〈完結〉八年間、音沙汰のなかった貴方はどちら様ですか?

詩海猫(8/29書籍発売)

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「君に止められたら決心が鈍ると思ったからギリギリまで言わなかったし告げる時まともに顔も合わせられなかった。__それに、君は泣かなかった。だから、大丈夫だと。待っててもらえると、勝手に思い込んだ。」
「あの時、泣けば良かったんですか?私は」
「いや、そうじゃなくて__君は、強くなった。もう側で慰めなくても大丈夫だと、勝手に判断したんだあの時の俺は。今考えると確かに勝手な思い込みでしかないのはわかってるけど__多分、それが一番自分にとって易しいことだったんだろうな、当時は」
「__今はどう思ってるんですか?」
「君の言う通り、自分一人で脳内完結した計画を実行したつもりでいる愚か者、だろうな」
「それはディーン様に言われたのですか?」
「いや、アイツは態度にも顔にも出まくりな割にはっきりとは言わなかったな、“迷惑にならない想いの伝え方くらい自分で考えろ“とは言われたが」

(想いって、何だろう)
「八年間、行った先で惹かれ合う方とかいらっしゃらなかったのですか?私はてっきりそれで離「いたのかっ?!」、」
「どこのどいつだそれは?!」
「私は生憎と勉強に仕事に忙しくしてたのでおりませんが」
「そ そうか……」
「エドワード様にはいらっしゃったのではないのですか?」
「__いない。なんでそんな発想になる?」
「まともな手紙ひとつ寄越さなかったからです」
「それは__すまん。正直、何を書いていいかわからなかったんだ」
「は?」

「こうして会って話してる時はリーアが促してくれるから会話が続くから良いのだが、手紙は一方通行だろう?何を書いていいかわからなくて__検閲も入るし。それと……」
歯切れの悪い物言いに苛々する。
「__はっきり仰いませ!もっと的確にきっぱりと!あんな突撃プロポーズかました人が何を躊躇っているのです?!」
「__君の前では、ずっとかっこいい騎士でいたかったんだ」

(__は?)

顔を手で覆って耳まで赤くしているエドワードを前にアルスリーアが固まる。
男女のポーズが逆ではなかろうか、とか頭の隅で考えながら。

「えぇと……私の前ではカッコつけたかった、と 言いました?」
「……すまない」
「乙女のように恥じらってないでちゃんと答えてください!」
(美人がすぎる!)

本人の供述曰く。
「リーアに止められたら行くのをやめたくなるから取り合わなかった」
「誰にも渡したくないから籍を入れた」
「リーアの前ではずっとかっこいい騎士でいたかったから手紙でも弱音は吐けなかった」
等々。

「それ、相手わたしが嫌われてると思う率百パーセントの行動ですよどれも……」
「えっ……」
「行動にも言葉にも手紙にすら出さず、周囲に感知させることもしない。それで通じるのは念話のできる恋人同士くらいでしょうね……?」


















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