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甘い時間
6.
しおりを挟むはぁぁーーーどうしよう、本当にまいったなー。
「勤、どういうことか説明してくれるかな?!」
トイレから出てすぐに西野の硬く怒っている声が俺に質問してくる。
そりゃそうだよな。
トイレで他の男の尻をまじまじと見てたんだからなー。
怒らないほうがどうかしている。
「西野が考えているようなことじゃないから…って、それよりお前、今日は講義ないって言ってただろう。なんでいるんだ?」
あんだけヤッて抱き潰せてないって西野の体力凄いな………。
「勤とランチ食べよう思って来たんだよ………」
「じゃ、学食に行くか。あ、それから西野、学校で下の名前で呼ぶのダメだって。」
「なんで?別にいいじゃん。勤が呼べってあの日言ったんだよ。」
「………あー、もういい、好きにしろ。」
時間が少しずれただけで学食は学生達でいっぱいで、食べたかったランチは売り切れていた。
俺はカレーライス、西野はBランチを買った。
食べている間、西野はずっと不機嫌だった。
これであの事を言ったら西野は……絶対に怒って許してもらえないかもしれない。
でもどんなことをしてでも謝らないと…………謝るなら早いほうがいいよな。
ああ、気が重い…許してくれるかな………。
「はぁぁーーー。」
大きなため息が出てしまう。西野に言わなくちゃ…
「西野、大事な話があるから、この後、お前のマンションに行こう。」
「………勤………なに?何の話?」
西野の顔色が更に悪くなり、声色も硬くなる。
俺のアパートは壁が薄くて情報がダダ漏れだからな。
とは言っても、あの日以来、アパートには俺達以外住んでいない。
貸切状態なんだが、誰が聞いているかわからない。
西野も話が話だけに誰にも聞かれたくないと思う。
西野の高級マンションは完全防音で何を話しても安心だ。
「ここじゃ話せない話だよ。」
「………っ。」
西野の眉間にシワがより、表情はますます怒っているようだ。
だってここで話すわけにはいかないだろ?
西野はほとんど口を付けないでランチを片付けてしまった。
ヤバイ………マジでヤバイ。食べる気分じゃないらしい。
それから西野は俺と一緒に、受けなくてもいい学科の講義を受ける。
徳永も同じ講義を受けているんだけれど、さっきのバイトのことで文句を言いたげに講義中ずっとこっちを見ている視線を感じる。
徳永、講義を聞いていたほうが良いぞっ!!
俺の隣では西野が怒りのオーラを大放出中だ。
気が付かない、二人がそんなふうになっているのなんか俺は気が付かないぞー。
当然、今日の講義はほとんど…というか全く頭に入らなかった。
講義が終わると、すぐにタクシーを呼んで西野と二人で乗り込み行き先を運転手に告げる。
タクシーの中はもちろん無言で重い空気が漂う。
運転手が無言に絶えきれず、能天気に話しかけくると西野がピシャっと拒絶して更に空気が重苦しくなる。
西野のマンションにようやく着いた。
乗っている時間は15分ほどのはずなのに凄く長く感じて疲れた。
タクシーを降りる頃には西野の足取りはしっかりしてきて、俺より先にエレベーターに乗り込んで、部屋までのカードキーを無言で差し込む。
これはかなり怒っているぞ。
どうなるかわからないけど最悪…色々覚悟しなくちゃいけないだろう。
エレベーターは静かに最上階に向かって動き出した。
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