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第三十五話 王家の剣、商人の秤
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第三十五話 王家の剣、商人の秤
王都基準基金が完全に定着し、名称から個人の影が消えてから半年。
市場は静かだった。
静かすぎるほどに。
「お嬢様、北部で武装商団が動いております」
執事の声は低い。
「武装?」
「交易路を独占し、独自の通行税を徴収」
わたくしは書類から目を上げる。
秤で測れぬ者が現れた。
秩序の外側。
――――
王城。
「武装商団は王都基準を拒否」
軍務卿が言う。
「実力で制圧すべき」
財務卿が反論する。
「市場が動揺します」
王は静かに問う。
「彼らの資金源は」
「非公式金融と密輸」
秤の外。
王は決断する。
「軍を動かす」
一拍。
「だが限定的に」
王家の剣が必要な場面。
――――
屋敷。
「陛下は軍を派遣」
執事が報告。
わたくしは頷く。
「正しい判断」
市場は秤。
だが秤は暴力を測れない。
そこは王の領域。
――――
数日後。
武装商団は解体。
首領は捕縛。
交易路は再開。
だが市場に不安が残る。
「力で解決された」
その印象。
――――
王が訪れる。
「剣を抜いた」
「必要でした」
「だが市場は揺れた」
わたくしは静かに言う。
「剣は秤を守るためにあります」
王は目を細める。
「逆ではないか」
「逆ではございません」
一拍。
「秤がなければ、剣は乱れる」
王は沈黙する。
王家の力は秩序を保つ。
だが秩序を定義するのは基準。
両方が必要。
――――
翌日。
王は布告する。
「武装商団の資産は、王都基準基金の審査により再配分」
軍務卿が眉をひそめる。
「厳しすぎる」
王は静かに言う。
「剣で制し、秤で裁く」
秤を通さねば、復讐になる。
秤を通せば、再建。
――――
屋敷。
「資産再配分、完了」
執事が報告。
「市場は」
「安定しております」
わたくしは小さく微笑む。
剣は一時。
秤は恒常。
――――
夜。
王が再び訪れる。
「私は剣だ」
「はい」
「君は秤か」
「いえ」
わたくしは静かに首を振る。
「秤の管理者」
王は笑う。
「では王家は」
「剣の管理者」
沈黙。
「どちらが上だ」
わたくしは答えない。
代わりに言う。
「どちらも傾けば国が崩れます」
王は深く息を吐く。
「ならば並ぶしかない」
「ええ」
――――
北部交易路は再び動き始める。
商人は安心する。
剣がある。
秤もある。
武装商団は消えた。
だが。
王都は理解した。
制度だけでは守れない。
力だけでも支配できない。
王家の剣。
商人の秤。
婚約破棄された令嬢は、剣を持たない。
王は秤を持たない。
だが二つは並ぶ。
並び続ける限り。
王国は揺れない。
王都基準基金が完全に定着し、名称から個人の影が消えてから半年。
市場は静かだった。
静かすぎるほどに。
「お嬢様、北部で武装商団が動いております」
執事の声は低い。
「武装?」
「交易路を独占し、独自の通行税を徴収」
わたくしは書類から目を上げる。
秤で測れぬ者が現れた。
秩序の外側。
――――
王城。
「武装商団は王都基準を拒否」
軍務卿が言う。
「実力で制圧すべき」
財務卿が反論する。
「市場が動揺します」
王は静かに問う。
「彼らの資金源は」
「非公式金融と密輸」
秤の外。
王は決断する。
「軍を動かす」
一拍。
「だが限定的に」
王家の剣が必要な場面。
――――
屋敷。
「陛下は軍を派遣」
執事が報告。
わたくしは頷く。
「正しい判断」
市場は秤。
だが秤は暴力を測れない。
そこは王の領域。
――――
数日後。
武装商団は解体。
首領は捕縛。
交易路は再開。
だが市場に不安が残る。
「力で解決された」
その印象。
――――
王が訪れる。
「剣を抜いた」
「必要でした」
「だが市場は揺れた」
わたくしは静かに言う。
「剣は秤を守るためにあります」
王は目を細める。
「逆ではないか」
「逆ではございません」
一拍。
「秤がなければ、剣は乱れる」
王は沈黙する。
王家の力は秩序を保つ。
だが秩序を定義するのは基準。
両方が必要。
――――
翌日。
王は布告する。
「武装商団の資産は、王都基準基金の審査により再配分」
軍務卿が眉をひそめる。
「厳しすぎる」
王は静かに言う。
「剣で制し、秤で裁く」
秤を通さねば、復讐になる。
秤を通せば、再建。
――――
屋敷。
「資産再配分、完了」
執事が報告。
「市場は」
「安定しております」
わたくしは小さく微笑む。
剣は一時。
秤は恒常。
――――
夜。
王が再び訪れる。
「私は剣だ」
「はい」
「君は秤か」
「いえ」
わたくしは静かに首を振る。
「秤の管理者」
王は笑う。
「では王家は」
「剣の管理者」
沈黙。
「どちらが上だ」
わたくしは答えない。
代わりに言う。
「どちらも傾けば国が崩れます」
王は深く息を吐く。
「ならば並ぶしかない」
「ええ」
――――
北部交易路は再び動き始める。
商人は安心する。
剣がある。
秤もある。
武装商団は消えた。
だが。
王都は理解した。
制度だけでは守れない。
力だけでも支配できない。
王家の剣。
商人の秤。
婚約破棄された令嬢は、剣を持たない。
王は秤を持たない。
だが二つは並ぶ。
並び続ける限り。
王国は揺れない。
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