花の檻

蒼琉璃

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第二章 プロファイリング

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 おおよそ、妹が行きそうにもない東京の繁華街から少し離れた、廃工場で凛は死んでいた。
 制服のネクタイを使って、首を吊っていたのを、建物に不法侵入し、肝試しをしていた数人の男女に発見されたという。
 病院の遺体安置所で、妹と対面した葵は頭が真っ白になり、鬼頭に羽交い締めにされるほど取り乱していた。どうみても、遺体を降ろすときについた傷とは、思えないような痣が顔や手についていて、直感的に、誰かに暴行されて殺害されたのだと悟った。
 紐で締められたような痕は、首吊りの偽装に使われたのだろう。葵は、絶望の中で鬼頭の言葉を信じるしかなかった。
 完璧な兄とは言い難くとも、彼女のこの先の人生が、訪れた不幸の数だけ、幸せになって欲しいと思っていたのに、痛ましい最期を迎えるなんて、とても信じられなかった。
 だが、しばらくしてニュースで名門校とされる、聖南私立女子高等学校の女子生徒が、廃工場で遺体となって発見されたと報道された。ネットでは様々な憶測が飛び、デマや噂、身勝手な中傷で、葵はギリギリまで精神を削られていた。
 それに追い打ちをかけるように、遺体があんな状態にも関わらず、警察は他殺ではなく自殺だと判断したのだ。

『あんた……自殺じゃない、他殺だって言ったよな! 偉そうなこと言っておいて、一年間もなんの進展もないのかよ。あげくの果てに自殺ではい終わりなんて、ふざけるな!』

 報道がされた後、しばらくして鬼頭は葵の元に訪れた。その当時、生活に困り店に戻る気力もなく、日雇いで食いつないでいた。疲れ切って帰宅したマンションの前で、のこのことやってきた鬼頭を、葵は反射的に殴りつけたのを覚えている。
 鬼頭は葵に殴られても抵抗はせず、怒りが収まるまで、無言でその場に立ち尽くすと、深々と頭を下げた。

『申し訳ない、俺の力不足だ。だが、凛さんのことは個人的に調査するつもりでいる。俺自身、上の下した判断に納得していない。きちんと証拠を集めて、真犯人を捕まえる』

 自殺で片付けられた事件を、そんなに簡単に覆せる訳もない、と葵は吐き捨てた。最初は彼の言葉も受け入れられず、無視をしていたが、定期的に葵を心配して、訪れるようになっていた。それを葵は疎ましく思っていたが、鬼頭の人柄がどういう人間なのかは理解した。
 今になって思えば、こうして打ち解けられたのだから『復讐』するためのコマにするには、もってこいの存在になった。
 
「いつか自分たちで店を持って働くのが君と凛さんの夢だったんだもんな。……実は、聖南女子で薬物所持で捕まった子がいてな。その子から、あの鉄壁の聖南女子の内部を聞き出しているんだ」
「……そうなんですか。聖南女子の」

 葵は、過去の記憶を封じ込めると驚くようなそぶりをして鬼頭を見つめた。

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