Blue ride

Repos〜ルポ

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Story7 2人だけの時間

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日本に帰ってからの碧は、目まぐるしい時間の中でも異国の地でタミオと過ごした、あの時間が頭から離れなかった。

偶然の再会をしたあの夜…。

2人は同じベッドで眠ったが何もなかった。
でも、一緒にいられるだけで幸せな夜だった。

次の朝…先に目覚めたのはタミオだった。

眠っている碧の顔を眺めながら、昨日の出来事は夢じゃないと幸せを実感していた。しばらくして碧が目覚めるとタミオの姿はなく、ベッドサイドにチケットと手紙が置いてあった。

『おはよう。
 ライブのリハがあるから
 目が覚める前に先に出るよ。
 今日帰るって言ってたけど
 帰る日を1日延ばせない?
 ライブにも来てほしいしさ。
 チケットを置いておくから
 考えてみて。タミオ』

碧も帰国後は仕事のスケジュールが詰まっていたが、ライブにも行きたい、そして何よりも一緒にいたい。その想いが強く、久しぶりに仕事をスタッフに任せて帰りを1日延ばすことにした。

そして、ライブ開始1時間前。
碧がホテルを出ると、1台の車が止まった。 

「失礼ですが…碧様、で
   いらっしゃいますか?」

運転手が声をかけてきた。

「はい、そうですけど…」

「タミオ様より、
    お好きな所へ
    お連れするように…と
    承っております」

「ありがとう…ございます。
    では、ライブ会場まで
    お願いします」

「かしこまりました」

「ずっと待ってて
 下さったんですか?」

「はい。多分…行き先は
    ライブ会場か、空港になる
    だろうけど、お好きな場所まで、
    お連れする様にと…」

碧はタミオのさりげない気遣いが嬉しかった。会場に到着すると一般の出入口ではなく関係者入口に車が止まり、タミオのマネージャーだという女性が待っていた。

「初めまして。タミオから
   うかがっています。
   どうぞ、こちらへ」

チケットがあることを伝えたが、ステージがよく見える『プライベートオンリー』と書かれた場所に案内され、いくつか席があるのに誰もいなかったので貸切だった。碧は慣れない場所に緊張したが、それ以上にいつもと違う気持ちで聴くタミオの音楽にワクワクしながら静かにその時を待った。

そしてライブが始まった…。

以前聴いた音楽とは違う、不思議な世界に来たかの様な音楽に、碧は魅了されていた。離れていた時間の中で、碧の仕事やタミオの音楽に、それぞれ成長を感じて、時折目を潤ませて聴いていた。

曲が終わり、ライブ終盤…

「今日もたくさんの方が
    来てくれていて本当に
    嬉しいです。いよいよ、
   ラストの曲になりました。
   その前に一つ…皆さんへ
   ご報告があります」

ざわついていた会場が一瞬で静かになった。タミオは深呼吸してゆっくり話し始めた。

「実は今…お付き合い
    している人がいます」

会場から一斉に「えーっ!」の声。その後、「何?」「誰?」様々な声が飛び交う中、碧も驚いていた。

「長い間想い続けた人で
    この時間を大切に
 していきたいと思って
 います。静かに見守って
 もらえたら嬉しいです。
 よろしくお願いします」

袖から見ていたマネージャーやスタッフは慌てていたが、会場からは拍手が生まれ、「おめでとう」の声が聞こえてきた。周りは私だと知らなくても、碧は嬉しかった。ライブが終わり、碧はタミオに声をかけずにホテルに帰って来た。しばらくしてタミオから電話が来た。

「もしもし碧ちゃん?」

「もしもし」

「ライブ楽しかった?」

「楽しかったよー!でも…
 あんな事言って良かったの?」

「今まで何も言わずに
 ずっと努力してきたんだ。
 これだけは誰にも何も
 言わせない。もう碧ちゃんを
 失いたくないんだ!」

「ありがとう、嬉しい」

「もうホテルに戻って
    来てるんだ。今から
 碧ちゃんの部屋へ
 行ってもいい?」

「うん」

今夜も同じベッドで眠った2人だが、実は…昨日も今日もキスだけ…だった。

ツアーの疲れもあるのだろう。元々紳士的なタミオだが、息を切らして部屋まで来てくれる熱い想いがあるのに、キスだけ…何となく複雑な気持ちだった。それでも、遠い異国の地で誰にも邪魔されないなら、このまま時が止まってしまえばいいのに…とも思っていた。


次の朝。

碧はタミオを起こさずに手紙を置いて先に帰ることにした。

「おはよう、タミオ…さん。
 呼び捨ては慣れないから
    もう少し待ってね。仕事が
    立て込んでいるので先に
    帰ります。帰国したら
 連絡して。待ってるから。
 ツアーの成功を祈ってます。
 ではまた日本で。碧」

帰ってしまったという碧の手紙を見て、タミオは少しだけ寂しさを感じていたが、お互いの忙しさも知っている…尊重したいと思い、今は自分のツアーを成功させて早く帰国しようと思っていた。帰国後の碧は目まぐるしい毎日を過ごしタミオに連絡出来ずにいた。

そして1ヶ月後のある日…。

「もしもし、碧ちゃん?」

「もしもし」

「ようやく終わった。
 明日帰るよ」

「うん。お疲れ様」

「日本に着いたら真っ直ぐ
 そっちへ行くから」

「休んでからでもいいよ」

「早く会いたいんだ」

「わかった。待ってる。
    それじゃあ、気を付けて」

そして次の日…。

空港へ向かうタミオを乗せた車が事故に遭ったというニュースを見た。幸いにもタミオは軽症で碧はホッとしたが、病院へはモデルのユリが付き添っていた。

「ユリさん?どうして…」

碧は、昨日のタミオとの会話を思い出して、何が起こっているのか分からず、今すぐ行って確かめられない自分が悔しかった…。
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