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第10話 王宮の焦り
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第10話 王宮の焦り
王宮の会議室。
重い扉が閉じられ、部屋の中には国王と王宮の重臣たちが集められていた。
長い会議卓の中央に座るのは国王。
その右には宰相。
左には財務長官。
さらに軍務卿、貿易卿、宮廷書記官たちが並ぶ。
空気は重かった。
沈黙を破ったのは財務長官ベルナールだった。
「陛下」
「状況を報告いたします」
国王は頷く。
「言え」
ベルナールは書類を開いた。
「ヴァレリオン銀行が王宮との決済を停止」
「王国軍への資金供給も停止」
「さらに」
一度言葉を切る。
「ヴァレリオン商会が貿易契約を全面停止」
部屋の空気がさらに重くなる。
宰相が低く言った。
「つまり」
「金も物資も止まったということか」
ベルナールは頷いた。
「その通りです」
軍務卿が机を叩く。
「馬鹿な!」
「軍はどうなる!」
ベルナールは冷静に答えた。
「三日以内に兵糧が不足します」
軍務卿の顔が青ざめる。
「三日だと……?」
貿易卿も口を挟む。
「港も止まっております」
「王都への食料輸送が減っています」
宰相が深く息を吐いた。
「……最悪だな」
そして国王を見た。
「原因は明白です」
国王は黙っている。
誰もが分かっていた。
昨日の舞踏会。
王太子の婚約破棄。
ヴァレリオン公爵令嬢。
宰相が言った。
「陛下」
「カリスタ嬢に謝罪するべきです」
その言葉に軍務卿が顔をしかめる。
「王家が公爵令嬢に頭を下げるのか?」
宰相は冷静に答えた。
「このままでは国が止まります」
国王はゆっくり目を閉じた。
「……ディオンを呼べ」
侍従が一礼し、部屋を出ていく。
しばらくして。
扉が開いた。
ディオン王太子が入ってくる。
不機嫌そうな顔だった。
「父上」
「何の用です」
会議室の空気を見て眉をひそめる。
「大げさだな」
宰相が低く言う。
「大げさではありません」
ディオンは椅子に座った。
「どうせあの女の嫌がらせだろう」
「公爵家に命令すればいい」
その言葉に、財務長官が思わず顔をしかめた。
「殿下」
「契約は終了しております」
ディオンは鼻で笑う。
「だから何だ」
「王家の命令だ」
宰相が静かに言った。
「契約は契約です」
「命令で覆すことは出来ません」
ディオンは苛立つ。
「大げさだ!」
「ただの銀行だ!」
その瞬間。
ベルナールが机を叩いた。
「ただの銀行ではありません!」
会議室が静まり返る。
ベルナールは続けた。
「ヴァレリオン銀行は王国最大です!」
「王宮支払いの六割!」
「軍需決済の七割!」
「貿易決済の半分!」
ディオンの表情が少しだけ変わる。
ベルナールはさらに言った。
「つまり」
「王国の金の大半です」
沈黙。
ディオンは腕を組んだ。
「それでも王家には逆らえない」
宰相はゆっくり言う。
「逆らっているのではありません」
「契約が終わっただけです」
その言葉に、ディオンの脳裏に昨日の光景が浮かぶ。
舞踏会。
カリスタの言葉。
――契約を終了いたします
ディオンは首を振る。
「脅しだ」
「すぐ戻る」
その時。
扉が再び開いた。
侍従が駆け込む。
「陛下!」
国王が眉をひそめる。
「何だ」
侍従は息を切らして言った。
「市場が暴落しました!」
会議室がざわめく。
「何?」
侍従は続ける。
「ヴァレリオン商会が商品の販売を停止」
「市場の商人が大混乱です!」
ベルナールが呟く。
「……始まったか」
国王はゆっくりディオンを見た。
その視線は冷たかった。
「お前は」
静かな声だった。
「何をしたのか」
ディオンは答えられなかった。
その頃。
ヴァレリオン銀行の最上階。
アルヴァルドは窓から王都を見ていた。
背後でグレイが報告する。
「王宮が焦っております」
アルヴァルドは小さく笑う。
「当然だ」
そして言った。
「まだ一日だぞ」
王都の空は穏やかだった。
だが。
国の土台は、静かに崩れ始めていた。
王宮の会議室。
重い扉が閉じられ、部屋の中には国王と王宮の重臣たちが集められていた。
長い会議卓の中央に座るのは国王。
その右には宰相。
左には財務長官。
さらに軍務卿、貿易卿、宮廷書記官たちが並ぶ。
空気は重かった。
沈黙を破ったのは財務長官ベルナールだった。
「陛下」
「状況を報告いたします」
国王は頷く。
「言え」
ベルナールは書類を開いた。
「ヴァレリオン銀行が王宮との決済を停止」
「王国軍への資金供給も停止」
「さらに」
一度言葉を切る。
「ヴァレリオン商会が貿易契約を全面停止」
部屋の空気がさらに重くなる。
宰相が低く言った。
「つまり」
「金も物資も止まったということか」
ベルナールは頷いた。
「その通りです」
軍務卿が机を叩く。
「馬鹿な!」
「軍はどうなる!」
ベルナールは冷静に答えた。
「三日以内に兵糧が不足します」
軍務卿の顔が青ざめる。
「三日だと……?」
貿易卿も口を挟む。
「港も止まっております」
「王都への食料輸送が減っています」
宰相が深く息を吐いた。
「……最悪だな」
そして国王を見た。
「原因は明白です」
国王は黙っている。
誰もが分かっていた。
昨日の舞踏会。
王太子の婚約破棄。
ヴァレリオン公爵令嬢。
宰相が言った。
「陛下」
「カリスタ嬢に謝罪するべきです」
その言葉に軍務卿が顔をしかめる。
「王家が公爵令嬢に頭を下げるのか?」
宰相は冷静に答えた。
「このままでは国が止まります」
国王はゆっくり目を閉じた。
「……ディオンを呼べ」
侍従が一礼し、部屋を出ていく。
しばらくして。
扉が開いた。
ディオン王太子が入ってくる。
不機嫌そうな顔だった。
「父上」
「何の用です」
会議室の空気を見て眉をひそめる。
「大げさだな」
宰相が低く言う。
「大げさではありません」
ディオンは椅子に座った。
「どうせあの女の嫌がらせだろう」
「公爵家に命令すればいい」
その言葉に、財務長官が思わず顔をしかめた。
「殿下」
「契約は終了しております」
ディオンは鼻で笑う。
「だから何だ」
「王家の命令だ」
宰相が静かに言った。
「契約は契約です」
「命令で覆すことは出来ません」
ディオンは苛立つ。
「大げさだ!」
「ただの銀行だ!」
その瞬間。
ベルナールが机を叩いた。
「ただの銀行ではありません!」
会議室が静まり返る。
ベルナールは続けた。
「ヴァレリオン銀行は王国最大です!」
「王宮支払いの六割!」
「軍需決済の七割!」
「貿易決済の半分!」
ディオンの表情が少しだけ変わる。
ベルナールはさらに言った。
「つまり」
「王国の金の大半です」
沈黙。
ディオンは腕を組んだ。
「それでも王家には逆らえない」
宰相はゆっくり言う。
「逆らっているのではありません」
「契約が終わっただけです」
その言葉に、ディオンの脳裏に昨日の光景が浮かぶ。
舞踏会。
カリスタの言葉。
――契約を終了いたします
ディオンは首を振る。
「脅しだ」
「すぐ戻る」
その時。
扉が再び開いた。
侍従が駆け込む。
「陛下!」
国王が眉をひそめる。
「何だ」
侍従は息を切らして言った。
「市場が暴落しました!」
会議室がざわめく。
「何?」
侍従は続ける。
「ヴァレリオン商会が商品の販売を停止」
「市場の商人が大混乱です!」
ベルナールが呟く。
「……始まったか」
国王はゆっくりディオンを見た。
その視線は冷たかった。
「お前は」
静かな声だった。
「何をしたのか」
ディオンは答えられなかった。
その頃。
ヴァレリオン銀行の最上階。
アルヴァルドは窓から王都を見ていた。
背後でグレイが報告する。
「王宮が焦っております」
アルヴァルドは小さく笑う。
「当然だ」
そして言った。
「まだ一日だぞ」
王都の空は穏やかだった。
だが。
国の土台は、静かに崩れ始めていた。
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