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第七章 私の幸せに貴方たちは不要です
完璧に外堀を埋められていたようです
しおりを挟む殿下からの申し出をすんなりと受け入れ、この日は終わりだと思っていましたが、半ば誘拐されるようにアルベート王国に。
転移魔法便利ですね……はは。
王都の神殿前に停車していた馬車に押し込められ、そのまま王城に。
制服姿のまま、アルベート国王陛下に謁見し、即許可を得られたので、その場で正式な書面を交わしました。これで、アルベート第一王子コーウィン殿下は、名実ともに私の婚約者となりました。
ちょっと待って!! 展開、早くない!?
ただ、私が婚約解消になったばかりで外聞が悪いので、正式な発表は半年後に決定。
大まかな取り決めというか、確認が終わったら、またしても馬車に押し込められて、殿下が所有されてる屋敷に直行。
国王陛下に謁見した翌日、屋敷にアリシアお姉様とジルお兄ちゃん、そして、リストお兄様が訪ねて来てくれました。殿下に呼ばれたそうです。
アリシアお姉様とリストお兄様は、なんとも言えない表情をしてましたね……一応、「おめでとう」とは言ってくれましたが。ジルお兄ちゃんだけが満面な笑みを浮かべてました。この温度差はなんでしょう。
婚約自体は反対されてはいません。なら、どうしてそんな表情をしているのか。姉兄の心の声が聞こえてきそうです。大丈夫、私も同じ気持ちですから。
なんせ、正式な婚約を交わすまで、半日も掛からなかったことに、二人ともドン引きしているのです。
隣国の、それも王族との婚約。
普通なら、成立するまで半年は掛かります。
それが、たった数時間で終了。
そもそも、そう簡単に国王陛下に謁見なんてできませんからね。婚約に関しての書類もそうです。それらが全て、前もって不備なくお膳立てされていたのです。
こういった方面は苦手な私ですが、馬鹿ではありません。
もしかしなくても、完璧なまでに外堀を埋められてましたね、私……いつからなんでしょう。考えたくもありませんが、かなり前からでしょうね。それも、年単位で。
さすがに、呆れましたよ。顔も引きつってますし。アンが前に言っていた、レク様とは違う執着があるって意味が、よく理解できましたわ。
レク様と殿下との違いは、情を感じるか感じないかですね。引きはしますが、嫌悪感はありません。鳥肌もたちませんよ。そこも、大きな違いですね。
「そもそも、私が了承しなければ、用意していたもの、全てが無駄になっていたでしょうに」
アリシアお姉様たちが帰った後、呆れながら呟くと、その台詞が聞こえたのか、レアルさんが私の隣でボソッと教えてくれました。
「無駄にする気なんて、始めからなかったぞ、あいつは。シアが頷くまで、粘るつもりだったからな。最悪、丸め込む気満々だったし」
相変わらず、側近らしからぬ話し方ですね。でも私は、こっちの方が好きです。なんか、距離が近く感じるので。
「……正直言って、かなり引きますわ」
殿下が席を外しているとはいえ、側近の前でこの反応は駄目だとわかっていますが、レアルさんならいいでしょう。
「だろうな。俺も内心、引きまくってるからな。で、疑問なんだが、何故、こうもあっさりと受け入れたんだ? 俺が見た限り、シアはあいつに対して、恋愛感情などなかっただろ? あの馬鹿兄妹の牽制のためか? なら、公爵令嬢になった時点で必要はないだろ? そもそも、結婚自体を考えなくてもいいんじゃないか? それに、本当に、アレでいいのか?」
最後の質問は笑いそうになりましたが、尤もな疑問ですね。
「そうですね……婚約解消できましたし、お父様からは自由にしてもいいと言われていましたし、結婚を焦る必要などありませんでしたね。これっぽっちも」
あれだけ用意周到な腹黒殿下ですから、この会話も何処かで聞いているのでしょう。
直接訊けばいいのに。
「なら、どうして、受け入れた?」
「私の過去を知り、冒険者の私も知っている。そして、冒険者を続ける許可も貰えました」
「そういった点では優良物件だな、あいつは」
「まぁ、それが決め手ではありませんよ。あくまで、ボーナス的なものですね。私が殿下の手を取った一番の理由は、居心地が良かったからですね」
私がそう答えると、レアルさんは不思議そうな表情で訊いてきました。
「居心地?」
「正直、私は殿下に対して、恋愛感情を抱いているかと訊かれたら、答えは否ですね。そもそもの話、恋愛感情というのも自体よくわかりませんし。でも……殿下の傍は、呼吸が楽になるんです。肩に力を入れずに、素のままでいられる。家族や親友以外で、殿下が始めてでした。始めて会った時から……何故かはわかりませんし、それに気付いたのもつい最近です。無意識で受け入れていたみたいです。それが、私が殿下の手を取った理由ですわ。……どうかしましたか? レアル様」
一応、貴族バージョンなので、レアルさんのことは様呼びに。一瞬目を見開き、口元に手をやるレアルさんを見て、おかしなことを言ってしまったのかと、不安になりました。
「……いや、驚いた。アイツも同じことを言っていたからな」
それが本当なら、とても嬉しいですね。
「ということは、私たち似た者同士ですね」
「確かに。アイツほど、軽くはないけどな。根は似てるんだろうか。それでだ、婚約してからなんだが、アイツが置かれている状況についてだが……」
ほんと、そういう話って、普通婚約する前に話さなければいけないことですよね。
順序が逆ですわ。私以外なら、誠意がないと捉えられる案件ですよ。そこまでして、私と婚約したかったのでしょうか?
嬉しいとは思いませんが、なんか、むず痒く感じますね。
「その話なら、レアル様からではなく、直接本人から聞きますよ。そろそろ出てきたらどうです、コーウィン殿下」
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