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戻ったら一緒にお風呂入る?
今のノエなら受け入れてもらえると思っての、ちょっと意地悪な確信だった。
以前は駄目だと蹴られたけれど、今の関係性なら。
そう、以前とは違う関係性。だからこそ断られたっておかしくはないんだけど、そんなことはないだろうと勝手に思ってしまってる。
だってそう口にした瞬間、ノエのかおには期待の色が浮かんだから。
正直ぞくりとした。
こどもっぽい、幼い、純粋、かわいい、そんな言葉ばかり浮かんでくる子が、その意味を知っていて、理解し、頬を染めて伏し目がちに頷く。
お風呂?入る入る、そんなノリじゃなくて、やらしいことを想像して。
堪らないなあ、と思う。
同じ問い掛けでも、他のひとからと俺からとでは意味が違う。
それを感じ取ったノエが愛しかった。
「最近シャワーばっかりだったし。さっき確認した時、結構広かった……というか狭くはなかった、が正しいか、ノエとならふたりで入れそうで」
「……うん、」
「あー……えっと……嫌なら無理強いはしないけど」
「いやってゆってない、入る、一緒」
「……ごめん、素面で誘うのこれめちゃくちゃ恥ずかしいな」
サキュバスたちの入れ知恵とはいえ、薬に頼ってしまう気持ちがわかった。使わないけど。
ぎゅうと掴まれた手に力が籠る。
おれ、シャルから言って貰えたの、嬉しい。
そう少し、安心したように、でもこれ以上ないくらい紅くなって言うノエに、心からごめん、と思った。
おとなだから、格好つけたいから、だからそんな素振りを見せないとかじゃなくて、その、程良く見せるくらいが相手にも不安がらせなくて済むのかもしれない。
その程良く、が難しいんだけれど。
ふたりして自然と足早になって、早く宿に着きたい、なんて考えてしまう。
ついさっきまでノエとゆりちゃんが仲良さそうにしてるのを見て、微笑ましいなんて思っていたのに。そんな子に。
ふたりになって、ノエが少し甘えただけでスイッチか入ってしまった。
しょうがないでしょ、ノエはずっともうかわいくて、寝る時もあんなにべったりくっついてて。こうやって甘えてきて。我慢してたの。一応。ずっと。
あの船の狭い寝室じゃなく、少し広い宿と余裕のあるベッド、それだけで興奮してしまうくらい、あの夜のノエがかわいかったの。
◇◇◇
「ん、う、ぅあ、ッ……」
怜くんたちに戻ったよ、なんて挨拶ももどかしくて、自分たちの部屋に入ってすぐに唇を重ねてしまった。
まるで十代の溺れた初恋のよう。
大人ぶりたいなんて考えはどこかにいってしまって、そんなことより早くノエをかわいがりたい、なんて、そんなことで頭がいっぱいだった。
頬も耳もおでこも、全部紅くして、必死に俺の舌を追い掛ける小さな舌がかわいい。
薄い柔らかな唇まで色付かせて、荒い息で求める。
お互い薬も魔法も、何も使ってないのに、ただ目の前の相手しか見えてなかった。
「は、う……っう、ン、んん、ぁ、んっ」
飲み込めない唾液が口の端から垂れて、ものの数分でノエの口周りはべちょべちょのべったべただ。
それを見て、欲情したのと同時に、やはりかわいい、という思いが強くて笑ってしまった。
相変わらずキスが下手、もう何度もしてるんだけどな。
でも、それくらいが俺たちには丁度いい気がする。
ノエがかわいいから、俺はノエに酷いことが出来ない。ちょっとした意地悪くらいはそりゃあ、するけどさ。
手荒にして後で後悔をしたくない。甘やかして、優しく、気持ちよくさせてあげたい。
「お風呂入ろっか」
「……ん、」
そのままベッドへ流れ込みたい気持ちもある。
でも潮風に当たり、草の上でごろごろしてしまい、汗もかいた。魔法で綺麗にしてもいいけれど、気持ちとしては風呂で綺麗さっぱりしてからじっくり抱きたいと思ったのだ。そういう感覚は数年でかわるものではない。
ノエの手を引いて、浴槽に湯を張る間に服を脱がせて、合間にキスをして、躰と髪を洗ってやった。
ノエは裸が恥ずかしい、というよりは、貧相な躰が恥ずかしい、と思ってるタイプだ。
確かにやせぎすだと思う、もうちょっと肉がついた方がいいと。でも肌は白く綺麗だと思う、柔らかさは頬に比べると足りない、やはりもっと食べた方がいい。
いや食べてるんだけど。あれは全て魔力になってしまってるのか?というくらい身についてない。
俺がもっと魔力をあげたら少しくらいふっくらするだろうか。もうちょっともっちりした方が触り心地も……いや、折れる心配なんかをしなくて済む。
「ね、おれも洗ったげる」
「いいよ」
「……やりたい」
「……」
視線がだめ?と甘えている。そんなの、今断れる雰囲気な訳ないでしょうが。
ノエの躰を丁寧に洗っておきながら断るのは勝手が過ぎるだろうが、ノエに触れられて我慢出来ないのはどうしても避けたかった。
どうにか髪の毛だけで許してもらう。
痛かったら言ってね、と俺の言葉を丸々使い、慣れない手つきで髪を洗うノエに、気持ちいいより不安の方が強く、瞳に泡が入らないように閉じるしかなかった。
一生懸命洗ってるノエの姿は見たかったのだけれど。
今のノエなら受け入れてもらえると思っての、ちょっと意地悪な確信だった。
以前は駄目だと蹴られたけれど、今の関係性なら。
そう、以前とは違う関係性。だからこそ断られたっておかしくはないんだけど、そんなことはないだろうと勝手に思ってしまってる。
だってそう口にした瞬間、ノエのかおには期待の色が浮かんだから。
正直ぞくりとした。
こどもっぽい、幼い、純粋、かわいい、そんな言葉ばかり浮かんでくる子が、その意味を知っていて、理解し、頬を染めて伏し目がちに頷く。
お風呂?入る入る、そんなノリじゃなくて、やらしいことを想像して。
堪らないなあ、と思う。
同じ問い掛けでも、他のひとからと俺からとでは意味が違う。
それを感じ取ったノエが愛しかった。
「最近シャワーばっかりだったし。さっき確認した時、結構広かった……というか狭くはなかった、が正しいか、ノエとならふたりで入れそうで」
「……うん、」
「あー……えっと……嫌なら無理強いはしないけど」
「いやってゆってない、入る、一緒」
「……ごめん、素面で誘うのこれめちゃくちゃ恥ずかしいな」
サキュバスたちの入れ知恵とはいえ、薬に頼ってしまう気持ちがわかった。使わないけど。
ぎゅうと掴まれた手に力が籠る。
おれ、シャルから言って貰えたの、嬉しい。
そう少し、安心したように、でもこれ以上ないくらい紅くなって言うノエに、心からごめん、と思った。
おとなだから、格好つけたいから、だからそんな素振りを見せないとかじゃなくて、その、程良く見せるくらいが相手にも不安がらせなくて済むのかもしれない。
その程良く、が難しいんだけれど。
ふたりして自然と足早になって、早く宿に着きたい、なんて考えてしまう。
ついさっきまでノエとゆりちゃんが仲良さそうにしてるのを見て、微笑ましいなんて思っていたのに。そんな子に。
ふたりになって、ノエが少し甘えただけでスイッチか入ってしまった。
しょうがないでしょ、ノエはずっともうかわいくて、寝る時もあんなにべったりくっついてて。こうやって甘えてきて。我慢してたの。一応。ずっと。
あの船の狭い寝室じゃなく、少し広い宿と余裕のあるベッド、それだけで興奮してしまうくらい、あの夜のノエがかわいかったの。
◇◇◇
「ん、う、ぅあ、ッ……」
怜くんたちに戻ったよ、なんて挨拶ももどかしくて、自分たちの部屋に入ってすぐに唇を重ねてしまった。
まるで十代の溺れた初恋のよう。
大人ぶりたいなんて考えはどこかにいってしまって、そんなことより早くノエをかわいがりたい、なんて、そんなことで頭がいっぱいだった。
頬も耳もおでこも、全部紅くして、必死に俺の舌を追い掛ける小さな舌がかわいい。
薄い柔らかな唇まで色付かせて、荒い息で求める。
お互い薬も魔法も、何も使ってないのに、ただ目の前の相手しか見えてなかった。
「は、う……っう、ン、んん、ぁ、んっ」
飲み込めない唾液が口の端から垂れて、ものの数分でノエの口周りはべちょべちょのべったべただ。
それを見て、欲情したのと同時に、やはりかわいい、という思いが強くて笑ってしまった。
相変わらずキスが下手、もう何度もしてるんだけどな。
でも、それくらいが俺たちには丁度いい気がする。
ノエがかわいいから、俺はノエに酷いことが出来ない。ちょっとした意地悪くらいはそりゃあ、するけどさ。
手荒にして後で後悔をしたくない。甘やかして、優しく、気持ちよくさせてあげたい。
「お風呂入ろっか」
「……ん、」
そのままベッドへ流れ込みたい気持ちもある。
でも潮風に当たり、草の上でごろごろしてしまい、汗もかいた。魔法で綺麗にしてもいいけれど、気持ちとしては風呂で綺麗さっぱりしてからじっくり抱きたいと思ったのだ。そういう感覚は数年でかわるものではない。
ノエの手を引いて、浴槽に湯を張る間に服を脱がせて、合間にキスをして、躰と髪を洗ってやった。
ノエは裸が恥ずかしい、というよりは、貧相な躰が恥ずかしい、と思ってるタイプだ。
確かにやせぎすだと思う、もうちょっと肉がついた方がいいと。でも肌は白く綺麗だと思う、柔らかさは頬に比べると足りない、やはりもっと食べた方がいい。
いや食べてるんだけど。あれは全て魔力になってしまってるのか?というくらい身についてない。
俺がもっと魔力をあげたら少しくらいふっくらするだろうか。もうちょっともっちりした方が触り心地も……いや、折れる心配なんかをしなくて済む。
「ね、おれも洗ったげる」
「いいよ」
「……やりたい」
「……」
視線がだめ?と甘えている。そんなの、今断れる雰囲気な訳ないでしょうが。
ノエの躰を丁寧に洗っておきながら断るのは勝手が過ぎるだろうが、ノエに触れられて我慢出来ないのはどうしても避けたかった。
どうにか髪の毛だけで許してもらう。
痛かったら言ってね、と俺の言葉を丸々使い、慣れない手つきで髪を洗うノエに、気持ちいいより不安の方が強く、瞳に泡が入らないように閉じるしかなかった。
一生懸命洗ってるノエの姿は見たかったのだけれど。
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