婚約破棄された悪役令嬢は、事業を阻むギルドを手段を選ばず支配する

ふわふわ

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第二十七話 象徴と現実の距離

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第二十七話 象徴と現実の距離

王都の朝は、穏やかだった。

自由港の荷揚げは順調。

基金保証付きの新規商会も、着実に成果を上げている。

市場は安定。

価格は平準。

誰も声を荒げない。

それが何よりの証拠だった。

――――

だが王城では、別の空気が流れていた。

「地方貴族の一部が不満を表明しております」

側近の報告に、王太子は顔を上げる。

「内容は」

「“王都ばかりが優遇されている”と」

王太子は静かに息を吐く。

自由港。

基金。

統合制度。

すべては王都中心。

地方は従う側。

当然、反発は生まれる。

「彼女の策か」

「いいえ」

側近は首を振る。

「市場原理でございます」

――――

屋敷。

「地方連合が独自の基金構想を」

執事が告げる。

「名称は?」

「地方産業保全協会」

わたくしは微笑む。

「ようやく、でございますわね」

「潰しますか」

「いいえ」

一拍。

「歓迎いたします」

地方が自立を目指す。

悪いことではない。

むしろ健全。

独占は長く続かない。

分散こそ安定。

――――

王太子は驚く。

「彼女が支援を?」

「地方基金に審査基準の提供を」

側近が告げる。

王太子は沈黙する。

囲い込まず。

潰さず。

基準を広げる。

王都基金の思想が、地方へ浸透する。

「……吸収だな」

「はい」

独立に見えて、思想は同じ。

信用基準は同一。

最終的に王都基金と互換性を持つ。

それは支配ではない。

標準化。

――――

数週間後。

地方基金が正式発足。

王都基金と相互保証協定締結。

市場は歓迎。

地方商人は安心。

王太子は理解する。

彼女は領域を広げない。

基準を広げる。

それが一番強い。

――――

夜。

王太子が屋敷を訪れる。

「なぜ、地方を敵にしない」

「敵にする理由がございません」

「だが支配が緩む」

わたくしは静かに答える。

「支配はしておりません」

「……」

「基準を共有しているだけ」

地方が育てば、王国が強くなる。

王都だけが強いより。

国全体が強い方が良い。

王太子はじっと見つめる。

「私は、王位を守ることしか考えていなかった」

「それは殿下の役目ですわ」

「君は違う」

一拍。

「君は国を見ている」

わたくしは微笑む。

「市場を見ているだけです」

――――

王城。

老王が呟く。

「象徴と現実の距離が縮まった」

側近が答える。

「王太子殿下も、ようやく理解されつつ」

老王は頷く。

「王は象徴でよい」

「制度は彼女が担う」

――――

王都。

地方からの商人が増える。

相互保証により取引が円滑。

王国全体の流通量が上がる。

王太子は広場からその光景を見る。

以前なら、脅威と感じただろう。

今は違う。

国が回っている。

それが答え。

――――

屋敷。

執事が問う。

「お嬢様、これで王都の独占は薄れます」

「ええ」

「よろしいのですか」

わたくしは静かに言う。

「独占は不安を生みます」

一拍。

「基準は安心を生みます」

地方が強くなれば、王国は安定。

王家も安定。

わたくしは王位を望まない。

だが国は強くあってほしい。

それだけ。

――――

王太子は気づき始めている。

彼女は王ではない。

だが王より広い視野を持つ。

象徴と現実。

両者は対立しない。

役割が違うだけ。

王太子は呟く。

「王である前に、国を見ねばならぬ」

それが、ようやく芽生えた。

婚約破棄された令嬢は、王位を拒み。

だが王国を育てる。

象徴と現実の距離は、静かに縮まりつつあった。
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