文字の大きさ
大
中
小
532 / 551
終章 月と亜空落着編
深き底にて再会叶う
「……サリ様。お久しぶりでございます」
「ええロナ。お久しぶり。珍しく無茶をしたのね、若様が殺さずに済ませて下さった事はきちんと感謝するのですよ」
「……はい」
「ならばあまり強情を張らず、無茶も言わぬ事。他ならぬ魔族絡みです、クズノハ商会の一員として私も監視させてもらいます」
「……」
そこははいでしょうよ。
ロナについては、とりあえず大雑把に魅了は除去して傷の治療も済ませてある。
どういう訳かまだ完全には状態異常は治療できてない。
故に大雑把に、だ。
ひとまず正気は維持できる状態、僕が知るロナなら精神力でねじ伏せられるレベルにまで薄まったから拘束してサリを連れてきて同席させてる。
環曰く、中途半端な魅了に抗い続けるのは非常に不愉快な感覚らしい。
正気の自分が心の底から嫌悪する人物に対して絶えず好意的な印象が刻まれ続ける苦痛がどうとか、と教えてもらった、
了解も無く僕を巻き込んでくれた礼にその位の嫌がらせはさせてもらおうかと思った次第です。
拘束が例の亀の甲羅的な縛り方になっているのは触れないでおく。
断じて僕の趣味じゃなく巴と澪が遊んだ結果だ。
「もしサリが二人きりで話した方がスムーズなら僕はそれでも良いけど」
ロナの話す情報の真偽を一々疑い確認し、警戒する手間を考えると必ずしも僕がここにいる意味はない。
サリはここでロナに対して僕の事を若様と呼んでみせた。
迂闊にも真様とは言わない。
彼女は僕とは違ってそういう機微をきちんと感じ取れるし、もしかしたら無意識レベルで使うべき言葉を選択できる子だ。
今日サリとロナを二人にしてもそれでサリがクズノハ商会を裏切ったりはしないって事だ。
「随分話がわかるわね、ライドウ。では申し訳ないけどそうしてもらえる? 残念ながら今の私はすべきでない失言をする恐れがある。多少なりとも信用できる人物と一緒の方が好ましいもの」
「駄目。若様にはここにいてもらいます。ロナ、今回の件でクズノハ商会から魔族への印象は非情に悪くなりました。私が懸命に若様にお仕えし、いよいよ魔族の希望者をこちらでうけいれてもらえるかもしれないという時に、貴女は最悪のタイミングで若様を利用した。これは魔族による挽回が絶対に必要です」
魔族の移住、僕OKしたけっか。
ローレライもいるし、基本海の方で生活するならまあ許可しても良いかなと思ってるけど。
ライムからヒューマンを含む孤児の受け入れも頼まれてるしな。
正直どちらの受け入れも他の種族に比べてリスクはあると思う。
拉致してくるのは論外だけど、魔族にせよヒューマンにせよ真摯に移住を希望するなら拒む理由はない。
ヒューマンは……女神の件もあるから出来ればあいつと対峙する時を超えてからのが好ましくはある。
ただこういうのは、経験上上手くはいかない。
多分女神との決着を待たずに彼らを受け入れる事になるんじゃないかと僕は密かに思ってる。
亜空の今を考えればお金も物資も貯まる一方で、集落ごととか種族ごとの受け入れでも余程じゃなければ問題はない筈だ。
上がってくる報告書が恐怖政治で処罰を恐れた間違いだらけの数字になっていない限り。
亜空については多分する必要が無い心配だと思ってる。
「仮に、私が貴女に絆されて逃がそうと画策してもここは脱出不可能な監獄に等しい場所。協力したところで逃亡も脱出も不可能」
サリはロナの逃亡という選択肢を奪う。
これは有難い。
無駄だとわからなければロナは延々と狙いかねない。
ちなみにここにいるのは建前としては僕とサリとロナだけ。
巴も澪も識も環も控えているけれどロナには感知できないだろう。
「じゃ、まず答えやすそうなとこからいこう。ロナ、お前は帝国の勇者の魅了を食らって僕に殺されに来た。合ってる?」
「全く答えやすい質問じゃないけ――」
「ロナ?」
軽口で会話の主導権を引き戻そうとしたロナがサリに牽制されて顔を伏せる。
「……ええ。合ってるわ。私はライドウを安全装置として利用した。死んでないないのは完全に誤算だったけれど」
「うん、じゃ次だ」
「ねえ、貴方本当にクズノハ商会の代表のライドウ?」
「あんまり似た顔のヒューマンもいないだろうが。どうした?」
ヒューマンじゃなければいない事もなかったけどな。似てる人。
喜んでいいのか悲しむべきなのか、未だに僕にそっくりなヒューマンには会った事がない。
世界には三人似た人がいるらしいけど、この世界では通用しないのかもね。
「かなり、雰囲気が変わって見えたから」
「まだまだ僕も若いんでね。しばらく会わなきゃ多少は成長もするさ」
「成長?」
「ああ、で死んでないのは誤算だって言ったな。それってさ……どっちの生死について言ってる?」
「……!」
未だロナが生きている事か、それとも。
未だ僕が死んでいない事か。
あの時のロナの言葉。
何で死んで……の意味は僕には、僕がまだ生きている事への驚きに聞こえた。
「……」
あの黒い雷。
当然後で話してもらうけれど、あの攻撃はかなり特殊な部類だった。
かつてない痛み。
先にアルテので経験してなかったら僕だって気絶したかもしれないと本気で思う。
ロナの突きに込められていた方がずっと痛かったとはいえ、アルテの雷撃を何発か受けていた事が結果的に慣れという形でプラスに働いたのは間違いない。
珍しくロナの目が迷いに揺れていた。
横にいたサリがそっと足を引いて怯えに似た雰囲気を醸し出した。
「答えは、ロナ?」
「あの時の言葉についてなら……両方よ。今日についてだけ言えば、私」
「女神の使徒だけが使えるという全克属性、雷。黒色の雷がロナの切り札であり、僕と対峙してもどこか余裕を保っていた事への理由で。そして僕を安全装置として使いつつも僕とお前が相打ちになってクズノハ商会の誰かに殺される筋書きを描いた理由でもある。そういう事?」
「……ええ。あれは使用する度に身体に物凄い負担がかかるから決して多用はできないわ。それでも、私が持つ最も強力な攻撃にして切り札なのは事実よ。あらゆる魔術、魔力を切り裂いて実質初見で回避するなて不可能な必中必殺の武器、そのままの名で黒雷」
「……ちなみに黒の雷ってどんな効果なんだ?」
「ロナ、偽りなく答えなさい」
「今こうしてライドウが生きている以上、もう私に彼に殺す事は出来ません。ですから包み隠さず話します」
サリには素直だな、本当に。
まあサリはゼフさんと血が繋がった本当の意味での魔王の子だ。
ロナは知ってるし、だからこそサリの事も大事に思ってるんだと思う。
だってこいつ、間違いなく魔族じゃなく魔王ゼフ個人に仕えてる感じだから。
うちで例えると澪だな。
僕としては嬉しくないんだけど、多分澪は亜空がどうなっても僕を第一に考えてくれちゃいそうな気がする。
「ただでさえ反則属性なのに効果まで多彩と来てる。女神の使徒はまだいるし、雷属性については出来るだけ情報が欲しいんだ。黒いのの効果は?」
「……まるでこれ以外の雷を知っているとでも言いたげね。今代の女神の使徒は存在も明らかになっていないのに」
「……」
魔族のアルテの事は知らないのか。
「黒の雷の効果は単純よ。致死に至る痛み。それだけよ」
「致死に至る、痛み? 致死性の痛み、ってどんなん?」
毒や呪いとは違うんだろうか。
「人はね、強すぎる痛みを認識するとショックで死に至る事があるの。その傷自体が致命傷でなくともね」
なる、ほど。
痛みが過ぎると、ショック死。
耐えられない痛み?
とすれば確かにシンプルだ。
ロナの口ぶりからすると、高威力とは違うんだろうな。
現に僕はダメージには普通に耐えられてる訳だし。
「初耳だ」
「少なくとも、私が把握してる黒雷の情報はそうよ。人に対して放つならば女性であれ必殺の痛みを叩き込む、らしいわ」
「女性であれ、か。確かに痛覚については男より女の方が耐性があるって聞いた事があるけど……」
「そうなの?私は女神の祝福を受けやすい女性でも、って意味だと思ってたわ。事実、これまでに五度黒雷を撃ったけど全員外見上は傷一つなく即死していたしね」
……怖すぎだろ、黒雷。
ロナの方が怪我していたのは魔術の反動だろうと識が言ってた。
血まみれで放置すれば死んでたかもしれない状態だったようだ。
それを五度、ね。
こいつも大概、どうかしてる部類だな。
「……ロナが血を吹きだしてたのは?」
アルテは赤雷を撃つ度に出血して倒れたりはしていない。
となれば黒雷特有の代償か、女神の使徒以外が雷を扱える代償か。
後者の可能性が濃いだろうな。
彼女の答えを自分なりに予測しながら答えを待つ。
「わからない。けど黒雷を使えば毎回ああなるわ。元は女神の使徒だけが使える、女神の切り札の一つが雷属性らしいから。どういう因果か魔族の身で扱える代償か、それとも純粋に魔力量が足りなくて体の方もえげつなく削られてる結果かも」
「調べてないのかよ」
「アレを見て生きてるのは貴方とリスイだけ。いえ、巴と澪もか。他は誰もいない。私がアレを使える事を知っているのは陛下と私だけ。どうせ私は寿命で死ぬような仕事をしていないもの、ひとまず使えれば、後は騙し騙しでよかった」
無茶苦茶だな。
今生きて使えるからそれでいい。
情報を掴んだ奴は皆殺しだ、か。
「あー。そのバイオレンスな考え方はともかく。ここにいる間は巴と澪を呼び捨てにするなよ。識についてもだ。さんだけ付けとくように。あれで皆、従業員からも好かれてるからな」
当の本人たちが青筋立てて飛び込んできそうな予感がしたから一応釘をさしておく。
ここが亜空で、亜空がどういう場所かをロナに明かす気はない。
でもすぐに帰す訳にもいかないから、ある程度接触する人は増える。
巴と澪を普通に呼び捨てにするようだと問題が起きかねないって訳だ。
「気を付けるわ。で? ライドウの事はどう呼べば良いのかしら。旦那――」
「リスイが、生きているのですか。それは、それは」
「っ」
?
サリ?
「私個人としても少しだけ、聞きたい事が増えてしまいました。若様、まだお時間はよろしいでしょうか?」
よろしいですよね、と副音声が聞こえてきそうなんですが。
ロナが危険な言葉を紡ぐよりも早く、サリが謎の圧を生み出してずずいと前に出てきた。
……。
こりゃあ、まだまだ話は終わりそうにないな。
ここは海の底だし。
僕か従者の誰かの助力がなければ脱出は不可能だ。
気長に行きますかね。
ロナとサリも、まあ、久しぶりの再会なんだしな。
「ええロナ。お久しぶり。珍しく無茶をしたのね、若様が殺さずに済ませて下さった事はきちんと感謝するのですよ」
「……はい」
「ならばあまり強情を張らず、無茶も言わぬ事。他ならぬ魔族絡みです、クズノハ商会の一員として私も監視させてもらいます」
「……」
そこははいでしょうよ。
ロナについては、とりあえず大雑把に魅了は除去して傷の治療も済ませてある。
どういう訳かまだ完全には状態異常は治療できてない。
故に大雑把に、だ。
ひとまず正気は維持できる状態、僕が知るロナなら精神力でねじ伏せられるレベルにまで薄まったから拘束してサリを連れてきて同席させてる。
環曰く、中途半端な魅了に抗い続けるのは非常に不愉快な感覚らしい。
正気の自分が心の底から嫌悪する人物に対して絶えず好意的な印象が刻まれ続ける苦痛がどうとか、と教えてもらった、
了解も無く僕を巻き込んでくれた礼にその位の嫌がらせはさせてもらおうかと思った次第です。
拘束が例の亀の甲羅的な縛り方になっているのは触れないでおく。
断じて僕の趣味じゃなく巴と澪が遊んだ結果だ。
「もしサリが二人きりで話した方がスムーズなら僕はそれでも良いけど」
ロナの話す情報の真偽を一々疑い確認し、警戒する手間を考えると必ずしも僕がここにいる意味はない。
サリはここでロナに対して僕の事を若様と呼んでみせた。
迂闊にも真様とは言わない。
彼女は僕とは違ってそういう機微をきちんと感じ取れるし、もしかしたら無意識レベルで使うべき言葉を選択できる子だ。
今日サリとロナを二人にしてもそれでサリがクズノハ商会を裏切ったりはしないって事だ。
「随分話がわかるわね、ライドウ。では申し訳ないけどそうしてもらえる? 残念ながら今の私はすべきでない失言をする恐れがある。多少なりとも信用できる人物と一緒の方が好ましいもの」
「駄目。若様にはここにいてもらいます。ロナ、今回の件でクズノハ商会から魔族への印象は非情に悪くなりました。私が懸命に若様にお仕えし、いよいよ魔族の希望者をこちらでうけいれてもらえるかもしれないという時に、貴女は最悪のタイミングで若様を利用した。これは魔族による挽回が絶対に必要です」
魔族の移住、僕OKしたけっか。
ローレライもいるし、基本海の方で生活するならまあ許可しても良いかなと思ってるけど。
ライムからヒューマンを含む孤児の受け入れも頼まれてるしな。
正直どちらの受け入れも他の種族に比べてリスクはあると思う。
拉致してくるのは論外だけど、魔族にせよヒューマンにせよ真摯に移住を希望するなら拒む理由はない。
ヒューマンは……女神の件もあるから出来ればあいつと対峙する時を超えてからのが好ましくはある。
ただこういうのは、経験上上手くはいかない。
多分女神との決着を待たずに彼らを受け入れる事になるんじゃないかと僕は密かに思ってる。
亜空の今を考えればお金も物資も貯まる一方で、集落ごととか種族ごとの受け入れでも余程じゃなければ問題はない筈だ。
上がってくる報告書が恐怖政治で処罰を恐れた間違いだらけの数字になっていない限り。
亜空については多分する必要が無い心配だと思ってる。
「仮に、私が貴女に絆されて逃がそうと画策してもここは脱出不可能な監獄に等しい場所。協力したところで逃亡も脱出も不可能」
サリはロナの逃亡という選択肢を奪う。
これは有難い。
無駄だとわからなければロナは延々と狙いかねない。
ちなみにここにいるのは建前としては僕とサリとロナだけ。
巴も澪も識も環も控えているけれどロナには感知できないだろう。
「じゃ、まず答えやすそうなとこからいこう。ロナ、お前は帝国の勇者の魅了を食らって僕に殺されに来た。合ってる?」
「全く答えやすい質問じゃないけ――」
「ロナ?」
軽口で会話の主導権を引き戻そうとしたロナがサリに牽制されて顔を伏せる。
「……ええ。合ってるわ。私はライドウを安全装置として利用した。死んでないないのは完全に誤算だったけれど」
「うん、じゃ次だ」
「ねえ、貴方本当にクズノハ商会の代表のライドウ?」
「あんまり似た顔のヒューマンもいないだろうが。どうした?」
ヒューマンじゃなければいない事もなかったけどな。似てる人。
喜んでいいのか悲しむべきなのか、未だに僕にそっくりなヒューマンには会った事がない。
世界には三人似た人がいるらしいけど、この世界では通用しないのかもね。
「かなり、雰囲気が変わって見えたから」
「まだまだ僕も若いんでね。しばらく会わなきゃ多少は成長もするさ」
「成長?」
「ああ、で死んでないのは誤算だって言ったな。それってさ……どっちの生死について言ってる?」
「……!」
未だロナが生きている事か、それとも。
未だ僕が死んでいない事か。
あの時のロナの言葉。
何で死んで……の意味は僕には、僕がまだ生きている事への驚きに聞こえた。
「……」
あの黒い雷。
当然後で話してもらうけれど、あの攻撃はかなり特殊な部類だった。
かつてない痛み。
先にアルテので経験してなかったら僕だって気絶したかもしれないと本気で思う。
ロナの突きに込められていた方がずっと痛かったとはいえ、アルテの雷撃を何発か受けていた事が結果的に慣れという形でプラスに働いたのは間違いない。
珍しくロナの目が迷いに揺れていた。
横にいたサリがそっと足を引いて怯えに似た雰囲気を醸し出した。
「答えは、ロナ?」
「あの時の言葉についてなら……両方よ。今日についてだけ言えば、私」
「女神の使徒だけが使えるという全克属性、雷。黒色の雷がロナの切り札であり、僕と対峙してもどこか余裕を保っていた事への理由で。そして僕を安全装置として使いつつも僕とお前が相打ちになってクズノハ商会の誰かに殺される筋書きを描いた理由でもある。そういう事?」
「……ええ。あれは使用する度に身体に物凄い負担がかかるから決して多用はできないわ。それでも、私が持つ最も強力な攻撃にして切り札なのは事実よ。あらゆる魔術、魔力を切り裂いて実質初見で回避するなて不可能な必中必殺の武器、そのままの名で黒雷」
「……ちなみに黒の雷ってどんな効果なんだ?」
「ロナ、偽りなく答えなさい」
「今こうしてライドウが生きている以上、もう私に彼に殺す事は出来ません。ですから包み隠さず話します」
サリには素直だな、本当に。
まあサリはゼフさんと血が繋がった本当の意味での魔王の子だ。
ロナは知ってるし、だからこそサリの事も大事に思ってるんだと思う。
だってこいつ、間違いなく魔族じゃなく魔王ゼフ個人に仕えてる感じだから。
うちで例えると澪だな。
僕としては嬉しくないんだけど、多分澪は亜空がどうなっても僕を第一に考えてくれちゃいそうな気がする。
「ただでさえ反則属性なのに効果まで多彩と来てる。女神の使徒はまだいるし、雷属性については出来るだけ情報が欲しいんだ。黒いのの効果は?」
「……まるでこれ以外の雷を知っているとでも言いたげね。今代の女神の使徒は存在も明らかになっていないのに」
「……」
魔族のアルテの事は知らないのか。
「黒の雷の効果は単純よ。致死に至る痛み。それだけよ」
「致死に至る、痛み? 致死性の痛み、ってどんなん?」
毒や呪いとは違うんだろうか。
「人はね、強すぎる痛みを認識するとショックで死に至る事があるの。その傷自体が致命傷でなくともね」
なる、ほど。
痛みが過ぎると、ショック死。
耐えられない痛み?
とすれば確かにシンプルだ。
ロナの口ぶりからすると、高威力とは違うんだろうな。
現に僕はダメージには普通に耐えられてる訳だし。
「初耳だ」
「少なくとも、私が把握してる黒雷の情報はそうよ。人に対して放つならば女性であれ必殺の痛みを叩き込む、らしいわ」
「女性であれ、か。確かに痛覚については男より女の方が耐性があるって聞いた事があるけど……」
「そうなの?私は女神の祝福を受けやすい女性でも、って意味だと思ってたわ。事実、これまでに五度黒雷を撃ったけど全員外見上は傷一つなく即死していたしね」
……怖すぎだろ、黒雷。
ロナの方が怪我していたのは魔術の反動だろうと識が言ってた。
血まみれで放置すれば死んでたかもしれない状態だったようだ。
それを五度、ね。
こいつも大概、どうかしてる部類だな。
「……ロナが血を吹きだしてたのは?」
アルテは赤雷を撃つ度に出血して倒れたりはしていない。
となれば黒雷特有の代償か、女神の使徒以外が雷を扱える代償か。
後者の可能性が濃いだろうな。
彼女の答えを自分なりに予測しながら答えを待つ。
「わからない。けど黒雷を使えば毎回ああなるわ。元は女神の使徒だけが使える、女神の切り札の一つが雷属性らしいから。どういう因果か魔族の身で扱える代償か、それとも純粋に魔力量が足りなくて体の方もえげつなく削られてる結果かも」
「調べてないのかよ」
「アレを見て生きてるのは貴方とリスイだけ。いえ、巴と澪もか。他は誰もいない。私がアレを使える事を知っているのは陛下と私だけ。どうせ私は寿命で死ぬような仕事をしていないもの、ひとまず使えれば、後は騙し騙しでよかった」
無茶苦茶だな。
今生きて使えるからそれでいい。
情報を掴んだ奴は皆殺しだ、か。
「あー。そのバイオレンスな考え方はともかく。ここにいる間は巴と澪を呼び捨てにするなよ。識についてもだ。さんだけ付けとくように。あれで皆、従業員からも好かれてるからな」
当の本人たちが青筋立てて飛び込んできそうな予感がしたから一応釘をさしておく。
ここが亜空で、亜空がどういう場所かをロナに明かす気はない。
でもすぐに帰す訳にもいかないから、ある程度接触する人は増える。
巴と澪を普通に呼び捨てにするようだと問題が起きかねないって訳だ。
「気を付けるわ。で? ライドウの事はどう呼べば良いのかしら。旦那――」
「リスイが、生きているのですか。それは、それは」
「っ」
?
サリ?
「私個人としても少しだけ、聞きたい事が増えてしまいました。若様、まだお時間はよろしいでしょうか?」
よろしいですよね、と副音声が聞こえてきそうなんですが。
ロナが危険な言葉を紡ぐよりも早く、サリが謎の圧を生み出してずずいと前に出てきた。
……。
こりゃあ、まだまだ話は終わりそうにないな。
ここは海の底だし。
僕か従者の誰かの助力がなければ脱出は不可能だ。
気長に行きますかね。
ロナとサリも、まあ、久しぶりの再会なんだしな。
感想 3,667
あなたにおすすめの小説
月が導く異世界道中extra
あずみ 圭 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
こちらは月が導く異世界道中番外編になります。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
真の皇帝は俺です ~面倒だから幼なじみに帝位を任せていたら、婚約者に捨てられました。正体を明かしたら全員後悔してももう遅い~
由香皇帝の仕事が面倒だったレインは、信頼する幼なじみアレクシスに表向きの皇帝を任せ、自身は陰から帝国を支えていた。
だがある日、婚約者エミリアは「権力も将来性もない」と彼を見限り婚約破棄を宣言する。
しかし彼女は知らなかった。
帝国を動かしていた真の支配者が誰なのかを。
これは全てを持ちながら隠していた男と、見るべきものを見失った者たちの後悔の物語。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
「お姉様の刺繍は素人ね」と笑った義妹の婚礼衣装——裏地を見た女官十二人が、一斉に針を置いた
歩人(あゆと)「お姉様の刺繍は、素人の手習いに見えますわね」――王太子妃となる異母妹アデリーナは、王宮女官たちの前で姉ローゼを笑った。翌週の婚礼の朝。式典装の最終確認のため、十二人の女官が衣装の裏地を検めた瞬間――一人、また一人と、針を置いた。裏地に縫い込まれていたのは、女官たちが十二年間ずっと探していた一筆の銀糸。即位式の絹外套、二人の王女の婚礼ドレス、亡き王太后の弔意の喪服。王家儀礼衣装のすべての裏地に、同じ手で、同じ糸で、同じ銀の花が縫い込まれていた。「アデリーナ様、これは――あなた様の手では、ございません」縫い手は、ずっと一人だった。それを十二年間、誰の名でも呼べなかっただけのこと。
薬師だからってポイ捨てされました~異世界の薬師なめんなよ。神様の弟子は無双する~
黄色いひよこ@Index ©薬師のロベルト・シルベスタは偉大な師匠(神様)の教えを終えて自領に戻ろうとした所、異世界勇者召喚に巻き込まれて、周りにいた数人の男女と共に、何処とも知れない世界に落とされた。
─── からの~数年後 ────
俺が此処に来て幾日が過ぎただろう。
ここは俺が生まれ育った場所とは全く違う、環境が全然違った世界だった。
「ロブ、申し訳無いがお前、明日から来なくていいから。急な事で済まねえが、俺もちっせえパーティーの長だ。より良きパーティーの運営の為、泣く泣くお前を切らなきゃならなくなった。ただ、俺も薄情な奴じゃねぇつもりだ。今日までの給料に、迷惑料としてちと上乗せして払っておくから、穏便に頼む。断れば上乗せは無しでクビにする」
そう言われて俺に何が言えよう、これで何回目か?
まぁ、薬師の扱いなどこんなものかもな。
この世界の薬師は、ただポーションを造るだけの職業。
多岐に亘った薬を作るが、僧侶とは違い瞬時に体を癒す事は出来ない。
普通は……。
異世界勇者巻き込まれ召喚から数年、ロベルトはこの異世界で逞しく生きていた。
勇者?そんな物ロベルトには関係無い。
魔王が居ようが居まいが、世界は変わらず巡っている。
とんでもなく普通じゃないお師匠様に薬師の業を仕込まれた弟子ロベルトの、危難、災難、巻き込まれ痛快世直し異世界道中。
はてさて一体どうなるの?
と、言う話。ここに開幕!
● ロベルトの独り言の多い作品です。ご了承お願いします。
● 世界観はひよこの想像力全開の世界です。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさんパーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃコミカライズ企画進行中です!!
3巻発売です!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&3巻出版!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、コミカライズ決定いたしました!現在企画進行中!!そしてオリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
12日には、楽天koboにおいてファンタジー5位となりました!皆様のおかげです!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(3巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
夏にはいよいよコミカライズ連載開始予定です!乞うご期待!!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
オリコンランキングライトノベル 週間BOOKランキング 18位(2025年9月29日付)