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第二十六話 王位より重いもの
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第二十六話 王位より重いもの
自由港の制度が軌道に乗った頃。
王都では、ある言葉が静かに囁かれ始めていた。
「王家より、基金の方が頼りになる」
それは不敬でも反逆でもない。
ただの実感だった。
誰も王家を否定していない。
だが。
日々の商いを支えているのがどちらか。
答えは明白だった。
――――
王城。
「噂が広がっております」
側近の報告に、王太子は目を閉じる。
「王位より、制度が重いと」
沈黙。
老王は低く言う。
「王位は軽くなったわけではない」
「だが」
王太子の声は苦い。
「日々の生活を支えているのは、あちらだ」
老王は深く息を吐く。
「王位は象徴だ。だが象徴だけでは腹は満たせぬ」
――――
屋敷。
「市中の支持は高まっております」
執事が告げる。
「ですが危うくもございます」
「ええ」
わたくしは窓の外を見る。
「王家を越える印象は不要」
「では」
「公的な場では王家を立てます」
一拍。
「制度は裏で動けばよろしい」
彼女は名を求めない。
だが名がついてしまう。
それが最も危険だ。
――――
数日後。
王城で晩餐会が開かれる。
名目は、自由港成功の祝宴。
王家と基金の協調を示すため。
大広間。
王太子が壇上に立つ。
「王都の安定は、王家と基金の協力の賜物である」
拍手。
わたくしは静かに頭を下げる。
象徴を前に出す。
それが安定の形。
だが。
視線は自然とこちらに集まる。
それを感じながらも、何も示さない。
――――
宴の後。
王太子が近づく。
「名を欲さぬと言ったな」
「ええ」
「だが民は君を見ている」
「視線は流行と同じです」
「……」
「いずれ移ろいます」
王太子は首を振る。
「違う」
一拍。
「君は、王位より重いものを持っている」
わたくしは微笑む。
「信用、でございましょう?」
王太子は答えない。
それが答え。
――――
翌朝。
王城から正式な打診が届く。
「王太子妃ではなく、王国経済顧問の地位を」
執事が読み上げる。
わたくしは静かに首を振る。
「肩書きは不要ですわ」
「ですが、公式な立場があれば」
「立場は縛りになります」
一拍。
「制度は独立してこそ信用されます」
――――
王城。
「断られました」
側近が告げる。
王太子は目を閉じる。
「……わかっていた」
王位も地位も欲しない。
だが国は支える。
それが最も恐ろしい。
「彼女は王家を奪わぬ」
老王が言う。
「だが王家なしでも国は回る」
沈黙。
それが現実。
――――
王都。
新たな商会が立ち上がる。
基金保証付き。
王家の祝辞付き。
形は整っている。
だが裏では、制度が審査し、数字が判断している。
王位は象徴。
制度は実務。
どちらが重いか。
秤にかける者はいない。
だが皆、知っている。
――――
夜。
執事が問う。
「お嬢様、これで王位は完全に不要となりました」
わたくしは静かに言う。
「最初から不要ですわ」
一拍。
「王位は責任」
「信用は選択」
王位は継承される。
信用は選ばれる。
選ばれ続ける限り、制度は生きる。
王太子は理解し始めている。
王位より重いものがあると。
それは王冠ではなく。
市場の信用。
そして。
それを握る彼女は、今日も名を求めない。
王位より重いものを持ちながら。
自由港の制度が軌道に乗った頃。
王都では、ある言葉が静かに囁かれ始めていた。
「王家より、基金の方が頼りになる」
それは不敬でも反逆でもない。
ただの実感だった。
誰も王家を否定していない。
だが。
日々の商いを支えているのがどちらか。
答えは明白だった。
――――
王城。
「噂が広がっております」
側近の報告に、王太子は目を閉じる。
「王位より、制度が重いと」
沈黙。
老王は低く言う。
「王位は軽くなったわけではない」
「だが」
王太子の声は苦い。
「日々の生活を支えているのは、あちらだ」
老王は深く息を吐く。
「王位は象徴だ。だが象徴だけでは腹は満たせぬ」
――――
屋敷。
「市中の支持は高まっております」
執事が告げる。
「ですが危うくもございます」
「ええ」
わたくしは窓の外を見る。
「王家を越える印象は不要」
「では」
「公的な場では王家を立てます」
一拍。
「制度は裏で動けばよろしい」
彼女は名を求めない。
だが名がついてしまう。
それが最も危険だ。
――――
数日後。
王城で晩餐会が開かれる。
名目は、自由港成功の祝宴。
王家と基金の協調を示すため。
大広間。
王太子が壇上に立つ。
「王都の安定は、王家と基金の協力の賜物である」
拍手。
わたくしは静かに頭を下げる。
象徴を前に出す。
それが安定の形。
だが。
視線は自然とこちらに集まる。
それを感じながらも、何も示さない。
――――
宴の後。
王太子が近づく。
「名を欲さぬと言ったな」
「ええ」
「だが民は君を見ている」
「視線は流行と同じです」
「……」
「いずれ移ろいます」
王太子は首を振る。
「違う」
一拍。
「君は、王位より重いものを持っている」
わたくしは微笑む。
「信用、でございましょう?」
王太子は答えない。
それが答え。
――――
翌朝。
王城から正式な打診が届く。
「王太子妃ではなく、王国経済顧問の地位を」
執事が読み上げる。
わたくしは静かに首を振る。
「肩書きは不要ですわ」
「ですが、公式な立場があれば」
「立場は縛りになります」
一拍。
「制度は独立してこそ信用されます」
――――
王城。
「断られました」
側近が告げる。
王太子は目を閉じる。
「……わかっていた」
王位も地位も欲しない。
だが国は支える。
それが最も恐ろしい。
「彼女は王家を奪わぬ」
老王が言う。
「だが王家なしでも国は回る」
沈黙。
それが現実。
――――
王都。
新たな商会が立ち上がる。
基金保証付き。
王家の祝辞付き。
形は整っている。
だが裏では、制度が審査し、数字が判断している。
王位は象徴。
制度は実務。
どちらが重いか。
秤にかける者はいない。
だが皆、知っている。
――――
夜。
執事が問う。
「お嬢様、これで王位は完全に不要となりました」
わたくしは静かに言う。
「最初から不要ですわ」
一拍。
「王位は責任」
「信用は選択」
王位は継承される。
信用は選ばれる。
選ばれ続ける限り、制度は生きる。
王太子は理解し始めている。
王位より重いものがあると。
それは王冠ではなく。
市場の信用。
そして。
それを握る彼女は、今日も名を求めない。
王位より重いものを持ちながら。
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