18 / 30
第18話 過去との決別
しおりを挟む
薄雲が流れる午前の空の下、王城は静寂を取り戻しつつあった。
宰相の反乱は鎮圧され、王妃セレーネが政務を再び掌握していた。
けれど、戦火の跡はすぐには消えなかった。焦げた床、割れた石壁、そして兵たちの傷。
その中心に、静かに息を潜めるひとりの女性の姿があった。
クロエはまだ療養中ではあったが、医師の許可を得て病室を出た。
肩の傷は包帯に覆われ、動かすたびに痛みが走る。
それでも歩く足取りは迷いがなかった。
「……殿下は政務室におられるはず。」
あの日、彼に告げた“信頼”は嘘ではない。けれど、彼の覚悟に甘え続けるわけにはいかないと思っていた。
王太子の侍女として仕えた日々。
愛を知ってしまった自分。
そして、自分のせいで戦いが生まれた現実。
そのすべてと、今日こそ決着をつける――そう心に誓っていた。
王城の北翼、政務室の扉をノックすると、聞き覚えある声が返った。
「どうぞ。」
扉を開けると、陽光が差す広い部屋にノエルがいた。
彼は机の上の書類に目を通していたが、クロエの姿に気づくとふっと笑みを浮かべた。
「傷はもういいのか?」
「医師には驚かれました。癒りが早いと。」
「君の意志の強さがそうさせる。」
ノエルの柔らかな声に、胸の奥がわずかに痛んだ。
「政務の最中に押しかけてしまって、ごめんなさい。」
「謝ることはない。君と話がしたいと思っていた。」
クロエは少し躊躇いながらも、一歩前へ進む。
「……あの日のこと。宰相の言葉を、すべて聞いたわけではありません。でも、私はその言葉の中に、自分の影を見ました。」
ノエルが静かに目を細める。
「自分の影?」
「ええ。もし私が殿下のそばにいなければ、あんな陰謀が生まれることもなかったのかもしれません。」
「だから君は、自分を責めているのか。」
「……はい。私は、殿下を困らせた侍女ですから。」
かすかな笑みを浮かべたその声の裏には、確かな覚悟があった。
ノエルは立ち上がり、机を回り込んで彼女の前に来た。
「クロエ、君はまたそんなふうに言う。努力が重いと言われたあの日と同じように。」
クロエの心が小さく揺れる。
「でも、重いものを持たないと人は歩けませんよ。……殿下のためと思えば、どんな重さも、私には意味がありました。」
「君のその強さに、私が何度救われたことか。」
しばしの沈黙。
風がカーテンを揺らし、光が二人の間を通り抜ける。その穏やかさの中で、ノエルが静かに告げた。
「君がいることが、この国の救いになった。それなのに、自分を咎めるなんて、私には耐えられない。」
「でも、殿下には王国を背負う義務があります。私は……殿下の未来の邪魔をしたくない。」
「未来?」
「はい。殿下には、王妃になるに相応しい方がきっと現れます。その方の傍で、国を導いてください。それが、この国のためです。」
ノエルは目を閉じ、大きく息を吐いた。
「君は……なぜそうも自分を遠ざけようとする。」
「わかっています。私は殿下の侍女、身分も違えば生きる世界も違う。わかっていても――心だけは抑えられませんでした。」
その声が震えていた。抑えたはずの涙が、また頬を伝って落ちた。
ノエルは一歩近づき、彼女の肩に手を置いた。
「私も同じだ。王太子である前に、ひとりの人間として君を愛している。」
クロエは首を振る。
「それは、優しい嘘です。」
「嘘ではない。」
ノエルの声が低く強く響く。
「君は私の人生を変えた。王族として生まれ、愛することも恐れていた私に、“信じる心”を教えてくれた。君がいなければ、私はただの人形だった。」
クロエの唇が震える。
「殿下……。」
「私は君を失いたくない。それがどんなに愚かに見えても構わない。」
「でも私は、殿下の夢を妨げてしまう。」
ノエルは小さく笑った。
「私の夢は、君を含めたものだ。君を取り除いた未来など、見たくはない。」
その言葉に、抑えていた涙が溢れた。
それでもクロエは、最後の力で笑った。
「殿下、本当に……ずるい方ですね。」
「君に言われたくないな。」
二人の笑い声が重なり、長い沈黙を破った。
やがてノエルはそっと手を差し出した。
「クロエ、これから先、どんな選択をしても、君は君のままでいてくれ。もし君がまた“努力が罪”と言われる日が来ても、その努力を誇りにしてほしい。」
クロエはその手を見つめ、静かに頷く。
「はい。……もう逃げません。過去にも、私自身にも。」
その瞬間だった。
政務室の扉が開き、ひとりの使者が飛び込んできた。
「殿下! フェルナンド公爵家より報告! 本家が宰相派残党と結託し、南部で反乱を起こしました!」
空気が凍りついた。
ノエルの表情が一変し、直ちに命じる。
「すぐに兵を集めろ。国境の防衛線を整える。民を巻き込むな。」
使者が駆け出すと、クロエは唇を噛み締めた。
「また戦が……。」
ノエルは拳を握る。
「この国を守るためには、終わらせなければならない過去がある。フェルナンド家は私の父王を裏切った家だ。だが私は、憎しみではなく、誇りで戦いたい。」
クロエが微かに微笑む。
「やっと、殿下らしい言葉ですね。」
「君のおかげで言えるようになった。」
窓から差す光が彼の背を照らす。
その姿は、もはや迷いのない未来の王のものだった。
クロエは深く頭を下げた。
「殿下に仕えて幸せでした。この戦いが終わったら、私は王宮を去ります。」
「去る?」
「ええ。殿下が本当に“王”となるために、私は陰にならなければなりません。」
ノエルは目を閉じ、しばらく何も言わなかった。
そして、ゆっくりと微笑む。
「ならばその時、私は“王”としてではなく、ひとりの男として君を迎えに行こう。」
クロエの目に、新しい涙が光った。
「その言葉を信じていいのですか?」
「信じろ。君が信じることを教えてくれたように。」
部屋を出る直前、ノエルが振り返る。
「新しい時代を創るためには、過去を終わらせなければならない。だが、君との過去だけは――決して終わらせない。」
彼の言葉を胸に、クロエは静かに目を閉じた。
その涙は、悲しみではなく誇りの証。
愛と信念がひとつになった瞬間、彼女は初めて心の底から微笑んだ。
続く
宰相の反乱は鎮圧され、王妃セレーネが政務を再び掌握していた。
けれど、戦火の跡はすぐには消えなかった。焦げた床、割れた石壁、そして兵たちの傷。
その中心に、静かに息を潜めるひとりの女性の姿があった。
クロエはまだ療養中ではあったが、医師の許可を得て病室を出た。
肩の傷は包帯に覆われ、動かすたびに痛みが走る。
それでも歩く足取りは迷いがなかった。
「……殿下は政務室におられるはず。」
あの日、彼に告げた“信頼”は嘘ではない。けれど、彼の覚悟に甘え続けるわけにはいかないと思っていた。
王太子の侍女として仕えた日々。
愛を知ってしまった自分。
そして、自分のせいで戦いが生まれた現実。
そのすべてと、今日こそ決着をつける――そう心に誓っていた。
王城の北翼、政務室の扉をノックすると、聞き覚えある声が返った。
「どうぞ。」
扉を開けると、陽光が差す広い部屋にノエルがいた。
彼は机の上の書類に目を通していたが、クロエの姿に気づくとふっと笑みを浮かべた。
「傷はもういいのか?」
「医師には驚かれました。癒りが早いと。」
「君の意志の強さがそうさせる。」
ノエルの柔らかな声に、胸の奥がわずかに痛んだ。
「政務の最中に押しかけてしまって、ごめんなさい。」
「謝ることはない。君と話がしたいと思っていた。」
クロエは少し躊躇いながらも、一歩前へ進む。
「……あの日のこと。宰相の言葉を、すべて聞いたわけではありません。でも、私はその言葉の中に、自分の影を見ました。」
ノエルが静かに目を細める。
「自分の影?」
「ええ。もし私が殿下のそばにいなければ、あんな陰謀が生まれることもなかったのかもしれません。」
「だから君は、自分を責めているのか。」
「……はい。私は、殿下を困らせた侍女ですから。」
かすかな笑みを浮かべたその声の裏には、確かな覚悟があった。
ノエルは立ち上がり、机を回り込んで彼女の前に来た。
「クロエ、君はまたそんなふうに言う。努力が重いと言われたあの日と同じように。」
クロエの心が小さく揺れる。
「でも、重いものを持たないと人は歩けませんよ。……殿下のためと思えば、どんな重さも、私には意味がありました。」
「君のその強さに、私が何度救われたことか。」
しばしの沈黙。
風がカーテンを揺らし、光が二人の間を通り抜ける。その穏やかさの中で、ノエルが静かに告げた。
「君がいることが、この国の救いになった。それなのに、自分を咎めるなんて、私には耐えられない。」
「でも、殿下には王国を背負う義務があります。私は……殿下の未来の邪魔をしたくない。」
「未来?」
「はい。殿下には、王妃になるに相応しい方がきっと現れます。その方の傍で、国を導いてください。それが、この国のためです。」
ノエルは目を閉じ、大きく息を吐いた。
「君は……なぜそうも自分を遠ざけようとする。」
「わかっています。私は殿下の侍女、身分も違えば生きる世界も違う。わかっていても――心だけは抑えられませんでした。」
その声が震えていた。抑えたはずの涙が、また頬を伝って落ちた。
ノエルは一歩近づき、彼女の肩に手を置いた。
「私も同じだ。王太子である前に、ひとりの人間として君を愛している。」
クロエは首を振る。
「それは、優しい嘘です。」
「嘘ではない。」
ノエルの声が低く強く響く。
「君は私の人生を変えた。王族として生まれ、愛することも恐れていた私に、“信じる心”を教えてくれた。君がいなければ、私はただの人形だった。」
クロエの唇が震える。
「殿下……。」
「私は君を失いたくない。それがどんなに愚かに見えても構わない。」
「でも私は、殿下の夢を妨げてしまう。」
ノエルは小さく笑った。
「私の夢は、君を含めたものだ。君を取り除いた未来など、見たくはない。」
その言葉に、抑えていた涙が溢れた。
それでもクロエは、最後の力で笑った。
「殿下、本当に……ずるい方ですね。」
「君に言われたくないな。」
二人の笑い声が重なり、長い沈黙を破った。
やがてノエルはそっと手を差し出した。
「クロエ、これから先、どんな選択をしても、君は君のままでいてくれ。もし君がまた“努力が罪”と言われる日が来ても、その努力を誇りにしてほしい。」
クロエはその手を見つめ、静かに頷く。
「はい。……もう逃げません。過去にも、私自身にも。」
その瞬間だった。
政務室の扉が開き、ひとりの使者が飛び込んできた。
「殿下! フェルナンド公爵家より報告! 本家が宰相派残党と結託し、南部で反乱を起こしました!」
空気が凍りついた。
ノエルの表情が一変し、直ちに命じる。
「すぐに兵を集めろ。国境の防衛線を整える。民を巻き込むな。」
使者が駆け出すと、クロエは唇を噛み締めた。
「また戦が……。」
ノエルは拳を握る。
「この国を守るためには、終わらせなければならない過去がある。フェルナンド家は私の父王を裏切った家だ。だが私は、憎しみではなく、誇りで戦いたい。」
クロエが微かに微笑む。
「やっと、殿下らしい言葉ですね。」
「君のおかげで言えるようになった。」
窓から差す光が彼の背を照らす。
その姿は、もはや迷いのない未来の王のものだった。
クロエは深く頭を下げた。
「殿下に仕えて幸せでした。この戦いが終わったら、私は王宮を去ります。」
「去る?」
「ええ。殿下が本当に“王”となるために、私は陰にならなければなりません。」
ノエルは目を閉じ、しばらく何も言わなかった。
そして、ゆっくりと微笑む。
「ならばその時、私は“王”としてではなく、ひとりの男として君を迎えに行こう。」
クロエの目に、新しい涙が光った。
「その言葉を信じていいのですか?」
「信じろ。君が信じることを教えてくれたように。」
部屋を出る直前、ノエルが振り返る。
「新しい時代を創るためには、過去を終わらせなければならない。だが、君との過去だけは――決して終わらせない。」
彼の言葉を胸に、クロエは静かに目を閉じた。
その涙は、悲しみではなく誇りの証。
愛と信念がひとつになった瞬間、彼女は初めて心の底から微笑んだ。
続く
46
あなたにおすすめの小説
【完結】婚約破棄、その後の話を誰も知らない
あめとおと
恋愛
奇跡によって病を癒す存在――聖女。
王国は長年、その力にすべてを委ねてきた。
だがある日、
誰の目にも明らかな「失敗」が起きる。
奇跡は、止まった。
城は動揺し、事実を隠し、
責任を聖女ひとりに押しつけようとする。
民は疑い、祈りは静かに現実へと向かっていった。
一方、かつて「悪役」として追放された令嬢は、
奇跡が失われる“その日”に備え、
治癒に頼らない世界を着々と整えていた。
聖女は象徴となり、城は主導権を失う。
奇跡に縋った者たちは、
何も奪われず、ただ立場を失った。
選ばれなかった者が、世界を救っただけの話。
――これは、
聖女でも、英雄でもない
「悪役令嬢」が勝ち残る物語。
手作りお菓子をゴミ箱に捨てられた私は、自棄を起こしてとんでもない相手と婚約したのですが、私も含めたみんな変になっていたようです
珠宮さくら
恋愛
アンゼリカ・クリットの生まれた国には、不思議な習慣があった。だから、アンゼリカは必死になって頑張って馴染もうとした。
でも、アンゼリカではそれが難しすぎた。それでも、頑張り続けた結果、みんなに喜ばれる才能を開花させたはずなのにどうにもおかしな方向に突き進むことになった。
加えて好きになった人が最低野郎だとわかり、自棄を起こして婚約した子息も最低だったりとアンゼリカの周りは、最悪が溢れていたようだ。
悪役令嬢発溺愛幼女着
みおな
ファンタジー
「違います!わたくしは、フローラさんをいじめてなどいません!」
わたくしの声がホールに響いたけれど、誰もわたくしに手を差し伸べて下さることはなかった。
響いたのは、婚約者である王太子殿下の冷たい声。
わたくしに差し伸べられたのは、騎士団長のご子息がわたくしを強く床に押し付ける腕。
冷ややかな周囲のご令嬢ご令息の冷笑。
どうして。
誰もわたくしを信じてくれないまま、わたくしは冷たい牢の中で命を落とした。
婚約破棄?結構ですわ。公爵令嬢は今日も優雅に生きております
鍛高譚
恋愛
婚約破棄された直後、階段から転げ落ちて前世の記憶が蘇った公爵令嬢レイラ・フォン・アーデルハイド。
彼女の前世は、ブラック企業で心身をすり減らして働いていたOLだった。――けれど、今は違う!
「復讐? 見返す? そんな面倒くさいこと、やってられませんわ」
「婚約破棄? そんなの大したことじゃありません。むしろ、自由になって最高ですわ!」
貴族の婚姻は家同士の結びつき――つまりビジネス。恋愛感情など二の次なのだから、破談になったところで何のダメージもなし。
それよりも、レイラにはやりたいことがたくさんある。ぶどう園の品種改良、ワインの販路拡大、新商品の開発、そして優雅なティータイム!
そう、彼女はただ「貴族令嬢としての特権をフル活用して、人生を楽しむ」ことを決めたのだ。
ところが、彼女の自由気ままな行動が、なぜか周囲をざわつかせていく。
婚約破棄した王太子はなぜか複雑な顔をし、貴族たちは彼女の事業に注目し始める。
そして、彼女が手がけた最高級ワインはプレミア化し、ついには王室から直々に取引の申し出が……!?
「はぁ……復讐しないのに、勝手に“ざまぁ”になってしまいましたわ」
復讐も愛憎劇も不要!
ただひたすらに自分の幸せを追求するだけの公爵令嬢が、気づけば最強の貴族になっていた!?
優雅で自由気ままな貴族ライフ、ここに開幕!
働きませんわ。それでも王妃になります
鷹 綾
恋愛
「私は働きませんわ」
そう宣言して、王太子から婚約破棄された公爵令嬢エルフィーナ。
社交もしない。慈善もしない。政務にも口を出さない。
“怠け者令嬢”と陰で囁かれる彼女を、王太子アレクシスは「王妃に相応しくない」と切り捨てた。
――だが彼は知らなかった。
彼女が動かないからこそ、王家は自力で立つことを覚えたのだということを。
エルフィーナは何もしない。
ただ保証を更新せず、支援を継続せず、静かに席を外すだけ。
その結果――
王家は自らの足で立つことを強いられ、王太子は“誰の力にも頼らない王”へと変わっていく。
やがて外圧が王国を揺らしたとき、彼は気づく。
支配でも依存でもなく、並んで立てる存在が誰だったのかを。
「君と並びたい」
差し出されたのは、甘い救済ではない。
対等という選択。
それでも彼女の答えは変わらない。
「私は働きませんわ」
働かない。
支配しない。
けれど、逃げもしない。
これは――
働かないまま王妃になる、公爵令嬢の静かなざまあ恋愛譚。
優雅で、合理的で、そしてどこまでも強い。
“何もしない”という最強の選択が、王国を変えていく。
『婚約破棄?結構ですわ。わたくしは何もしないで生きていきます』
鷹 綾
恋愛
内容紹介
王太子ユリウスの婚約者だった伯爵令嬢リュシエンヌは、公衆の面前で一方的に婚約を破棄される。
だが彼女は泣かず、怒らず、復讐も選ばなかった。
「働かないと、決めましたの」
婚約者として担ってきた政務補佐、調整、裏方の仕事をすべて手放し、彼女は“何もしない”生活を始める。
すると王宮は静かに軋み、これまで彼女が支えていた日常だけが浮き彫りになっていく。
新たな婚約者を得た王太子。
外から王宮を支える女性。
そして、何もせず距離を保つ元婚約者。
誰も声高に責めず、誰も派手なざまぁをしない。
それでも、関係は変わり、立場は入れ替わり、真実だけが残っていく。
これは、頑張らないことで人生を取り戻した令嬢の物語。
婚約破棄のその先で、“何もしない”という最強の選択をした女性が、静かに自由を手に入れるまでの40話。
初恋を諦めたあなたが、幸せでありますように
ぽんちゃん
恋愛
『あなたのヒーローをお返しします。末永くお幸せに』
運命の日。
ルキナは婚約者候補のロミオに、早く帰ってきてほしいとお願いしていた。
(私がどんなに足掻いても、この先の未来はわかってる。でも……)
今頃、ロミオは思い出の小屋で、初恋の人と偶然の再会を果たしているだろう。
ロミオが夕刻までに帰ってくれば、サプライズでルキナとの婚約発表をする。
もし帰ってこなければ、ある程度のお金と文を渡し、お別れするつもりだ。
そしてルキナは、両親が決めた相手と婚姻することになる。
ただ、ルキナとロミオは、友人以上、恋人未満のような関係。
ルキナは、ロミオの言葉を信じて帰りを待っていた。
でも、帰ってきたのは護衛のみ。
その後に知らされたのは、ロミオは初恋の相手であるブリトニーと、一夜を共にしたという報告だった――。
《登場人物》
☆ルキナ(16) 公爵令嬢。
☆ジークレイン(24) ルキナの兄。
☆ロミオ(18) 男爵子息、公爵家で保護中。
★ブリトニー(18) パン屋の娘。
白い結婚は終わりました。――崩れない家を築くまで
しおしお
恋愛
「干渉しないでくださいませ。その代わり、私も干渉いたしません」
崩れかけた侯爵家に嫁いだ私は、夫と“白い結婚”を結んだ。
助けない。口を出さない。責任は当主が負う――それが条件。
焦りと慢心から無謀な契約を重ね、家を傾かせていく夫。
私は隣に立ちながら、ただ見ているだけ。
放置された結果、彼は初めて自分の判断と向き合うことになる。
そして――
一度崩れかけた侯爵家は、「選び直す力」を手に入れた。
無理な拡張はしない。
甘い条件には飛びつかない。
不利な契約は、きっぱり拒絶する。
やがてその姿勢は王宮にも波及し、
高利契約に歪められた制度そのものを立て直すことに――。
ざまあは派手ではない。
けれど確実。
焦らせた者も、慢心した者も、
気づけば“選ばれない側”になっている。
これは、干渉しない約束から始まる静かな逆転劇。
そして、白い結婚を終え、信頼で立つ家へと変わっていく物語。
隣に立つという選択こそが、最大のざまあでした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる