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Story5 勘違い
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「逢いたい…タミオさんに…」
この一言でバイクを飛ばして来たタミオは、碧の家に泊まった。
タミオの手料理で碧はすっかり元気になり、夜遅くまで二人でとめどなく話し続けた。気づけば、碧は満腹と安心感で先にソファーで眠ってしまった。タミオは碧を抱きかかえベッドに寝かせると、自分はソファーで眠った。
次の朝。
タミオは美味しそうなにおいと、小気味よい音で目が覚めた。
「おはよう。いい匂い…」
「あっ!起きた?おはよう。
朝ごはん、もうすぐ出来る
から、先に顔洗って来て。
洗面所は、そっち。新しい
タオル、置いてあるから」
「あっ…うん、ありがと」
顔を洗って戻ると朝ごはんが並んでいた。
「いただきまーす!
おっ!味噌汁うまい」
「そう?良かった。それより
昨日は本当にありがとう。
もしかして…ベッドまで
運んでくれたの?」
「うん。お姫様抱っこでね…」
「えーっ!重かったよね。
ごめん」
「いやぁ重かった…なんてね。
ウソウソ!碧ちゃん
疲れてたんだよ…ホントに」
「ありがとう。おかげで元気
もらえた。昨日は晩ご飯も
作ってもらっちゃったよね。
どれも本当に美味しかった。
今朝は、そのお礼…と言える
ほどのものではないけど…」
「どれも美味しいよ。オレも
一人暮らし長いからね。
なんか覚えちゃったんだよ。
それに何よりも碧ちゃんに
元気になってもらうことが
一番だからね。良かった」
「ありがとう」
「今日どうする?」
「たまにはどこか行こうかな…
と思って」
「付き合うよ」
「えっ…いいの?」
「いつものカフェ行く?」
「うん、行きたい!」
「よしっ!じゃあ、これ
食べたら行こう!」
久々にバイクに乗れる!しかも、タミオさんと一緒に…。
準備をして碧がバイクの前に立つと、タミオがさりげなく自分のバイクの後ろを指さして話した。
「碧ちゃんは運転ナシ。
今日は後ろに乗って」
さりげなく言ってきたタミオに驚いた。男の人のバイクの後ろに乗るなんて人生で想像もしない出来事だったから。
風を受けて颯爽と走る…そんないつもの感じと違って不思議だった。
いつものカフェに立ち寄ると、見知らぬ女性が近寄ってきた。
「タミオじゃない!
久しぶり。元気だった?」
「おー!ユリじゃんか!
元気!元気!今日はオフ?」
「そう。だから久しぶりに
走りに来たの。カワイイ子
連れてるじゃない、彼女?」
「今、頑張ってるとこ」
「初めまして。この人、
気を付けたほうが良いよ」
「余計な事言うなよ。彼女は
業界の人じゃないんだから」
「そう、ごゆっくり。
それじゃあ、またね…」
この人…誰?何なの?これ。何を見せられてるの?碧は、早くこの場を立ち去りたかった。
「あの海へ連れて行ってもらえますか?」
碧は、それだけ言うと何も買わずに店を出てバイクの後ろに乗ろうとしていた。タミオは何がなんだか分からずに海へ向かった。海まで着くと、碧はまた何も言わずにいつものポイントまで歩いて行った。
「さっきから何も喋らない
けど…どした?」
気になって話し始めたのはタミオだった。
「・・・別に。ココでは
いつも眺めてるだけだから」
「違うよ。カフェから
ずっとじゃん…」
大人気ないのは私だけ?
あの雰囲気を見せられて気にしない方がおかしい。
「もしかして、ユリの事
気にしてる?アイツ、モデル
やってて、仕事を一緒にした
仲間だよ」
「それだけには見えなかった
けど…」
「アイツさ…誰にでも
ああいうこと言うんだよ。
誤解させたならゴメン」
彼女でもないのに…私も何怒ってるんだろ?海を眺めながら碧は、そんな事を考えていた。
「ゴメン。仕事のことで色々
考え事してただけ。だから
気にしないで」
「なーんだ。少しは
妬いてくれたのかと
思ったんだけどな…」
二十歳のヤキモチなら可愛げもある。でも三十路を過ぎたら簡単には言えない。これからデビューするとなると、ファンや業界の人との噂も増える…そんなことまで考えてしまう。いちいちジェラシーなど持つより、他人事として仕事に集中している方が良いと碧は思っていた。
「そういえば、自宅での仕事
があった…送ってくれる?」
「う…うん」
タミオは碧を送るとそのまま帰って行った。碧は家に入ると、ホッとして涙が出てきた…。
それからタミオは、デビューに向けて着々と準備が進んでいた。碧もまた仕事が順調に進んでいた。お互いに何となく、電話どころかメールを送ることすら避けていた。
そして、タミオのデビューが明日に迫ったある夜…。碧の携帯が鳴った。タミオからだった。
「もしもし」
「もしもし碧ちゃん?
連絡出来なくてゴメン。
体調が気になってたんだけど
最近はどう?」
「もうすっかり元気!
相変わらず忙しくしてるよ。
でも心配しなくて大丈夫。
ありがとう」
「そっか…良かった。
実は…明日デビューなんだ」
「おめでとう!いよいよ…
かぁー。良かったね」
「これから忙しくなると
思うから、その前に話して
おきたい事あってさ」
「うん…」
「オレ…碧ちゃんの事、
好きなんだ」
明日、デビューする人が何を言ってるの?…碧は驚いて何も言えなかった。
「でも何か言ってほしい
とかそういう事じゃなく…
ただ好きだと言うことを
伝えたかっただけ。
何かゴメン、困るよね。
こんな事…」
「ありがとう、嬉しいよ。
でも明日デビューする人が
そんな事言っちゃダメだよ。
夢が叶って、前に進む人が
余計な事考えてないで、今は
明日に備えて休んで。私も
明日、早いし…もう寝るね」
「うん。聞いてくれて
ありがとう。また電話して…」
「明日からの新しい時間…
楽しんでね。おやすみ」
「…おやすみ」
嬉しいはずなのに…好きな相手から同じ言葉を言われて「私も!」と言いたかったのに…。今までよりもっとつらいような気がした。
次の日。
タミオは華々しくデビューを飾り、連日TVやネットに取り上げられて忙しい毎日を過ごしていた。碧はTVやポスターを見るたびに胸がチクチク痛かった。その気持ちを忘れるように、碧は仕事に打ち込んだ。恋とは裏腹に会社の業績は上がっていった。
連絡を取ることもなく時間だけが過ぎていった…。
この一言でバイクを飛ばして来たタミオは、碧の家に泊まった。
タミオの手料理で碧はすっかり元気になり、夜遅くまで二人でとめどなく話し続けた。気づけば、碧は満腹と安心感で先にソファーで眠ってしまった。タミオは碧を抱きかかえベッドに寝かせると、自分はソファーで眠った。
次の朝。
タミオは美味しそうなにおいと、小気味よい音で目が覚めた。
「おはよう。いい匂い…」
「あっ!起きた?おはよう。
朝ごはん、もうすぐ出来る
から、先に顔洗って来て。
洗面所は、そっち。新しい
タオル、置いてあるから」
「あっ…うん、ありがと」
顔を洗って戻ると朝ごはんが並んでいた。
「いただきまーす!
おっ!味噌汁うまい」
「そう?良かった。それより
昨日は本当にありがとう。
もしかして…ベッドまで
運んでくれたの?」
「うん。お姫様抱っこでね…」
「えーっ!重かったよね。
ごめん」
「いやぁ重かった…なんてね。
ウソウソ!碧ちゃん
疲れてたんだよ…ホントに」
「ありがとう。おかげで元気
もらえた。昨日は晩ご飯も
作ってもらっちゃったよね。
どれも本当に美味しかった。
今朝は、そのお礼…と言える
ほどのものではないけど…」
「どれも美味しいよ。オレも
一人暮らし長いからね。
なんか覚えちゃったんだよ。
それに何よりも碧ちゃんに
元気になってもらうことが
一番だからね。良かった」
「ありがとう」
「今日どうする?」
「たまにはどこか行こうかな…
と思って」
「付き合うよ」
「えっ…いいの?」
「いつものカフェ行く?」
「うん、行きたい!」
「よしっ!じゃあ、これ
食べたら行こう!」
久々にバイクに乗れる!しかも、タミオさんと一緒に…。
準備をして碧がバイクの前に立つと、タミオがさりげなく自分のバイクの後ろを指さして話した。
「碧ちゃんは運転ナシ。
今日は後ろに乗って」
さりげなく言ってきたタミオに驚いた。男の人のバイクの後ろに乗るなんて人生で想像もしない出来事だったから。
風を受けて颯爽と走る…そんないつもの感じと違って不思議だった。
いつものカフェに立ち寄ると、見知らぬ女性が近寄ってきた。
「タミオじゃない!
久しぶり。元気だった?」
「おー!ユリじゃんか!
元気!元気!今日はオフ?」
「そう。だから久しぶりに
走りに来たの。カワイイ子
連れてるじゃない、彼女?」
「今、頑張ってるとこ」
「初めまして。この人、
気を付けたほうが良いよ」
「余計な事言うなよ。彼女は
業界の人じゃないんだから」
「そう、ごゆっくり。
それじゃあ、またね…」
この人…誰?何なの?これ。何を見せられてるの?碧は、早くこの場を立ち去りたかった。
「あの海へ連れて行ってもらえますか?」
碧は、それだけ言うと何も買わずに店を出てバイクの後ろに乗ろうとしていた。タミオは何がなんだか分からずに海へ向かった。海まで着くと、碧はまた何も言わずにいつものポイントまで歩いて行った。
「さっきから何も喋らない
けど…どした?」
気になって話し始めたのはタミオだった。
「・・・別に。ココでは
いつも眺めてるだけだから」
「違うよ。カフェから
ずっとじゃん…」
大人気ないのは私だけ?
あの雰囲気を見せられて気にしない方がおかしい。
「もしかして、ユリの事
気にしてる?アイツ、モデル
やってて、仕事を一緒にした
仲間だよ」
「それだけには見えなかった
けど…」
「アイツさ…誰にでも
ああいうこと言うんだよ。
誤解させたならゴメン」
彼女でもないのに…私も何怒ってるんだろ?海を眺めながら碧は、そんな事を考えていた。
「ゴメン。仕事のことで色々
考え事してただけ。だから
気にしないで」
「なーんだ。少しは
妬いてくれたのかと
思ったんだけどな…」
二十歳のヤキモチなら可愛げもある。でも三十路を過ぎたら簡単には言えない。これからデビューするとなると、ファンや業界の人との噂も増える…そんなことまで考えてしまう。いちいちジェラシーなど持つより、他人事として仕事に集中している方が良いと碧は思っていた。
「そういえば、自宅での仕事
があった…送ってくれる?」
「う…うん」
タミオは碧を送るとそのまま帰って行った。碧は家に入ると、ホッとして涙が出てきた…。
それからタミオは、デビューに向けて着々と準備が進んでいた。碧もまた仕事が順調に進んでいた。お互いに何となく、電話どころかメールを送ることすら避けていた。
そして、タミオのデビューが明日に迫ったある夜…。碧の携帯が鳴った。タミオからだった。
「もしもし」
「もしもし碧ちゃん?
連絡出来なくてゴメン。
体調が気になってたんだけど
最近はどう?」
「もうすっかり元気!
相変わらず忙しくしてるよ。
でも心配しなくて大丈夫。
ありがとう」
「そっか…良かった。
実は…明日デビューなんだ」
「おめでとう!いよいよ…
かぁー。良かったね」
「これから忙しくなると
思うから、その前に話して
おきたい事あってさ」
「うん…」
「オレ…碧ちゃんの事、
好きなんだ」
明日、デビューする人が何を言ってるの?…碧は驚いて何も言えなかった。
「でも何か言ってほしい
とかそういう事じゃなく…
ただ好きだと言うことを
伝えたかっただけ。
何かゴメン、困るよね。
こんな事…」
「ありがとう、嬉しいよ。
でも明日デビューする人が
そんな事言っちゃダメだよ。
夢が叶って、前に進む人が
余計な事考えてないで、今は
明日に備えて休んで。私も
明日、早いし…もう寝るね」
「うん。聞いてくれて
ありがとう。また電話して…」
「明日からの新しい時間…
楽しんでね。おやすみ」
「…おやすみ」
嬉しいはずなのに…好きな相手から同じ言葉を言われて「私も!」と言いたかったのに…。今までよりもっとつらいような気がした。
次の日。
タミオは華々しくデビューを飾り、連日TVやネットに取り上げられて忙しい毎日を過ごしていた。碧はTVやポスターを見るたびに胸がチクチク痛かった。その気持ちを忘れるように、碧は仕事に打ち込んだ。恋とは裏腹に会社の業績は上がっていった。
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