恋をした公爵令嬢は貧乏男爵を子爵に出世させることにした(第2部)

kkkkk

文字の大きさ
7 / 13

ほらー、効かないんでしょー

しおりを挟む
 マフィアはロベールに任せることにして、私はシュミット子爵の方へ歩いて行った。
 決して、ロベールが邪魔者扱いしたからではない……

 シュミット子爵は紋章付きの上質な上着を着ている。違法薬物の取引のおかげで金回りがよさそうだ。そんなシュミット子爵は従者の後ろに隠れている。

 スラム街の薬物中毒者たちを見た私はシュミット子爵に怒りを覚える。すぐに消し炭にしたいところだが、グッとこらえて私はシュミット子爵に話しかけた。

「はじめまして、シュミット子爵。マーガレット・マックスウェル・ウィリアムズです。私のことはご存じですよね?」
「マーガレット様、私共が違法薬物の取引をしているなんて、滅相もございません」
「白を切っても無駄です。証拠は既に私の家の者が掴んでいます。大人しく捕まった方が身のためですわ」

 シュミット子爵は薄ら笑いで馬車へ走って行くと、白金の鎧を纏った兵士を連れて出てきた。

「ふーっ、しかたありませんね。私が助かるためには、あなたに死んでいただくしかないようです」
「あなたに私が殺せる?」
「ええ。この兵士が纏っているのは全魔法を防ぐ鎧です。さすがのマーガレット様でもこの鎧には勝てませんよ」

 半笑いで話すシュミット子爵に怒りを覚えた私。

「じゃあ、試してみたら?」

(地獄の烈火(ヘルズ・フレイム))

 白金の鎧を纏った兵士に向けて中級魔法を放った。爆風で吹き飛ぶシュミット子爵と従者たち。ちなみに、白金の鎧は無傷だ。

「ほらー、効かないんでしょー。もっといくわよー」

(地獄の烈火(ヘルズ・フレイム))

 私は炎を追加した。この中級魔法であれば20個は同時発動可能。だから、あと18個追加できる。
 さて、白金の鎧を纏った兵士はどこまで耐えられるか?

 馬車は焼け焦げ、倉庫の壁はドロドロに溶けている。倉庫の柱が崩れて落ちてきた天井、それも炎に触れた瞬間に燃え尽きる。
 叫び、逃げ惑うシュミット子爵、従者とマフィアたち。倉庫の外に出ようとするものの、結界に跳ね返されて脱出できない。
 次第に状況を理解し、死を覚悟する男たち。このままでは皆殺しに……

 男たちは力の限り結界を叩き、外に助けを叫び続けている。

「誰かいないかーー?」
「助けてくれーー!」
「殺されるーー!」

 それでも白金の鎧は壊れない。

――なかなかやるわねーー!

 白金の鎧はあと何発で破壊できるか? 1発? 2発?

 そう考えると、テンションが上がっていく私。

「アハハ! 暑いでしょー。もっといくわよー、それー!」

 私が炎を追加しようとしたら、シュミット子爵が叫んだ。

「お止め下さい!」
「止めるって何を?」
「これ以上の攻撃はお止め下さい!」
「私は鎧を攻撃しているだけ。あなた達を攻撃しているわけじゃないわ」
「お願いです! 降参します! お願いです!」

 私が男たちを見たら、全員武器を地面に捨てて地面にひれ伏していた。

――白金の鎧を壊してほしくないのかな?

 シュミット子爵が何を謝っているのかを考えていたら、大量の水が発射されて炎が消化された。ロベールが水魔法を使ったようだ。

 一命を取り留めた男たちはロベールに擦り寄っていった。
 そして、ロベールの情に訴え始めた。
「このままでは殺されます!」
「何とかして下さい!」
「罪は認めますから、命だけは!」

 ロベールの後ろに隠れていれば私に攻撃されないと思っているのだろう。なんて卑怯なやつらだ。

 私は動かなくなった白金の鎧を着た兵士のもとへ行った。鎧の状態を確認すると、ところどころ亀裂が入っていた。熱された鎧に水がかけられて、急激な温度変化で物理的に崩壊したようだ。

「私の炎でも壊れなかったのに……ロベールのせいで壊れちゃったじゃない」
「だって、僕が水をかけなかったら……みんな死んでたよ」

 ロベールが鎧を外して中の兵士を確認すると、兵士は酷い火傷をしていた。
 私はロベールの冷たい視線を感じる。
 そう、加害者は私……

「重症だ。鎧で魔法は防げても、炎から生じる熱までは防げなかったんだ…」
「あれで死ななかったんだから、すごい鎧だね」
「このままだと死んじゃうよ。治してあげない?」

 ロベールが私を見ている。まるで道端に捨てられた子犬のような目だ。そんな目で見つめられたら、

「分かったわよ、はい、回復(ヒール)」

 兵士の傷はみるみる回復した。


***


 いろいろあったけど、死者はゼロ。違法薬物の取引をしていたシュミット子爵とマフィアは捕まえた。
 私はロベールの出世のために、口裏合わせを男たちに伝える。

「今からあなた達を警察に引き渡します。警察に捕まった経緯を聞かれたら、この人、ロベールにやられたらと言いなさい。私は後方支援でロベールとあなた達の戦闘を見ていた」
「はぁ」
「私は何もしていなかった。分かった?」

 シュミット子爵が遠慮がちに手をあげた。

「何か?」
「いえ、この焼けた倉庫はどう説明すればよろしいですか?」
「うーーん、そうね。あなた、タバコ吸う?」
「はい、吸います」
「小火(ボヤ)よ」
「は?」
「あなたが吸っていたタバコの残火が燃え移り……」
「でも、壁がドロドロに溶けています。さすがにタバコの残火では説明が……」

――なかなか鋭いところを突いてくるな……

「そうよ! 倉庫に油があったのよ! タバコの残火が油に燃え移って……壁がドロドロに…。これでいい?」

 シュミット子爵は納得してはいない。イライラする私はシュミット子爵に念押しする。

「分かったの?」
「分かりました…」

 私たちが倉庫から出ると、50人くらいの警察官が走ってきた。
「ほらっ」私はそう言ってロベールの背中を押した。

 これにて一件落着!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

スキルなし王妃の逆転劇―妹に婚約破棄を囁かれましたが、冷酷王と無音の結婚式へ向かいます

雪城 冴
恋愛
聖歌もファンファーレもない無音の結婚式。 「誓いの言葉は省略する」 冷酷王の宣言に、リリアナは言葉を失った。 スキル名を持たないという理由だけで“無能”と蔑まれてきたリリアナ。 ある日、隣国の王・オスカーとの婚約が決まる。 義妹は悪魔のような笑みで言う。 「婚約破棄されないようにお気をつけてね」 リリアナに残されたのは、自分を慰めるように歌うことだけ。 ところが、魔力が満ちるはずの王国には、舞踏会すら開かれない不気味な静寂が広がっていた。 ――ここは〈音のない国〉 冷酷王が隠している“真実”とは? そして、リリアナの本当のスキルとは――。 勇気と知性で運命を覆す、 痛快逆転ファンタジー。 ※表紙絵はAI生成

『嫌われ令嬢ですが、最終的に溺愛される予定です』

由香
恋愛
貴族令嬢エマは、自分が周囲から嫌われていると信じて疑わなかった。 婚約者である侯爵令息レオンからも距離を取られ、冷たい視線を向けられている――そう思っていたのに。 ある日、思いがけず聞いてしまった彼の本音。 「君を嫌ったことなど、一度もない」 それは誤解とすれ違いが重なっただけの、両片思いだった。 勘違いから始まる、甘くて優しい溺愛恋物語。

【完結】捨てられ令嬢の冒険譚 〜婚約破棄されたので、伝説の精霊女王として生きていきます〜

きゅちゃん
恋愛
名門エルトリア公爵家レオンと婚約していた伯爵令嬢のエレナ・ローズウッドは、レオンから婚約破棄を宣言される。屈辱に震えるエレナだが、その瞬間、彼女にしか見えない精霊王アキュラが現れて...?!地味で魔法の才能にも恵まれなかったエレナが、新たな自分と恋を見つけていくうちに、大冒険に巻き込まれてしまう物語。

【完結】ジュリアはバツイチ人生を謳歌する

ariya
恋愛
エレン王国の名門貴族・アグリア伯爵家に嫁いだジュリア・アグリア(旧姓ベルティー)。 夫のアベル・アグリア伯爵は、騎士として王妃の護衛任務に没頭し、結婚翌日からほぼ別居状態。 社交界のパーティーでは妻のエスコートを代理人に任せ、父の葬儀にも顔を出さず、事務的な会話と手紙のやり取りだけの日々が続く。 ジュリアは8年間の冷遇に耐え抜いたが、ある朝の食事中、静かに切り出す。 「私たち、離婚しましょう」 アベルは絶句するが、ジュリアは淡々と不満を告げる。 どれも自分のしでかしたことにアベルは頭を抱える。 彼女はすでに離婚届と慰謝料の用意を済ませ、夫の仕事に理解を示さなかった「有責妻」として後腐れなく別れるつもりだった。 アベルは内心で反発しつつも、ジュリアの決意の固さに渋々サイン。 こうしてジュリア・アグリアは、伯爵夫人としての全てを置き去りにし、バツイチ人生を開始する。

「お前みたいな卑しい闇属性の魔女など側室でもごめんだ」と言われましたが、私も殿下に嫁ぐ気はありません!

野生のイエネコ
恋愛
闇の精霊の加護を受けている私は、闇属性を差別する国で迫害されていた。いつか私を受け入れてくれる人を探そうと夢に見ていたデビュタントの舞踏会で、闇属性を差別する王太子に罵倒されて心が折れてしまう。  私が国を出奔すると、闇精霊の森という場所に住まう、不思議な男性と出会った。なぜかその男性が私の事情を聞くと、国に与えられた闇精霊の加護が消滅して、国は大混乱に。  そんな中、闇精霊の森での生活は穏やかに進んでいく。

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~

香木陽灯
恋愛
 「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」  実の父と義妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。  「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」  「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」  二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。 ※ふんわり設定です。 ※他サイトにも掲載中です。

あなたが恋をしなければ

あんど もあ
ファンタジー
王立学園の卒業パーティーで婚約破棄を宣言する第一王子。 よくあるシーンだけど、それが馬鹿王子ではなく、優秀だけど人の機微に疎い王子だったら……。

処理中です...