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「はぁ、来週からオメガ学園が再開するって。」
「ああ、聞いたよ。俺、楓と離れてどうやって生きていけば良いんだ…。」
潤と俊哉はがっくりと項垂れながら少し離れたところで楽しそうにはしゃいでいる楓と律を眺めていた。
楓と律は他の客たちとともに小さなワゴンに群がっている。そのワゴンにはいろいろな種類の動物の耳が付いたカチューシャや帽子、付け耳が飾られている。それらを着けてテーマパークを周るのだ。
「一条はこういうところは嫌いだろ?」
「んー、まぁね。基本的に人混みは嫌いなんだ。五十嵐だってそうだろ?」
「うん。騒がしいところは苦手だ。それにしてもすごい人だな。」
「ああ。」
ここは有名なテーマパークだ。
律と楓が行ったことがないと知った俊哉と潤はすぐに手を回してチケットとホテルをとり、四人で遊びに来たのだ。
「律は楽しみ過ぎて昨夜はあまり眠れなかったみたいだ。身体は平気かな。」
「楓もだ。でも楓はそれだけじゃないんだ。」
「ん?何?何かあるのか?」
「ふっふっふ。」
潤は待ってましたというように嬉しそうにリュックの中から何かを取り出した。それを見た俊哉は目を丸くする。
見たことのあるピンクの封筒。
バース庁から来るマッチング通知と同じ色の封筒だ。
「それは…まさか。」
「そうだ。バース庁からの通知だ。都市伝説じゃなかったんだ。」
「都市伝説?」
興奮気味の潤を怪訝な顔で見る。潤は丁寧に封筒から一枚の紙を出し俊哉に見せた。
『マーキング許可のお知らせ。
貴殿とマッチングしたオメガとのマーキングを許可致します。以前お送りさせていただいた書類の確認が出来ました…』
「え?何だこれ…。」
「これに書いてある通りだよ。マーキング許可証だ。」
「ええ⁉︎な、何で?どういうことだ?」
「俺と楓は100%だからな。マッチング率95%以上のカップルに送られてくるらしいんだ。この間、楓のサインをもらって送り返した書類が受理された。これで俺たち…ぐふふ。」
潤がその書類を抱きしめ悶えている。
マーキングの許可。
すなわちセックスの許可だ。
潤と楓はセックスをしても良いと許可を得たのだ。
「何で…」
「俺も初めて知った。書類が届いた時は驚いたよ。」
俊哉はハッと思い出した。総司が言っていたことだ。そのうち良い知らせが届くと。
それはこのことだったのか。
「な、なんで五十嵐だけ。俺だって100%なのに!」
「さあな。これは俺の推測だけど、マッチング後の課金の額だと思う。金を払っているってことは上手くいってるってことだろ?ある一定額を超えるとこの通知がくるんじゃないかな。一条はまだ律と会ったばかりだから、課金額が足りてないんじゃないか?」
「は?課金額?」
「そう。外出時や外泊時、面会する時なんかに納めてた金だよ。連絡先を交換する時に払っただろ?」
「ああ。」
俊哉は唖然とした。オメガ学園が再開されたら律に会うのに金を納めなくてはならない。もちろん喜んで出すつもりだ。皆んな今度こそオメガのためだけにに使われることを要求している。
しかし金さえ払えば何でも出来てしまうというのか。やはりオメガの人権を無視している。
「あ、勘違いするなよ?金だけじゃない。さっきも言った通り、95%以上のカップルにしかマーキングは許可されないんだ。そのカップルは運命だからな。絶対に別れることはない。それに相性が良いが故に近くにいるとフェロモンが不安定になる。身体と心が相手を求めているんだ。だからマーキングが必要なんだ。マーキングすればフェロモンが安定するからな。」
「そういうことか。」
潤の言葉に安心した俊哉はほっと胸を撫で下ろす。
絶対に別れないから許されるマーキング。
俊哉は楓とはしゃいでいる律を見た。
律にマーキング。
律とセックスできる。
改めて考えると身体がぞわぞわした。
「おい、一条。おまえフェロモンが出てるぞ。」
「ふぅ、はぁ、律と…律とセックス…。律にマーキング。」
興奮している俊哉には潤の言葉は耳に入らなかった。
「俊哉くん。これどうかな?」
律の声にハッと我に帰る。俊哉は律とマーキングする日を想像してぼーっとしていた。そんな俊哉の目の前には猫耳を着けた律が恥ずかしそうにもじもじしていた。
黒髪に映える真っ白な猫耳を着けた律。
あまりの可愛さにぐらりと眩暈がした俊哉は自分の顔を両手で覆った。
「へ、変かな?」
「…ぃぃ。」
「え?」
「可愛い!めちゃくちゃ可愛い!」
顔を赤くした俊哉がガバッと律に抱きつく。
「可愛い!何なんだよ~。可愛い!可愛いよ。」
「あ、ありがと…。」
困惑する律がチラリと横を見ると垂れ耳のウサギを着けた楓も潤に捕まっていて抱き上げられ頬擦りされていた。
「あの、俊哉くん…。」
「可愛い。ふわふわのお耳。堪らない。」
人目なんて全く気にしていない俊哉が律を抱きしめ白い猫耳にキスをする。そして本当の猫にするかのように顎をくすぐってくるのだ。
「ん、擽ったい、」
「子猫ちゃんは擽ったいの?じゃあこっちのお耳は?」
うっとりとした顔の俊哉は律の顎を撫でながら、今度は本当の耳にキスをして甘噛みしてくる。
「あぁん、ダメ…。俊哉くん、」
「はぁはぁ、ダメだよ子猫ちゃんなのにそんなエッチな声出して。本当に可愛いんだから…。」
律の抵抗も虚しく、興奮した狼になった俊哉はしばらくそこで律の耳や顔を舐め回していた。
もちろん隣の子ウサギも狼にすっぽりと抱きしめられてされるがままになっていたのだ。
その後も二匹の狼は隙あらば子猫ちゃんと子ウサギちゃんを食べようとするので、それを宥めるのに大変だった。
「ああ、聞いたよ。俺、楓と離れてどうやって生きていけば良いんだ…。」
潤と俊哉はがっくりと項垂れながら少し離れたところで楽しそうにはしゃいでいる楓と律を眺めていた。
楓と律は他の客たちとともに小さなワゴンに群がっている。そのワゴンにはいろいろな種類の動物の耳が付いたカチューシャや帽子、付け耳が飾られている。それらを着けてテーマパークを周るのだ。
「一条はこういうところは嫌いだろ?」
「んー、まぁね。基本的に人混みは嫌いなんだ。五十嵐だってそうだろ?」
「うん。騒がしいところは苦手だ。それにしてもすごい人だな。」
「ああ。」
ここは有名なテーマパークだ。
律と楓が行ったことがないと知った俊哉と潤はすぐに手を回してチケットとホテルをとり、四人で遊びに来たのだ。
「律は楽しみ過ぎて昨夜はあまり眠れなかったみたいだ。身体は平気かな。」
「楓もだ。でも楓はそれだけじゃないんだ。」
「ん?何?何かあるのか?」
「ふっふっふ。」
潤は待ってましたというように嬉しそうにリュックの中から何かを取り出した。それを見た俊哉は目を丸くする。
見たことのあるピンクの封筒。
バース庁から来るマッチング通知と同じ色の封筒だ。
「それは…まさか。」
「そうだ。バース庁からの通知だ。都市伝説じゃなかったんだ。」
「都市伝説?」
興奮気味の潤を怪訝な顔で見る。潤は丁寧に封筒から一枚の紙を出し俊哉に見せた。
『マーキング許可のお知らせ。
貴殿とマッチングしたオメガとのマーキングを許可致します。以前お送りさせていただいた書類の確認が出来ました…』
「え?何だこれ…。」
「これに書いてある通りだよ。マーキング許可証だ。」
「ええ⁉︎な、何で?どういうことだ?」
「俺と楓は100%だからな。マッチング率95%以上のカップルに送られてくるらしいんだ。この間、楓のサインをもらって送り返した書類が受理された。これで俺たち…ぐふふ。」
潤がその書類を抱きしめ悶えている。
マーキングの許可。
すなわちセックスの許可だ。
潤と楓はセックスをしても良いと許可を得たのだ。
「何で…」
「俺も初めて知った。書類が届いた時は驚いたよ。」
俊哉はハッと思い出した。総司が言っていたことだ。そのうち良い知らせが届くと。
それはこのことだったのか。
「な、なんで五十嵐だけ。俺だって100%なのに!」
「さあな。これは俺の推測だけど、マッチング後の課金の額だと思う。金を払っているってことは上手くいってるってことだろ?ある一定額を超えるとこの通知がくるんじゃないかな。一条はまだ律と会ったばかりだから、課金額が足りてないんじゃないか?」
「は?課金額?」
「そう。外出時や外泊時、面会する時なんかに納めてた金だよ。連絡先を交換する時に払っただろ?」
「ああ。」
俊哉は唖然とした。オメガ学園が再開されたら律に会うのに金を納めなくてはならない。もちろん喜んで出すつもりだ。皆んな今度こそオメガのためだけにに使われることを要求している。
しかし金さえ払えば何でも出来てしまうというのか。やはりオメガの人権を無視している。
「あ、勘違いするなよ?金だけじゃない。さっきも言った通り、95%以上のカップルにしかマーキングは許可されないんだ。そのカップルは運命だからな。絶対に別れることはない。それに相性が良いが故に近くにいるとフェロモンが不安定になる。身体と心が相手を求めているんだ。だからマーキングが必要なんだ。マーキングすればフェロモンが安定するからな。」
「そういうことか。」
潤の言葉に安心した俊哉はほっと胸を撫で下ろす。
絶対に別れないから許されるマーキング。
俊哉は楓とはしゃいでいる律を見た。
律にマーキング。
律とセックスできる。
改めて考えると身体がぞわぞわした。
「おい、一条。おまえフェロモンが出てるぞ。」
「ふぅ、はぁ、律と…律とセックス…。律にマーキング。」
興奮している俊哉には潤の言葉は耳に入らなかった。
「俊哉くん。これどうかな?」
律の声にハッと我に帰る。俊哉は律とマーキングする日を想像してぼーっとしていた。そんな俊哉の目の前には猫耳を着けた律が恥ずかしそうにもじもじしていた。
黒髪に映える真っ白な猫耳を着けた律。
あまりの可愛さにぐらりと眩暈がした俊哉は自分の顔を両手で覆った。
「へ、変かな?」
「…ぃぃ。」
「え?」
「可愛い!めちゃくちゃ可愛い!」
顔を赤くした俊哉がガバッと律に抱きつく。
「可愛い!何なんだよ~。可愛い!可愛いよ。」
「あ、ありがと…。」
困惑する律がチラリと横を見ると垂れ耳のウサギを着けた楓も潤に捕まっていて抱き上げられ頬擦りされていた。
「あの、俊哉くん…。」
「可愛い。ふわふわのお耳。堪らない。」
人目なんて全く気にしていない俊哉が律を抱きしめ白い猫耳にキスをする。そして本当の猫にするかのように顎をくすぐってくるのだ。
「ん、擽ったい、」
「子猫ちゃんは擽ったいの?じゃあこっちのお耳は?」
うっとりとした顔の俊哉は律の顎を撫でながら、今度は本当の耳にキスをして甘噛みしてくる。
「あぁん、ダメ…。俊哉くん、」
「はぁはぁ、ダメだよ子猫ちゃんなのにそんなエッチな声出して。本当に可愛いんだから…。」
律の抵抗も虚しく、興奮した狼になった俊哉はしばらくそこで律の耳や顔を舐め回していた。
もちろん隣の子ウサギも狼にすっぽりと抱きしめられてされるがままになっていたのだ。
その後も二匹の狼は隙あらば子猫ちゃんと子ウサギちゃんを食べようとするので、それを宥めるのに大変だった。
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