幼少期に相思相愛だった相手に婚約を申し込んだら袖にされた。 十二年疎遠だったから無理もない? 私たちは毎夜語らっていたのになぜ……。

川嶋マサヒロ

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34「雑貨屋にて・二」

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 休日は開店からピンクのエプロンを装着するシルヴェリオであった。レティから簡単な業務の説明を受けて店に立つ。
「いらっしゃいませ」
 どの客、どの客もカウンターにピンク貴公子の姿を見つけては一瞬驚く。
 そのあとに素知らぬ顔をして商品を眺めた。そして顔を赤らめ奥のスペースに消えていくのだ。
「?」
【ミコラーシュ】は、間口はそれ程ではないが奥行きはある。手前には一般雑貨。
 奥の右には事務所スペースへの出入り口。左はカーテンで仕切られている入り口があり、その先にも陳列があるようだ。
 その場の説明は受けていないので、シルヴェリオは雑貨類の接客をした。レティは奥の担当として動く。
(秘密の商品を扱っている――か。人気の理由はこれだな)
「食事を買ってくる。何がいい?」
「お任せします」
 昼食は屋台弁当の支給と説明は受けていた。
「客の質問が分からなければ、待っていてもらってくれ。すぐ戻るよ」
 店に並ぶ品々は全て一流工房の特徴は持つが、今一つ統一性がなかった。ただし偽物ではない。銘がないのだ。ブランド品ではあるが、ノーブランド品として売られている印象だ。知っている特徴があればシルヴェリオにも商品の説明は可能だった。
 客も常連ばかりでお目当ての品を探しに来るようで、ただ代金を受取り品物を渡す繰り返しだ。
 令嬢たちの熱い視線にもなれっこのシルヴェリオは、目が合えば微笑で返した。

「先に休憩してくれ」
「はい」
 事務室で自らお茶を入れる。昼食は屋台サンドだ。茶葉はなかなかの高級品。悪くない。
(この店の店主はかなりの高級貴族か)
 資本もそちらから出ている。だから一流工房の垣根を越えて商品が納入されるのだ。
(レティにしても親戚筋の令嬢なのだろう)
 その令嬢の態度は少々冷たい。当然フィオレンツァ公爵家についても知っている。厚遇もしないし冷遇しない、との立場なのだろう。

 その後に業者の納品があった。配送は一つの商会が請け負っていて、全ての商品を運んで来る。
 午後はレティに指示を受けながらそれらを陳列した。値札はすでに付いている。つまりこの店は委託販売で利益を上げているのだ。
「こんな物も売っているのですね」
 薬草を煎じて魔力を抽出する魔導具が棚の隅に置いてある。普通の薬草とは違う特別な使い方をする。
「いいえ、それは展示品だ。部品やフィルターの注文の時に参考にする。特注の消耗品もあるし、実物と図面で注文を受ける」
「なるほど」
 それはシルヴェリオにとって大きなヒントとなった。

 シルヴェリオは初日のバイトをそつなくこなす。挨拶をして店を出た。考え事をしながら通りを歩く。そのうちに店で、偶然のステキな出会いが待っているだろうと。
(しまった……)
 シルヴェリオは店を振り返った。
「まだ報酬の話をしていなかったが――。まあいいか……」
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