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4 異界の神
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そこからは怒涛の展開だった。
先程俺を貴様呼ばわりした殿下が「申し訳ございません。異界の神とは露知らず」と謝り倒してきた。俺もまさか自分が神扱いされるなんて知らなかったからお互い様だよ。
だが俺に剣を向けたことは許さん。死ぬかと思ったぞ。
謝罪の言葉は受け付けん。なんかお詫びの品をよこせと要求すれば、聖女が「さすがカミ様! 遠慮のなさが可愛い!」と手を叩いて喜んでいた。こいつの喜びポイントがよくわからないのだが。
その後、聖女と共に別館というところへ案内された。どうやらここは王族が暮らす屋敷らしく、俺と聖女にはそれぞれ別館に部屋が与えられることとなった。これは俺がごねた結果でもある。
こんな知らん世界に味方なしは困る。絶対に聖女とは離れたくない。ひとりは怖いと声を大にして主張した結果である。「プライドあるようでないところが可愛い!」と聖女が喚いていた。こいつ、うるさいな。
用意したという部屋へ案内される道中。そそくさと俺の隣に並んできた聖女が、ここぞとばかりに質問してくる。
「ところでなんでパジャマなんですか?」
「今日オフだったから。動くの面倒で宅配ピザ食ってたら急に部屋が光って大変だった」
「オフの日はなにしてるんですか?」
「エゴサ。俺を褒めている投稿だけを探し出してニヤニヤ眺めてる」
「可愛いぃ!」
口元を押さえた聖女は、先程から可愛いしか言わない。語彙力皆無か?
「悪口投稿見つけたらどうするんですか?」
「可哀想にと哀れんでから忘れる。俺を貶すとかさ、そいつのセンスが死んでいる証拠だよ。可哀想に」
「めっちゃ自己中心的! なんかこう! 俺を中心に世界は回っているんだ的な感じがすごくいいです!」
「ありがとう」
また褒められてしまった。そうこうしているうちに部屋に到着した。
「あ、私、田所雪音っていいます。同じ地球人同士ぜひ仲良くしてください!」
元気に自己紹介をして聖女雪音ちゃんは、護衛さんと共に部屋に引っ込んでいった。どうやら俺と雪音ちゃんの部屋は階違いらしい。二階に雪音ちゃんの部屋。俺の部屋は三階だ。
別館という割には広々しておりちょっとした散歩もできてしまいそうな広さだ。ホテルみたい。
三階へ上がって俺を部屋に案内してくれたのは、護衛さん数人と殿下だ。どうやら俺をマジもんの神だと勘違いしているらしい殿下は丁寧に扉を開けてくれる。
殿下のお名前はマルセルというらしい。第一王子と言っていた。随分と偉そうな人だな。
俺のことを「異界の神」と呼んでくるマルセルをどうにか止めたい。あとついでに神ではないこともお伝えしたい。
豪華絢爛な部屋に案内された俺は、ゆるくウェーブした金髪を惜しげもなく晒すマルセルと対面した。
「あの、俺の名前は荒神湊です。名前で呼んでください」
「アラガミ?」
「ミナトって呼んでください」
お願いします、と頭を下げれば「おやめください」と殿下が困ったように眉を寄せた。
伝わってないな? これ。
「あの俺は別に神様とかそんなどえらい存在ではなくてですね。ただの一般人です」
「ご謙遜を」
ご謙遜じゃねえよ?
まさか生きているうちに「自分人間っす!」「ご謙遜を」なんて頭おかしい会話をする日がくるとは。これどうしよう。俺が何を言っても「ご謙遜を」で流されてしまう。便利な言葉だな、おい。
ムスッとすれば、マルセルが困ったように眉尻を下げてくる。そうして引き連れていた護衛っぽい人の中から、ひとりを俺の前に差し出した。
「イアンといいます。ミナト様の身の回りの世話はこの者に任せるので好きにお使いください」
「イアンと申します。どうぞよろしくお願いいたします」
礼儀正しく頭を下げたイアン青年は、体格のいいクール系のお兄さんだった。なんかこう、凄腕秘書みたいな感じする。褐色の肌に黒髪が映え、妙な色気を有していた。隙のない身のこなしである。SPと言われても、そうですかと納得できそうな感じ。てか多分そういう意味合いでつけられているのだろう。よくわからんけど。
異界の神であるあなた様のお世話をできるなど光栄です、とお世辞っぽい言葉を吐いたイアンは小さく微笑んだ。なかなかにイケメンだな。俺とは違うタイプのイケメンだ。俺はきらきら系だが、イアンはクール系だ。
「では私は聖女の方へご挨拶に行ってきます。なにかありましたら遠慮なくイアンにお申し付けください」
ゆるく笑ったマルセルは、そうして残りの護衛たちを引き連れて去って行った。豪華絢爛な部屋に残された俺は、無言で佇むイアンに目を向けた。
「あの、イアンさん」
「敬称は不要です。イアンとお呼びください」
「イアン」
「はい、ミナト様」
ぐっと拳を握り締めた俺は、クールなイアンを見据える。
「俺マジでただの人間なので。神とかではありません。カミ様っていうのは単なるあだ名で」
「ご謙遜を」
ちくしょう。
もう「ご謙遜を」って言葉禁止にしてほしい。話が進まねぇ。
その後も俺は奮闘しまくったが、その全てをイアンはクールに「ご謙遜を」で流してしまった。
逆に訊きたいのだが、召喚早々ピザ食ったり、お詫びの品よこせとごねたり、聖女と離れたくないと大声で主張するような我儘放題やっている男が今更ご謙遜なんてすると思うか?
先程俺を貴様呼ばわりした殿下が「申し訳ございません。異界の神とは露知らず」と謝り倒してきた。俺もまさか自分が神扱いされるなんて知らなかったからお互い様だよ。
だが俺に剣を向けたことは許さん。死ぬかと思ったぞ。
謝罪の言葉は受け付けん。なんかお詫びの品をよこせと要求すれば、聖女が「さすがカミ様! 遠慮のなさが可愛い!」と手を叩いて喜んでいた。こいつの喜びポイントがよくわからないのだが。
その後、聖女と共に別館というところへ案内された。どうやらここは王族が暮らす屋敷らしく、俺と聖女にはそれぞれ別館に部屋が与えられることとなった。これは俺がごねた結果でもある。
こんな知らん世界に味方なしは困る。絶対に聖女とは離れたくない。ひとりは怖いと声を大にして主張した結果である。「プライドあるようでないところが可愛い!」と聖女が喚いていた。こいつ、うるさいな。
用意したという部屋へ案内される道中。そそくさと俺の隣に並んできた聖女が、ここぞとばかりに質問してくる。
「ところでなんでパジャマなんですか?」
「今日オフだったから。動くの面倒で宅配ピザ食ってたら急に部屋が光って大変だった」
「オフの日はなにしてるんですか?」
「エゴサ。俺を褒めている投稿だけを探し出してニヤニヤ眺めてる」
「可愛いぃ!」
口元を押さえた聖女は、先程から可愛いしか言わない。語彙力皆無か?
「悪口投稿見つけたらどうするんですか?」
「可哀想にと哀れんでから忘れる。俺を貶すとかさ、そいつのセンスが死んでいる証拠だよ。可哀想に」
「めっちゃ自己中心的! なんかこう! 俺を中心に世界は回っているんだ的な感じがすごくいいです!」
「ありがとう」
また褒められてしまった。そうこうしているうちに部屋に到着した。
「あ、私、田所雪音っていいます。同じ地球人同士ぜひ仲良くしてください!」
元気に自己紹介をして聖女雪音ちゃんは、護衛さんと共に部屋に引っ込んでいった。どうやら俺と雪音ちゃんの部屋は階違いらしい。二階に雪音ちゃんの部屋。俺の部屋は三階だ。
別館という割には広々しておりちょっとした散歩もできてしまいそうな広さだ。ホテルみたい。
三階へ上がって俺を部屋に案内してくれたのは、護衛さん数人と殿下だ。どうやら俺をマジもんの神だと勘違いしているらしい殿下は丁寧に扉を開けてくれる。
殿下のお名前はマルセルというらしい。第一王子と言っていた。随分と偉そうな人だな。
俺のことを「異界の神」と呼んでくるマルセルをどうにか止めたい。あとついでに神ではないこともお伝えしたい。
豪華絢爛な部屋に案内された俺は、ゆるくウェーブした金髪を惜しげもなく晒すマルセルと対面した。
「あの、俺の名前は荒神湊です。名前で呼んでください」
「アラガミ?」
「ミナトって呼んでください」
お願いします、と頭を下げれば「おやめください」と殿下が困ったように眉を寄せた。
伝わってないな? これ。
「あの俺は別に神様とかそんなどえらい存在ではなくてですね。ただの一般人です」
「ご謙遜を」
ご謙遜じゃねえよ?
まさか生きているうちに「自分人間っす!」「ご謙遜を」なんて頭おかしい会話をする日がくるとは。これどうしよう。俺が何を言っても「ご謙遜を」で流されてしまう。便利な言葉だな、おい。
ムスッとすれば、マルセルが困ったように眉尻を下げてくる。そうして引き連れていた護衛っぽい人の中から、ひとりを俺の前に差し出した。
「イアンといいます。ミナト様の身の回りの世話はこの者に任せるので好きにお使いください」
「イアンと申します。どうぞよろしくお願いいたします」
礼儀正しく頭を下げたイアン青年は、体格のいいクール系のお兄さんだった。なんかこう、凄腕秘書みたいな感じする。褐色の肌に黒髪が映え、妙な色気を有していた。隙のない身のこなしである。SPと言われても、そうですかと納得できそうな感じ。てか多分そういう意味合いでつけられているのだろう。よくわからんけど。
異界の神であるあなた様のお世話をできるなど光栄です、とお世辞っぽい言葉を吐いたイアンは小さく微笑んだ。なかなかにイケメンだな。俺とは違うタイプのイケメンだ。俺はきらきら系だが、イアンはクール系だ。
「では私は聖女の方へご挨拶に行ってきます。なにかありましたら遠慮なくイアンにお申し付けください」
ゆるく笑ったマルセルは、そうして残りの護衛たちを引き連れて去って行った。豪華絢爛な部屋に残された俺は、無言で佇むイアンに目を向けた。
「あの、イアンさん」
「敬称は不要です。イアンとお呼びください」
「イアン」
「はい、ミナト様」
ぐっと拳を握り締めた俺は、クールなイアンを見据える。
「俺マジでただの人間なので。神とかではありません。カミ様っていうのは単なるあだ名で」
「ご謙遜を」
ちくしょう。
もう「ご謙遜を」って言葉禁止にしてほしい。話が進まねぇ。
その後も俺は奮闘しまくったが、その全てをイアンはクールに「ご謙遜を」で流してしまった。
逆に訊きたいのだが、召喚早々ピザ食ったり、お詫びの品よこせとごねたり、聖女と離れたくないと大声で主張するような我儘放題やっている男が今更ご謙遜なんてすると思うか?
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