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第一章
~66~
しおりを挟む◆ユキノ
何もかもが滅茶苦茶だ。
「ミーシャ!
俺と、婚約破棄してくれ!」
本当なら、レオクリス様をはじめとした
同学年の卒業記念パーティーの場で行われる筈の断罪劇
このイベントはローズでも私でも起こる確定イベントだ。
ローズであれば日々の嫌がらせや階段からの突き落としという、下手をすればローズが死にかねなかったと言う、所謂殺人未遂による断罪になる
もう一人のヒロインに関しても似たようなものだけれど、少し違うのは浮浪者を金で雇ってヒロインを襲わせようとした罪に変わるくらいで
こんな、訳のわからないタイミングでの、一体どういう集まりなのかも分からないようなパーティーで、
こんな情けない婚約破棄イベントがあって良いものだろうか?
どこから間違えたのかなんて私にはわからない
そもそも私は間違えてなんか無い
ゲームの通りに私には予言の力が手に入った。
これから起こる未来の災害を防ぐ為に頑張った。
努力した。人に頭を何度も下げて協力をお願いした。
私はこれだけ頑張ってる。
これだけ努力してる。
なのに、どうして誰も私を評価してくれないの?
私は聖女なのに
存在するはずの無いもう一人の黒髪の女性
ヒロインの為に悪役を演じる筈の存在
こいつが、このイレギュラーのせいで私は・・・!
「ライネル」
「ええ、俺が言うの?
んん・・・・・兄さん、ミーシャの婚約者は俺で、兄さんはもうとっくにミーシャとは婚約関係でも何でも無くなってるんだよ?」
「ぇ?」
「二年程前にな、国王陛下と王妃陛下、ライネルと私とで話をしてそう決まった。
来年には結婚式を挙げる」
「あ、そう言えば籍はもう入れてあるんだったね。
これは婚約者、と言うより夫婦?」
「戸籍上はな」
「え・・・なんで・・・・ぇ・・?」
「・・・・・・・・・・」
口が開いたまま塞がらない、とはまさにこんな状況を言うのかもしれない
隣にいるレオ様の顔をまともに見れる気がしない
見なくてもわかる
何もかもを無くして途方に暮れたような、そんな顔だろう
あんまりだ。
レオ様が可哀想だ。とか
何を勝手に決めているんだ。とか
言いたかった筈なのに全部言えない
言えるわけない
国王様も、王妃様も知っていて?
ライネル様とミーシャはもう既に戸籍上夫婦で?
こんなの知らない
訳がわからない
こんな展開ゲームには無かった。
ふと、頭に過ぎるのはある時にローズに言われた言葉
『ここはゲームじゃないの、セーブもコンティニューも出来ないし、過ぎた時間は取り戻せないのよ』
その時の私は何を当たり前の事を言ってるんだろうと、『知ってるわよ。何言ってんの』と返したんだっけ
ああ、私はなんて馬鹿なんだろう
私は私の言動に関しては気を配ってきたし、決して間違えの無いように注意してきた。
でも、でも、
私以外の人の行動まで考える事なんてしなかった。
ヒロインである私を中心に物語は綴られるとそう信じてきた。
そんな訳ないのに
ヒロインである私の都合のいいように話が修正されないのは目の前のこの女のせいだけでは無かったんだ。
国王様や王妃様、ライネル様、皆、
それぞれが行動していった先の今なんだと、
私の頭は他の事に思考を飛ばす。
もう過ぎてしまった事はどうしようもない
ライネル様とミーシャが結婚するのなら、私の取れる選択肢は決まったも当然だ。
レオ様の攻略を完遂する。
今のレオ様は傷心中だ
私が慰めて、そうしてなんとかしてでもレオ様と結ばれるようにしなければならない
この女と義姉妹となるのは癪だが、それ以上に私の盤石な立場を得る必要がある
未来の国王となるレオ様と結婚さえすればこの女を見下す事だって出来るのだから
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