょうか!」
「おお!」
「そうですね」
「……賛成、お腹すいた」
「リノン、もうお腹ぺっこぺこだよ」
リノン、その台詞はどっかのちっこいエルフを思い出すよ。
「じゃ、ツィーゲへの帰還と、ライドウさん、澪様との出会いに、乾杯!」
『乾杯!』
そして宴が始まった。
乾杯の飲み物はビールみたいな感じのお酒。エール、っていうやつなのか?
ところで、この世界の飲酒は何歳からなのだろう? まぁ、異世界人の僕はご自由にどうぞってことでいいかな。うん、そう解釈した。
早速、感動の漫画肉を口へ運ぶ。
バクリ。
これは……うまい! うまい! うまいぞーーー!!
何と、見た目も味もレジェンドクラスとは……。
いかん、感動で涙が……。
「ライドウさん、泣いてるんですか!?」
錬金青年よ。この感動は、きっとこの世界の者には一生理解できないのだよ。
そう、この涙のわけは、僕にしかわからないものなんだ。
[さっきも言ったが、この料理は僕の国では夢そのもの。ちなみに僕は生まれて初めて食べたんです。感動で……つい。すみません]
エールを喉に流し込む。おおう、染み渡る!
そしてさらに両手に漫画肉を装備。食らう!
[澪、これ追加で注文して]
そう書いて隣に座っている澪に指示を出し、さらに食べる。食べる。
「凄い食べっぷり」
「泣く程好きとは」
トアさんと錬金青年が呆れている。
気にしない。
「……安上がり」
エルフはもっと直接的に言ってくれる。
良いんだ、美味しくて安いなら正義じゃないか!
「追加はわかりましたけど、私も食べますからちゃんと残してくださいまし!」
澪よ、まだまだくるんだから問題あるまい。漫画肉にしか目が行っていなかったけど、野菜や魚介類だってたくさんあるじゃん!
ああ、僕は今幸せだ。
……むむ、視線を感じるぞ?
澪? いや、違うな。澪は僕が食べたのと同じ肉を頬張って幸せな顔をしている。酒も既に三杯目。他にも色々皿に取り分けている辺り、この店の料理が気に入ったのだろう。良いことだ。
となるとこの視線は……澪の隣にいるエルフ娘だな。
がっついて食べる様子が彼女には不快に映ったのだろうか?
[何か?]
食べるスピードを緩めることなく、僕はエルフ娘に問いかける。
この薄切り肉の乗ったサラダもうめー! 添えられた粗挽きハンバーグみたいなのもうまい。アウトドアでありそうな川魚の塩焼き串もいける。淡白な白身にシンプルな塩味。酒のツマミにもおかずにもなる。かぶりつき最高です。口直しの野菜スティックもなかなかいける。揚げ物が見当たらないけど、そんなの関係ねえ! どれもうまいよ! 幸せだよ!
「……あなたは不思議な人」
エルフ娘が呟く。
[はあ]
「商人だというのに冒険者みたい……なのにお金に対して汚くない。そして、レベル1なのに私たちよりも強い」
「変わったところで育ったもので」
「力もお金もあるのに、欲や執着を感じない。凄くふわふわしてる。雲みたいな……モノ?」
[モノはひどいと思うのですが]
褒められて……るのか? でも人扱いされてなかった! しかも最後、『モノ』とか言われた!
「ごめんなさい。モノじゃなくって、ヒューマンらしくない感じ。ついでに生き物っぽくもない」
謝って言い直してくれたはずなのに、表現がさらに酷くなりました……。
宴席を見回す。ドワ娘は錬金青年に絡んで酒を飲ませている。トアはとりあえずリノンに食べ物を取り分けながら、食事に集中している。リノンも姉に倣い、ひたすら食べている。彼女は酒でなくジュースだった。見たところ十歳くらいだし、さすがに酒はまずいだろう――。
「何より、あの弓。あれは、どこ?」
エルフ娘の質問は続く。
[どこ、とは?]
「流派。特に最初に構えるときの動作と、そのあとの静止状態が不自然すぎる」
あー、確かに。実戦重視のこの世界の武術では珍しい動きかも。
[あれは流派とかではなく、僕なりの集中を高める作業なのです]
「集中? あんなことしていたらその前に攻撃を受ける」
どう伝えればいいのか。武道の考え方がこの人に理解できるのかな。森の民だろ、エルフって。
まあ、料理と酒で気分もいいし、説明してあげよう。
感想 3,667
あなたにおすすめの小説
月が導く異世界道中extra
あずみ 圭 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
こちらは月が導く異世界道中番外編になります。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
真の皇帝は俺です ~面倒だから幼なじみに帝位を任せていたら、婚約者に捨てられました。正体を明かしたら全員後悔してももう遅い~
由香皇帝の仕事が面倒だったレインは、信頼する幼なじみアレクシスに表向きの皇帝を任せ、自身は陰から帝国を支えていた。
だがある日、婚約者エミリアは「権力も将来性もない」と彼を見限り婚約破棄を宣言する。
しかし彼女は知らなかった。
帝国を動かしていた真の支配者が誰なのかを。
これは全てを持ちながら隠していた男と、見るべきものを見失った者たちの後悔の物語。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
「お姉様の刺繍は素人ね」と笑った義妹の婚礼衣装——裏地を見た女官十二人が、一斉に針を置いた
歩人(あゆと)「お姉様の刺繍は、素人の手習いに見えますわね」――王太子妃となる異母妹アデリーナは、王宮女官たちの前で姉ローゼを笑った。翌週の婚礼の朝。式典装の最終確認のため、十二人の女官が衣装の裏地を検めた瞬間――一人、また一人と、針を置いた。裏地に縫い込まれていたのは、女官たちが十二年間ずっと探していた一筆の銀糸。即位式の絹外套、二人の王女の婚礼ドレス、亡き王太后の弔意の喪服。王家儀礼衣装のすべての裏地に、同じ手で、同じ糸で、同じ銀の花が縫い込まれていた。「アデリーナ様、これは――あなた様の手では、ございません」縫い手は、ずっと一人だった。それを十二年間、誰の名でも呼べなかっただけのこと。
薬師だからってポイ捨てされました~異世界の薬師なめんなよ。神様の弟子は無双する~
黄色いひよこ@Index ©薬師のロベルト・シルベスタは偉大な師匠(神様)の教えを終えて自領に戻ろうとした所、異世界勇者召喚に巻き込まれて、周りにいた数人の男女と共に、何処とも知れない世界に落とされた。
─── からの~数年後 ────
俺が此処に来て幾日が過ぎただろう。
ここは俺が生まれ育った場所とは全く違う、環境が全然違った世界だった。
「ロブ、申し訳無いがお前、明日から来なくていいから。急な事で済まねえが、俺もちっせえパーティーの長だ。より良きパーティーの運営の為、泣く泣くお前を切らなきゃならなくなった。ただ、俺も薄情な奴じゃねぇつもりだ。今日までの給料に、迷惑料としてちと上乗せして払っておくから、穏便に頼む。断れば上乗せは無しでクビにする」
そう言われて俺に何が言えよう、これで何回目か?
まぁ、薬師の扱いなどこんなものかもな。
この世界の薬師は、ただポーションを造るだけの職業。
多岐に亘った薬を作るが、僧侶とは違い瞬時に体を癒す事は出来ない。
普通は……。
異世界勇者巻き込まれ召喚から数年、ロベルトはこの異世界で逞しく生きていた。
勇者?そんな物ロベルトには関係無い。
魔王が居ようが居まいが、世界は変わらず巡っている。
とんでもなく普通じゃないお師匠様に薬師の業を仕込まれた弟子ロベルトの、危難、災難、巻き込まれ痛快世直し異世界道中。
はてさて一体どうなるの?
と、言う話。ここに開幕!
● ロベルトの独り言の多い作品です。ご了承お願いします。
● 世界観はひよこの想像力全開の世界です。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさんパーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃコミカライズ企画進行中です!!
3巻発売です!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&3巻出版!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、コミカライズ決定いたしました!現在企画進行中!!そしてオリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
12日には、楽天koboにおいてファンタジー5位となりました!皆様のおかげです!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(3巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
夏にはいよいよコミカライズ連載開始予定です!乞うご期待!!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
オリコンランキングライトノベル 週間BOOKランキング 18位(2025年9月29日付)

