善夜家のオメガ

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葉月

33 最終話

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「父上、私のオメガの葉月です。彼は日本人です。」

葉月をファールークの前に連れてくる。
サイードが葉月を紹介するとファールークは大きく頷いた。

「葉月、サイードが世話になったようだね。それに我が国の問題に巻き込み危険な目にも合わせてしまった。心から謝罪する。」

葉月に頭を下げるファールークを見てサイードは驚き、感動した。
彼がオメガに頭を下げる。
今までならあり得ないことだ。しかし彼は自分のオメガに出会って変わったのだろう。サイードが抱いた違和感。それはファールークが自分の運命と出会ったからだ。

「我が国のオメガに対する考え方は知っているね?」

「はい。」

「長い間根付いてきた考え方をすぐに変えることは難しいだろう。しかし、私たちに任せて欲しい。必ず君たちが暮らしやすい国に変えていくつもりだ。」

ファールークが葉月とルアンを交互に見つめた。
それから四人は穏やかに談笑し、改めて顔を合わせる機会を設ける約束をした。

「父上は葉月とのことを知っていたのですか?」

「ああ。アーシムが見舞いに来ただろう?その時に。」

「え?アーシムが?」

「そうだ。アイツは食えない奴だな。私の見舞いに来た時、すぐに私に何があったのか察したようだ。ルアンのことで帰国を遅らせていることや、ルアンを連れて帰りたいと思っていること、おまえにどう言おうか悩んでいることも…。だが、私とおまえが同じだと。だから何も問題ないので堂々と帰国しろと言われたよ。」

「アイツ…私には何も…。」

サイードは苦虫を噛み潰した様な顔をした。ファールークのことを黙っていたのはサイードを働かせるためだろう。本当に食えない奴だ。

「そんな顔するな。あんなやつでもアイツはおまえのことを一番に考えている。」

苦笑いをしたファールークがサイードを宥めた。 
葉月とルアンのことはまだ公表せず、機会を待って公表することにした。






「はぁ、驚いたよ。あの父上が。」

サイードの部屋で二人はほっと息をつく。
驚いたのと同時にとても安心した。

「とにかく良かった。サイード、全然戻ってこないし、心配だった。」

「すまない。でも良かった。これでおまえと一緒になれる。」

サイードが笑顔で葉月を膝の上に乗せた。そしてちゅっちゅっと顔中にキスをする。

「ふふ、擽ったい。でもあのルアンさんってかわいかったね。とても三十代には見えない。」

「え?今なんて言った?」

「え、だから、ルアンさん、かわいいって。」

ルアンはダークブロンドに大きな淡いヘーゼルの瞳のかわいらしい見た目だった。大人で落ち着いた雰囲気のファールークと一緒にいるとまるで子供のように見える。

「おまえ、俺の前で他の男を褒めるとは…。」

「え?えぇ!ちょっと待って!」

まさか、オメガにまで嫉妬するとは。
怖い顔で葉月を見ているサイードに呆れてしまう。
しかし彼は本気だ。
ぐいっと葉月を引き寄せると噛み付くようにキスをした。

「ん、んん!」

口の中を舐め回し、舌を吸う。腕ごと抱きしめているので身動きが取れない。
数分そうされて葉月は息も絶え絶えだ。

「はぁはぁ、葉月、今日も寝かさないからな。おまえの身体に十分に分からせてやる。」

舌舐めずりをしたサイードは葉月を抱き上げベッドルームのドアを開けた。





「あっ、サイード、出ちゃう!」

「ん?またか。おまえは我慢が足りないな。」

葉月の性器をベロベロ舐め回しながら意地悪く言う。

「あぁ、出ちゃう、イクっ、あーーっ!」

「んん。」

ピュッと飛び出た精液を飲み干しうっとりと葉月を眺めた。

「堪らないな。早くおまえのここに入りたい。」

散々射精させられたあとは葉月の後ろの穴を舐め回す。舌を入れてぐりぐりすると葉月はあっという間に達した。

「もうダメ…、サイード許して。」

「ん?ダメだ。葉月が帰るまで毎日するからな。」

「え…。」

怯えて逃げ出そうとする葉月を捕まえたサイードはその上にのし掛かって抑え込み、唇を吸った。






「葉月、近いうちに会いにいくからな。良い子で待ってろよ。」

今日は葉月が帰国する日だ。

「うん。」

「また電話する。浮気するなよ。」

「しないよ。そっちこそ。あ、ヤリチンだっけ?」

「あ、いや、それは…。」

葉月が冷たい目で見るとサイードは焦っている。何度かこのやりとりをしていてその度にサイードは必死で言い訳をし、葉月の機嫌を取るのだ。

「僕よりサイードだよ。心配なのは。」

「ない!絶対ない。それは昔の話だ。今はおまえだけだ。信じてくれ!」

「ふーん。」

「ほら、アーシム。おまえからも葉月に言ってくれ。」

困ったサイードはアーシムに助けを求めた。

「葉月様、ご安心下さい。今、殿下は心を入れ替えて葉月様一筋です。私は四六時中一緒に居りますので断言できます。」

「そうだ。な?葉月。おまえだけだ。アーシムもそう言ってるだろ?」

「ええ。ただし、人の本質はそう変わりませんけど…。」

「え?」

にっこり笑うアーシムをサイードが目を丸くして見ている。
彼は味方なのか敵なのか…。

「アーシムさんの言う通りだよ。サイード、もしちょっとでも怪しい素振りがあったらすぐさよならだから。」

「え?ええ⁉︎ちょっと待て!アーシム、おまえ!」

「さあ、葉月様、そろそろ出ないと飛行機のお時間に間に合いませんよ?」

「うん。アーシムさん、ありがとう。」

突っかかってこようとするサイードを制してアーシムが葉月の荷物を持ち、車に乗るよう促した。
葉月が後部座席に乗るとサイードも慌てて乗り込んで来た。

「葉月、分かってるだろ?おまえだけだからな?」

「ふふふ。」

「葉月~!」

意味深に笑う葉月にサイードは泣きそうな顔で抱きついた。
アーシムがバックミラーでその様子を面白そうに見ている。

「では、二人とも。」

車が緩やかに発進する。
しかしサイードだけは一人右往左往して葉月の機嫌を取っていた。
しばらく二人は遠距離だ。サイードが何か企んでいるようだが、葉月は気が付いていないふりをしている。
日本とアグニア、気の遠くなるなるような距離だが葉月はあまり心配していない。
サイードとは離れられない運命だ。自分の善夜のオメガの血がはっきりそう言っている。
運命。
唯一無二の存在。
距離なんて関係ない。必ず二人は結ばれる。
隣で焦っているサイードを横目に葉月は満たされた気持ちで座席に身を沈めた。



~fin~

長々とお付き合い頂きありがとうございました。
今後は番外編で各カップルのその後をお楽しみ下さい。
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