Blue ride

Repos〜ルポ

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Story3 LIVE

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ライブ当日。

碧がライブハウスに到着するとデビュー前のアーティストとは思えぬ人気で、会場に入る前からファンで溢れていた。中に入ると熱気に包まれ、碧は少し圧倒されていた。開始時間より2~3分遅れて、会場全体の照明が落とされた。

静かにピアノとフルートの音が流れてライブが始まった。

ベース、ギターと次々音が重なり、最後に入ったドラムのリズムに合わせて手拍子していると、タミオがステージに現れた。たくさんのライトと歓声を浴びて登場するステージ上のタミオは、とても遠い存在に思えた。
碧は、自分にだけ見せた素の表情を思い出し、嬉しくなる反面…ほんの少し寂しく感じた。それでも心地よいテンポで身体は自然と動き出す。

気付けば碧はまたタミオのペースにはまっていた。

数曲歌った後「ありがとう」と、一礼して照明が消えると次の曲に行くまで30秒ほど待った。次にスポットライトが当たる先には、ギターを持ったタミオがいた。タミオは弦の調整をして、少しだけギターを弾きながら話し始めた。

「今日は来てくれて本当に
    ありがとうございます。
 えー先日…ラジオでお話した
    "同じ日に二度も偶然会えた
    という話“…ですが。この間
    三度目の偶然がありまして…」

碧は驚いた。まさかライブでもこの話をするとは…会場も「いいなー」の声と共にザワついた。

「人との出会いは…不思議な
    もので、これだけ携帯が
    普及していても、縁があれば
    偶然が重なる事もあるのだと
    改めて感じました。まぁ、
    バイカー達が立ち寄る場所
    だから、割と会う確率が高く
    なるのかもしれけどね。今日、
 ここにいる皆さんと出会えた
 この瞬間、この縁も、本当に
 大切にしていきたいな…と
 思っています。あっ!珍しく
 ちょっと良いこと言ったら
 恥ずかしいですね…」

会場から笑いと歓声が入り混じった拍手が起こると、タミオは続けた。

「次の曲は、そんな不思議な
 出来事が起こった後に、
 一気に書き上げた新曲です」

そう言うと弾き語りが始まった。スポットライトだけで、周りは静かにギターの音だけが鳴り響き…そこに優しいタミオの声が重なると、不思議な空気に包まれた。
碧はタミオの新たな一面を知り、惹かれていった。

ライブは最後まであっという間で終始大歓声の中で終わった。踊り狂って感動した碧は久しぶりに気持ちの良い爽快感とライブの余韻の中、帰ろうとした。すると会場で、1人のスタッフに小声で呼び止められた。

「スミマセン…碧さんですか?
 こちらに、ご案内します」

何かあるのかと不安に思いつつ、連れて行かれた先には関係者以外立ち入り禁止の文字があり、先へ進むとバンドメンバーの控え室やケイタリングが並ぶ部屋があり…皆、それぞれ心地よい疲れと共に後片付けをしながら休んでいた。

「こちらです」

スタッフが案内した先は、タミオの楽屋だった。ノックして入るとタミオが汗だくで休んでいた。

「碧ちゃーん!来てくれて
 ありがとう!」

「お疲れ様でした。カッコいい
 ライブでしたね」

「ありがとう。楽しかった?」

「楽しかったよ!自然と身体が
 動き出す感じ。あの心地良い
 リズムとメロディーも最高に   
 良いですね」

「良かったぁー。碧ちゃんに
 楽しんでもらえるかな…って
 心配でさ。でも、ライブは
 観てほしかったからねー」

「周りも皆、めちゃくちゃ
 盛り上がってましたよー」

「碧ちゃんの所、メチャ
 盛り上がってたねー!
 見えてたよ」

「えっ…見えるんですか?」

「あの広さだと割と細かく
 こっちからも見えるんだ」

そんなに見えるの?! 恥ずかしいじゃん!と思わず顔を隠したくなった。

「もうすぐ終わるから待ってて」

「いや…今日は帰ります。
 打ち上げとか…あるんじゃ
 ないですか?」

碧がそういった途端、スタッフが声をかけてきた。

「タミオさん、リハで確認
 したい事があるそうです」

「ほら行かなきゃ。私は
 1人で帰りますから。
 タイミングが合ったら
    例のカフェで…」

「じゃあ…せめて、これ」

タミオが碧に連絡先を渡した。

「連絡して。待ってるから。
 じゃあ…また」

「えっ…あの…」

そう言うとタミオは、STAFFと
一緒に楽屋を出た。碧も家に
帰ると、しばらく何も出来ず
タミオの書いた連絡先のメモを
見てボーッとしていた。

連絡してもいいんだろうか…。
スグかけたら軽いヤツとか
思われない…?と頭の中で
自問自答が繰り返されていた。
一方で、本能的に話したい!
という衝動にも駆られている。

碧は、いつもこうやって恋を
諦めて後悔していた。だから
今度は…トライしてみたかった。

失敗したっていいじゃない!
人生楽しまないと損をする。

そう思って会社は立ち上げた。
そして今、成功している!
恋愛ごときに怖じ気づいて
どうするんだ、自分!
碧は思い切ってタミオに
電話をかけてみることにした。
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