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魔王城に慣れるまで

小さい執事、さらば。

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サイファの側にフェンリルが控えるように、私の側にもゴートが控えている。

タイミングがうまく掴めない。

ので、堂々と行くことにした。


「フェンリル。この後、時間ちょうだい。さっきの話のことなんだけど」

「まだ話を整えている最中です」

「追加追加。聞くだけでいいから。気が気じゃないの」

眉間に小さなシワを寄せながら、目で『後にしてくれよ』と訴えられる。

「僕は大丈夫ですよ。彼女は大切なお客様です。優先してください」

サイファが言った。鶴の一声とはこれか。

「かしこまりました」と仏頂面で、笑っちゃうくらいフェンリルはかしこまった。

うーん……大変な仕事だな。



食後、フェンリルが面倒そうに寄ってくる。

「どのようなご用件でしょうか」

「ちょっとこっち。ゴートは待ってて」

先導して適当に歩き出す。

興味深そうな視線が刺さらない場所……なんてわかるはずもないけど、食堂からはある程度は距離があるだろう。

「なんだよ。言い方が悪かったなら謝るって。ちゃんと他の手も考えてる。今日の夜には提案が出せるから安心しろ」

「それもそうなんだけどさあ。ゴート君、大丈夫?」

「ん?子供だし融通は効かないが、お前には十分だろ。練習台になってくれよ。成長株なんだ」

「じゃなくて。変なこと言ってるの。私とサイファの恋を応援する、みたいな。個人が好き勝手いうのは構わないけどさ、把握しといてね」

表情が強ばった。当たりを引いた気がする。

「……いや構うぞ、構う問題だよ。またか……わざわざ情報ありがとう。午後も気をつけてくれよ」

フェンリルは深いため息をついた。



そんな調子で午後もゴートに授業を受けた。

夕食も普通にとった。

が、夕食時にはフェンリルとゴートはおらず、新しく見るメイドさんが代わり入っていた。

美人だけど態度が冷たかった。サイファにはとても丁寧に接していた。こいつも親衛隊だな。



結局、今日も地下牢を改造したバーに連れ出された。素で話せるのは他に人がいない空間だけということが判明。

私を挟んで、奥側にサイファ、扉側にフェンリル、という並びになった。

「どうやら本物のゴートを殺して成り代わっていたらしい。ほぼ瓜二つの外見だ。世界征服主義らしく、争いがなくなることを避けたかったようだ」

ぼそぼそと呆れたように喋るフェンリル。資料のペラ紙を机へ音をたてて置くと、ぐっとお冷やを飲み干した。

そのぶんだけサイファがやけに明るく見える。

「いやぁ。レミィちゃんはホウレンソウができていいね。報告、連絡、相談!」

「毒殺未遂って言ってたからさ……私も盛られないようにしないとな」

いや、単純に殺される可能性も重々にあるぞ?
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