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第三十七話 王都の外へ
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第三十七話 王都の外へ
制度は自立した。
若い審査官たちは迷いなく基準を運用し、地方基金も問題なく回っている。
わたくしの決裁を必要とする案件は、もうほとんどない。
それは喜ばしいこと。
そして――
少しだけ、静かすぎる。
「お嬢様、本日の予定はございません」
執事が言う。
「そう」
書類もない。
面会もない。
秤は揺れている。
だが、わたくしの手は不要。
「……視察に出ましょう」
「王都内で?」
「いえ」
一拍。
「王都の外へ」
――――
北方の小都市。
かつて武装商団が支配していた地域。
今は交易路が整い、地方基金も設置されている。
だが。
「王都の基準は厳しすぎる」
小商人が言う。
「我々には難しい」
わたくしは身分を明かさず、静かに話を聞く。
彼らは反発しているわけではない。
ただ、不安。
王都の速度についていけない。
――――
夜。
宿で執事が言う。
「制度に不満が」
「不満ではありません」
一拍。
「距離です」
王都基準は強い。
だが強すぎると、遠くなる。
――――
翌日。
地方基金の責任者と面会。
「小規模事業向けの段階審査を設けなさい」
「基準を緩めるのですか」
「いいえ」
わたくしは首を振る。
「基準は同じ」
「だが段階を分ける」
最初から高い壁を登らせるのではない。
階段を設ける。
信用は一足飛びでは育たない。
――――
王城。
「陛下、地方より制度改善の提案が」
側近が報告する。
「誰の発案だ」
「……例の方です」
王は小さく笑う。
「まだ動いているか」
「名は出しておりません」
「当然だ」
王は静かに言う。
「制度が地方を切り捨てれば、王家も切り捨てられる」
王は理解している。
象徴は中央にある。
だが国は広い。
――――
数か月後。
段階審査制度が導入。
小規模商人の参入が増える。
不満は消え、地方経済は活気づく。
王都と地方の差は縮まる。
――――
帰路。
執事が問う。
「王都を離れてよろしかったのですか」
「王都はもう自立しております」
一拍。
「ですが国は王都だけではありません」
婚約破棄された令嬢は、王都を支配した。
だが支配は目的ではなかった。
基準を広げる。
それだけ。
――――
夜。
王が訪れる。
「王都を離れたと聞いた」
「視察ですわ」
「王都は安定している」
「ええ」
「だが地方は」
わたくしは頷く。
「制度は広がるほど調整が必要」
王は静かに言う。
「私は城を守る」
「わたくしは外を整える」
沈黙。
「役割は変わらぬな」
「ええ」
王は窓の外を見る。
王城の灯り。
遠くに広がる街道。
「王都の外へ」
「国は広いのです」
秤は王都だけのものではない。
剣もまた。
婚約破棄された令嬢は、王都を超えた。
だが名は出ない。
影は静かに広がる。
王は塔に立つ。
制度は道を伸ばす。
国は、中心だけで成り立たない。
外へ。
それが次の段階だった。
制度は自立した。
若い審査官たちは迷いなく基準を運用し、地方基金も問題なく回っている。
わたくしの決裁を必要とする案件は、もうほとんどない。
それは喜ばしいこと。
そして――
少しだけ、静かすぎる。
「お嬢様、本日の予定はございません」
執事が言う。
「そう」
書類もない。
面会もない。
秤は揺れている。
だが、わたくしの手は不要。
「……視察に出ましょう」
「王都内で?」
「いえ」
一拍。
「王都の外へ」
――――
北方の小都市。
かつて武装商団が支配していた地域。
今は交易路が整い、地方基金も設置されている。
だが。
「王都の基準は厳しすぎる」
小商人が言う。
「我々には難しい」
わたくしは身分を明かさず、静かに話を聞く。
彼らは反発しているわけではない。
ただ、不安。
王都の速度についていけない。
――――
夜。
宿で執事が言う。
「制度に不満が」
「不満ではありません」
一拍。
「距離です」
王都基準は強い。
だが強すぎると、遠くなる。
――――
翌日。
地方基金の責任者と面会。
「小規模事業向けの段階審査を設けなさい」
「基準を緩めるのですか」
「いいえ」
わたくしは首を振る。
「基準は同じ」
「だが段階を分ける」
最初から高い壁を登らせるのではない。
階段を設ける。
信用は一足飛びでは育たない。
――――
王城。
「陛下、地方より制度改善の提案が」
側近が報告する。
「誰の発案だ」
「……例の方です」
王は小さく笑う。
「まだ動いているか」
「名は出しておりません」
「当然だ」
王は静かに言う。
「制度が地方を切り捨てれば、王家も切り捨てられる」
王は理解している。
象徴は中央にある。
だが国は広い。
――――
数か月後。
段階審査制度が導入。
小規模商人の参入が増える。
不満は消え、地方経済は活気づく。
王都と地方の差は縮まる。
――――
帰路。
執事が問う。
「王都を離れてよろしかったのですか」
「王都はもう自立しております」
一拍。
「ですが国は王都だけではありません」
婚約破棄された令嬢は、王都を支配した。
だが支配は目的ではなかった。
基準を広げる。
それだけ。
――――
夜。
王が訪れる。
「王都を離れたと聞いた」
「視察ですわ」
「王都は安定している」
「ええ」
「だが地方は」
わたくしは頷く。
「制度は広がるほど調整が必要」
王は静かに言う。
「私は城を守る」
「わたくしは外を整える」
沈黙。
「役割は変わらぬな」
「ええ」
王は窓の外を見る。
王城の灯り。
遠くに広がる街道。
「王都の外へ」
「国は広いのです」
秤は王都だけのものではない。
剣もまた。
婚約破棄された令嬢は、王都を超えた。
だが名は出ない。
影は静かに広がる。
王は塔に立つ。
制度は道を伸ばす。
国は、中心だけで成り立たない。
外へ。
それが次の段階だった。
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❇❇❇❇❇❇❇❇❇
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