文字の大きさ
大
中
小
2 / 66
ミッドウェー海戦
第2話 空母「赤城」
山口司令官を乗せた九七艦攻が降下。
ほどなく、「赤城」に着艦する。
衝撃をほとんど感じさせない、見事な技量だった。
加来艦長は腕利きの操縦員をあてがってくれたのだろう。
その彼に礼を言いつつ、山口司令官は橋口航空参謀とともに飛行甲板に降り立つ。
そこには艦長の青木泰二郎大佐と、それに飛行長の増田正吾中佐の姿があった。
もちろん、山口司令官を出迎えるためだ。
その彼らに対し、山口司令官は「よろしく頼む」と短く挨拶する。
そして、時間が惜しいとばかりに橋口航空参謀を伴って艦橋へと駆け上っていった。
その「赤城」艦橋には参謀長の草鹿龍之介少将をはじめとした幕僚たちが勢揃いしていた。
ただ、そこに山口司令官を歓迎している空気はなかった。
中には、敵愾心のようなオーラを放つ者さえいた。
「我々が至らないために、ご迷惑をおかけします」
敬礼とともに、草鹿参謀長が謝罪の言葉を口にする。
その彼に、山口司令官もまた答礼を返す。
それと同時に、幕僚らの表情を記憶に叩き込む。
ひときわ険しい顔をしているのが源田航空甲参謀。
それと、吉岡航空乙参謀の二人だ。
山口司令官は単身ではなく、腹心の橋口航空参謀を伴ってきた。
その意味を理解しているからだろう。
そこで、山口司令官ははたと気づく。
源田航空甲参謀の顔色が良くない。
だが、そのことはひとまず置いておく。
まずは、懸案事項の確認だ。
「南雲さんはどんな状況だ」
山口司令官も南雲長官の詳しい状態については承知していない。
もし病状が悪ければ、作戦終了後に戦艦「大和」に移ってもらうことも考えなければならない。
たいして役に立たない「大和」も、しかし医療設備は充実している。
病院船代わりに使うにはもってこいの艦だ。
「意識は戻っておりませんが、一方で呼吸も脈拍も安定しています。軍医の見立てでは、静養していればいずれお目覚めになるだろうとのことです」
命に別状は無い。
しかし、指揮は執れない。
そういったところだろう。
山口司令官はそのことに安堵を覚える。
そして、次に源田航空甲参謀に向き直る。
「ずいぶんと調子が悪そうだが、どうした」
「ただの風邪です。大作戦の前に不甲斐ない姿をお見せして申し訳ありません。ですが、大丈夫です。頭の方は冴えわたっております」
強気の言葉を吐く源田航空甲参謀。
しかし、彼の様子は素人目にも良くは見えなかった。
「想定戦闘海域に到達するまでには、まだ多少なりとも時間がある。だから、今は休め。作戦開始までに少しでもコンディションを取り戻してくれれば、そちらのほうが有難い」
山口司令官が思いやりの言葉を口にする。
だがしかし、これは彼の本心ではない。
はっきり言って源田航空甲参謀の存在は、山口司令官にとっては邪魔以外の何物でもなかった。
作戦あるいは戦術に対する見解の相違が大きかったからだ。
特に索敵に関する考え方の違いは、それこそ致命的とも言えた。
それゆえに、山口司令官は源田航空甲参謀の不調を奇貨として、彼を排除することにした。
ほどなく、「赤城」に着艦する。
衝撃をほとんど感じさせない、見事な技量だった。
加来艦長は腕利きの操縦員をあてがってくれたのだろう。
その彼に礼を言いつつ、山口司令官は橋口航空参謀とともに飛行甲板に降り立つ。
そこには艦長の青木泰二郎大佐と、それに飛行長の増田正吾中佐の姿があった。
もちろん、山口司令官を出迎えるためだ。
その彼らに対し、山口司令官は「よろしく頼む」と短く挨拶する。
そして、時間が惜しいとばかりに橋口航空参謀を伴って艦橋へと駆け上っていった。
その「赤城」艦橋には参謀長の草鹿龍之介少将をはじめとした幕僚たちが勢揃いしていた。
ただ、そこに山口司令官を歓迎している空気はなかった。
中には、敵愾心のようなオーラを放つ者さえいた。
「我々が至らないために、ご迷惑をおかけします」
敬礼とともに、草鹿参謀長が謝罪の言葉を口にする。
その彼に、山口司令官もまた答礼を返す。
それと同時に、幕僚らの表情を記憶に叩き込む。
ひときわ険しい顔をしているのが源田航空甲参謀。
それと、吉岡航空乙参謀の二人だ。
山口司令官は単身ではなく、腹心の橋口航空参謀を伴ってきた。
その意味を理解しているからだろう。
そこで、山口司令官ははたと気づく。
源田航空甲参謀の顔色が良くない。
だが、そのことはひとまず置いておく。
まずは、懸案事項の確認だ。
「南雲さんはどんな状況だ」
山口司令官も南雲長官の詳しい状態については承知していない。
もし病状が悪ければ、作戦終了後に戦艦「大和」に移ってもらうことも考えなければならない。
たいして役に立たない「大和」も、しかし医療設備は充実している。
病院船代わりに使うにはもってこいの艦だ。
「意識は戻っておりませんが、一方で呼吸も脈拍も安定しています。軍医の見立てでは、静養していればいずれお目覚めになるだろうとのことです」
命に別状は無い。
しかし、指揮は執れない。
そういったところだろう。
山口司令官はそのことに安堵を覚える。
そして、次に源田航空甲参謀に向き直る。
「ずいぶんと調子が悪そうだが、どうした」
「ただの風邪です。大作戦の前に不甲斐ない姿をお見せして申し訳ありません。ですが、大丈夫です。頭の方は冴えわたっております」
強気の言葉を吐く源田航空甲参謀。
しかし、彼の様子は素人目にも良くは見えなかった。
「想定戦闘海域に到達するまでには、まだ多少なりとも時間がある。だから、今は休め。作戦開始までに少しでもコンディションを取り戻してくれれば、そちらのほうが有難い」
山口司令官が思いやりの言葉を口にする。
だがしかし、これは彼の本心ではない。
はっきり言って源田航空甲参謀の存在は、山口司令官にとっては邪魔以外の何物でもなかった。
作戦あるいは戦術に対する見解の相違が大きかったからだ。
特に索敵に関する考え方の違いは、それこそ致命的とも言えた。
それゆえに、山口司令官は源田航空甲参謀の不調を奇貨として、彼を排除することにした。
感想
あなたにおすすめの小説
遠きレイテ 奇跡を起こすことが義務付けられた日
みにみ1944年10月 フィリピン付近海域全域にて米海軍と日本海軍が総力を上げて潰しあう大戦最後の天王山 日本海軍はフィリピンの地を「天王山」と定め、米軍第3・第7艦隊に対し、史上最大の組織的反撃を試みる。これは「滅びの美学」ではなく、勝つために牙を研ぎ続けた者たちが、かつての知己と海上で相まみえる最後の決戦である 「Nothing Else Comes close.」 《ほかに並ぶ者なし》
征空決戦艦隊 ~多載空母打撃群 出撃!~
蒼 飛雲 ワシントン軍縮条約、さらにそれに続くロンドン軍縮条約によって帝国海軍は米英に対して砲戦力ならびに水雷戦力において、決定的とも言える劣勢に立たされてしまう。
その差を補うため、帝国海軍は航空戦力にその活路を見出す。
そして、昭和一六年一二月八日。
日本は米英蘭に対して宣戦を布告。
未曾有の国難を救うべく、帝国海軍の艨艟たちは抜錨。
多数の艦上機を搭載した新鋭空母群もまた、強大な敵に立ち向かっていく。
【架空戦記】狂気の空母「浅間丸」逆境戦記 (2)――第二次珊瑚海海戦!
糸冬ドーリットル空襲による損傷を機に航空母艦に改装された「浅間丸」はインド洋の通商破壊戦に投入され、遭遇した英空母二隻をからくも退け、内地に帰投した。
補給と整備の後、輸送船団を護衛してトラック島へと赴いた「浅間丸」に新たな任務が与えられる。
角田中将率いる第二機動部隊に加わり、真珠湾から出発した大輸送船団を攻撃し、米空母機動部隊を誘い出すという重要かつ危険な役回りである。
しかし、米軍の動きは連合艦隊司令部の予測を超えたものだった——!
油圧式射出機を装備し、群青色の飛行甲板を持つ異形の空母「浅間丸」の戦いが再び始まる。
※過去作「炎立つ真珠湾」と世界観を共有した内容となります。
四方の海
ひこうき雲1941年12月、日本は真珠湾攻撃によってアメリカとの戦争に突入した。華々しい戦果に国中が沸き立つ中、陸軍の異端児・大瀬良一だけは勝利の先にある国家の破滅を見据えていた。圧倒的な工業力と資源を持つアメリカとの長期戦は、日本の敗北に終わる――
1942年1月、田中新一失脚の余波の中で参謀部長に抜擢された大瀬は、石原莞爾と連携し、陸海軍の統合運用、編、科学技術重視への転換を推進する。同時に南方占領地では、単なる軍事支配ではなく将来的な独立を見据えた新秩序の構築を模索し始める。
戦線が拡大する中、大瀬は日本が生き残るための国家戦略を練り上げ、1942年3月、帝国の進むべき道を問う一大構想を動かし始める。これは戦争に勝つためではなく、日本という国家を未来へ存続させるための戦いの始まりであった。
If太平洋戦争 日本が賢明な判断をしていたら
みにみもし、あの戦争で日本が異なる選択をしていたら?
国力の差を直視し、無謀な拡大を避け、戦略と外交で活路を開く。
真珠湾、ミッドウェー、ガダルカナル…そして終戦工作 分水嶺で下された「if」の決断。
破滅回避し、国家存続をかけたもう一つの終戦
そしてそこから繋がる新たな近代史へ
毎日7時と17時投稿です 外伝の「If太平洋戦争外伝 灰喰機関」もよろしくお願いします
日露戦争の英雄たち 海軍編
蔵屋 日露戦争は西暦1904年から1905年の日本とロシアの帝国間の戦争であった。
この戦争は朝鮮半島を巡る日露間の対立から始まった。
当時の朝鮮半島は大韓帝国であった。
中国大陸は清の冊封(さくほう)体制を日清戦争後日本によって解かれたが、満洲を勢力下に置いたロシアが朝鮮半島に持つ利権を手がかりに南下政策を取りつつあった。
日本にとってはロシアの南下政策は脅威だった。
大日本帝国はロシア帝国の南下政策による勢力圏拡大を防ぎ朝鮮半島・満洲に於けはる利権を守ることで大日本帝国の安全保障や利益を確保し、進んでは満洲・樺太・沿海州等に於ける日本の勢力拡大ないしロシア側からの利権奪取を主な目的とした戦争であった。
そのような時代に於いて海軍では二人の英雄がいた。
一人はこの物語の主人公広瀬武夫である。
もう一人は海軍参謀秋山真之である。
私は今回この二人を題材にした小説を執筆することに決めたのである。
その理由は当時の時代背景は勿論のこと、何故小国の日本があの大国ロシアに勝利出来たのか、ということをこの物語の中で感じ取って欲しいからです。
それでは最後までこの小説をお楽しみ下さい。
この小説は史実に基づいた小説です。
黄金の艦隊 マネー・パワーで歴史を変える男
俊也「平和を金で買えるなら、それに越したことはない。
戦争が避けられないなら、せめて日本が負けない力を金で買おう」
1930年代より世界経済の混乱に乗じて自らの海運会社を急成長、新興財閥を立ち上げた男の、重課金架空戦記!??
姉妹作
「零戦戦記」
「総統戦記」
も、よろしくお願いします。