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第四章 復讐の力を手に入れて
⑨
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「すみませんねぇ。手短に話を終わらせますから。神部さん、彼女をご存知ですか?」
鬼頭はそう言うと、桜井鳴海の写真を優花に見せた。正直、優花は高階凛の写真を刑事に見せられるのではと、ヒヤヒヤしていたが、見覚えのある写真に首を傾げる。リクルートスーツを来た女は、真面目で地味な容姿。大きめの眼鏡で顔の印象を消しているようだ。
頭の中でその眼鏡を取ると、渋谷のスクランブル交差点で、処刑された桜井の写真だと悟った。
いくら頭の回転が遅い優花でも、警察には自分たちは興味はない。事件とは全く関係ないというそぶりをすることが必要。頭の中でそう警鐘が鳴り響く。
「わかんね。なんとなく見たことあるような気がするけど。刑事さん、この子がどうしたの?」
「彼女は桜井鳴海さんです。ご存知ないですか? 彼女は殺人の被害に合われて。貴方は聖南私立女子高等学校の出身で、彼女は同じクラスだったはず」
「あぁ……桜井さんね。三年間一緒のクラスだったけど、優花たちのグループとは違うところに友達がいたから、あんまり詳しく覚えてないんだよ」
優花が言うように、優等生タイプの桜井と派手な容姿の神部優花とでは、友人同士になるような共通点はない。桜井は、影が薄いクラスメイトだったのだろう。だが、聖南女子の生徒がクスリで捕まり、上層部には内緒で生徒への接触を試みた鬼頭は、ふと何気なく彼女にカマをかけてみる。
「実は先日、聖南女子の学生が補導されたんです。聖南女子はお嬢様学校なので、校則も厳しいでしょう。荒れたイメージがなかっただけに、私どもも驚きましてね」
「へぇ。いくらお嬢様学校って言っても、中にはそういう子もいるんじゃない? でも、それって桜井さんと何か関係あるの」
「その子、薬物所持だったんです。彼女はあなたの一学年下で、桜井さんが在籍中の時は、かなりクラスが荒れてたみたいですね。桜井さんの後に殺された二人は、半グレ集団の一員でした。桜井さんは、なにか薬物に手を出していたんじゃないかと」
鬼頭の質問に、優花はイライラした感情を抑えるように深呼吸した。ぼんくら刑事に見える鬼頭は、意外にも鋭くギリギリのラインを探ってきている。
「わかんない。少なくとも凜花や優花は知らないよ。優花のクラスはみんないい子だったし、優等生ばかり。聖南女子の風紀に合うように統率されてたよ。仲良くないから、薬物してるなんて知るわけない。ただの通り魔なんじゃないの?」
「そうですか。『統率』ね。優花さんはどうやらご存知ないようですね。いや、お引き止めして申し訳ない」
優花はほっとすると、高級車に乗り込もうとする。
「あ、もう一つ。その子が言うには上の学年のいじめが凄いって話でして。たしか、二年前にも女子生徒が亡くなりましたよね。名前は……高階凛さん」
「……っ。り、凛が死んだことなんて思い出したくない!」
優花は、明らかに動揺して声を荒げると車の後部座席にひっ込む。シークレトサービスが彼女を守るように座り、運転手が車を急発進させた。友人の死を聞かれて動揺し、クラスメイトが自死したことを思い出したくない、という嘆きには見えなかった。
鬼頭を睨みつけた優花の瞳は、攻撃的で憎悪さえ感じられる。つつかれたくない場所を突かれて、とっさに怒りの言葉が口から出てきたのか。
「はぁ……。鬼頭さん、なにやってんですか。あの事件は探るなって言われてるでしょ。苦情でも入ったらどうするんです?」
「うるせぇ」
鬼頭はそう言うと、桜井鳴海の写真を優花に見せた。正直、優花は高階凛の写真を刑事に見せられるのではと、ヒヤヒヤしていたが、見覚えのある写真に首を傾げる。リクルートスーツを来た女は、真面目で地味な容姿。大きめの眼鏡で顔の印象を消しているようだ。
頭の中でその眼鏡を取ると、渋谷のスクランブル交差点で、処刑された桜井の写真だと悟った。
いくら頭の回転が遅い優花でも、警察には自分たちは興味はない。事件とは全く関係ないというそぶりをすることが必要。頭の中でそう警鐘が鳴り響く。
「わかんね。なんとなく見たことあるような気がするけど。刑事さん、この子がどうしたの?」
「彼女は桜井鳴海さんです。ご存知ないですか? 彼女は殺人の被害に合われて。貴方は聖南私立女子高等学校の出身で、彼女は同じクラスだったはず」
「あぁ……桜井さんね。三年間一緒のクラスだったけど、優花たちのグループとは違うところに友達がいたから、あんまり詳しく覚えてないんだよ」
優花が言うように、優等生タイプの桜井と派手な容姿の神部優花とでは、友人同士になるような共通点はない。桜井は、影が薄いクラスメイトだったのだろう。だが、聖南女子の生徒がクスリで捕まり、上層部には内緒で生徒への接触を試みた鬼頭は、ふと何気なく彼女にカマをかけてみる。
「実は先日、聖南女子の学生が補導されたんです。聖南女子はお嬢様学校なので、校則も厳しいでしょう。荒れたイメージがなかっただけに、私どもも驚きましてね」
「へぇ。いくらお嬢様学校って言っても、中にはそういう子もいるんじゃない? でも、それって桜井さんと何か関係あるの」
「その子、薬物所持だったんです。彼女はあなたの一学年下で、桜井さんが在籍中の時は、かなりクラスが荒れてたみたいですね。桜井さんの後に殺された二人は、半グレ集団の一員でした。桜井さんは、なにか薬物に手を出していたんじゃないかと」
鬼頭の質問に、優花はイライラした感情を抑えるように深呼吸した。ぼんくら刑事に見える鬼頭は、意外にも鋭くギリギリのラインを探ってきている。
「わかんない。少なくとも凜花や優花は知らないよ。優花のクラスはみんないい子だったし、優等生ばかり。聖南女子の風紀に合うように統率されてたよ。仲良くないから、薬物してるなんて知るわけない。ただの通り魔なんじゃないの?」
「そうですか。『統率』ね。優花さんはどうやらご存知ないようですね。いや、お引き止めして申し訳ない」
優花はほっとすると、高級車に乗り込もうとする。
「あ、もう一つ。その子が言うには上の学年のいじめが凄いって話でして。たしか、二年前にも女子生徒が亡くなりましたよね。名前は……高階凛さん」
「……っ。り、凛が死んだことなんて思い出したくない!」
優花は、明らかに動揺して声を荒げると車の後部座席にひっ込む。シークレトサービスが彼女を守るように座り、運転手が車を急発進させた。友人の死を聞かれて動揺し、クラスメイトが自死したことを思い出したくない、という嘆きには見えなかった。
鬼頭を睨みつけた優花の瞳は、攻撃的で憎悪さえ感じられる。つつかれたくない場所を突かれて、とっさに怒りの言葉が口から出てきたのか。
「はぁ……。鬼頭さん、なにやってんですか。あの事件は探るなって言われてるでしょ。苦情でも入ったらどうするんです?」
「うるせぇ」
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