婚約破棄された悪役令嬢は、事業を阻むギルドを手段を選ばず支配する

ふわふわ

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第二十四話 王家の膝

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第二十四話 王家の膝

王城の大広間。

重臣たちが円卓を囲む中、沈黙が重く沈んでいた。

王家公認産業保全局の帳簿が、中央に置かれている。

赤字。

数字は正直だ。

「このままでは、国庫からの補填が必要になります」

財務卿の声は低い。

「補填すれば、来季の軍備費が削られます」

軍務卿が眉をひそめる。

王太子は黙したまま、帳簿を見つめていた。

誇りで始めた制度。

だが、誇りでは数字は埋まらない。

「殿下」

老王が静かに口を開く。

「市場と戦ってはならぬ」

王太子の拳が震える。

「戦っているのではありません」

「ならば、何をしている」

答えは出ない。

老王は続ける。

「王家は象徴だ。秩序を保つもの」

一拍。

「経済の主ではない」

沈黙。

それは敗北宣言に等しかった。

――――

翌日。

王城から正式な使者が屋敷を訪れる。

「陛下より、直接の会談要請でございます」

執事が淡々と告げる。

わたくしは紅茶を置く。

「王太子ではなく、陛下?」

「はい」

静かな転換点だった。

――――

王城、私室。

老王は穏やかに言う。

「君を王に迎える話は、消えたわけではない」

「存じております」

「だが今日は別の話だ」

一拍。

「王家公認局を、基金と統合したい」

わたくしは表情を変えない。

「王家が基金の審査基準を受け入れる、と」

「そうだ」

「優遇なし」

「なし」

「例外なし」

老王は頷く。

「王家も例外ではない」

沈黙。

それは重い決断だった。

王家が制度に従う。

象徴が仕組みに頭を下げる。

わたくしはゆっくりと言う。

「承知いたしました」

――――

発表は三日後。

王家公認局は基金制度へ吸収統合。

名目は「王都産業安定化のための合理化」。

市場は即座に反応する。

信用が回復する。

株価が戻る。

商人たちは安堵する。

王家が折れたのではない。

王家が適応したのだ。

それが評価された。

――――

王太子は私室で報告を受ける。

「市場は安定しております」

「……そうか」

声は静かだった。

誇りは傷ついた。

だが国は守られた。

その事実だけが残る。

――――

屋敷。

執事が問う。

「お嬢様、これで王家は基金の下に」

「下ではございません」

わたくしは首を振る。

「同じ土俵に立っただけ」

王家は象徴。

基金は制度。

両輪が揃った。

王都はさらに強固になる。

――――

数日後。

王太子が非公式に訪れる。

以前よりも落ち着いている。

「礼を言う」

わたくしは目を細める。

「礼?」

「王家を潰さなかったことに」

一瞬の沈黙。

わたくしは静かに言う。

「潰す必要がございませんでしたもの」

「……」

「王家は象徴であるべきですわ」

一拍。

「市場にまで介入なさらなければ」

王太子は息を吐く。

「私は、焦っていた」

「存じております」

「君を失ったときから」

わたくしは微笑む。

「望みは、殿下の婚約者でなくなること」

「それは、もう叶っております」

王太子は苦く笑う。

「そうだったな」

それ以上、言葉はない。

――――

王城。

老王が呟く。

「王家が膝をついたと噂が立つだろう」

側近が答える。

「しかし王都は守られました」

老王は静かに笑う。

「膝をつく相手を、間違えなかった」

――――

王都の夜。

灯りは以前よりも明るい。

王家と基金。

象徴と制度。

互いに干渉せず、補完する。

そして。

誰も口にはしないが、皆が知っている。

王都の産業は、彼女の制度を通る。

王家でさえ。

王家の膝は折れたのではない。

現実に合わせただけ。

だが。

その現実を形作ったのは。

婚約破棄された一人の令嬢だった。
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