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その声がいつも魂の叫びでありますように

26、それでは質問を受け付けます

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ターレム「ビアバスター、せっかくだから悪酔子の質問を聞いてきてくれないか」
ビアバス「なんだと!?いいだろう。…あ、どうも」


  声では反発するが、ビアバスターはすぐにブースから出てスタッフさんからマイクを受け取る。
  気のいいおバカパシリという設定もアニメそのままだ。


ターレム「では、質問のある者はいるかっ!」
 子供達 「ハイハイハイっ!!」


  ブースの中から力強く問うターキッシュハーレムの声に、たくさんの子供と少しの大人が手を挙げ、


ターレム「じゃあそこの男の子。青と紫のしましまボーダー服を着てる君だ。まず名前と歳を聞こうか」


  その一人の男の子にビアバスターが近づき、マイクを向ける。

 「わっ、わっ」

  観覧スペースにビアバスターが入ってきたことで距離が近づき、響季の鼓動が早くなる。


おとこのこ 「雅羅沙(ガラシャ)ですっ!」
ビアバスター「がらしゃ君、か。いくつだ」
ガラシャ君 「ごさいですっ!」
ビアバスター「5歳か。質問はなんだろうか」

  DQNネームにほんの少し戸惑いを見せつつ、ビアバスターが質問を賜る。


ガラシャ君「いつもなんじにねますかっ!」
親御さん客「(笑)」
ビアバス 「だ、そうだ(笑)」
ターレム 「なるほど。そうだな、俺はいつも夜10時には寝てしまうな」
親御さん客「おおー」
ターレム 「それだけピンクエレファント団の活動は過酷ということだな。毎日くたくたになるまで活動し、夜はグッスリだ」
ブラルシ 「私もそれぐらいには寝てしまうな。だが最近はエッグノッグを飲んでから寝るな」
観客   「へえーっ」
ターレム 「おお、いいな。先日放送されたアニメでも出ていたな」
ブラルシ 「だが私はピンクエレファント団だからな。ノンアルコールではなくブランデーを入れて飲むぞ。そうすると、とても(トテモ)…、身体が(カラダガ)…、……温まるんだ(アタタマルンダ、アタタマルンダ)」
ターレム 「おお、ピンクエレファント団の必殺技、酔惑(よいわく)だな。こんなところでも悪の軍団としての活動を怠らないとは、ブラックルシアンは優秀だな」
ブラルシ 「だろう?どうだ、小さな悪酔子のみんな。飲んでみたくなるだろう。ブランデー入りのエッグノッグを」
 子供   「のまなーいっ!」
 子供   「のまないーっ!」
 子供   「のまないのまなーい!」
ブラルシ 「ほお、なかなか手ごわい悪酔子達だな。私の酔惑に惑わされないとは」


  公録と言いつつ、子供達を悪へ誘う活動も忘れない。
  森口茜の、ブラックルシアンの声にエコーを利かせ、アニメ通りの独特の声の揺らぎで子供達にアルコール入り飲料へ興味を持たせる。
  そのアニメばりの悪役ぶりと、それを全力で突っぱねる子供達に響季はゾクゾクする。


ブラルシ「他に質問のある者は?」
子供達 「ハーイッ!ハーイッ!!」
ターレム「じゃあそこの…、なんだ、なんか名前みたいの書いたうちわを持った、というか持たされてる男の子」
観客  「(笑)」
ブラルシ「おうたナントカいううちわの子だな」
ビアバス「おっ、よし。ちょっとすまないな悪酔子達。お邪魔するぞ。……はいっ、じゃあおうたナントカくん」
お母さん「あ、央太滝(おうたろう)です」
ブラルシ「おっ。おかあさんマイク奪ったぞ」
お母さん「すいません(笑)」
観客  「(笑)」
ターレム「それはなんだ。息子の名前か」
お母さん「そうです」
央太滝君「そぅ…」
ブラルシ「なんか、アイドルライブの、何ーズJrとかのライブで振ってる名前うちわみたいだな」
観客  「(笑)」
お母さん「我が家のアイドルです(笑)」
ターレム「おお、とんだ親バカ悪酔子だったな」
観客  「(笑)」


  多少の身振り手振りを加えつつ、親客いじりも交えつつ、ステージ上の二人は投げかけられる質問をそつなく消化していく。
  お子さんの質問などはたかが知れている。いくつかシミュレーションをしたのかもしれない。
  破綻せず、魔法は正しく発動されていった。
  悪役二人はマイクを向けやすい観覧スペース外側の子供達ばかりではなく、スペースの中心部分にいる子供達からも質問を賜る。
  ビアバスターはその指示に観覧スペースを奔走し、詫びながら観客の間を分け入って中心部にいる子供までマイクを向けに行き、時には当てられた子供まで周囲の観客にマイクを回してもらっていた。


ターレム 「では悪酔子達、さっきみたいにリレーをしてビアバスターにマイクを返してやってくれるか。……うん、そうだそうだ。お隣さんにマイクを渡してビアバスターのところまで届けてやってくれ。こういった助け合いの心こそが大事だ」
ブラルシ 「おっ、今度はスムーズだな。さてはコツを掴んだな」
 観客   「(笑)」
ターレム 「たった一回でコツを掴むとは、なかなか優秀な悪酔子達だな」
 子供   「ぁぃ」
ビアバス 「うむ。ありがとう」

  時間の都合上、さすがに手を挙げてくれた全ての悪酔子を指すことは出来ない。
  そのためどうしても「さっきから手を挙げているのに自分は全然指されない!」とブンむくれてしまう子はいる。
  だがこういった突発的なアトラクションを挟むことで、自分もイベントに参加しているのだという気分が味わえた。


ブラルシ 「では。まだ質問のある者は?」
子供達  「ハイハイハイッ!!」
ターレム 「じゃあ次は、少し後ろの方にも訊いてみようか。そうだな、黄色いくまのトレーナーを着てる女の子だ」
ビアバス 「よしっ、ちょっと待て。……よし、君だ。お名前を教えてくれるか」
おんなのこ「哀淋です」
ビアバス 「あいりんちゃんか。いくつかな」
哀淋ちゃん「よんっ、さぃ」
ビアバス 「よんさいか。しつもんはなんですか?」
哀淋ちゃん「ぶらっ、(ぼふー)ぶらっくるしあんわっ、たーきっしゅはーれむのことがすきなんれすかっ(ぼふー)」
親御さん客「おおーっ」
ターレム 「ビアバスター、マイク近くないか。あいりんちゃんマイク吹いてるぞ」
ブラルシ 「ぼふぼふ言っているな」
親御さん客「(笑)」
ビアバス 「おお、そうかすまん。それより質問の方はどうだ」
ブラルシ 「なんだったかな」
ビアバス 「貴様がターキッシュハーレムが好きかどうか、だそうだ(笑)」
ブラルシ 「そうか。ょぅじょでも女の子は恋バナが好きだな。お母さんの影響かな?」
親御さん客「(笑)」
ブラルシ 「好きは好きだが、私の好きは残念ながらあいりんちゃんが言う好きとは違う好きだな」
親御さん客「おおーっ」
哀淋ちゃん「ぅぅ??」
ビアバス 「あいりんちゃんわかってないようだが」
親御さん客「(笑)」
ブラルシ 「つまりだなあ…、うーん…、親御さん近くにいるなら後で説明してやってくれ。私は、一人の男としてはターキッシュハーレムはなんとも思っていない。だがパートナーとしてのターキッシュハーレムは心から信頼し、愛していると」
観客   「おおーっ!!」
ターレム 「……ちょっと照れるな(笑)」
観客   「(笑)」
ブラルシ 「こういう時でなければ言う機会もないしな(笑)」


  文屋真希が小さいお子さんを前にキャラを忘れ、うっかりお姉さん然とした部分を露出させる。そして観客はブラルシターレムのコンビ愛を確認する。そんな姿に、響季はニヤニヤ、ハラハラ、ドキドキする。
  そうしていくつかの質問が続いた後。


ターレム 「それでは大人の悪酔子達にも少し聞こうか」
大人客  「ハイハイハイッ!!」
ブラルシ 「おお、威勢がいいな」
観客   「(笑)」
ターレム 「じゃあそこの少し後ろの、黒に金のラインが入ったパーカーを着たお父さん」
ビアバス 「よしっ。……どうぞっ、お名前を」
お父さん 「あ…、た、孝司(たかし)43歳です」
ビアバス 「タカシくん……、タカシか」
観客   「(笑)」
ビアバス 「タカシ、質問はなんだタカシ」
ターレム 「なんでもいいぞタカシ」
観客   「(笑)」
孝司くん 「(笑)す、好きな、好きなおつまみはありますか?」
ブラルシ 「ほう。アテか」
ターレム 「アテって」
親御さん客「(笑)」
ブラルシ 「うーむ…。敢えて言うならー、板わさかな」
親御さん客「(笑)」
子供達  「???」
ブラルシ 「(笑)子供達は板わさわからないか。わさび醤油で食べるかまぼこだが、私はかまぼこに切れ込みを入れてそこにアボガドを挟んだやつが好きだな。それをわさび醤油で食べるんだ」
親御さん客「おおーっ!」
ターレム 「うわ…、旨そう」
親御さん客「(笑)」
ブラルシ 「貴様、今普通に言ったな(笑)旨そうって」
観客   「(笑)」
ターレム 「(笑)まあ、俺は塩だけあればいいがな(キリッ」
親御さん客「おおーっ」
子供達  「???」
ブラルシ 「子供達がまたポカーンだな(笑)」
ターレム 「もう少し大人になればわかるかな(笑)」
親御さん客「(笑)」
ビアバス 「ちなみに私は白味噌を塗って焼いたお魚が好きだぞっ!」
ブラルシ 「お前には訊いていないぞ」
ビアバス 「なにいっ!?くそぅ!」
観客   「(笑)」
ビアバス 「くそう。みんなもお魚食べるんだぞっ!!」
子供達  「はぁーいっ!!!」
ビアバス 「うんっ。良い返事だ!」
ブラルシ 「(笑)他には?」
大人客  「ハイハイハイッ!!!」
ターレム 「お前達、少し落ち着け(笑)」
観客   「(笑)」


 子供達と大人達、それぞれ平等に質問を賜った所で、


ターレム「ではそろそろ締めようか。次が最後の質問かな」


  ターキッシュハーレムがそう言った。
  その言葉を耳にした零児は突然、

 「響季、服破けてるよ。脇のとこ」

と、言い出した。

 「えっ?」

  指摘された響季は言われた場所を見ようと手をあげる。そして、


ターレム「じゃあそこの、赤い眼鏡の女の子」


  ターキッシュハーレムが手を挙げた女の子を指した。

 「……えっ?えっ!?」

  指された方は狼狽えるが、パシリ属性の美人悪役は構わずずんずんやって来てマイクを向けてきた。


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